井上靖のレビュー一覧

  • わが母の記

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    老いにひとつの形容詞しかつけられないような人にはなりたくないと思った。家族がいまよりも家族だったころ、良い意味でも悪い意味でも縛り縛られてたころの、ひとりの尊敬する文豪の、実話。

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    2012年07月27日
  • わが母の記

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    時代背景など、難しい点もいくつもあったが、心がジーンとする小説だった。
    家族をこんな風に見つめ続けられたら、見つめられ続けたら、なんというか幸せだと思う。
    映画は見なかったけど、小説だけで十分楽しめた。

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    2012年07月27日
  • 額田女王

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    「野守は見ずや 君が袖振る」の相聞歌から、額田という女性は、もっとビッチなイメージがあったけど(失礼w)、井上靖が、歴史に翻弄されながら、その中で、当時珍しいであろう「自己」を持ち続けている女性として描いているところが面白い。大海人皇子の子を宿しても「神の子を宿しました」と言って大海人へなびかぬ姿、日本を牛耳る中大兄皇子を火/
    大海人皇子を水と天秤にかけるように評する様など、なにか痛快w
    中大兄皇子らの、大化の改新後の混乱した政局と待ち構える国難への対応の克明な描写、万葉集で詠まれている歌への井上靖流の解釈とそれに合わせた当時の政治状況の組み合わせ等、大いに読み応えあり。

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    2012年06月27日
  • 星と祭 上

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    滋賀県に旅行するにあたり、何か滋賀県が題材になっている本を読んでおきたくて、それで知った本。

    琵琶湖からヒマラヤまで飛んで、途中では全く別の本かと思ってしまった。

    色んな書評で言われているけど、確かに心理描写が卓越。

    それにしても井上靖さんの本で、言葉がすっきりしている。余計な言葉ない。

    そして、今回滋賀の旅行で渡岸寺の十一面観音を見れて、感動した。

    小説の中のように、他の観音様も見てみたいな。

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    2012年05月16日
  • 夏草冬濤(上)

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    ネタバレ

    読んでいると「礼も言わない」「挨拶もしない」といった
    ことが原因の批判非難中傷がずいぶんたくさん出てくる。

    人のうわさ話ばかりで物語が進んでいっているようで
    本作は「しろばんば」ほど愛着を感じはしないのだが
    それでもサクサク読み進められるのは
    なんだかんだいいながら日本人の原点的な感覚に
    馴れた心地よさを覚えるからなのであろう。

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    2012年04月19日
  • 風林火山(新潮文庫)

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    架空の人物とも言われる武田家の軍師、山本勘助が主人公の話。比較的短い物語ですが、武田晴信の側室・由布姫の悲哀も絡めつつ、戦国の空気感を十分に伝えてくれています。

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    2015年12月13日
  • 額田女王

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    額田女王は、万葉集の歌人であり巫女でもあり、そして中大兄皇子と大海人皇子に愛された女性です。
    有名な「茜さす~」がどんな背景でうたわれたのかが知りたいな、という気持ちで読み始めたのですが、額田を中心に置きながら、この頃の頻繁な遷都の意味や、戦までの流れが分かるように書かれており、期待以上に収穫の多い本でした。
    特に、額田の登場場面と、百済を再興するために唐との戦を覚悟しながら船が出航する場面は鳥肌ものでした!

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    2016年08月23日
  • わが母の記 花の下・月の光・雪の面

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    少しずつ衰えていく93歳の母の世話をしています。今までは 同じ事を聞く母にいらだっていましたが、この本を読んで 優しく接することができるようになった自分を感じています。老いて死んでいくって こういう過程を経るのが 幸せかも・・・と思うようになりました。

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    2012年03月13日
  • 後白河院

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    後白河上皇の一生を4人の側近が語る。
    後白河院は、保元の乱、平治の乱など藤原家摂関政治から平家、源氏の武士の時代へのパワーシフトの転換期にあって政治の中心であり続けた人物。

    その他登場人物として気になる存在は信西入道。当時の摂関政治という旧弊に立ち向かった、という意味では彼もまた時代を動かした中心人物。
    そのような人材を登用したところにも、後白河院の政治力の凄みを感じることができる。
    一貫して書かれているのは、後白河院が時の権力者(平清盛、源義仲、義経等)を自らのコントロール下においていた、ということ。それには孤高の判断、つまり、それら権力者と一定の距離感を保ってきたこと、が挙げられるのでは

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    2012年03月03日
  • 額田女王

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    ネタバレ

    古代に関する歴史小説が珍しく購入。教科書では知る事のできない、当時の国際情勢の中で苦悩する男達と才女額田女王との愛。情景が目に浮かぶよう。面白かった。

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    2012年01月29日
  • 蒼き狼

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    仕事でモンゴル人と話す機会があり、そして同席した先輩がモンゴルに詳しい人で、色々話している中で教えて頂いて、急にモンゴルが気になり読んだ本。
    ジンギスカンの一生がまとまっていて、初心者には分かりやすい本では?少し戦闘シーンが長い所などは飽きる所もあったが、全編を通して、ジンギスカンの心模様の移り変わりなどがとてもよく描写されていて面白い。モンゴル、行ってみたい。

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    2012年01月26日
  • おろしや国酔夢譚

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    果てしない異国の地にいても故郷への思いはこんなにも強いのか‥人間にとって生まれ故郷は、こころの支えや拠り所となる場所なんだなと強く感じました。 その他にも、光太夫のリーダー性、船員それぞれがみせる適応力など学ぶべき人間の姿があります。
    また、作中では日本が江戸時代で鎖国中の頃、ロシアではどんな様子だったか知ることができます。

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    2012年02月16日
  • わが母の記 花の下・月の光・雪の面

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    2012年、初読みですw 今春、映画が公開されるので、原作をと思って読んでみました。本題の三部作は澄明な私小説ですが、ほかに収録されていた短編「墓地とえび芋」が、なかなかよかったです。今までに読んだことあったかな・・・?「氷壁」は読んだかも。今年は、現代小説でないものも、読めるといいなぁ。

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    2012年01月14日
  • 猟銃・闘牛

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    井上靖の初期3作品「猟銃」「闘牛」「比良のシャクナゲ」を収載。自分的には少し距離感のある作品群のように感じられたが、それぞれ、ストーリー構成が良いのと、3作品とも違った趣の文体であるので、それぞれの形で楽しめたと思う。
    「猟銃」は妻と愛人と愛人の娘から送られた手紙を読むことで、全体の想いが詳らかになるという意欲作だが、最後の愛人の想いに違和感があったのと、普通、その順番で読まないだろうという自分の中の意地悪な思いもあって(笑)、構成は面白いがいまひとつ馴染めなかった。
    「闘牛」は割と動的な展開で、闘牛大会開催に向けてのとりつかれた情熱も伝わってくるのだが、ラストの展開は個人的には良いのだが、主

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    2011年12月11日
  • おろしや国酔夢譚

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    次々と仲間が倒れる悲惨な話。実話の強力さによっているのだろう。それにしてもロシア人っていい奴ばかりだ。

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    2011年09月29日
  • おろしや国酔夢譚

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    船の漂流により江戸時代にロシアへ渡った船乗りたちの物語。故郷へ帰ろうという強い思いから時の女帝にまで拝謁した船頭の光太夫。それを助けようとするロシアの人々。彼らの精神力の強さと共に、ロシアという国土の広さと日本との果てない距離を感じさせられます。

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    2011年09月23日
  • 北の海(下)

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    四高柔道部の仲間と過ごす金沢での時間が、とてもいいな、と思いました。

    酒も、煙草も、女も、勉強も(!)なく、ひたすら柔道をして過ごす、四高柔道部のメンバー。
    練習量がすべてを決定する柔道。
    練習と、研究。
    人生のある時期を、そんな風に何かに打ち込んで過ごすというのは、とてもぜいたくで、幸せな生き方だろうなと思いました。

    最後、四高に入るために覚悟を決めて、両親のところへ旅立つ洪作の姿が、印象的でした。

    ある意味、このお話は「受験生」向けであるかもしれません。
    目的を成し遂げるために、覚悟を決めて、真剣に学業に取り組む、そこに至るまでの過程の描き方がいいな、と思いました。

    それが、きつき

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    2011年09月18日
  • 北の海(上)

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    自伝的三部作の三作目。
    四高柔道部との出会い。

    三作目の中で一番最初に読み、一番好きになったのが、この『北の海』です。
    洪作の人柄に、ほっとします。

    苦労を重ねた老人の、「親の脛をかじれるうちは、かじったらいい」という考え方が、いいなぁと思いました。
    かじれる脛を持つのも人の運である、と。そしてそこから運を育てていけばいい、と。

    いつまでも親に助けてもらっている私は、この言葉と出会い、少しこころが軽くなりました。
    自分に回ってきている運を、大切に、活用していこうと思います。

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    2011年09月18日
  • 夏草冬濤(下)

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    三部作の中でこの作品が一番好きな理由は、友人達との別離のその思春期ゆえの瑞々しさにノスタルジックの香りを感じるからです。

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    2011年06月21日
  • おろしや国酔夢譚

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    カフカの描く不条理を実際の人生において体験した話。
    前半は、『城』を思わせる。
    どこへ行っても実態のつかめないロシアという国。
    そして、道が開かれたかと思いきや、そこに自分の居場所はない。

    それは運命という言葉以外に、納得させるものはない。
    人が見れないものを見たという幸運と、それに付随する代償。
    その人生が幸せなものだったのか、不幸なものだったのか、それは他人には決してわからないと思った。

    まだまだ自分の人生はこれからだな。

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    2011年06月15日