井上靖のレビュー一覧
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「野守は見ずや 君が袖振る」の相聞歌から、額田という女性は、もっとビッチなイメージがあったけど(失礼w)、井上靖が、歴史に翻弄されながら、その中で、当時珍しいであろう「自己」を持ち続けている女性として描いているところが面白い。大海人皇子の子を宿しても「神の子を宿しました」と言って大海人へなびかぬ姿、日本を牛耳る中大兄皇子を火/
大海人皇子を水と天秤にかけるように評する様など、なにか痛快w
中大兄皇子らの、大化の改新後の混乱した政局と待ち構える国難への対応の克明な描写、万葉集で詠まれている歌への井上靖流の解釈とそれに合わせた当時の政治状況の組み合わせ等、大いに読み応えあり。 -
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後白河上皇の一生を4人の側近が語る。
後白河院は、保元の乱、平治の乱など藤原家摂関政治から平家、源氏の武士の時代へのパワーシフトの転換期にあって政治の中心であり続けた人物。
その他登場人物として気になる存在は信西入道。当時の摂関政治という旧弊に立ち向かった、という意味では彼もまた時代を動かした中心人物。
そのような人材を登用したところにも、後白河院の政治力の凄みを感じることができる。
一貫して書かれているのは、後白河院が時の権力者(平清盛、源義仲、義経等)を自らのコントロール下においていた、ということ。それには孤高の判断、つまり、それら権力者と一定の距離感を保ってきたこと、が挙げられるのでは -
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井上靖の初期3作品「猟銃」「闘牛」「比良のシャクナゲ」を収載。自分的には少し距離感のある作品群のように感じられたが、それぞれ、ストーリー構成が良いのと、3作品とも違った趣の文体であるので、それぞれの形で楽しめたと思う。
「猟銃」は妻と愛人と愛人の娘から送られた手紙を読むことで、全体の想いが詳らかになるという意欲作だが、最後の愛人の想いに違和感があったのと、普通、その順番で読まないだろうという自分の中の意地悪な思いもあって(笑)、構成は面白いがいまひとつ馴染めなかった。
「闘牛」は割と動的な展開で、闘牛大会開催に向けてのとりつかれた情熱も伝わってくるのだが、ラストの展開は個人的には良いのだが、主 -
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四高柔道部の仲間と過ごす金沢での時間が、とてもいいな、と思いました。
酒も、煙草も、女も、勉強も(!)なく、ひたすら柔道をして過ごす、四高柔道部のメンバー。
練習量がすべてを決定する柔道。
練習と、研究。
人生のある時期を、そんな風に何かに打ち込んで過ごすというのは、とてもぜいたくで、幸せな生き方だろうなと思いました。
最後、四高に入るために覚悟を決めて、両親のところへ旅立つ洪作の姿が、印象的でした。
ある意味、このお話は「受験生」向けであるかもしれません。
目的を成し遂げるために、覚悟を決めて、真剣に学業に取り組む、そこに至るまでの過程の描き方がいいな、と思いました。
それが、きつき