井上靖のレビュー一覧

  • 額田女王
    今年最後の読書終了。
    井上靖さん、さすが名をはせた小説家。
    古代日本の艶やかな万葉・飛鳥文化を
    描いている。

    中大兄皇子(後の天智天皇)と大海人皇子
    (後の天武天皇)の両方から愛でられた額田女王の
    女性としての気持ちの変遷を繊細に
    描いています。

    とりあえず教えることができる教育...続きを読む
  • 夏草冬濤(下)
    三部作の中でこの作品が一番好きな理由は、友人達との別離のその思春期ゆえの瑞々しさにノスタルジックの香りを感じるからです。
  • おろしや国酔夢譚
    カフカの描く不条理を実際の人生において体験した話。
    前半は、『城』を思わせる。
    どこへ行っても実態のつかめないロシアという国。
    そして、道が開かれたかと思いきや、そこに自分の居場所はない。

    それは運命という言葉以外に、納得させるものはない。
    人が見れないものを見たという幸運と、それに付随する代償。...続きを読む
  • おろしや国酔夢譚
    人ってあっけなく死ぬもんなんだなと思った。光太夫たちが帰りついてからが特に面白く、そこにもっと照明を当ててほしかった。特に光太夫たちの空白のような晩年は気になる。
    司馬さんの『菜の花の沖』を先に読んでおり、本作を読んで話がつながっていく感じが楽しかった。
    靖さんの文章は田んぼの脇の溝を流れている水の...続きを読む
  • 風濤
    歴史のなかで主導権をとれず、耐えながらも役割に殉ずる人生に胸がふさがれる。派手さはなく、爽快感も無いがなかなか良い読みおわり。
  • 夏草冬濤(下)
    成績が下がったことへの焦りと
    一年上級の魅力ある先輩たちとの交流。
    自分とは違うものや世界に憧れる思春期の切なくも懐かしい雰囲気が漂う。
    羊羹の切り方や読んでいる本を気にしたり
    寺に下宿させられるのが嫌で仕方なかったのに
    友達に羨ましがられて気が変わったり
    洪作の素朴さが等身大に感じられて面白い。
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  • 猟銃・闘牛
    あなたは愛される一生を選ぶか、愛する一生を選ぶか。女学生だったヒロインたちの日常生活での一言は、その後の私の人生に大きな影響を与えた。
  • 孔子
     孔子の死後、弟子の一人が師匠と同門の高弟たちについて語る。
     人生をかけて学ぶに足る師を見出した弟子たちの姿と、彼らを愛し、導いた師の人間としての大きさが、じわじわと膨らんでくる。
     類似した内容が繰り返される描き方には読みにくさも感じるが、孔子が生涯をかけて、いかに繰り返し同じことを説いたかを考...続きを読む
  • 本覚坊遺文
    千利休の死に際を、本覚坊という人間の目を通じ、井上靖が語る、という趣向。
    千利休とは?利休の茶とは?いったいなんだったのでしょう?茶を「遊び」でなく、生死をかけた「人生哲学」「美学」に高めた利休の内面を、弟子の本覚坊を中心に、山之上宗二、古田織部、東陽坊、江雪斎、宗旦というもっとも利休に近い人々の「...続きを読む
  • 淀どの日記
    豊臣秀吉の側室、秀頼の母、浅井の娘茶々の人生を描いた小説。

    私が初めて本で淀どのを知ったのは正室だったおねの視点で描かれた小説でした。そのため、淀君は傲慢で嫌な女だという印象しかなかったのですが、この小説を読んで考えを改めました。
    一族を死に追いやった仇に側室として上がるのは、どれほどの屈辱であっ...続きを読む
  • 孔子
    井上さんの作品は、まだ数冊しか読んでいないのですが、これはすごいと思いました。
    架空の弟子の口から語られる孔子と孔子を取り囲む弟子たち、揺れ動く国と歴史。
    たとえば同じ設定、同じ筋書きで別の人が書いていたら、この作品はなかった。
    井上靖という人間の精神の深み、その澄み具合がこの作品を書かせたのだと思...続きを読む
  • 風濤
    元の圧政のもと翻弄されつづけた高麗の苦しみがビビッドに感じられ、そのときの歴史にまさに立ち会っている感覚が味わえた。
  • 孔子
    人間がこの世に生きていくうえには、「天命」という、すこぶる正体のわからぬ、
    合理的とも不条理ともいえる掟のようなものがあって、どうやら人間というのは
    そこから自由になることはできないようです。
    自分が思う「正しいこと」をしていようと、しまいと、無関係。

    そのうえで人間がどのように生きるべきか。

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  • 夏草冬濤(下)
    下巻に入り、急に変わってい洪作。魅力的な上級生達。映画『いまを生きる』のような青春。貧しく何も知らない少年だった井上靖の自伝的小説。
    清々しい若き感受性。ラストの伸びやかなかんじがとても好き。彼らがどのように成長していくかをしりたいけど、この瞬間が美しい。ラスト5ページのための800ページだな。
  • 淀どの日記
    戦国の時代を強く生き抜いた女性「茶々姫(淀どの)」。
    7歳で父・祖父を亡くし、17歳で母お市の方も自刃。
    20歳で秀吉の側室となり秀頼を産むが、秀吉の死をきっかけに時代の流れは変わり、家康に攻められ秀頼とともに幕を閉じた。悲運の人生を背負いながら、最後まで強くありつづけた淀どのの生涯を描いた作品。
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  • 黒い蝶
    井上靖の唯一の書き下ろし長編小説。らしい。

    口先だけで生きてきたような男が些細なことで知り合った没落富豪から金を毟り取ろうとするけれど、いつしかその口実と真剣に向き合うようになると言う話。
    いい加減な主人公も、人生をはすっぱに生きながら嫌味を言い続ける音楽家もどこかしら愛嬌があって憎めない。
    描写...続きを読む
  • 淀どの日記
    ”七光り将軍”と名高い京極高次が、何だかイケメン風に描かれている。
    映画も観てみたいが宝塚スター主演とだけあって歌劇調が抜け切れてないとの酷評。
    井上靖の原作だけで終わらせておくのが正解かと思い、手を出せずにいる。
  • 楊貴妃伝
    世の中で一番権力を持っているのは、権力者の愛妃、か。自分の腕の中の権力者が、無力に見える楊貴妃。
    そういう女の権力は、日本だと北条政子とか淀の方、が思い浮かびますね。井上靖は女性を主人公にした歴史小説としえて「淀どの日記」というものも書いているそうで、読んでみたいと思います。
  • 北の海(上)
    10代で挫折した小説に手をつけられてうれしい。学生同士の会話が、なんだか古くないかんじ、今ここで聞いているような。言葉遣いや思想はもちろん当時のスタイルなんだけれど、とてもいきいきと感じられるのです。
  • 淀どの日記
    井上靖は真田軍記と風林火山を読みましたが、淡々と人生を物語っていて、ストーリー全体の起伏は乏しいです。激しく時代や人が動いているけど、何だか静かなのです。淀どの日記もご多分に漏れず淡々と進行していきました。三姉妹の関係の変化、京極高次への気持ちの変化、血筋へのプライドの持ち様の変化が一応山場かな、と...続きを読む