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「茶々は眼をつぶった。父浅井長政が、母お市の方が、義父勝家が、伯父信長が、みんなそうしたように、彼女も亦白い刃先に眼を落としたまま、自分の前の短刀を執る時刻の来るのを待っていた。矢倉の窓からは、初夏の陽と青い空が見え、それ以外の何物も見えなかった。城を焼く余燼の煙が、時々、その青い空を水脈のように横に流れていた」――悲運の生涯を誇り高く生き抜いた秀吉の側室・淀どのを深く、詩情豊かに描いた傑作。
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Posted by ブクログ
淀殿が主役の時代物作品。夫・豊臣秀吉だけでなく、京極高次、蒲生氏郷といった諸大名らの交流も描かれているので舞台が幅広く興味深い。文調はやや固めだが表現が細やかで風情も感じられる。『天涯の貴妃』の原作本とも言われているが、それを抜きにして読んだ方が良いかと。
織田信長の姪であり、浅井長政とお市の方の娘であり、豊臣秀吉の側室である淀殿(茶々)の物語。 その強気な性格がゆえに、運命に翻弄されていく。 様々な女性の生き様が印象的でした。
戦国の時代を強く生き抜いた女性「茶々姫(淀どの)」。 7歳で父・祖父を亡くし、17歳で母お市の方も自刃。 20歳で秀吉の側室となり秀頼を産むが、秀吉の死をきっかけに時代の流れは変わり、家康に攻められ秀頼とともに幕を閉じた。悲運の人生を背負いながら、最後まで強くありつづけた淀どのの生涯を描いた作品。 ...続きを読む途中、秀頼が産まれてからの秀吉への過度な固執心には閉口するが・・・
”七光り将軍”と名高い京極高次が、何だかイケメン風に描かれている。 映画も観てみたいが宝塚スター主演とだけあって歌劇調が抜け切れてないとの酷評。 井上靖の原作だけで終わらせておくのが正解かと思い、手を出せずにいる。
井上靖は真田軍記と風林火山を読みましたが、淡々と人生を物語っていて、ストーリー全体の起伏は乏しいです。激しく時代や人が動いているけど、何だか静かなのです。淀どの日記もご多分に漏れず淡々と進行していきました。三姉妹の関係の変化、京極高次への気持ちの変化、血筋へのプライドの持ち様の変化が一応山場かな、と...続きを読む。映画もこんな淡々とした雰囲気なのかな・・・気になる。
偉そうなことを書くと「淀殿のイメージ、基本を押さえた本」という感じを受けました。 気が強くて誇り高い、けれど時の流れに乗れなかった、みたいな。 残っている書状などみると優しい女性の面もあったようですしそういうところも書いてほしかった。むしろそんな淀殿の本がないか探したいです。
映画「茶々」の原作。映画を先に見てこれを買いました。 こっちの茶々は映画とは違い、自分にプライドを持ち、嫉妬深く、しかし往生際の悪い感じがします。 悲劇的な最後をあえて細かく描写せず、読者の想像に任せて描いているあたり、井上靖という人の文才を改めて感じました。
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