あらすじ
大化改新後の激動する時代、万葉随一の才媛で“紫草のにほへる妹”とうたわれた額田女王をめぐる大ロマン。朝鮮半島への出兵、蝦夷征伐、壬申の乱……と古代国家形成のエネルギーがくろぐろと渦巻く中で、天智・天武両天皇から愛され、恋と動乱の渦中に生きた美しき宮廷歌人の劇的で華やかな生涯を、著者独自の史眼で綴り、古代人の心を探った詩情ゆたかな歴史小説。
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江戸時代や戦国時代を舞台とした時代ものを読むと、現代の日本と 陸続きだなぁと感じる部分もあるが、この小説の舞台になっている600年代とかになると、 全くどのような生活をしていたのか想像もできない。
でも作者の井上靖は素晴らしい。あたかもこの時代を生きてきたかのように書いている。素晴らしい作品です。
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私が日本史で一番興味を持っているのは飛鳥時代なのですが、思い入れの強さからこの時代と人物に持つイメージが作品と食い違うのが少し怖くて、この時代を扱う小説は今まで敬遠していました。そんな中この作品を読んだのですが、これが実に艶っぽい。作者の想像力が人物中心で注がれているおかげでしょうか、気持ちよく憧れの世界に浸れました。毅然とした額田女王、凛々しい中大兄皇子、勇ましい大海人皇子、この三人の微妙に変化する距離感がすごく良くて。脇を固める中臣鎌足の存在感も大きいです。人物の魅力が輝く上品で美しい物語でした。
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額田像が折口信夫説に寄っている(采女的)。あかねさすの解釈、これが一番しっくりくるなぁ。何はともあれ2012年度ベスト・キュンキュン小説。たまらん。
レビューに淡白な小説との意見が多いですが、私はコレとんでもなく情熱的だと思う。読みながら思わずムラムラしちゃったよ…。
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小学校6年の時、担任の先生が「この小説はいいで」と言っていたが、50年以上経ってようやく読んだ。小学生の時読んでも、わからなかったと思う(^^) なんちゅー先生や。
茜さす〜 の歌はあまりにも有名だが、二人の皇子を前にしてすごい歌詠むもんだな、と思っていたけど、その辺の緊迫した状況がとてもリアルに描かれていて、額田女王タダモノでない感強くした。
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★3.5だがおまけで。
多分史実に忠実ではないんだろうけど、作品として面白いし想像を掻き立てる。そして教養はあるに越したことはないと改めて痛感す。解釈の深みが格段に変わってくること疑いなし。
さて、中大兄が結構魅力的に描かれているような気がするのだけれども、どうも人望無きお方のように当方には見えてしまう、この作品を読んでもそう思う。
そういった人物に惹かれる主人公、微妙なズレを感じなくもなく。でもそれだけこの小説世界に浸って読んだとも言えるかと。
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飛鳥時代の万葉歌人、2人の天皇から愛された上になんか挑戦的な歌を詠んだすごい美人、というイメージの額田王。でもこの小説では、それだけではない額田王の姿を描いている。
2人の男性に翻弄されたり、翻弄したりする恋多き女というイメージ、あるいは、高貴な人に求められたら拒むことのできない身分制度の中の女性の悲哀、というのでもない。もちろん、拒むことができず、奪われ、譲られ、扱われ方に自己を通すことができない悲しみはあるけれど、巫女として絶対に譲れないところを通し続ける凛とした強さが美しかった。
王朝ロマン文学らしく美しい文体でするする読ませてとても楽しかった。
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大海人皇子押しの自分にとって、額田女王を横取り?した中大兄皇子は強欲そのものに写ってしまいますね
他にも嫌いな理由はありますけど…
ただ、この作品での三角関係は、何故か三人ともいじらしく感じられていいかな
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久しぶりに噛み応えのある小説を読んだ感じがする。
どちらかというと歴史とか、いわゆる社会科の内容は得意ではない。大化の改新も壬申の乱も、ギリギリ試験のための勉強をしたくらいで、とうの昔に大概のことは忘れてしまってる。井上靖さんの作品も『しろばんば』辺りは読んだけど、この作品や『天平の甍』や『敦煌』は歴史への苦手意識があって読んでなかった。『敦煌』は西田敏行さんが出た映画は見たけど・・。
そういえば、この作品も読んでいて、『敦煌』で描かれてたような壮大な景色を連想した。映画を見ているような、鮮やかに場面が展開される感じがした。
万葉集は好きな(興味のある)部分とか関連本を読んだりしてるんで、その部分の人物関係くらいは頭に入ってるけど、その人たちがどういう風にその時代を構成していたかは、実はそこまで気にしていなかった。まあ、詩歌の鑑賞なんて、背景を無視して純粋にその歌に向かい合って味わうこともできるから。
それが今回、額田王、大海人皇子だけではなく、別個に鑑賞していた有間皇子についても、さまざまに入り乱れる人間模様を加味するとこんな風に読めるんだと、正直、今まで読まなかったことをちょっと後悔した。
ちなみに、今回はなるべく丁寧に読んだ。何しろ、人物名だけでも振り仮名が外れると読めなくなる人が多いんで、メモ用紙を傍において、人物名や時代、地名等、気になったことは書きとめた。なじみのない言葉は、すぐに辞書を引き、確認した。現代ではあまり使われなくて、辞書にはちゃんと載っている言葉がこんなにあるかと驚いた。
そうやって言葉の一つ一つを紐解いたことも、今回、じっくり楽しめた要因にもなったかもしれない。
いや、でも今だから、ここまでじっくり読み込めた部分もあるんじゃないかという気もしている。
去年から、私の苦手分野だった政治について自分なりに目を向けるようになってきて、ある時は憤り、ある時は胸を熱くし、そして最近は胸を痛めたりも・・。
そういう気持ちをいろいろ味わってきたおかげで、この小説に描かれている、遠い1300年も昔のお話に、より感情移入できたこともあるんじゃないかと。もしかしたら、こういうところから逆に学べることもあるんじゃないかとも思った。
そういう意味で、もっともっと今の人に読まれていい本だと思う。
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巫女として神の声を聞き、神の心を歌う額田女王。大海人皇子との間に十市皇女をもうけてからも、神の声を聞くためにその心は誰にも渡すまいと誓っているが、有間皇子や中大兄皇子への想いは結構人間的だと思う。神の心を歌うとしながら、いつしか中大兄皇子の心を歌うことに喜びを見出していくあたりも、「あなたの心は私だけが知っている」「あなただけは私の言おうとしていることわかるでしょ」的な気持ち、それを喜ぶ気持ちも、結局中大兄皇子に恋する人間の女性の気持ちに他ならない。神の嫁としての巫女的性格は、人に恋する以前の、男と関係を持つ前の乙女にこそふさわしい。そんな巫女のあり方は折口を彷彿とさせる。しかし、ある意味こじらせた?女心の書き方うまい。
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難波遷都、半島出兵と白村江の会戦、その後の天智天皇の統治から壬申の乱への歴史の流れの中で、中大兄・大海人両皇子と額田女王との関係性や額田から十市皇女への想いや行動の移り変わりが非常に興味深かった。
額田なりの「神に仕える女としての誇り」を守るために、心を与えないとして振る舞ったことで、他の両皇子の妃からは独立した、自由人としての彼女の形ができたのかなぁと思う反面、母親になりきれなかった面もあったのでは?という感じ。そういう意味では、最終盤までは女としての役割や振る舞いが多かったかなと思います。最終盤、天智天皇崩御から、壬申の乱に至り、ここで初めて女としてよりも母親としての役割が前面に出て、神に仕える女から人間の女になれたのかな。
この時代をモチーフにした話を読むのは初めてでしたが、なかなか面白かったです。
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万葉の頃の和歌は何とも美しい。
『源氏物語』とかでもそうですが、たとえ大きな声では言えない関係の恋であったとしても、和歌のやり取りだけみていたら綺麗だと感じてしまいます。
でも現実は…笑
なかなかのドロドロ具合というギャップがまた面白かったりして。
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前半、額田女王がいい女すぎてほんとにくらくらする|д゚)でも神の声を聴く特殊な女として、プライドを持っており、ただの女になることを頑なに拒んだばっかりに、幸せを遠ざけてしまう。ま、妃として迎えられても同じかな。もちろん創作なんだけど、当時の宮廷の文化や雰囲気がいきいきと描かれていて、和歌を手掛かりに描かれる人々の心情は千年以上経っても色あせず、万葉集ちゃんと読んでみたくなった。紫野行き 標野行き…からの大海人皇子とのやりとりが好きだ。あと、こんな昔から途絶えることもなく続いてる日本の皇室はやっぱすごい。
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今回のバングラデシュの旅に持参した一冊。全くの異世界のベンガルで、日本の古代史を感じるのはなかなか乙であった。
去年の春節の旅行で白村江にいったことがあったので、想像しながら読めた。もし唐が新羅と一緒に百済を駆逐したタイミングで日本侵攻してきたらどうだったのであろうか。今の日本はないのかも。
お話は額田の歌を中心に進められる。二人の王子との恋愛模様を描く。壬申の乱のきっかけが額田をめぐってのお話であれば相当面白い。歴史は教科書だけで勉強するものではないのだと、痛感した一冊。おすすめ。
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古代の英雄天智、天武天皇に愛された、万葉随一の才媛額田女王。大化改新後の朝鮮半島出兵、蝦夷征伐、壬申の乱が舞台。本作品の特徴は激動の時代を、万葉集に綴られている有馬皇子、斉明天皇、中大兄皇子、大海人皇子そして額田大王の和歌を通じて、移ろいやすい感情とともに紐解く事。また、和歌を効果的に活用し独自の視点で解釈を加える事で、物語に彩を与える。
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比較的読みやすい歴史小説。資料も限られる中、飛鳥王朝の様子が脳内で想像しやすく描かれていて、井上さんの文才に改めて感服しました。一般的な額田王&大海人というカップリングに決めつけていないところも印象的。
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額田女王を挟んで描かれる、
中大兄皇子と大海人皇子の兄弟が大変魅力的で、
二人に非常に興味を持ちました。
中大兄皇子は、一番の権力者で、ときに大胆な振る舞いもしますが、
一方で孤独で、己を抑制していて冷静です。
とくに終盤、大海人皇子に対する感情を、
理性でなんとか抑えているように取れる場面があって、
私はその場面が好きでした。
非常に惚れ惚れしました。格好いい皇子です。
「茜さす紫野行きしめ野行き~」という歌が、
小説での人間関係を背景に語られるとびっくりするくらい面白かったです。
終盤、兄弟の間を取り持っていた、中臣鎌足が世を去ってしまい、
二人が静かにゆっくりと対立していく様子が、
距離をおいて描かれているのが好きでした。
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「野守は見ずや 君が袖振る」の相聞歌から、額田という女性は、もっとビッチなイメージがあったけど(失礼w)、井上靖が、歴史に翻弄されながら、その中で、当時珍しいであろう「自己」を持ち続けている女性として描いているところが面白い。大海人皇子の子を宿しても「神の子を宿しました」と言って大海人へなびかぬ姿、日本を牛耳る中大兄皇子を火/
大海人皇子を水と天秤にかけるように評する様など、なにか痛快w
中大兄皇子らの、大化の改新後の混乱した政局と待ち構える国難への対応の克明な描写、万葉集で詠まれている歌への井上靖流の解釈とそれに合わせた当時の政治状況の組み合わせ等、大いに読み応えあり。
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額田女王は、万葉集の歌人であり巫女でもあり、そして中大兄皇子と大海人皇子に愛された女性です。
有名な「茜さす~」がどんな背景でうたわれたのかが知りたいな、という気持ちで読み始めたのですが、額田を中心に置きながら、この頃の頻繁な遷都の意味や、戦までの流れが分かるように書かれており、期待以上に収穫の多い本でした。
特に、額田の登場場面と、百済を再興するために唐との戦を覚悟しながら船が出航する場面は鳥肌ものでした!
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古代に関する歴史小説が珍しく購入。教科書では知る事のできない、当時の国際情勢の中で苦悩する男達と才女額田女王との愛。情景が目に浮かぶよう。面白かった。
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流石井上靖だけあって特に抑揚のないストーリーではあるのに飽きずに読める。
だけど…額田女王のキャラ設定がどうにも好きになれない。十市皇女について周囲には「大海人ではなく梅の精の子」と頑なに言い張るくせに、侍女にだけ「この子は誰に似てると思う?」と迫って、侍女が畏れをなして黙っていると「気のちいさいひとね」と突き放すくだりは人が悪すぎる。近江に都移りしてからも、鵜野讃良(後の持統帝)に対して「あのお方が?[私より]若くて美しい?」と自信たっぷりに陰口を叩くあたりも、伝わっている歌に垣間見える額田の人柄とは大きく乖離しているようにしか感じられなかった。これなら澤田瞳子の『恋ふらむ鳥は』での額田の方が人物像としてまだ魅力的だった。
井上靖に川端康成並みの女心理解術を求める方が酷なのかもしれないけれど…だから井上靖は紀行文の方が読んでで面白いんですね。
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井上靖の描く額田女王は神秘的で、妖艶で、よく分かんないけどなんだか読んでてどきどきする女性だった。
人の心を持たないようにしているから、逆に色気が出るのかな。でも、神に仕えるために天皇の死の悲しみさえも無いことにしないといけないのはすごくつらいことだよ。
最後に「大津京に長く身につけたものを置いてきた」表現がすごく良かった。結局、額田はどっちのが幸せだったんだろう。
歴史小説だけど、何回も同じこと繰り返し書いてくれるから分かりやすかった!靖ありがとう!
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茜さす紫野行きしめ野行き野守は見ずや君が袖振る
額田女王。
紫草のにほへる妹を憎くあらば人妻ゆゑに恋ひむやも 大海人皇子。
大海人皇子とのあいだに、十市皇女を出生後、兄である中大兄皇子に求愛された額田女王。
古代の狂わしい三人の愛の形が、恋歌として古代へと僕らを誘う。
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最近、古墳飛鳥時代にこってる。この本は中大兄皇子、大海人皇子、中臣鎌足が活躍の時代。
遷都は大変やったやろうなぁ。大和や難波宮や大津の宮、さらに百済に戦いに行く足場に九州まで移動したり。
この本で描かれる額田女王は魅力的。自立した女性になってる。
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大化の改新、白村江、壬辰の乱という謎に満ちた古代史の最後を飾った、古代史に燦然と輝く歌人額田王と二人の天皇の物語。茜指す紫野行き標野行き野守は見ずや君が袖振る、を歌い出すまでの前段の話作りは秀逸。
井上靖の長編読む度に思うんだけど、長さ半分に出来るよね。何なら敦煌くらい短くてもいい。
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井上靖を読むなんて何年ぶり?
少女の頃、「茜さすむらさきの……」「むらさきの匂へる……」
大海人皇子との恋歌に憧れました。
あれから何十年……
歴史的にも文学的にも、研究は進み、
おそらく解釈も変わってきているでしょう……
そんな昔少女のせいか、井上靖の描く
額田と言う女性は、私のイメージにピッタリ。
だいたい、井上靖は私の頃のビッグネーム。
確か、日本ペンクラブの会長だった頃のスピーチが
国語の教科書に載ってたいたはず。
久々に、きちんとした(?)小説を堪能した感があります。
ただ小説の勢いとしては、後半が失速するというか……
物語としてはダダダ~っと話が進むのですが
味わいとしては欠けるような気がします。
壬申の乱前夜から額田がどう対応していたのか
そこが読みたいところです。
おそらく史実にない分、井上は作家の想像だけで
物語を膨らますのを潔しとしなかったのか、
そんな風に想っています。
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飛鳥時代の万葉歌人として、ひときわ注目される額田女王。それは、天武と天智の二人に寵を受けた事による関係や、歌から見える巫女的性質論によるもの、何より委細が謎めいている面も注目される要素だと思われる。
とかくロマンチックに語られる額田ですが、この小説ではひとりの女の生き方としての彼女を描ききったのではないでしょうか。
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大化の改新後の中大兄皇子、大海人皇子、中臣鎌足そして額田女王がメインキャスト。大海人皇子、額田女王なんて全然知らなかった。藤原氏は中臣鎌足から始まるとのことで、私の上司は鎌足の末裔なんだと再認識。
朝鮮が百済、高句麗、新羅の時代で、中国は唐になる。その時代に百済に派兵するなんて。。。習ったけ???このあたりが一番面白かった。
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私が手にとった飛鳥時代もの歴史小説第一号。
伝説の宮廷歌人:額田王の生涯を描いた、壮大な物語です。
私は、額田王の出生地と言われている土地で幼少期を過ごしました。
ちなみに今の実家は天智帝御陵の目と鼻の先。
当時はあまり意識していませんでしたが、飛鳥やそれ以前の遺跡に囲まれ、親しみ、そんな丘や山で遊びました。
年に一度の祭りでも、額田王や大海人皇子等のコスプレ…ならぬ時代行列が町を闊歩します。
そんな土地柄だったせいか、長じてから歴史、ことに飛鳥時代に深く興味をいだき始め、この本も、大好きな井上靖氏の著作と言う事もあり自然と手に取りました。
………が。
どうもしっくりこない。
それが正直な感想でした。
この本の額田王と、私の中の額田王のイメージとがかけ離れていた、と言いましょうか…。
この本に登場する額田王は、かなり神秘的です。スピリチュアルです。
この世の生身の女性と言うよりは、触ってはならない美しい幻のような印象をうけます。
巫女と言う設定なので仕方がないのかもしれませんが。
私は人間臭い、艶のある歌を読む情熱的な一人の女人:額田王が好きなのかも知れません。