吉村萬壱のレビュー一覧
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ネタバレ多和田葉子先生の『献灯使』と同じで、震災後の日本を彷彿とさせるような舞台設定。
明確に「ここが怖い」みたいなポイントがあるわけではないけど、最初からうっすらと漂う不気味な雰囲気が漂っていた。
こういう寓話ぽさがある文体、話の進み方をする物語は得意ではなくて読むのに少し時間がかかることが多かったけれど、終盤どんどん不穏さが増していく物語にページをめくる手が止まらなかった。
ディストピア小説だけどリアリティもあり、描かれている世界が全然大袈裟にも思えなかった。こういう大きな災害などで大人数が同じ感情を共有するような出来事があった時、「団結」を全面に打ち出されると弱さを出すのが難しくなったり、逆にお -
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好意とか感謝の気持ちとか、言えるときに言って、伝えられるときに伝えた方が良いと改めて思った。
奈緒美との最後、何の会話もできなかったのが切ない。思い出や記憶の中の奈緒美としか会話というものができない最後だったのは寂しい。
最初はグロい表現に読めなくなりそうだったけど、主人公の心の変化が起きて、奈緒美に対して愛情を確認したあたりから苦じゃなく読み進められるようになった。
人間の下の世話ですら大変なのに、巨大化した妻の排泄物の処理なんて無理‥。珍しい愛の形を読んだ気がする‥。
これ‥映像化‥‥できないよねぇ〜。
巨大化した奈緒美を映像で見たいなぁ。 -
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植物園のある町を舞台に、世間が決めた型からどうしようもなくはみ出してしまう人々の日常を描く連作短編集。
いやいや…連なるな連なるな!!
歪んだ性癖を持つ男、裸踊りをする老夫婦、公開生活する男、世界の速さに取り残される女、精神病患者を演じる会員制倶楽部、ドM宗教家。
そして表題作である最後の章で混ぜるな危険が大集結するのである。悍ましや。
世間のスピードにはついていけなかったのに狂うスピードでは勝っていた女が「また追い抜かれました」とつぶやいたのには笑った。それほどの疾走感のある狂い方が描かれている。爽快。
圧倒的自由を求めて狂いたくなる、そんな作品であった。 -
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著者は芥川賞作家の吉村萬壱さん。震災から復興した町の物語、ディストピア小説等の触れ込みがあり、怖いもの見たさで手にしました。
物語は、主人公の恭子が小5の頃を回想する形で始まります。舞台はB県海塚市。長い避難生活から戻ってきた人々は、〝結び合い〟で繋がった人たちです。
ところが、何ということでしょう! 少しずつ不穏な様子が描かれていきます。同級生がぽろぽろ死に、葬儀や学校での授業での異様な光景、海塚讃歌、食の安心・安全の同調圧力等々、不穏を通り越して、宗教がかった怖さと危うさを感じます。盲信する人にとっては理想郷、外から見たら暗黒社会です。
因みに、「ボラード」とは、船を繋ぎとめる -
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最終章はまるで鈍器で頭を殴られたような衝撃があった。全編を通して作中にずっと漂っていた不気味さ、海塚市の気味の悪さがこの最終章で一気に昇華されている。見事な結末。
こんなに最後の一行で打ちのめされた小説は他に記憶にない。
主人公の小学五年生の恭子の目を通して描かれた海塚市民の姿がとにかく不気味。得体の知れない悍ましさが漂っている。大人の欺瞞に疑問を持ち斜に構えてしまう子供ならではの感性の裏に、「本当にこの街の人々はどこかおかしい」と思わせる確かな淡々とした描写。直接的なビッグブラザーが存在しない、よりグロテスクな日本的管理社会。“世間”という言葉の持つ異様性、異常性。
出版時期から間違いな -
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読書開始日:2022年2月6日
読書終了日:2022年2月7日
所感
最悪の読後。
引力がすごい。
ずっと気持ち悪いところに強制されているよう。
いつもの日々をこれほど愛おしく感じたのは久々かもしれない。
はやく日常を営みたい。
清潔で正常な愛情の中にいたい。
水面に出て呼吸をしたい。
そう感じる。
堕ちることをこれほどまでにリアルに書いた作品を読んだのは初めて。
この一文が一番怖かった。
決して終わることがないだろうと思えるような、さめざめときた泣き方だった
すでにサチコの顔が思い出せなかった
それがどんな毒であっても、ちょっとだけ舐めてみたい
飢え、かつえ
闖入者
われわれはその「はい」