吉村萬壱のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
この作者の書いた文章を読んでいると、自分が一週間以上風呂に入っていないような、垢と泥で皮膚がべたべたとしていて頭からは皮脂の臭いがいるような感覚を味わうことができて、シャワーを浴びたくなる。
どの作品も面白いから皆に薦めたいけれど、村八分にあうかもしれないので職場の人とかには言えない。
表題作の『ヤイトスエッド』は、これまで読んできた吉村萬壱作品とは毛色が違って面白かった。少し、町田康を思わせる。
『B39-Ⅱ』のラストが衝撃的だったが、『ボラード病』と通じるところがある。
「坂下宙ぅ吉」を描いた作品があるそうだが、単行本は絶版になっており、文庫化もされていないとのこと。残念。 -
Posted by ブクログ
夫の浮気を知った妻は身体が巨大化していった。絶望感と罪悪感に苛まれながら、夫は異形のものと化していく妻を世間の目から隠して懸命に介護する。しかし、大量の食料を必要とし、大量の排泄を続ける妻の存在はいつしか隠しきれなくなり、夫はひとつの決断を迫られることに。
すごい内容。衝撃的。
しかも便とか吐瀉物とかの表現が山ほど出てくる。半分以上それだと言ってもいい。
けれどなぜか綺麗というか崇高さがあるというか…
夫は浮気はするし狡猾さもあるしでまっすぐに愛することは到底できないキャラクターなのに、ある種の純粋さを捨てきれないところが嫌いになれない。
「失ってみて気づくこと」とはよく言うけれど、この物 -
Posted by ブクログ
ネタバレ清潔と不潔。
浄と不浄。
きれいはきたない、きたないはきれい。
下種は聖。
これらはつまり極端は対極に転じ得るということだ。
(中島らもと通ずると思うが、ふたりを並べた論は見たことがない。)
男は女を犯すとき、女になって男に犯されたいと夢想する。
女はマゾヒスティックな殉教を夢見る。
すなわち男とは別文脈で受け容れる(ように見える)。
男も女も、対する女と男に、過剰な願望を押し付けて、それが裏切られては怒り失望するしかないのだ。
「B39」と「B39-Ⅱ」の関係は連作の極北。
大げさではなく世界が反転するんだもの。びっくりした。
ところでかつて「ハリガネムシ」でウンコを握り潰す場面を読ん -
Posted by ブクログ
「グロ」と「夫婦愛」の融合。
家畜人ヤプー以来の奇作です。
内容は、夫の不倫を知った妻が突如、5mになるまで巨大化。
日常生活もままならなくなる中、懺悔と愛情の入り混じった心境で介護し続ける夫の戦いの物語です。
戦いといっても、大半が妻の食事や排泄処理。
排泄の描写は、スカトロファンにはたまらないのではないでしょうか?
一方で得体の知れない激痛に苦しみ、言葉もままならぬなくなっていく妻を見捨てず、最後まで添い遂げる様が夫婦の純愛小説として評価される所以でしょう。
奇天烈な設定ですが、夫婦という裏も表もある一筋縄でいかない関係を考えると、意外とまともなテーマなのかな?と思いました。 -
Posted by ブクログ
ここはB県海塚。新鮮な魚や野菜が手に入るこの町で、町民は心を一つに支え合いながら生活し、子ども達は自主性を重んじる学校に通いのびのびと育つ。同級生の急死が若干多い点はさて置き、理想的な共同体から外れまいと必死に努力する主人公の少女だがー。モダンディストピア小説と聞き、真っ先に手に取った本作。ポスト3.11の日本を痛烈に揶揄した、薄いながらもインパクト大の一冊でした。最初から最後まで不穏な空気満載で、先が気になり気になりページを繰る手が止まらない。明らかに子どもがナレーションしている分、『向日葵の咲かない夏』のような「信頼できない語り手」のトリックには引っ掛からないぞ~!と構えていたものの、ラス