吉村萬壱のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
創元社 吉村萬壱 「 哲学の蠅 」
自伝的エッセイ。前半は幼少期の虐待や性癖などの告白、後半は作家活動から到達した文学論や人間観。圧倒的な暴力や排除に対して、文学の役割は何かを導き出している
母への複雑な感情は理解困難。母子一体性が強すぎて、母から受ける虐待すら、著者にとっては、自由と保護の空間であった ことを示しているようにも読める
最後の文「やがてスカスカの抜殻と化して風に吹かれて粉になった」は肉体の一部である母を失い、抜殻化したことを意味すると思う
タイトルの「哲学」は 複雑な世界を意味し、「蠅」は 未来を変えられないことを知りつつ、母や社会に抵抗している弱者の抵抗 -
Posted by ブクログ
このところ4冊続けて吉村萬壱先生の本を読んだ。
分冊のものを除くと、同じ作家の本をこんな風に読んだのは初めてで、それだけ惹かれるものがあったということだと思う。
この小説は、途中までは老人介護についての隠喩なのかなと的外れなことを考えながら読んでいた。少し前に読んだ「うんこ文学」の影響もあった。だが、途中から純愛がテーマだったことに気づく。
純愛と言っても、もちろん素直なものではなく、捻くれて、我が儘で、身勝手な主人公と、その主人公のために?変化を続ける妻への純愛であった。
グロテスクに変化を遂げる妻も健気で愛らしく感じる。
ただ、果たしてそれは愛だったのか、世間体を守るという身勝手さ -
Posted by ブクログ
自伝的エッセイ、と何処かに紹介されていた。
本当に「自伝」なんだろうか。
関連して、太宰治さんの「恥」を思い出した。
だらしない生活を送っている主人公をよく書く「私小説家」を訪ねていく、ファンの女性の話である。
訪ねてみれぼ、シュッとした作家先生が出てくるという。
私小説。考えてみれば、他の小説とどう違うのか分からないもの。文章にした瞬間、多分それは現実と同一ということはありえないし、どのような虚構を描こうと、そこに作者が存在しないことはない。
全てグラデーションでしかない、はずだと思う。
しかし、この本に書かれている内容は、吉村萬壱さんの作品のどこかで見かけた登場人物に見えることは間違 -
Posted by ブクログ
ネタバレこれは和製バタフライエフェクトや!
「タイムリープ物を吉村萬壱が書いたらこうなる」っていうのが面白くて、吉村萬壱作品を初めて読む人でも楽しめるのかはわからん。
宙ぅ吉ファンにも嬉しい一冊。
序盤、主人公の息子への冷たさにヘイトが募っていて、「主人公不幸になれ」って思いながら読んでたけども他の人も巻き添えで不幸になるのは辛い。
ただ、そこで日和ってハッピーエンドなんかになっていたらもう吉村萬壱作品じゃないわな。
自分としては
臣女<回遊人<ボラード病
という位置付けになるくらい面白かった。
寝る前に読んじゃいけない類の本なのに夜中に目覚めて読み進めてしまって寝付けなくなってしまった。明日の生 -
Posted by ブクログ
ネタバレ純文学畑の人がタイムリープもの…?と思いながら読んだけど、主人公がぐじぐじとしてて、なんべんやり直してもやり直したいことはなにもやり直せないのは期待通り。
こんなに自分を省みる時間があったのに、結局オリジナル人生でないときちんと反省も思いやることもできないし、浩はそこにしかおらんしね…
いやほんとに10年前は子どもが存在してないからね。自分ならそこでまず絶望してしまってどうしようもなくなると思うし、読みよっても浩がおらんのがつらくてもーーーそればっかり気がかりやった。
同じ人と結婚したとしても同じ子どもが産まれる確証は全くないからねこの主人公の回遊人生…
あ!あと関係ないけど、このお話は坂