吉村萬壱のレビュー一覧

  • 哲学の蠅

    Posted by ブクログ




    創元社 吉村萬壱 「 哲学の蠅 」

    自伝的エッセイ。前半は幼少期の虐待や性癖などの告白、後半は作家活動から到達した文学論や人間観。圧倒的な暴力や排除に対して、文学の役割は何かを導き出している


    母への複雑な感情は理解困難。母子一体性が強すぎて、母から受ける虐待すら、著者にとっては、自由と保護の空間であった ことを示しているようにも読める


    最後の文「やがてスカスカの抜殻と化して風に吹かれて粉になった」は肉体の一部である母を失い、抜殻化したことを意味すると思う



    タイトルの「哲学」は 複雑な世界を意味し、「蠅」は 未来を変えられないことを知りつつ、母や社会に抵抗している弱者の抵抗

    0
    2024年01月29日
  • 死者にこそふさわしいその場所

    Posted by ブクログ

    最後の、表題の話が凄かった。
    読んでいてずっと不思議な気持ちになる。現実味がないからこそ彼らの世界に引き込まれた。
    「どうしようもない人たちね」が頭から離れなかった。正に。

    0
    2023年12月17日
  • ボラード病

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    怖い。逃げる場所があるようでないのが本当に怖かった。同調圧力を感じずに過ごしたら、気持ちの良い達成感とかあるんだろう。それに乗っかって生きていけたら幸せに死ねるのかもと思う。でも本当に怖い話。

    0
    2023年12月03日
  • 前世は兎

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    海外SFを数冊読んだ後に、好きな日本の作家を読んだので、ものすごく、ひじょーーーーーに、読みやすいと思ってしまったんやけど吉村萬壱なんやけどめちゃくちゃ読みやすいよ。
    インフルエンザで篭ってたから二日で読み終わってしまった。面白かった。
    短編集やけど全体的にディストピア感のある世界で、ボラード病とか、表題作なんかは初期の頃の感じを思い出した。
    ヌッセンのやつと、椎間板ヘルニアでうんこ漏らす話が特に面白かったな。わしは首をヘルニアでやったことがあって、しかも夫と同時期にごきっとなって、子どもも小さかったから苦しかったなー。

    0
    2023年12月03日
  • ボラード病

    Posted by ブクログ

    これは本当に怖かった。
    ちょうど震災の数年後くらいに読んだのもあって、排他的な街の雰囲気や、異物を良しとしない不穏な感じが常にまとわりついてくる感じ。

    大人になった今、もう一回読んでみたい。

    0
    2023年09月06日
  • 哲学の蠅

    Posted by ブクログ

    なんだか、変だけどすごいものを読んだように感じる。時たまキモい表現が出てくるから初めのうちは嫌だったのだが、最後はもうなんともなく、いやなんともなくはないけれど、それほどでもなくなっているのが…
    でも、完全にこの人の思いを理解する事はできないけれど、わからないではないこととかむしろ強く共感してしまうところとか、多々あって、面白い時間だった。

    0
    2023年09月05日
  • 臣女(おみおんな)

    Posted by ブクログ

    このところ4冊続けて吉村萬壱先生の本を読んだ。

    分冊のものを除くと、同じ作家の本をこんな風に読んだのは初めてで、それだけ惹かれるものがあったということだと思う。

    この小説は、途中までは老人介護についての隠喩なのかなと的外れなことを考えながら読んでいた。少し前に読んだ「うんこ文学」の影響もあった。だが、途中から純愛がテーマだったことに気づく。

    純愛と言っても、もちろん素直なものではなく、捻くれて、我が儘で、身勝手な主人公と、その主人公のために?変化を続ける妻への純愛であった。
    グロテスクに変化を遂げる妻も健気で愛らしく感じる。

    ただ、果たしてそれは愛だったのか、世間体を守るという身勝手さ

    0
    2023年08月20日
  • 臣女(おみおんな)

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    愛、その中に自己愛、エゴ、、
    それが愛なのか
    愛、は時々間違える
    いつも、かもしれない


    異様な描写にも関わらず、彼女が可愛らしく、時々そう感じる。
    お互い、その異様な人生を放棄することはできた。しかし彼らは夫婦生活を選び続けた。
    「頼りになる人」
    主人公にとって、介護され悶えながら生き続ける彼女はきっと、人生の頼りだった。

    0
    2023年02月28日
  • ひび割れた日常――人類学・文学・美学から考える

    Posted by ブクログ

    リレーエッセイという手法、面白いな。手紙のやりとりをこういう形でやってみたいかも。
    御三方それぞれの視点が交差する様、少しずつズレて発展していく様など非常に楽しい。

    0
    2023年01月20日
  • ボラード病

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    ーー本当に病気なのはあなた方の方です。せいぜいそうやって、どこまでも仮想現実を生きていけばいいんだ。(p.182)

    世界が狂う時、正気でいることは、狂気に囚われていることと見做される。
    使い古されたモチーフかもしれないけれど、震災後の風景を念頭に読むと、また違った響きを帯びてくる。
    村田沙耶香さんの『消滅世界』や、今村夏子さんの『こちら、あみ子』に通じる読後感だった。

    0
    2022年10月26日
  • 哲学の蠅

    Posted by ブクログ

    作家によるエッセイだが、小説かと思うような場面もあった。
    考えてみると、事実とそうじゃないものの差って曖昧なんだな。

    0
    2022年06月04日
  • 哲学の蠅

    Posted by ブクログ

    自伝的エッセイ、と何処かに紹介されていた。
    本当に「自伝」なんだろうか。

    関連して、太宰治さんの「恥」を思い出した。
    だらしない生活を送っている主人公をよく書く「私小説家」を訪ねていく、ファンの女性の話である。
    訪ねてみれぼ、シュッとした作家先生が出てくるという。

    私小説。考えてみれば、他の小説とどう違うのか分からないもの。文章にした瞬間、多分それは現実と同一ということはありえないし、どのような虚構を描こうと、そこに作者が存在しないことはない。
    全てグラデーションでしかない、はずだと思う。

    しかし、この本に書かれている内容は、吉村萬壱さんの作品のどこかで見かけた登場人物に見えることは間違

    0
    2021年12月24日
  • 回遊人

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    これは和製バタフライエフェクトや!
    「タイムリープ物を吉村萬壱が書いたらこうなる」っていうのが面白くて、吉村萬壱作品を初めて読む人でも楽しめるのかはわからん。
    宙ぅ吉ファンにも嬉しい一冊。

    序盤、主人公の息子への冷たさにヘイトが募っていて、「主人公不幸になれ」って思いながら読んでたけども他の人も巻き添えで不幸になるのは辛い。
    ただ、そこで日和ってハッピーエンドなんかになっていたらもう吉村萬壱作品じゃないわな。

    自分としては
    臣女<回遊人<ボラード病
    という位置付けになるくらい面白かった。
    寝る前に読んじゃいけない類の本なのに夜中に目覚めて読み進めてしまって寝付けなくなってしまった。明日の生

    0
    2021年12月08日
  • 臣女(おみおんな)

    Posted by ブクログ

    究極の不条理小説。

    大量に食べては排泄を繰り返す巨大化した妻ナオミ。
    彼女への贖罪と愛とで介護を続ける夫、石井。

    なにしろ退廃的でグロテスク。
    あり得ない設定のくせにリアルすぎる描写。臭いの記憶をすりこむようにリアルすぎる描写。

    隣人、同僚教師、母。
    干渉と絶望に揺れ、愛と憎悪に揺れる。

    こんなに強烈な恋愛小説が描けるのは吉村先生以外にはいないだろうな。
    ほんと苦しすぎる。

    ラスト。
    ナオミの愛がわかる回想シーンで泣きそうになる。
    タイトルも、いい。

    0
    2021年11月18日
  • 死者にこそふさわしいその場所

    Posted by ブクログ

    『折口山駅付近を舞台に繰り広げられる狂乱』

    一癖も二癖もある登場人物が繰り広げる狂乱を描いた連作短編集。最後には全員集合して… 随所にチャバネゴキブリが登場するなど、好き嫌いは大きく分かれそうな作品でした。

    0
    2021年11月16日
  • 回遊人

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    純文学畑の人がタイムリープもの…?と思いながら読んだけど、主人公がぐじぐじとしてて、なんべんやり直してもやり直したいことはなにもやり直せないのは期待通り。
    こんなに自分を省みる時間があったのに、結局オリジナル人生でないときちんと反省も思いやることもできないし、浩はそこにしかおらんしね…

    いやほんとに10年前は子どもが存在してないからね。自分ならそこでまず絶望してしまってどうしようもなくなると思うし、読みよっても浩がおらんのがつらくてもーーーそればっかり気がかりやった。
    同じ人と結婚したとしても同じ子どもが産まれる確証は全くないからねこの主人公の回遊人生…

    あ!あと関係ないけど、このお話は坂

    0
    2021年10月28日
  • ひび割れた日常――人類学・文学・美学から考える

    Posted by ブクログ

    人類学者・小説家・美学者によるリレーエッセイ。コロナウィルスをきっかけとして、人間と自然の関係を考える。オンライン授業の広がりで、仕事を持った社会人学生が、必須科目を受講しやすくなったという話を聞いたことがある。視点が違うとマイナスもプラスに転じる。振り返ってみると、コロナウィルス感染の蔓延に脅威は感じても、ウィルスそのものに怒りはない。結局、苛立つ原因は人間側の言動に対してだなと改めて思う。

    0
    2021年09月23日
  • 死者にこそふさわしいその場所

    Posted by ブクログ

    滑稽で奇妙な人間劇。理屈にまみれた日常なんてくそくらえ。これはフィクションなのか歪んだ現実なのか。
    わたしたちはみな狂気のすぐ隣でいきているんだ。

    0
    2021年09月05日
  • ひび割れた日常――人類学・文学・美学から考える

    Posted by ブクログ

    人類学、文学、美学それぞの観点が交錯するリレーエッセイ。
    「三人寄れば文殊の~」というが、同じ災厄を経験した世界中の人々から、コロナと共存する智恵はきっと出てくるはず。

    0
    2021年08月31日
  • ボラード病

    Posted by ブクログ

    三角をみて、みんなが丸というとだんだん丸になっていく、と書かれていた言葉が印象的。

    同調とか洗脳って自分の考えがなく生きていけるから楽だし、周りからの圧力を感じず生きていけるので、
    ある意味究極の幸せなのかもしれない。

    まぁ気づいた時の喪失感とか虚無感がすごいだろうから、そうはなりたくない。

    だけど実は自分も今同調している状態なのかもなぁ…
    と思える怖さがあった

    0
    2021年08月18日