吉村萬壱のレビュー一覧
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夫の浮気を知り、絶望となった妻にもたらされた変化は巨大化だった。
妻の身長は4メートルを超え、服も着れない、外出もできない。ただ、大量の食料を食べ、大量の排泄をするだけ。そんな妻を眼の前にした夫は苦悩と嫌悪、愛情を投げかけながら、妻に尽くし続ける。
カフカの「変身」のように理由もなく異形になってしまった人間に対しての周囲の反応を描き、人間の残酷さや身勝手さ、愛しさを浮かび上がらせるフィクション。
自らの社会的地位を放棄し、排泄物まみれになった妻を愛することができるのか。読んでいるだけで臭ってきそうな汚物の描写は凄まじい。だけど、似たようなことは現実でも「介護」という名で行われている。 -
Posted by ブクログ
主人公・恭子の回想で物語が進みます。小学5年生の頃の様子を語っています。
恭子の住むB県海塚市は過去に何らかの災害があり、住民は数年間避難生活を強いられていたらしい。復興が進みやっと故郷に戻ってこられたからか、住民たちの海塚市への想いや住民同士の結びつきは極端な程強い。
冒頭からずっと何かがおかしくて、母親とのやり取りや学校での様子もずっとひっかかる。
だんだんこの海塚という町の異様さや、何らかの病気が蔓延している雰囲気が感じられてきます。
結局、誰が正しくて誰が間違ってるのか、具体的に何が起こったのかは想像するしかないのですが、所々で「絆」「放射能」を連想してしまう…ずっと怖い話でした。
読 -
Posted by ブクログ
人に勧められねぇ〜!!!!!
強くそう思います。エロとグロ。三作の短編、そのどれもが地球の末期を舞台にして描かれた物語です。突然に、準備も出来ず殺戮と混沌が覆い被さる世界。そこに暮らす人間は余りにも無力です。殺され、犯され、引き摺り出される。もはや強いエンタメ性すら感じるこれらの物語を読むうちに、脅かされることの少ない自分達の日常の輪郭をぞりぞりとなぞられる様な、不愉快にも似た感覚を胸の中で感じます。ここまで圧倒的な退廃の世界では確かに見ることしか出来ません。いや、見ることすら…。『クチュクチュバーン』『国営巨大浴場の午後』『人間離れ』、どれにもウォッチャーが存在します。その彼らも最後には見る -
Posted by ブクログ
吉村萬壱『CF』徳間文庫。
元総理への凶弾と宗教問題を描いたことから、刊行時に予言的作品とメディアを揺るがせた超問題作らしい。しかし、読んでみると現実に起きた事件とは全く違うようで、がっかりした。
ピカレスク小説のような、近未来ディストピアSF小説のような奇妙なテイストの小説であった。
まるで輪廻転生のように登場人物が加害者と被害者の関係で次々と繋がって行く。罪と悲しみの連鎖は果てしなく続く。
誰もが罪を背負い、その罪は消えることなどない。病める日本社会の本質がこの小説の通りだったとしてもおかしくはない。
政府も加担しているというCFと呼ばれる超巨大企業Central Factor