吉村萬壱のレビュー一覧

  • 臣女(おみおんな)

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    夫の浮気を知り、絶望となった妻にもたらされた変化は巨大化だった。

    妻の身長は4メートルを超え、服も着れない、外出もできない。ただ、大量の食料を食べ、大量の排泄をするだけ。そんな妻を眼の前にした夫は苦悩と嫌悪、愛情を投げかけながら、妻に尽くし続ける。

    カフカの「変身」のように理由もなく異形になってしまった人間に対しての周囲の反応を描き、人間の残酷さや身勝手さ、愛しさを浮かび上がらせるフィクション。

    自らの社会的地位を放棄し、排泄物まみれになった妻を愛することができるのか。読んでいるだけで臭ってきそうな汚物の描写は凄まじい。だけど、似たようなことは現実でも「介護」という名で行われている。

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    2018年10月06日
  • 虚ろまんてぃっく

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    家族ゼリーがびっくりするくらい気持ち悪かったけど、どれもものすごく面白い短編集やった。
    人の頭の中とか、その頭の中と外の境界がよくわからないとか、そういうものがわたしは大好きです。

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    2018年07月01日
  • 臣女(おみおんな)

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    切実なる恋愛小説。

    浮気がバレた日を境に巨大化、異形化が止まらない妻。途中目を覆いたくなるような凄まじい描写があるのだけど、それでも夫の心情と同じように、妻のことが愛おしくなってくる。
    妻との生活はどう考えても負担が大きく逃げ出したくなるのだけど、なぜだか決して離れたくはない感覚。たぶんこれは純愛なのだと思う。

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    2017年10月22日
  • 虚ろまんてぃっく

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    現存する日本の作家で新刊が出たら矢も盾もたまらずみたいにがっつくのは吉村萬壱先生ただひとり。ほとんどは文芸誌掲載時に購入して読んでいたのだけど、再度こういう形で読むと一入。
    夏の友、大穴、大きな助け、が特にお気に入りで、大きな助けはすでに文芸誌のほうで何度も読み返している。読みやすい形状で手元に置いておけるということが嬉しい。コップ2030と大きな助けは私の地獄だ。

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    2015年09月12日
  • ハリガネムシ

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    面白かった。爆笑するとこあり、共感するとこありで、まあ満足。これからクチュクチュバーンもよんで判断します。

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    2012年03月02日
  • ハリガネムシ

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    ネタバレ

    濃厚な描写 文章の推進力。
    素晴らしい。これぞ文学。
    でも2度と触れたくない。
    すでにリアル本棚からは処分しました。
    強烈です。芥川賞受賞作品。

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    2012年01月17日
  • ハリガネムシ

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    未読であった事を後悔.身体を綺麗にする場で精神が汚れるってのが凄い良かった.だから墜ちたのか.本質が下にあったから墜ちたのか.面白かった.

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    2010年12月18日
  • ハリガネムシ

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    「爆裂地区」の次に好き。読後、テンションが異常に落ち込む感じになる。この作品は中村文則に結構似ているかも。

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    2009年10月04日
  • ボラード病

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    主人公・恭子の回想で物語が進みます。小学5年生の頃の様子を語っています。
    恭子の住むB県海塚市は過去に何らかの災害があり、住民は数年間避難生活を強いられていたらしい。復興が進みやっと故郷に戻ってこられたからか、住民たちの海塚市への想いや住民同士の結びつきは極端な程強い。
    冒頭からずっと何かがおかしくて、母親とのやり取りや学校での様子もずっとひっかかる。
    だんだんこの海塚という町の異様さや、何らかの病気が蔓延している雰囲気が感じられてきます。
    結局、誰が正しくて誰が間違ってるのか、具体的に何が起こったのかは想像するしかないのですが、所々で「絆」「放射能」を連想してしまう…ずっと怖い話でした。

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    2025年10月16日
  • 臣女(おみおんな)

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    グロテスクであり、官能的でもある。笑える部分も多くあったが決してふざけているだけでなくラストは感動する内容でした。おすすめです。

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    2025年10月12日
  • クチュクチュバーン

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    人に勧められねぇ〜!!!!!
    強くそう思います。エロとグロ。三作の短編、そのどれもが地球の末期を舞台にして描かれた物語です。突然に、準備も出来ず殺戮と混沌が覆い被さる世界。そこに暮らす人間は余りにも無力です。殺され、犯され、引き摺り出される。もはや強いエンタメ性すら感じるこれらの物語を読むうちに、脅かされることの少ない自分達の日常の輪郭をぞりぞりとなぞられる様な、不愉快にも似た感覚を胸の中で感じます。ここまで圧倒的な退廃の世界では確かに見ることしか出来ません。いや、見ることすら…。『クチュクチュバーン』『国営巨大浴場の午後』『人間離れ』、どれにもウォッチャーが存在します。その彼らも最後には見る

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    2025年07月25日
  • ハリガネムシ

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    エロと言っても耽美ではなく、より暴虐性が高い。

    この、いわゆる「汚い描写」は読み手に不快感を与えるのは間違いないだろうと思う。

    でもこの薄さで、文字だけで、多くの人に嫌悪感だけを残しているのはもはや評価すべきでは?

    この手の自暴自棄系にしては珍しく、愛のない(もしくは少なく感じ取ることが出来ない)ものだった。

    賛否はあると思うけれどこの気持ちが悪い描写と、リアリティに満足しました。

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    2025年05月06日
  • 回遊人

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    ネタバレ

    書けない作家がタイムリープを繰り返すというお話なのだが、この作家女好きのクズな感じで文芸っぽい雰囲気もあって面白かった。タイムリープによる10年のスパンを何度もやりなおすことで老成していくのだ、最初に妻だった淑子も記憶を保ったままタイムリープさせられているとかやや無茶な設定なのだが、そういったことが気にならないくらい良かった。

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    2025年04月26日
  • ハリガネムシ

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    暴力とsexと病んだ精神…読んでいることが辛くて苦しい。
    著者は、自分の大学のとても近いところにいた先輩(に間違いないと思う)なので、そっち行かないでほしい、もう止めておきましょう…と何度も心の中で叫びながら、なんて芥川賞なんだ⁈と思った。

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    2025年03月22日
  • CF

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    面白かった。

    吉村さんの作品は私には過激で読めないものもあるけど、これは全く問題なく読めた。

    日本の問題を吉村さんらしい視点と書き方で深く捉えていて、構成も素晴らしく、とても良かった。
    ラストのオチが見事。皮肉たっぷりで、最高。

    帯の〈元総理への凶弾と宗教問題。刊行時に予言的作品とメディアを揺るがせた超問題作!〉というのは、私には分からなかった。私はそういう風に捉えなかったし、そういう風には感じなかった。
    もっと深い話に思えた。

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    2025年02月28日
  • CF

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    吉村萬壱『CF』徳間文庫。

    元総理への凶弾と宗教問題を描いたことから、刊行時に予言的作品とメディアを揺るがせた超問題作らしい。しかし、読んでみると現実に起きた事件とは全く違うようで、がっかりした。

    ピカレスク小説のような、近未来ディストピアSF小説のような奇妙なテイストの小説であった。

    まるで輪廻転生のように登場人物が加害者と被害者の関係で次々と繋がって行く。罪と悲しみの連鎖は果てしなく続く。

    誰もが罪を背負い、その罪は消えることなどない。病める日本社会の本質がこの小説の通りだったとしてもおかしくはない。


    政府も加担しているというCFと呼ばれる超巨大企業Central Factor

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    2025年01月24日
  • CF

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    曖昧模糊とした無責任な風潮かと思えば溜飲を下げるが如く苛烈に責められて人生を徹底的に下る芸能人がいたりする。
    寛容であってもよいが、必要な降格や交代はやんないと駄目だと思う。
    それが無い。
    わかりにくい風潮をわかりやすく。
    実態のないものにリアルを与えている貨幣社会。
    金があれば大概のことは出来るんだろうね。

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    2025年01月23日
  • CF

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    単行本で出たときに気になっていた本、文庫本になったので早速買う。
    読んでいて不思議な気持ちになる。もしかするとCFは既に自分たちの社会にそれとはわからない形で組み込まれているのではないか。そんな気がする。そんなわけないか。

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    2025年01月19日
  • みんなのお墓

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    最初の墓地での奇行でいきなり掴まれる。登場人物達の、人前では見せない姿を覗き見してるような感覚で最後まで読んでしまった。別々に進んでいた話がうまく繋がっていくのも面白かった。

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    2024年07月29日
  • みんなのお墓

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    Twitter(敢えて)の本人発信で文章は読んだことが有ったものの、書籍で読むのは初めての吉村萬壱。個人的には「生理的にムリ〜〜」な場面もあって、“万人にお勧めできる本か?”と聞かれたら、迷うところだけれど、“私だけが知っている”感と言うか、この複雑な感情を分かち合える人とは友達になれそう。話題になった『CF』も読んでみたい。

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    2024年06月16日