吉村萬壱のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ネタバレアメトークで光浦靖子が紹介していて、ちょっと面白そうだったので買ってみた!
アメトークや帯で、妻への壮絶な愛が描かれているようなことが書かれていて、この流れをどう恋愛小説としてラストへ向かっていくのかなと思いながら読んでいたのだけれど、うーん、わたしはこれを、愛とは名付けられない。もちろん、全部を愛と呼べないわけではなくって。
依存と抑圧と、絶望と。この状況を受け入れることができてしまうという彼の心は、強いのか、あるいは諦観か。
自分の愛する人が異形化した時、わたしはそれを受け入れられるだろうか。そして、自分以外に愛する人を救ってあげる人はいると思うだろうか。わたしは、前者に対しての答えは -
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いったいこれは何なのか。裏表紙を読めば、被災して蘇りつつある復興の町で暮らす少女の回想であることがわかりますが、それを読まなければ中盤までそんな町の話だということはわかりません。
話し手は三十代の女性で、小学生の頃を思い出して綴っているみたい。彼女の家庭はものすごく貧乏で、着ているものが臭うほど。だけど彼女が暮らす町ではたいていの人が貧乏だから、臭いからといじめられるわけではない。むしろ同級生と「臭いよ」と笑い合えるぐらい。母親はいつもピリピリしていて、自分の何が母親を怒らせているのだかわからない。そんななか、同級生が立て続けに死ぬ。新鮮だと謳われている地元の魚や野菜を食べて。
終始不穏な -
Posted by ブクログ
病的なほどに娘の態度と世間の目を気にしながら家に閉じこもっている母と、「頭の中の虫」を飼っているという娘の恭子。不気味な語り手の声に導かれて物語をたどるうちに、読み手はやがて、異常であるのは母娘なのではなく、彼らが生きている「海塚」という町の方であることに気がついていく。
教師や親たちが熱く称揚する「ふるさと」への愛と、人々の「強い結び付き」。命の大切さ。海塚の食べ物の安全と美味しさ。大人たちがかつてこの町を集団避難しなければならなかったこと。帰還の後に生まれた子どもたちが次々と死んでいっていること。町民たちの高揚した一心同体の背後には、どうやら陰惨な暴力があるらしいこと。
「解説」でいとうせ -
Posted by ブクログ
ネタバレこういう事がしてみたかったのだと、この時初めて気付いた。人間の肉体を思い通りに切り刻みたいという欲望を、ハリガネムシのように体の中に飼っていたらしい。(97)
高校教諭の慎一は、ソープ嬢のサチコと親密な仲になる。サチコは不完全な生き物に見えてもそれが完成体で、恐らくどんなに酷い事をされても「平気だったにゃ」と笑う。
ハリガネムシのように寄生している自分の欲望を、この不完全で完全な生き物にぶつけたいと思う。この欲望が暴れるたび死にたくなる自分も確かにいるが、「私」は生に抗えずにいた。
個人的な話だが、この作品は私が私小説風の純文学にどっぷりと浸かるようになったきっかけであり衝撃であった。高校 -
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人間は誰でも心の中にどす黒い感情を持っているものである。
それをこの作者はハリガネムシと形容しているのだが、上手いと思う。
他人の読書感想文を読んでいると、グロいとか、エロいとか、エグいとか表現しているが、ぼくにはそれほどには感じなかった。
逆に、作者が思いっきり空想を広げて書いているのがいじらしく思う程度だ。
テーマは転落で間違いないだろうが、それだけでは薄すぎる。
どの感想文にも触れられていなかったのだが、作者がこの小説を書く動機となったのは、某思想家の以下の言葉だったはずだ。
文中、2回も出て来る。
「人はいかにして本来のおのれになるか」
「良心の呵責というものは、わたしには真実