吉村萬壱のレビュー一覧

  • ボラード病

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    病的なほどに娘の態度と世間の目を気にしながら家に閉じこもっている母と、「頭の中の虫」を飼っているという娘の恭子。不気味な語り手の声に導かれて物語をたどるうちに、読み手はやがて、異常であるのは母娘なのではなく、彼らが生きている「海塚」という町の方であることに気がついていく。
    教師や親たちが熱く称揚する「ふるさと」への愛と、人々の「強い結び付き」。命の大切さ。海塚の食べ物の安全と美味しさ。大人たちがかつてこの町を集団避難しなければならなかったこと。帰還の後に生まれた子どもたちが次々と死んでいっていること。町民たちの高揚した一心同体の背後には、どうやら陰惨な暴力があるらしいこと。
    「解説」でいとうせ

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    2017年03月11日
  • ボラード病

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    不気味で陰鬱でディストピア小説の雰囲気は十分なのだけど、唐突に例の事故を想起させたと思えばとてもそれどころじゃないでしょコレみたいなオチに突き進む。正直置いていかれた感があります…あえての説明不足なんでしょうけど、モヤモヤは拭えず。
    言うまでもなく(『最終兵器彼女』みたいに)終末は舞台にしか過ぎなくて、著者の書きたかったものは人間心理で(主に母娘そして転じて国家と国民)、その不自由さや不確かさを思いしらされるところがこの小説の核なのかなと思います。
    心が元気じゃないと読むのが辛かったです…

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    2017年03月13日
  • 臣女(おみおんな)

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    2016.12.27-72
    夫の浮気を知り巨大化する奈緒美を家に閉じ込めて世話に追われるが、挙句トラックで逃避行するも死なれてしまう夫文行。中盤の奈緒美のグロテスクな描写に対し、最後の巨大化した理由が回想されるシーンが切ない。

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    2016年12月27日
  • 虚ろまんてぃっく

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    不条理で、限りなく不道徳で、深い沼の底に沈んでゆくような感覚。なのに、なぜか読んでしまう。闇なのか、病みなのか。

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    2016年11月10日
  • 虚ろまんてぃっく

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    短編集。
    どの作品もカフカのように不条理に満ちていてシニカルに描かれている。文学的でありオチなどは特に無いものの読ませる力はあると思う。

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    2016年07月02日
  • ハリガネムシ

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    どこかで、中村文則が好きな人が好きそう、というコメントを見かけ、本書を手に取ってみた。
    確かに、似たような要素は見受けられたが、どこかあっさりというのか、さっぱりとした、そこで完結した様に感じた。タイトルから、自身の意思とは関係のないところで、ハリガネムシが自己を侵食、征服し、その行動の結果、ある種の本能の赴く結果が導いた結果を表したように見えた。しかし、部分的に厳密な描写が欲しかったとも思う。

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    2015年10月21日
  • ハリガネムシ

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    特に何も残らない読後感。これこそが作中に漂う虚無なのだろうか。だとすれば作者の意図は完遂された。もう何も感じないんだよね。この手のやつ。

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    2015年06月15日
  • ハリガネムシ

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    ハリガネムシって世にもおぞましい動きをするのですよね。カマキリから出て空中をクネクネ動いているのを目撃したことがある私としては、そうやって次第に大きく長くなっていく描写が欲しかった。エログロはもうどうでもいいって感じです。

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    2015年09月06日
  • ハリガネムシ

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    ネタバレ

    こういう事がしてみたかったのだと、この時初めて気付いた。人間の肉体を思い通りに切り刻みたいという欲望を、ハリガネムシのように体の中に飼っていたらしい。(97)

    高校教諭の慎一は、ソープ嬢のサチコと親密な仲になる。サチコは不完全な生き物に見えてもそれが完成体で、恐らくどんなに酷い事をされても「平気だったにゃ」と笑う。
    ハリガネムシのように寄生している自分の欲望を、この不完全で完全な生き物にぶつけたいと思う。この欲望が暴れるたび死にたくなる自分も確かにいるが、「私」は生に抗えずにいた。

    個人的な話だが、この作品は私が私小説風の純文学にどっぷりと浸かるようになったきっかけであり衝撃であった。高校

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    2014年04月17日
  • クチュクチュバーン

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    ネタバレ

    「ボラード病」で開眼し、「ハリガネムシ」で病みつきになったこの作者。
    もとから「ボラード病」に潜む、畸形や変形や集団への違和などがあった、ことが本書でまざまざとわかった。
    それが原発事故を経てああいう形で噴出したのだ。

    さて本書は、はっきりいってぐっちゃぐちゃ。
    漫画や映像から影響を受けた趣味や衝動がぶち込まれたごたまぜの鍋。
    僕は大好きなのだけれど、どうして新人賞を獲れたのかが理解できない。
    むしろ「ハリガネムシ」は(藤沢周に寄せて)芥川賞を狙っていったのだとわかる。

    でも、いいね。

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    2014年04月08日
  • ハリガネムシ

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    「読後感が悪い」という情報に惹かれて読んだが、それほどでもなかった。考えるのが面倒くさい人たちの、反応的な生き方がよく描かれていると思う。これに貧困が加わると、中上健次とか西村健太なんかになっていくんだろうなあ。

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    2012年06月10日
  • ハリガネムシ

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    人間は誰でも心の中にどす黒い感情を持っているものである。
    それをこの作者はハリガネムシと形容しているのだが、上手いと思う。
    他人の読書感想文を読んでいると、グロいとか、エロいとか、エグいとか表現しているが、ぼくにはそれほどには感じなかった。

    逆に、作者が思いっきり空想を広げて書いているのがいじらしく思う程度だ。

    テーマは転落で間違いないだろうが、それだけでは薄すぎる。

    どの感想文にも触れられていなかったのだが、作者がこの小説を書く動機となったのは、某思想家の以下の言葉だったはずだ。
    文中、2回も出て来る。
    「人はいかにして本来のおのれになるか」

    「良心の呵責というものは、わたしには真実

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    2012年03月22日
  • ハリガネムシ

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    主人公の高校教師の心の闇(ハリガネムシ)が動き出す。相棒のサチコと共に、血を流し、堕ち果てる・・・あまりの描写に途中で目を背けたくなりましたが、人間存在の奥深くを抉る衝撃です。決してお薦めはできません^^;
    【第129回芥川龍之介賞】

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    2023年02月19日
  • ハリガネムシ

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    なんだろ・・・

    あっという間に読み終えましたが。

    ん~~~。

    底辺、でした。
    堕ちて、ました。

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    2009年10月20日
  • ハリガネムシ

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    高校の教師である慎一と、子供同然のサチコ。

    とにかく餓鬼に過ぎないサチコを成人として更正させる事と、彼女との関係の目的を定めはじめるのだが、あるとき自分が確実に墜ちていく事に気付く。

    チンピラまがいな事にまで手を染め始めて、物語は暴力と倒錯の色が次第に支配を強めて行く。

    身体の何処かで突如とムシが暴れ始める。ムシの侵入の後、常軌を逸し始め奈落へと転落して行く慎一、果たしてムシのせいか、はたまたムシの所為にして、隠しがたい自身の本性を開けっぴろげにしたのか。

    ともかく、暴力的描写は計算のなせる業ではなさそうだ。

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    2009年10月08日
  • ハリガネムシ

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    狂ってる。感情むき出しの本。
    鮮やかな黄色でシンプルなデザインの表紙に
    惹かれて手にして読んでみたが、内容はドロドロ。
    後味はよくない。むしろ悪い。

    想像の世界を現実の世界に持ち込んでしまったら
    こうなるのか。

    こういう内容でも芥川賞とれるのね。

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    2009年10月04日
  • クチュクチュバーン

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    トラウマになりかけた、ある意味ホラーとしては逸品。
    コレを読んで『純文学』の定義が分からなくなりました。

    実は母と妹は吉村萬一先生ご本人と面識アリ。
    頭のバンダナを取ると地球が爆発するんだとか。。。

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    2009年10月04日
  • ハリガネムシ

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    「人の痛みが分かるかどうか」というのは難しい問題であるが、倫理的には「そりゃぁ分かったほうがいいだろう」ということになるに違いない。本書の描写からは、まったくといっていいほど「人の痛み」とか「悲しみ」という感情が欠落している。主人公の心情吐露も、また作者の描き方も、非常に独善的で他者を寄せ付けないものがある。それは、筆者が意図的に挿入した「倫理としての暴力」の一端なのかも知れないが、そこは読み手の判断として難しいところである。本作を「暴力的表現が過剰に盛り込まれた変態小説」という風に理解してしまうのはあまりに一元的な評価の仕方であると思うものの、それ以外に「筆者が何を描きたかったのか」というこ

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    2009年10月04日
  • ハリガネムシ

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    もう一言でいって不快で気持ち悪い。 金原ひとみのアッシュベイビーに通じるものが。 癖がありすぎて逆に凄い。

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    2009年10月04日
  • ハリガネムシ

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    えげつない描写の数々は、私が今まで
    読んだ本の中で一番かもしれません。
    マイナスのパワーをひしひしと感じます。

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    2009年10月04日