吉村萬壱のレビュー一覧

  • ひび割れた日常――人類学・文学・美学から考える

    Posted by ブクログ

    人類学者、作家、障害についての研究者三人によるコロナ後の日常についての刺激的なリレーエッセイ。
    同じテーマを語っていても、各々の感じ方や表現の個性がとても興味深い。類似性と違いが同時に目に入ってくるのが楽しい。

    0
    2022年07月03日
  • ボラード病

    Posted by ブクログ

    最終章はまるで鈍器で頭を殴られたような衝撃があった。全編を通して作中にずっと漂っていた不気味さ、海塚市の気味の悪さがこの最終章で一気に昇華されている。見事な結末。
    こんなに最後の一行で打ちのめされた小説は他に記憶にない。

    主人公の小学五年生の恭子の目を通して描かれた海塚市民の姿がとにかく不気味。得体の知れない悍ましさが漂っている。大人の欺瞞に疑問を持ち斜に構えてしまう子供ならではの感性の裏に、「本当にこの街の人々はどこかおかしい」と思わせる確かな淡々とした描写。直接的なビッグブラザーが存在しない、よりグロテスクな日本的管理社会。“世間”という言葉の持つ異様性、異常性。

    出版時期から間違いなくあの災害を念頭に置いて書かれたことは察せられるがその深奥にある日本社会の薄暗さの描写は他に類するところがない。
    同調するか、抵抗するか。狂うか、狂わないか。普通や一般という名の異常な正常者。正気なのは、間違っているのはどちらなのか、次第に分からなくなる。これは一種のサイコホラー作品だ。

    0
    2022年06月12日
  • 哲学の蠅

    Posted by ブクログ

    自身をさらけ出すことを私小説的というならば、間違いなくこのエッセイはそういうものの仲間だろう。
    文章は平易で読みやすいのだけれど、内容が大層に濃いので読み進めるのに力がいる。その分、大変に面白い。

    0
    2022年04月10日
  • ハリガネムシ

    Posted by ブクログ

    読書開始日:2022年2月6日
    読書終了日:2022年2月7日
    所感
    最悪の読後。
    引力がすごい。
    ずっと気持ち悪いところに強制されているよう。
    いつもの日々をこれほど愛おしく感じたのは久々かもしれない。
    はやく日常を営みたい。
    清潔で正常な愛情の中にいたい。
    水面に出て呼吸をしたい。
    そう感じる。
    堕ちることをこれほどまでにリアルに書いた作品を読んだのは初めて。
    この一文が一番怖かった。
    決して終わることがないだろうと思えるような、さめざめときた泣き方だった

    すでにサチコの顔が思い出せなかった
    それがどんな毒であっても、ちょっとだけ舐めてみたい
    飢え、かつえ
    闖入者
    われわれはその「はい」にすがりつくように立ち上がった
    剔れて
    瓜実顔
    うつろきまわる
    寝ているサチコまで生ゴミのように見える
    みなさん大変でんな
    日記にそう書いたが、書かれた文字が気に入らなかった、
    いかに不完全に見えたとしても、この女は既にこれで完成体らしい
    そういうの…嫌なの
    その深刻ぶった真面目な顔に不潔なものを感じた
    こういう小説に限って親に会いたくなる
    決して終わることがないだろうと思えるような、さめざめときた泣き方だった
    これに追いつかれてはならないと思った
    これに追いつかれてはならないと思った
    私はこの女が私をサディズム男と断定し、ホテルでの事も巧妙にじぶんの中に取り込んでいる
    暗い方は暗い方へと闇雲に走った

    0
    2022年02月07日
  • 回遊人

    Posted by ブクログ

    あなたは10年前に戻れるなら、戻りたいと思いますか? わたしは戻りたくないです。過去を変えることは未来を変えることに繋がるから、この作品を読んで改めてそう感じました。この作品はいわゆるタイムリープがテーマになった作品で、主人公の専業作家江川が、夫婦生活といい作品が書けない、いわゆるスランプに陥って、過去に戻りたいと思う所から始まります。タイムリープを繰り返すうちにある事に気付く江川の心情を読んでいったら悲しくなりました。でも読み応えが良く文章のテンポもよくて、読んでみて良かったと思いました。ぜひタイムリープに興味がある方読んでみてください。

    0
    2021年08月21日
  • 臣女(おみおんな)

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    正直、これは愛の話なのか?と疑問が残った。
    うーーーーーん。
    前半は主人公にとって愛=色欲っていう感じ
    でも後半は奈緒美への愛があったかな
    何かを吹っ切った感じがした

    主人公がひたすら利己的なのが目についた
    自分が周りに及ぼす影響も考えず悪臭を放ち
    周りに罵詈雑言を吐き
    敦子を、奈緒美を、鑑賞物として見做している
    奈緒美が死ねば自殺すると言いながら、
    原稿のことばかり考えている

    でも人間は、食べて排泄して生きていく生き物
    奈緒美は巨大になっていくため
    主人公は生活を営むために
    そう考えると…仕方ないかなぁ
    奈緒美を介護するのは二人が共に生きるためなのだとすればそれは愛だな。うん。

    最後のシーンは切ない…
    でも私は早く奈緒美に死んで欲しかった、読むのがしんどくて笑

    0
    2021年07月28日
  • 臣女(おみおんな)

    Posted by ブクログ

    本屋で読書芸人で紹介されてた本。 ストーリーも興味深くなかなか面白かった。 只、あまりにも糞尿の話が多く描写が細かいのでそれだけでお腹が一杯になってしまい、途中から話の本筋がすーっと入ってき難い。 そこまで糞尿のことを書く意味があるのか、あるとすればそれが愛する人を生涯守り抜くという覚悟を我々読者に問いかけているのか。 後々、自分や自分の愛する人にもやってくるかもしれない現実であり、その時どう振舞えるのかで自分自身の人間としての価値に気づかされるのか。 色々考えさせられる本だった。

    0
    2020年10月22日
  • クチュクチュバーン

    Posted by ブクログ

    「クチュクチュバーン」「国営巨大浴場の午後」「人間離れ」の三作を収録しています。

    「クチュクチュバーン」は、人びとが異形へとすがたを変えていく世界のなかで、生きる意味を求めるなどということがまったくうしなわれてしまった状況をえがいています。他の二作も同様の趣向で、「国営巨大浴場の午後」ではナッパン星人の襲来以後の世界がえがかれ、「人間離れ」は緑と藍色の奇妙な生物が人間たちを襲うなかで「人間離れ」を試みて助かろうとする人びとがおこなう「直腸出し」などの奇妙なふるまいをえがいています。

    「解説」を担当している椹木野衣は、「クチュクチュバーン」に登場するシマウマ男が体現している「見る」ことを、本作の重要なモティーフとしてとりあげています。こうした見かたに悪乗りしていえば、世界がその法則性を崩壊させてしまったなかで、なんらかの理論的背景にもとづいておこなわれるはずの「見る」ことが、もはや実践的なふるまいと見分けがつかなくなってしまうような臨界点を示しているところに、本作のひとつの読みかたを見いだすこともできるのではないかと思います。

    0
    2020年09月02日
  • 回遊人

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    アニオタにとってループものは特別な意味合いを持つ。
    さらにまた、ボクとキミの関係が世界全体へというセカイ系も。
    そのふたつに、そのナイーブさや作法を(おそらく)あまり知らない吉村氏が蛮勇を振るって参入してきた、というものだ。
    岩井俊二が「打ち上げ花火、上から見るか? 下から見るか?」でアニメに関わってきたときには、結構複雑に感じたが、さすがに吉村氏の参入に対して目くじら立てるほど餓鬼ではない。
    中華料理屋の床に落ちていた錠剤7粒という、それありきの設定を、本気参入なら、根拠不明瞭と批判するだろう。
    が、本作はあくまで思考実験なのだろうて。
    たぶん作者も、たとえば「シュタインズ・ゲート」を勉強することなく、ご自身のオブセッションに忠実に書き切った作品なのだろう。
    この解離をあげつらうことは簡単だが、どちらも好きな身としては、吉村氏の蛮勇=気軽さを買いたい。

    この人の作品で輝くのは、設定ではなく細部のモノやコトだ。
    たとえば、醤油のミニボトルとか、尿瓶とか、ミニカとか、が独特な底辺感→(金子光晴の所謂)「むさい」感じ→切なさ、につながっていく。
    いいんだなー。悪くないなー。まあ結構好きだなー。

    あのときああしていたら、とか、いまはこうだけど別の人生もありえた、というモチベーションを想像の糧にしている作家は少なくないはず、というか多いはず。
    村上春樹なんかは、その欲望をいったん抑圧した上で自分をもだます作法をスタイルにして、自己神話化の繰り言を続けているともいえる。
    そこにエロゲだかアニメだかから突っ込んだのがkeyとか「AIR」とかだと思うが、そういった構図そのものを、自分の生活に近づけて考え直したのが本作、と……。
    まあ、そこまで作者自身は考えていなさそうだけれど。

    0
    2020年03月04日
  • 虚ろまんてぃっく

    Posted by ブクログ

    相変わらず、というか、やっぱり、というか・・・。
    とにかく人間性を否定したいのだろうか? かろうじて普通の話に見えた作品も、わずかに文末の言葉遣いがおかしかったり。

    0
    2019年05月05日
  • ヤイトスエッド

    Posted by ブクログ

     裏表紙の紹介文「淫靡な芳香を放つ狂気」は伊達ではなく、結構強烈な描写が多くて耐性がないとまともに読めないであろう本。というか多分まともに読めてない。

     どいつもこいつも考え(思い込み?)が極端で、その極端な考えが、例えば不浄なものに聖性を見出したりするのでわからない。汚くてもいいじゃん、ならまだ分かるのだが、汚いものを貴ぶのは何だかよくわからない。「絶対にあり得ない」(p.154)。
     それでも、当の本人からすればそれが正常なわけで、その切実さを前にどうすればよいのかもさっぱり分からない。人は人、自分は自分ではあるけど、活動の幅が重なってきたらそんな正論を言っている場合ではない。この小説に出てきた「常識人」と同じく、彼らを隅に追いやるしかない。
     常識を疑ったところで、得るものよりも失うものの方がずっと多いと思ってしまう。「常識を疑う」という言葉にむなしい響きを感じてしまうのは、それが理由なんじゃないかな。齢を重ねるごとに、どんどん私は臆病になってゆく。

    0
    2019年03月21日
  • 臣女(おみおんな)

    Posted by ブクログ

    描写が分かりやすくて、うわぁと思いながら読み進めつつも、途中で飽きてくるところもあったので星3つ。
    結局最後はどうなったのかがはっきり知りたかったなぁ。
    それと釣り人の気持ちとか、行動がどうなったのか知りたかったなぁ。
    気がかりが多くて気になってしょうがない。

    0
    2019年02月24日
  • 臣女(おみおんな)

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    私は一体何を読んだのか…不思議な気持ち。
    旦那さん、自分の不倫に対する罪滅ぼしの為に奥さんを介護していくのだ…と思いきや、人間とは呼べない姿になっていっても、それでも献身的に介護をする。
    世間的には、周りの反応の方が普通なんでしょうが、そっとしといてあげて…とイライラした。
    奥さんの気持ちはどうだったんだろう…不倫に対する罰で、介護させることで自分に付きっきりになってくれるので良い気味だと思っていたのか…それとも申し訳ないと思っていたのか…。身体の巨大化の原因が、前者だとしたら恐ろしい…。でも旦那さんの理想になりたかっただけなんだな、と最後に分かるのでまぁまぁスッキリ。

    0
    2019年02月22日
  • 流しの下のうーちゃん

    Posted by ブクログ

    つげ義春との類似と、絵で表現できることを感心。さらにビジュアルがあり機で文章表現に至ることが受け取れていてより楽しい。

    0
    2019年01月03日
  • 臣女(おみおんな)

    Posted by ブクログ

    読んだことない恋愛小説だった。グロテスクだけど現実で、いろんな感情を行き来する主人公がリアルだった。

    0
    2018年12月04日
  • 前世は兎

    Posted by ブクログ

    短編7作。
    腐って汚く異臭がするくせに、キラキラと輝いているような。
    言葉の選択が剥き出しなのだけど、取り繕われた言葉よりも寧ろ潔い。
    素直に詳らかにすることに、向き合う言葉のその先を見るのか。

    0
    2018年11月30日
  • 臣女(おみおんな)

    Posted by ブクログ

    本当にダメ男なんだけど、奥さんに優しいのか何なのかなぞ。。
    でも、異様な姿になっていく奥さんを世話していくのはやはり愛があるからなのか?
    印象に残る本になりました。

    0
    2018年11月15日
  • ボラード病

    Posted by ブクログ

    なんとも言えない不快感と、気持ち悪さを感じた。
    もしやこれが作者の伝えたかった事なのか?と思うくらい、意図的な気持ち悪さ。
    何が正常で何が異常か判断できなくなるような感じでした。

    0
    2018年07月24日
  • 臣女(おみおんな)

    Posted by ブクログ

    最初から最後までグロテスクなんだけど、その中にも愛が描かれている。
    こんな状況下で配偶者を愛し続けられるか、自分だったらどうだろうと考えながら読んでしまった。
    終わりが見えないのが一番辛いだろうなぁ。

    0
    2018年06月19日
  • 臣女(おみおんな)

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    設定からして幸せな結末は迎えないだろうと覚悟して読み進めていったけど、孤立を極める二人が痛々しく読むのが苦しかった。

    嫌味な教師が終盤あたりで、主人公を的確に分析するところや、何となく味方になってくれそうな同僚教師も、もちろんのこと誰の肩を持つこともなく…誰も助けてくれないし、主人公自体助けてもらおうと思ってない。
    金銭的にも社会的にも追い詰められる、というか主人公自ら追い詰めてるような気がして「早く然るべき機関に助けを…」と何度も思った。

    0
    2018年04月01日