神林長平のレビュー一覧
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アルカの腕、バトルウッドの心臓、セシルの眼、ダーマキスの皮膚、エグザントスの骨、ヤーンの声、ザインの卵の7編で構成される、ハーボドイルドSF短編集。
ハードボイルド……なのかなぁ。
ハードボイルドって語源は「堅ゆで卵」。つまり状況や環境、感情に左右されないって意味だと思うんですが、この物語の主人公は結構感情で動いてたりする部分があるように見受けられて、あんまりハードボイルド感はありませんでした。ウィスキー好きとか、詩集がすきとか。そういう所はハードボイルドといえなくもないですけど。
物語のテーマは臓器崩壊と人工臓器を巡る人々の生き方的な内容。それらのやり取りサイファという超能力者である主人公視点で描かれています。サイファ自身は臓器崩壊を起こさないため、その描写はどことなく俯瞰的な感じ。
しかし読んでいて「ああ、十年前の小説だなぁ」と思うことしきり。なんというか、口調(文調・文体)がとても若い。
短編集ではありますが、サイファと臓器メーカーの関係が次第に明らかになっていく構成はミステリーのようで、読んでいてテンポがいいです。 -
Posted by ブクログ
神林氏の書く小説は、氏の哲学が強く感じられる本です。本を読んでいるというよりは、登場人物の思考を解して氏の主義主張を読んでいる感じ。今回の本は特にそれが強かったです。
主人公である蓮角(レンカク)が何度も主張している「自分が思うから現実がそうなっているんだ」という主観的な世界観はデカルトの「我思う、ゆえに我あり」に通じています。そして、それが氏の哲学なんだろうな、と思いました。
この本はたしかにSFです。ただし、科学小説ではありません。
「SFとは科学小説(Science Fiction)ではなく、思索小説(Speculativ Fiction)だ」と言った小説家はハインラインだったでしょうか。この本はつまりそういう本で、科学的で空想的なギミックを用いた思索小説という色が顕著な物語です。 -
Posted by ブクログ
長門さんが“ミステリックサイン”のラストで読んでる、“膚の下”(火星シリーズ3作目)の2作目に当たる本。
この人の書くものは本当に、コミュニケーションの話だな…!と思う火星シリーズ2作目。
しかも“言葉”を使用したコミュニケーション。感覚を同期させることも不可能ではない世界において、あえて言葉を交わした上での共感に重きを置く思想というのか、考えかたというのか、それがとても素敵だなぁと思います。
感覚と実感の差異とか、そういうものの書き方がもの凄い好きです。
そして、そういうものを浮き彫りにする仕組みを作るのがとても上手い。PABなんて機械の発想、どこからでてきたんだろう。
あと、機械人の独白が本当たまらなかった…。機械人が魂を定義するとそうなるのか…!という。
無に対抗する存在プロセッサなんて、なんて切実な響きかと。
彼と地球人のやりとりも好きです。「あなたの魂に安らぎあれ」が、こうくるのか。
神林さんの書く“魂”は、攻殻機動隊での“ゴースト”に近いんだろうな。
と、ここまで散々SFとしての側面を書いておきながらなんですが、お話としては父と子のお話です。
テーマは普遍的でも表現手法が違うとここまで違ってみえるんだなという。
アニメで、これの三作目を読んでた長門さんは、もちろんこれも読んだのだと思うのです。
どう思ったのかものすごく聞いてみたい。