神林長平のレビュー一覧
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ネタバレ一言で言えば面白え〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!
なんだけど、あれこれそれこれのらりくらりと躱されてきたあのロンバート大佐が、
「アンセル・ロンバートはただの人間に戻った」
この一文だけで終わらせられたことの衝撃よ。作中人物はもとより、読者もかなり煮え湯を飲まされてきてたんですが! たったこの一文で終わり!!! いやあ痛快ったらない。
大地を割るカーリー(伊歩)に踏みつけられて終わるというのがなんともいいッスね。
そして当然、対ジャム戦が終わるわけではなく。情報を食うってなに??? どうやって勝つのよ??? うおおおお神林先生なにとぞご健勝のうちに完結までお導きください……! -
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火星の地下に広がる都市では、人間達が絶望的なまでに単調な暮らしをしていた。一方放射線が振り注ぐ地上では、人間に奉仕すべく造られたアンドロイドたちが華やかな文明を築きあげていた
1986年発行、恐れ入る
じっくりとした物語の始まり、とてもゆっくりでいつの間にか知らない世界の日常を学び、読み進めるにつれ比例し高まるカタルシス 読み終え、この本のタイトルはまさにこれでしかないと痛感し、未来世界のフィクションを堪能 これぞSFと思う
何を書こうにもこの本の解説、夢枕獏さんが正しい
曰く、説明不能、説明するには本書の量と同じ原稿の枚数が必要。とまではさすがに思わないが、ダラダラここに書いても誰も最後まで読まないだろうし目の前で語ろうが眠るだろうし、最後まで聞いてくれる人だろうが途中で飽きられるだろうし
これが長編デビュー作だなんて
読んでいなかった有名作を読もうと読んだだけだったのに、これじゃこの先の新刊ラッシュが 罪深い -
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ほとんどのエンタメ作品はその当時の流行に引きずられており、時の風化によって価値を減じていく。著者の「敵は海賊」シリーズを雪風の前に読んだが今読むとキツイものがあった。しかし雪風は今や輝きを増しているように思える。
AIの発展した今日こそ「人は必要なのか」ということはリアリティを持ち、むしろ今こそ読まれるべき小説となっている。
「フェアリィ・冬」は辛い仕事をする男の話だが、彼の仕事が機械に代わられれば、働き先を失ってしまいもっとひどい境遇に陥るのだ。そして本作の中でその決定をするのは機械そのものであり人間の必要性が問われている。
人間は何のために闘っているのか。自分が愛する雪風のために闘っていた深井中尉だが愛機は無人機となってしまう。
仕事と機械というあまりに切実な現代的テーマでも読める傑作である。次作も読みたい。 -
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タイトル『それはそれはよく燃えた』の1文から始まるショートショート集。
ネットの炎上、恋心、火事など、こんなものまで「燃える」のかと思える作家25人の25作を1冊の本で読めるのはとても贅沢。
でも後味は25作25様で、ほっこり甘いものもあれば苦々しいもの、ざらっと心地悪いものなど本当にさまざま。
クイズノックのファンなので河村拓哉さん目当てでこのシリーズを読み始めたが、矢樹純さん、三津田信三さんなど、このシリーズは毎回新しい作家さんと出会えて、読書の幅が広がって嬉しい
私は総じてホラーが好きなので、今回の『それはそれはよく燃えた』はぞくっとする話が多くて、とても好み。不穏で悲しくて残酷。年末年始たっぷり楽しめた
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ネタバレうおっ、これは!!他人にジャック・インするとこなんて、サイバーパンクじゃんか。どっちが先なんだろう。誠元が夢を見るところが、彼がアンドロイドであることの伏線になってるところなんて、うまいよなあ。アンチが、実は現実の人間(我々)のメタファーになってるんじゃないかと思われる瞬間もドキドキもの。ずっと火星に住んでいると思わせといて、実は地球だったというのにもびっくり(だけど、意味はわからん。なんで破沙の人間はここが火星だと思ってたんだろう)。アメリカ人にとっての自由の女神が、日本人だと大和になるわけね。
ただ、堂本貴義とか堂本和子とかがなんで登場してるのか、ちょっと作者の意図がわからん。破沙の生活にリアリティを出すためなんだろうか(エンズビルが来たあと、W管理組合ってどうなるんだろう)?確かに、メグにこいつらがこてんぱんに罵られるところはスカッとしたけど、メグだってアンチをおもしろ半分に殺してるぶん、かなりやばい奴なんだけど。
けど、こういう話のわりに、里司が駅で待ってるところとか、妙に感情移入しちゃうんだよな。舞がトラプシンで猫に変わるシーンなんて、ここしばらく味わったことのないほど感動しちゃったし。
確かにどういう話なのか説明するのは難しい。でもまぎれもない傑作。 -
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ネタバレFAF軍ロンバート大佐の裏切りにより、ジャムは地球本星への侵攻を仕掛けた。追撃する雪風と深井零大尉、桂城彰少尉もまた、惑星フェアリィから地球の南極へと通じている空間ををくぐり抜け、南極で待っていたリン・ジャクソンに「観測」されることにより、辛くも認識戦における勝利を掴む。
しかし、フェアリィ星へと帰還した雪風と乗員2名は、まるで何もかもが死滅したかのように異様なFAF基地を目撃することになる・・・
この冒頭のエピソードは、結局は零と雪風の連携プレーによって事態を打破することにつながるのですが、まずこの下りが、最高にカッコいい!
なぜそんな細かいところから話を始めるのかと言いますと、この「戦闘妖精・雪風」シリーズが難解になりすぎて手を離しつつある人にこそ、「アグレッサーズ」はお勧めしたい作品であるからです。
ジャムが姿を消し、FAFの存在意義も同時に消えてしまった。しかし、特殊戦の実質的トップ・クーリィ准将は、ジャムは地球侵攻に成功していると考えている。だからこそ、FAFは存続させ続けなければならない。そのために。
「・・・我々は、ジャムになる。」
この言葉の真意は本編を読んでいただくこととして、まるでシリーズ初期に戻ったかのような、派手な航空戦が!丁々発止の謀略戦が!深井零をしてその能力に感嘆せしめざるを得ない、新たなるエースが!ドッカンドッカンと登場するんですよみなさん!面白くないわけないでしょ!
もちろん、従来の「戦闘妖精・雪風」シリーズ最大の特徴である、言語SF・認識SFとしての骨格も十分に生かされています。雪風第2章開始、と言っても良いかもしれませんね。気のせいか、雪風もイキイキしてますし。
既にハードカバーとして刊行されている次作も、最高に楽しみです!! -
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読書備忘録928号。
★★★★★。
毎度ですが無条件です。
この作品が世の中にリリースされたこと、書き続けてくれていることで無条件です。
深井零大尉のみならず、ブッカー少佐、クーリィ准将、フォス大尉、桂城少尉、田村伊歩大尉みんなみんな愛おしい!
そしてこの作品、シリーズ第5作にして、新3部作の第2弾なんだってよ!
アグレッサーから始まるジャムとの哲学戦争の新3部作か!
今作、章立てが割と細かい。
そしてタイトルが言い得て妙。タイトルってそういうものですかね。
<復習>
①ジャムは一体何がしたいのか?えっ?人類と戦争している宇宙人では?
②ジャムは地球を侵略しようとしている?人類を敵と見做している?否。コンピュータを相手にしている。
③ジャムは地球侵略を果たした。人類をターゲットにしていないので人類は気づいていない。
④FAFはジャムと戦わないといけない。地球上で戦うのは現実的ではない。なのでフェアリイ星に引きずり出す!
⑤FAFはフェアリイ星にジャムがいないと存在できない。哲学的な死に至る・・・。
⑥アグレッサー部隊を創設してジャムを引きずり出した。FAFの既得権益を守るために!
とにかく面倒くさい作者(リスペクト)!そして面倒くさい登場人物たち。当然面倒くさい読者!笑
本作は大半が会話で構成されるので普通は読みやすいはず。しかし、言葉じりを捉えたり、言葉の裏で会話したりと面倒くさい!登場人物全員がコミュ障なのではないかと思ってしまう!そして、こんなに読書が楽しいと感じることは稀だ!笑
それでは作品の備忘録(各章)です。
★次巻へ繋ぐための無条件ネタバレ備忘録!★
【霧の中】
復習に書いた内容のことをああでもないこうでもないと議論を戦わせるパート。
すなわち、FAFはどうしたら良いのか五里霧中を進んでいるという結論。
【内心と探心】
クーリィ准将と伊歩の会話パート。
雪風が人間を意識し始めている。それはセンサーとして人間を使うために。
雪風はジャムを見つけるセンサーとして伊歩を使いたい。
そして結論。パイロット伊歩、フライトオフィサーとして零が乗ることに。
【対話と想像】
出撃準備パート。
伊歩が前席で出撃準備。
雪風、伊歩、零の3者間のコミュ障コミュニケーション!対話で相手を想像する!
出撃準備完了!桂城はのけ者。
【索敵と強襲】
出撃パートその1。
フェアリイ星ジャム基地残骸を爆撃する爆撃機3機と護衛戦闘機群を観測する為に出撃。
そして、伊歩は基地爆撃用のバンカーバスター(!今流行りの!)をジャムと識別!
そして雲?の中へ・・・。爆撃準備に入る爆撃機!爆撃を止める零!
そこはFAF基地の上空であった?????
超空間通路が出来ていた?ジャムの仕業?
一旦着陸する雪風。
【因と果】
出撃パートその2。
前席、後席を入れ替えて再出撃。爆撃機を追い、3機ロックオン。と、伊歩の目に異常が。爆撃機が1機しか見えなくなる。雪風のレーダー群がおかしくなる。
フローズンアイ起動!空気の変化を観測する特殊センサー。空間の一部が歪む!ジャムの巣か?レイフに核ミサイルを発射させる。
そしてロンバート大佐からの伊歩へのメッセージ。
お前の存在がジャムを作っている。因果関係が逆転か?
お前はジャムだ。こっちに来い。と。
帰投する雪風。
【対抗と結託】
面倒くさい対話パート。
のけ者になってイライラ半端ない桂城パート。
伊歩と桂城。フォスと桂城。
言葉は嘘をつく。言葉は真実世界から発生したノイズそのもの。ノイズから真実を拾い上げる。
【懐疑と明白】
雪風で計測された情報の分析パート。メンバー集まって。
ジャムとは?どうやら情報を食べる?そうして星間を渡っていく。
フェアリは情報を食べ尽くされ砂漠化。
そして会議中に雪風から出撃依頼を受ける!
ジャムが現れたと!
【衝突と貫通】
出撃パートその3。
レイフ出撃!雪風出撃!零と桂城のペア。
ジャム観測用のポッドの一つからジャム現るの反応があったと。
現地に向かう途中に再び空間に歪みが!フローズンアイ観測データの3次元化により、お椀のようなクラゲ形状の空間!
核ミサイル!クラゲ消失!消失エリアにタイプ7!タイプ4!タイプ6!
空中戦かくかくしかじか!
【洞察と共感】
出撃パートその3継続。
本来の目的、ポッドの捜索へ復帰。
時空間入り乱れての空中戦!伊歩が飛燕で!
雪風が戦闘空域を完全コントロール!搭乗員はオマケ?
そしてそして今作最大のイベント!ロンバート大佐を確保!
【霧の先】
出撃パートその3継続。
ロンバートからの情報で若干霧の先が見え始める?
ジャムとは情報を食う異星体。情報からエネルギーを得る。レトリックではなく。
地球とフェアリイ星の情報の格差がエネルギーとなる。その為の超空間通路。
超空間の泡の中で情報になっていたロンバート。そして人間に戻った。
そして空間の歪みジャムを追う雪風。超空間通路に向かうジャム。
超空間通路と一体化するジャム。そう超空間通路そのものがジャムだ!
抜ける!地球へ!
え?違う。地球ではない。一面金属光沢のある薄紫や緑が広がっている。
ここどこ?
「帰ってきた」と雪風は言っている・・・。どゆこと???
次巻へ続く!読書備忘録928号。
はやくはやくはやくぅ!長さん! -
Posted by ブクログ
ネタバレ日本の誇る長編SFシリーズ『戦闘妖精・雪風』の最新作が、本作『インサイト 戦闘妖精・雪風』だ。前作『アグレッサーズ』が刊行されるまでには長い間が空いていたので、まさかわずか3年で次回作が出るとは想像もしていなかった。版元情報を見ると、どうやら新三部作として企画されているらしく、少なくともあと1冊は出ることが決まっているらしい。
ジャムと呼ばれる謎の異性体と人間との戦いを描く本シリーズは、これまで長い間、フェアリィ星と呼ばれる星を舞台にしてきた。このフェアリィ星は生物がほぼ死に絶えた星であり、地球とは大きく環境が異なっている。この人類にとっては新たな荒野となる星に、人間たちはFAFと呼ばれる超国家軍事組織を整備し、姿すら明らかではないジャムと長い間戦いを続けてきた。
これまでにシリーズが進むにつれて、その戦いのバランスは少しずつジャム側に有利に傾きつつあり、前作『アグレッサーズ』ではついに地球上でFAFとジャムの戦いが発生してしまう。なんとかその時点ではジャムを消滅させることに成功したが、地球にいる人類からするとすでにフェアリィ星で戦うFAFはジャムと同じくらい異質な存在であり、FAFはジャムと対峙しつつも人類の無理解と戦わなければならないというのが、この『インサイト』での舞台背景となる。
前作までこのような流れであったために本作ではいよいよ本格的に地球が舞台になるのかと思いきや、この『インサイト』では、また戦いはフェアリィ星に戻ってくる。といっても、最近のシリーズと同じく、実際にジャムとFAF(そして主人公の零が所属する特殊戦)が戦うシーンはほとんど出てこない。そもそもジャムは一度この世界から消えてしまったことになっているので、積極的な戦闘などは起こるはずもないのだ。
その代わりと言ってはなんだが、本作では「雪風」とは何なのか?ということに、これまで以上に多くのページが割かれている。もともと人工知能体として存在する雪風は人間にとってはブラックボックスな存在であったが、最近では明確に「知性体としての自我」を持つようになってきている。もちろんその「自我」は人間がイメージするような知性や精神とは明らかに異なるのだが、少なくとも雪風は人間が思っている以上に世界を認知し、自分が何者であるのかを理解しているようなのだ。
例えば本作ではこれまでとは違い、雪風が自然言語を利用して零やコパイロットである桂城、そして前作から登場した日本人の戦闘機乗り・田村とコミュニケーションをとるようになる。もちろん雪風の本質は戦闘機なので、人間同士のように軽口を叩いたりはしないのだが、それでもこれまでは零がその挙動から雪風の“感情”を読み取る必要があったわけで、大きな変化であると言える。
そしてその雪風の変化に大きな影響を与えたのが、上述した田村の存在だ。彼女は前作『アグレッサーズ』で登場した戦闘機乗りで、人間の中で唯一“ジャムを見ることができる”という能力を持っている。軍隊という巨大な組織の中では自分を制御できないほどに攻撃性の高い田村は危険分子として扱われてしまうが、変人たちの集まるFAFと特殊戦では、彼女はむしろ「人間らしい」存在として扱われる。そしてその人間らしい彼女と零や雪風とのインタラクションの結果として、雪風と零はこれまでとはさらに異なる関係性へと変化していく。
過去の作品『グッドラック』では、零と雪風の関係は“二つの異なる世界認識用の情報処理システムを持っていて、互いにそれをサブシステムとして使うことができる複合生命体”であると表現されるような、相互接続された存在として認識されていた。ジャムを殺すことを最優先としてプログラミングされた雪風は、時に零が邪魔になったときには、彼を切り離すことをいとわないという存在だったが、それでも彼に対しては明らかに他の人間とは違って、信頼関係を寄せていたように見えていた。
本作では、その関係性がさらに変化し、雪風にとって零は「ジャムを倒すために有効な“人間”という装置」と捉えられるようになっている。本作のクライマックスで人間に戻ったロンバート大佐によれば、「ジャムは情報を食べる」存在であるとされているが、どうやら人工知性体である雪風と人間が認識するジャム、そしてこの世界は異なっていることが示唆される。
言い換えれば、二つの世界にまたがって存在することが可能なジャムを倒すためには、雪風は自己が認識する世界だけでは戦うことができない。この状態は人間にとっても同じことが言えるのだが、より純粋にジャムを殺すことに特化した雪風にとっては、自らの生存意義を見出すために、人間と共存関係、あるいは協力関係を構築することが必要不可欠であることが明らかになる。
その上、前作の段階では雪風に乗ることが可能であると思われた田村も、雪風のテストにパスすることはできず、雪風にとって零は唯一無二の存在であることが明確になる。このシリーズは、ジャムと人間の戦いを描くのと同じくらいの熱意と強度を持って、零と雪風の関係を描き続けてきたわけだが、ここにきて、ようやく彼らの関係性も最終的な状態にたどり着いたのではないかと思える。
本作でのクライマックスの戦闘では、おそらく初めて人間側が明確にジャムの存在を理解できたかのようなシーンが出てきた。以前の感想にも書いたように、この雪風シリーズは、長く続くFAFとジャムの戦いの一瞬を切り取ったものでしかない。そういったコンセプトであるからして、三部作の最後となる次回作で物語が完結するとはとても思えない。しかし、おそらく最後の1ページまでたどり着いたとしても、雪風と零がフェアリィ星の空を飛び続けるであろうことは、きっと変わらないだろうと、そんな安心感を持たせてくれるような作品だった。