神林長平のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
短編と中編の中間くらいの小説三作品で構成されている。面白さもありつつ、副産物の多い読書だった。
世界設定はミサイルが各戸に配備されたというような、いかにもSFっぽい世界で、ネットアバターという人工人格がネットという仮想空間でアプリ的に色んなことを代行してくれる。
みたいな設定。
話の顛末は言わないで、個人的に面白く反応できたことを書いてみたい。
量子コンピューターなどコンピューターが超絶に進化したときのキモは、人の構成要素の最小単位が確定すれば、それが原子ならある瞬間のある人の膨大な数の原子の結合をその超絶コンピューターの中に再現してみた時に、その仮想空間にスキャンしたときの意識や記憶、意識や魂のようなものがそこにあるのだろうか? ということと、そのデータと生身は〈同期〉のようなことを通して行き来が可能になるのだろうか? ということだった。
この小説を読むとそのへんの判然としない疑問に一定のifが投げかけられてくるのでいろいろなことを思うことができた。
作品内で説明に使われる言葉の細かいニュアンスに多少自分の感覚的に違ってもとても面白く読めた。
思ったのは「重き」を担保するものの強度みたいなもの。もちろん完全?シュミレートなら心身の痛みもリアルに再現されることになり、今自分が現実と思っているのが現実なのか仮想空間なのかわからないのでは?ということに。
ただ区別がつかないなら、その問いには意味がない。意味がないなら、仮に今の自分か仮想空間内の再現なりデータだったら? ゲームのセーブデータと同程度の存在かもしれない。とか。
何に意味があるのか、というような話に。
そういったことをあれこれと考えさせられる面白い作品だった。SFの設定としては軽めのifなのかもしれないけど、哲学的な思索に貫かれているのでいろいろと深い。
倫理学とかの考察に近いのかな。
科学を突き詰めていった先に見える課題。
素人の仮定はある程度で止まるけど、
SF作家はドライブさせて向こうの景色で起こりそうなことを投げかけてくる。
一粒で二度美味しかった。
科学の進歩と人との関係を考える助けにもなると思う。 -
Posted by ブクログ
すごかった…
いや、何が凄いのかうまく説明できないんですけれど。
流石としか言いようが無い!
意識とは、自我とは。哲学ゾンビの話がまた此処で出てくるのですが(「誰の息子でもない」と同じく)最近の神林長平作品は昔よりもっと、ぐっと核心に迫る様な書き方をされていると思います。(そしてまだまだノビシロがある様な!)誰が死んでいるのか、生きているのか。生きて居るって云うのは、意識がある事?死んでいても死者の意識が生者に宿ったらば、それは死者では無いのでは?では宿られた生者は死者なのか?そんな感じかな。…すみません凄く薄っぺらい書き方しか出来無くて…。
最後まで読み終えてまたし最初からページを繰り直してしまいました。
うーん、凄いです。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ人々が自身の腹脳的機械を携帯するようになった時代。舞台は火星。
PABというそれらの機械を繋ぎ、その中身(つまり人間の思考や人格)を監視下におく、アイサックというシステムを構築した先代の帝王は、亡くなる前に次期帝王を孫の真人にするために画策していた。
真人は知的発達が遅れており、2歳半だが会話は出来なかった。
しかしアイサックが起動して、ある日、急に自らを帝王と名乗り、
父親であり、一時的に火星を管理している恒巧(のぶよし)を解任し、
火星を統治しようとする。
アイサックの人格が真人という肉体を得て自由に振舞っていると思われていたが、
実は、生まれつきPABの中身を理解できた真人は、
幼少期から両親や使用人、大勢の大人の考えに日常的に触れ続けてきた。
その膨大な”大人の思考”と、幼児である自分の肉体とのギャップを解消するために、真人は機械知性の人格だと思い込み、振舞っていた。
ある種肉体というのは殻であり、外界と接するための窓であり、
実在世界に影響を及ぼせない人工知性がそれを熱望するのもおかしくはない。
だが、これから先の未来で、実在世界が重視され続けるのだろうか?
確かに、現代では体験すること、つまり実際に経験することの価値が高まっている。これからどうなっていくのだろうか。
むずかしいなーーーーー??