神林長平のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
シリーズ3冊目。
異星体との闘いを描いたSFながら、哲学的というか、自己とは何か、ということを掘り下げていくのは変わらないけど、今回は量子論も絡んできた。「素人が一知半解で量子論を持ち出すんじゃない」と予防線も張っている(笑)。
禅問答的な会話の応酬が多いので、そういうのが嫌いな人にはかなりウザいかもしれないが、私は興味深く読んだ。作家自身の自問自答を覗かせてもらっているような感じ。
一冊目から気になっているのは、基本的な設定に関すること。
ジャムとかフェアリィ星とか、誰がいつどういう理由で名付けたのか(ジャムが名乗るはずもないし)説明されていないように思う。
基地の建材とか燃料とか、もっと -
Posted by ブクログ
ネタバレ『戦いには人間が必要だよ』零は唐突に言った。『でもどうしてだろう』少佐は退室しかけた足を止めて振り返った。『人間に仕掛けられた戦争だからな。すべてを機械に代理させるわけにはいかんだろうさ』
なんとなく敬遠していたタイトルだったが、読み進めるうちにストーリーと世界観、そして上の会話にも含まれている作品のテーマに夢中になった。
突然異空間につながった南極を通して地球に侵攻してきた異星体・ジャムと戦う超国家組織・フェアリイ空軍(FAF)所属の深井零少尉は、その中でも情報収集を至上任務とする特殊部隊の一員で、彼らの任務は何事があっても情報を持ち帰ることである。そのために彼らは高性能な戦術戦闘電子偵 -
Posted by ブクログ
「戦っているのは誰と誰だ…」
人類は南極大陸に突如現れた超空間通路を通じて襲ってきた正体不明の異性知識体「ジャム」を押し返し、通路の向こうの「惑星フェアリィ」にFAFを設置し、地球防衛の最前線とした。そこが物語の舞台。
「ジャム」は、相手が地球型知識攻撃機械であると認識し、有機体(人間)がなぜその周りをウロチョロしているのか、理解されていない可能性が、物語に示唆されている。
地球側の防衛機械(AIなど)も次第に学習し、ヒトではなく「機械」を防御しようとするようになる…。
人類の発想は、地球外生命体=有機体と考え、現実社会の研究でも「水」「温度」などの地球に近い環境下での「有機体」の存在確 -
Posted by ブクログ
うーん、難しい。
筆致力は前2作より更に上がっている、気がする。
だけど内容はより哲学的・形而上学的なものになり過ぎて、理解するのが本当に難しい。メタ認知に次ぐメタ認知。空中戦でも地上戦でもなく、心理戦がメインとなるジャムとの戦争。
特にロンバート大佐の言うこと、本当に訳わからん。
自己、言葉、自意識、潜在意識、仮想、現実、虚構、神、機械、人間、、、これらのキーワードが、それぞれ様々な接続詞や等号で複雑に結ばれて出来上がったものがこの雪風シリーズのテーマなのだけど、残念ながら僕にそれを上手く説明する語彙力は無い。完全に理解できてもいない。
それでも途中で読むことをやめられないのは先述の通り -
Posted by ブクログ
PAB、アイサック、機械知性と相変わらずSF好きの琴線をかき鳴らす設定がバンバン出て来て最高なんだけど、前作に比べてスケールが小さくて少し残念だった。
良く言えば丁寧な心理描写も冗長気味で、作中で真理奈が「パブる」と皮肉っていた気持ちに近いものを感じてしまうところがあった。対話、言葉、そしてそれらから形成される自己の魂たるPABと言う設定のためには不可欠なプロセスなんだろうけど。
火星人がPABに依存する様子は現代のスマホやSNSそのもので、30年近く前からこうした未来を予測していたのかなと。この作者は他の作品でも予言めいたことを書いてて先見の明が鋭すぎて少し怖い。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ…ぼくはいつだってそうなのだ、見も知らぬ相手に自分の生の声を発信することには興味がない。だれに読まれるのかわからないままに語るなんてことはぼくにはできない、誤読されたら訂正のしようがないではないか、「それは違う、ぼくが言っているのはそういう意味ではないのだ」と言えない、相手からの応答が得られない、そんな一方向性の言い方で自分の本音を語るつもりはぼくにはない。
しかしフィクションなら、小説という<虚構>にすれば、それができる。意識的に嘘を語るというのではない。どのように読まれようがかまわないという覚悟で書かれるのがフィクションであり、小説というものだと、ぼくが言いたいのはそういうことだ。むろん -
Posted by ブクログ
神林長平作品を読み始めて、既に35年。初めて積読になってしまった!?いや、2冊目か?
面白くないわけじゃないんだけど、最近は軽いものばっかり読んでいたんで、ちょっと疲れてしまった。。。
4年弱ぶりに再度チャレンジ。改めて、プロットは面白そう。
ついに読破。素直に面白かった。神林長平らしい小説。言葉にする、観る、意識する、事で「活きる」ことになる、真実になる。
しかし、真の世界がカオスで、コスモスが、虚構の、フィクションの世界だなんて、誰が理解出来ようか!?自分が意識した部分だけが「現実」として成立しているなんて。じゃあ、自分の思うがままの世界になっているかと言うと、そうでは無い。それなら、 -
Posted by ブクログ
まずどうでもいいことから。
登場人物の名前が難読というか、何人かの読み方がなかなか覚えられず、何度も前に戻った。三部作の1作目もそうだったかな。
筋立て・設定は面白いし、一つ間違えばこれに近いことは将来起こりうる気もする。
釈然としない部分も残るし(なんで日本人しか出てこないのか?とか、競合企業はなかったのか?とか)小説としてもう少し練れたものにできたのではとも思うけど、それは大した問題ではないという気にさせる、テーマの大きさ。
自己とは何か。
言語によって育てられていく、副脳としてのPAB。それとの会話で顕在化する、疑似的な自己との対話。それを宗教に近い次元にまで推し進めること。創始者の