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Posted by ブクログ
神林長平作品を読み始めて、既に35年。初めて積読になってしまった!?いや、2冊目か?
面白くないわけじゃないんだけど、最近は軽いものばっかり読んでいたんで、ちょっと疲れてしまった。。。
4年弱ぶりに再度チャレンジ。改めて、プロットは面白そう。
ついに読破。素直に面白かった。神林長平らしい小説。言葉にする、観る、意識する、事で「活きる」ことになる、真実になる。
しかし、真の世界がカオスで、コスモスが、虚構の、フィクションの世界だなんて、誰が理解出来ようか!?自分が意識した部分だけが「現実」として成立しているなんて。じゃあ、自分の思うがままの世界になっているかと言うと、そうでは無い。それなら、意識していると感じている自分そのものも、実は他人の意識の産物であるのか?などと、考えれば考えるほど、悲しくなってくる。よくぞまぁ、考えつくものだ、と、今まで彼の書いた作品を読むたびに感じた想いを、改めて感じさせられた。
解説を読んで気がついたのだが、確かに綾田カイムさん以外の登場人物は女性だったんだ(ゲートキーパーを除く)。余り違和感なかったなぁ。綾田って、アイデンティティ、を意味してるのかな?
Posted by ブクログ
デジタルデータだけを改変・消滅させる「情報震」と呼ばれる現象のために崩壊の淵に追い込まれた世界で、なお任務を遂行しようとする「情報軍」中尉。だが今や無人の都市となった東京で部下たちは姿を消し、手書きの戦闘日誌の記述や時間さえもが信頼性を失い始める。
一方、他人の意識を読みとることができる神経網を腹部につくられてしまった公安捜査官は、加害者は自分自身に違いないという感覚にとまどいながら殺人事件を追いつつも、かつて愛した女の記憶に耽溺していく…。
2つの物語の語り手はどうやら双子らしいが、同じ時間と空間に生きてはいないようだ。2つの東京は、どうリンクするのだろうか?
デジタル信号のみを「揺らす」だけの震災ならば現実への影響などほとんど皆無なのではないか、とも思いたくなるが、この世界の人々は、コミュニケーション基盤が破壊されたことによってたちまち疑心暗鬼に陥り、各地で発生した戦争のためにわずか数日のうちに破滅に陥ったのだという。おそらくは人間の存在こそが引き起こしたと思われるこの「情報震」という謎の現象には、東日本大震災後にツイッターで飛び交ったデマと、露呈された都市の脆弱さを思い出さずにいられない。実際、「都市」のゲートキーパーが指摘するように、われわれの認知の外から到来した「未曾有の天災」という概念は、「人類が、自らが生み出した技術を制御できなかったために絶滅に追い込まれた、という事実から目をそらすために創りだした物語(フィクション)」にほかならないのだから。
他人の意識と直接つながることができるかのようなICT技術があたえる感覚はまさに「偽テレパシー」に過ぎず、無数の人々が自己像(アバター)を投影しながら膨張していくネットワーク空間は、集積された人々の意識が破壊衝動へと加速化されて暴力的に現実世界に逆流する可能性をはらんでいる。「3.11」という現象はそうした人間の関係性に走る断層を露わにしたといえるのかもしれない。
とはいえ、この物語は素朴に「リアル」な人間関係への回帰をうながすわけではない。技術に助けられて集合意識への暴走すら生み出してしまうネットワーク空間を支えているものは、自己像が他者の像と交わるメタな認識、コミュニケーションの空間なくしては存在しえない人間の本質でもあるのだ。カイムが愛した女の肉体の記憶から、彼女との関係性をとりまく「都市」そのものを構築し得たことは、つねにすでに仮想を現実としている人間にとって希望であるのかもしれないが、その構築物が現実における肉体の破壊によって分裂したこともまた、人間にとっては希望と呼んでいいのかもしれないとも思う。
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小説・文芸
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