神林長平のレビュー一覧
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なぜか人間の臓器が崩壊してしまうという奇病が突然蔓延し、人類は高度な人工臓器の開発と臓器移植技術により最初の混乱から脱した。
その後、人工臓器市場を独占していたライトジーン社が解体され、臓器製造は各部門ごとに新たな会社として独立した。
主人公の「菊月虹」は、人工臓器をめぐる犯罪を取り締まる中央署第4課に雇われている。実は彼はかつてライトジーン社が製造した人造人間で、「サイファ」と呼ばれる特殊な共感能力を持つ。普通人の思考を読んだり、思念の力だけで、普通人の心臓をも止めたりできるスゴイ能力だ。
彼はある事件で知り合った新米刑事タイス・ヴィーと共に人工臓器が絡む事件を解決する…
こんなに派手な設定なのに、アクションは少ない。最初はちょっと拍子抜けした。本とウィスキーを愛する主人公のコウさんが、社会との関わりを最小にしている自由人で、40代という体力はないが自己の確立したオトナで、さらに「テレパシーより喋ったほうがラク」という考えの持ち主だからなのかもしれない。
中篇7話の連作で一話ずつ事件が解決するので、先をあせらずゆっくり読めた。コウさんが容疑者にされる「ダーマキスの皮膚」とタイスのはしゃぎっぷりが可愛らしい「ヤーンの声」が面白かった。 -
Posted by ブクログ
神林氏の単行本二冊目にして長編第一作、実は初読。汚染された地上に住むアンドロイドと、彼らが生み出すエネルギーを利用して地下で生きる人間たちの物語……と書くと、ごくありきたりな設定のごくありきたりなSF作品のようだが、リアルで緻密な科学技術設定とリアルで切ない登場キャラクターたちの感情が同居する神林作品は、やはり「ありきたり」では終わらない。硬派で王道な“サイエンス・フィクション”なのに、そうした理系の理論ベース上に、繊細微妙な文系の世界――まさに“文学”世界が広がっているこの持ち味が本当に好きだ、と再認識。
「人間」の生きる目的、「人間」を「人間」たらしめているものは何か? アンドロイドという異種生物(バイオ体なので実際に「生物」)と比較せねばそれは見つけられないものなのか? 読後感は切なく、でも新しい世界への期待にも満ちている。批判すべき点はあっても悲観すべきではない、終末が来てもその先に新たな始まりがあるという姿勢で世界に臨む神林作品の目線は、作品世界がどう展開しようともタイトルの祈りの言葉通りにあたたかい。“SFとして”というジャンル分けは不要な傑作だと思う。 -
Posted by ブクログ
フムン。久しぶりの神林だけど、相変わらずはずれのない作家だよなぁ。はずれになる理由があるとするならハヤカワのサイズがでかくなったぐらい。早く戻せ馬鹿。で、感想。おもしれぇ。月並みな表現だが本当に面白い。何がってまず、突如「ここは死後の世界」とかなる。異次元とかじゃない。そして、死とは何か、意識とは何かの解釈。この解釈が本書の鍵となる。この人だいたい意識とは?世界は本当に見えたとおりなのか?って題材だけど毎回解釈が違ったり視点が違う本を書いてる。すごいと思う。こんだけ数を出してるのに解釈をほぼ毎回異なってるのだ。
雪風、海賊シリーズに次ぐ面白さ。神林全開。