あらすじ
体内の臓器崩壊現象が頻発する未来社会。かつて人工臓器市場を独占していた巨大メーカー・ライトジーン社なき今、臓器をめぐる奇怪な現象や犯罪が続発していた。都会の片隅で自由に暮らし、本とウィスキーを愛する菊月虹は、ライトジーン社が遺した人造人間。虹は市警の新米刑事・タイスと共に臓器犯罪を次々と解決するが、やがて虹と彼の兄・MJの出生の秘密に関わる陰謀が彼を襲う。傑作ハードボイルドSFの決定版!
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Posted by ブクログ
とても良かった。表紙絵の遠藤浩輝のマンガにしばらくハマってた。
主人公はウィスキー好きの自由を満喫している人造人間。
皆さんがおっしゃるように、とても読みやすかった。厚さの割に、あっという間に読み終わってしまった。
「自分の気の持ちようで世界はいかようにも変化する、というのは正しいかもしれないが、自分の気持ちというのは自分だけで独立しているものではないことに気づかない限り、気分は変えられないものだ。」
神林作品を読んでいると、その時その時に、自分が抱えている心の中のもやもやを、代弁してくれる表現を見つけることが多い。それで悩みが霧消するわけではないけれど、モヤモヤが言葉に変換されて目に見えるオブジェクトになるだけで、心が軽くなった気がするのは確か。歯医者で歯石を取ってもらった直後のように。(また時間が経つとモヤモヤに包まれるのだけれど。)
戦闘妖精雪風や敵は海賊でも同じような体験をした。
Posted by ブクログ
なぜか人間の臓器が崩壊してしまうという奇病が突然蔓延し、人類は高度な人工臓器の開発と臓器移植技術により最初の混乱から脱した。
その後、人工臓器市場を独占していたライトジーン社が解体され、臓器製造は各部門ごとに新たな会社として独立した。
主人公の「菊月虹」は、人工臓器をめぐる犯罪を取り締まる中央署第4課に雇われている。実は彼はかつてライトジーン社が製造した人造人間で、「サイファ」と呼ばれる特殊な共感能力を持つ。普通人の思考を読んだり、思念の力だけで、普通人の心臓をも止めたりできるスゴイ能力だ。
彼はある事件で知り合った新米刑事タイス・ヴィーと共に人工臓器が絡む事件を解決する…
こんなに派手な設定なのに、アクションは少ない。最初はちょっと拍子抜けした。本とウィスキーを愛する主人公のコウさんが、社会との関わりを最小にしている自由人で、40代という体力はないが自己の確立したオトナで、さらに「テレパシーより喋ったほうがラク」という考えの持ち主だからなのかもしれない。
中篇7話の連作で一話ずつ事件が解決するので、先をあせらずゆっくり読めた。コウさんが容疑者にされる「ダーマキスの皮膚」とタイスのはしゃぎっぷりが可愛らしい「ヤーンの声」が面白かった。
Posted by ブクログ
大っっっっ好き!!!コウが本当にかっこよくて!!ヘタレなところもまた大好き!!
神林作品との出会いの第一作です。高校生の時に出会って早5年。何度も読みたくなります。
Posted by ブクログ
一話一話ですごいまとまっていて、とても理解しやすかったです。作者の伝えたいことが自分なりに理解できたと思っています。ですが、もっと深くしてもいいと思いました。
Posted by ブクログ
体内の臓器崩壊現象が頻発する未来社会。
かつて人工臓器市場を独占していた
巨大メーカー・ライトジーン社なき今、
臓器をめぐる奇怪な現象や犯罪が続発していた。
都会の片隅で自由に暮らし、本とウィスキーを愛する菊月虹は、
ライトジーン社が遺した人造人間。
虹は市警の新米刑事・タイスと共に臓器犯罪を次々と解決するが、
やがて虹と彼の兄・MJの出生の秘密に関わる陰謀が彼を襲う。
神林作品の中で一番好きかも。
これもまた人と機械をテーマにしている
何度も読みたい一作。
Posted by ブクログ
コウさんがとてもいいオッサン。アリにイライラする超能力者www
超能力者vs異形の怪物、という構図がずっと続くのかと思ったらそうではなく。
めまぐるしいバトルというよりは頭脳戦中心のミステリみたいな印象でした。
「ダーマキスの皮膚」「エグザントスの骨」は、読んでいてぞっとしたり悲しくなったり。
Posted by ブクログ
ライトジーン社によって開発された人造人間、コウ。
サイファというサイキックのような能力を使って様々な事件を解決していく。
ハードボイルドSFだそうで…。
そこここに香る哲学的語りが絶妙。
人間とは?生きる意味とは?みたいな。
コウがカッコ良くもない中年オヤジってとこが最高です。
読書とウイスキーを飲むのだけが趣味で、出来れば働きたくないとか。
私にそっくりだよ!!!(私の場合はもっぱらビールですが…)
カッコ悪い主人公最高!!!!
Posted by ブクログ
本作を読むのは二度目だ。最初に読んだのはたぶん10年前。とても印象が強かった。本屋の新作棚に並んでるのを見たとき、持ってるにもかかわらず思わず買ってしまった。再読してやはり面白かった。
主人公は本とウィスキーを愛する設定だ。「本はうるさくなくていい」という独り言に共感。
Posted by ブクログ
駄目になった体の一部分を取り替えて生きながらえることのできる未来、
一部の人々は超能力を使う力を持っており、サイファと呼ばれていた。
複数の短編(短編というほど短くもないか)から、一本のストーリーが作られている。
かなり読みやすく、内容も面白かった。
Posted by ブクログ
映画「ブレードランナー」の影響を色濃く残す作品。発表当時は朝日ソノラマだったせいかライトノベルを意識した表現方法などもありますが、ただのライトノベルでは終わらない神林作品。
臓器を変えていって長寿命化したでも脳も健康でいられないのではないかというのが現代的な不安になるかと思います。じゃあ、脳を少しづつ変えていったらどうなるのだろう?自分というものは維持できるのだろうか?などと思い巡らせてしまいます。
Posted by ブクログ
ある種の超能力をもった人造人間が主人公となり、人工臓器に絡んだ陰謀に関わっていく全7編の短篇集です。全編中々に味わい深い作品が揃っていますが、多くの謎が明らかにされる「ザインの卵」が特に良かったです。
Posted by ブクログ
神林作品の中ではさらりと読める連作集ではないでしょうか。
思念を読み、思念を力に変える能力を持つ“サイファ”、その始まりの人造人間――のはずなのに、主人公はひどく人間くさい。否、人間社会を満喫している。
人工臓器を使うことを余儀なくされた都市での、酒と本を愛する気ままな男の事件簿のようである。
ライトノベル調に説明すると“四十路に入った俺の兄貴は17才の強気美女だが全然ときめかないぜ(俺は)”だった。
――間違いはないはずだ(笑)。
“だから友よ、生の本を読め”
Posted by ブクログ
副題は「人造人間 菊月虹のΨ難」。
超能力は疲れるし効率が悪いとぼやき、ウィスキーを嗜みつつ古本の頁をめくり、家賃の催促に怯えながら生活の糧を得るための仕事を探す。
優雅に見えなくもない貧乏生活を飄々と楽しむ最強の人造人間。
その出自と能力のせいで、厄介事に次々と巻き込まれるのです。
グロテスクな描写もあるし、哲学的戯れ言が長いところもあるけど、ライトな読み心地です。
楽しめました。
Posted by ブクログ
面白かったー!身体の臓器が壊れていく奇病が人々を怯えさせる世界と、そこに生み出された二人の人造人間。特殊な設定が活かされたストーリーにいつしか夢中になってた。
Posted by ブクログ
腕、心臓、眼、皮膚、骨、声、そして卵子。ヒトを形づくる器官と臓器を人工的に作れるようになった未来。人工器官もヒトに属する限りヒトの情念と無関係の只のパーツとしては存在しない。人造人間、自由人、超能力者、人工器官製造会社、警察と様々入り乱れるSF大作だけど、一気に読めて面白過ぎ。
Posted by ブクログ
人類が臓器の突然停止に見舞われ、人工臓器に頼らざる得ない未来のお話。
活躍するのはサイファーと呼ばれる超能力者にして無法者の中年オヤジの酔払いで、浪花節よりハードボイルドなテイストの物語。
主人公が関わった事件を短編として綴り一冊になっています。
神林長平さんの小説にしては、とても読みやすいなぁ…と素直に思いました。
Posted by ブクログ
アルカの腕、バトルウッドの心臓、セシルの眼、ダーマキスの皮膚、エグザントスの骨、ヤーンの声、ザインの卵の7編で構成される、ハーボドイルドSF短編集。
ハードボイルド……なのかなぁ。
ハードボイルドって語源は「堅ゆで卵」。つまり状況や環境、感情に左右されないって意味だと思うんですが、この物語の主人公は結構感情で動いてたりする部分があるように見受けられて、あんまりハードボイルド感はありませんでした。ウィスキー好きとか、詩集がすきとか。そういう所はハードボイルドといえなくもないですけど。
物語のテーマは臓器崩壊と人工臓器を巡る人々の生き方的な内容。それらのやり取りサイファという超能力者である主人公視点で描かれています。サイファ自身は臓器崩壊を起こさないため、その描写はどことなく俯瞰的な感じ。
しかし読んでいて「ああ、十年前の小説だなぁ」と思うことしきり。なんというか、口調(文調・文体)がとても若い。
短編集ではありますが、サイファと臓器メーカーの関係が次第に明らかになっていく構成はミステリーのようで、読んでいてテンポがいいです。
Posted by ブクログ
人類が原因不明の「臓器崩壊」に見舞われている近未来を舞台にしたSFの連作短編集です。
人工臓器のメーカーであるライトジーン社が解体され、この会社によってつくり出された人造人間のコウこと菊月虹は、ライトジーン市警察中央署第四課の申大為の依頼で仕事を引き受けつつ、自由人としての生活を享受しています。彼らには、「サイファ」と呼ばれる、ひとの心を読んだり操ったりすることのできる能力があり、新米刑事のタイス・ヴィーや、コウとおなじくライトジーン社によって生み出されたもうひとりの人造人間であるMJらとかかわりながら、さまざまな事件を解決していきます。
ウィスキーをこよなく愛するコウの、カッコ悪くてカッコいい生きざまに魅かれました。