神林長平のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
ネタバレシビレました。
バリバリにハードな設定の中、生きるとは、生命とは、信頼とは、友情とは、理想とは、、、といった古典的・普遍的なテーマを、真剣に語り合い思い悩む主人公達。
アートルーパーが誕生から5年と若いこと、そして命がけの状況がなければ、おそらく気恥ずかしさが勝るほどに真剣で、対する人間同士の駆け引きややりとりの姑息さが際立つ。
改めて「あなたの魂に安らぎあれ」と「帝王の殻」を読み返すと、感動というのか、形容し難い圧倒的な感情の波に襲われて、ちょっとどうしていいか判らない感じ。
こうして理想は実を結んだ。
彼らのことを覚えている人達が、彼らの心血を注いだ新しい世界の時間を進めていく。
いやほんと、素晴らしかった。
でもほんと、いつもながら名前読みにくいねー(笑)。
-
Posted by ブクログ
ネタバレ物を創る分野に関わるうちに、自分と、ひいては人間の能力の限界を実感し、ある種悟りの境地に達したのだ––––と言えばおおげさかもしれないが、それは現実世界のなかで自分がどこに位置するのか、自分の立場というものを明確に得るということだ。創造してきた者の自信と言えるかもしれない。世界そのものは変えられないにしても、世界観は自分の意識でどのようにも変化する、そもそも世界とはそういうものなのだと、子安は信じているようだ。世界観は自分で創るものであり、創ることができる、という自信があればこそに違いない。
私は役所でずっと事務職に関わってきて、なんの創造もしてもなかった。だがそれがどうしたと子安なら言うに違いない。どんな境遇でも創造行為は可能だ、と。私はただやらなかっただけなのだ。
同じ仕事をしていてもそこに創造の喜びを得る者もいれば、そうでない人間もいるだろうから感受性の問題なのだろう。仕事上で難しいのなら趣味でやればいいのだ。私の父がそうだった。子安の父親のリンゴ作りもそうなのだ。ヒトはなにかを創らずにはいられなくて、それができないとき、人は病気になる。
「人間モ飛行機トイウモノヲ創ッタ。物ヲ運ビタイカラデハナイ、タダ飛ビタカッタノダ」
意識とは、かつて経験したことのない、まったく新しい事態に直面したときに、それに対処するための手順を自分で生成する能力だろう、とキリアはアンドロイドギアとの生活で、そう思うようになっていた。つまり意識というのは、用意されていないルーチン・プログラムを新たに自分で創り出す能力なのだ。ルールを創造する能力であり、想像力は意識から生まれる。人間が、物や道徳や社会を創り出してきたのは、意識というものが備わっていたからだ。いまのアンドロイドギアには、その能力がない。 -
Posted by ブクログ
言葉という武器。認識というトラップ。インターフェイスという戦場。
不肖鴨、もぅ20年以上SFを読み続けていますが、これほど過激な(物理的な意味において、ではなく、構造的な意味においてです)戦闘シーンを目の当たりにしたのは初めてです。
シリーズ第一作では、「人間と機械の相克」が主なテーマでした。が、この第三作に至っては、第一作のテーマすら小さいと思えてしまうぐらい、斜め上の世界に到達しています。もぅ本当に、タイトルで損をしている作品。爽快なスカイ・アクションを期待していると肩すかしをくらいますが、それ以上に激しい「思考の格闘」が、壮絶なヴィジョンと共に眼前に立ち現れます。
作品の前半部分は、主要な登場人物が主観的な目線で、ひたすら自己の思考を執拗なまでに克明に詳細に記載していきます。読者としてはかなり冗長なフレーズなんですが、物語が大きな展開を見せる後半部分において、ここまでもどかしいストーリー展開の理由が明らかにされます。
この作品を読むという、その行為さえが世界観に取り込まれているというこの驚愕。
それらの重層的構造を扨措いても、ラストシーンの雪風の美しさよ!続編を切に期待します。 -
Posted by ブクログ
とても良かった。表紙絵の遠藤浩輝のマンガにしばらくハマってた。
主人公はウィスキー好きの自由を満喫している人造人間。
皆さんがおっしゃるように、とても読みやすかった。厚さの割に、あっという間に読み終わってしまった。
「自分の気の持ちようで世界はいかようにも変化する、というのは正しいかもしれないが、自分の気持ちというのは自分だけで独立しているものではないことに気づかない限り、気分は変えられないものだ。」
神林作品を読んでいると、その時その時に、自分が抱えている心の中のもやもやを、代弁してくれる表現を見つけることが多い。それで悩みが霧消するわけではないけれど、モヤモヤが言葉に変換されて目に見えるオブジェクトになるだけで、心が軽くなった気がするのは確か。歯医者で歯石を取ってもらった直後のように。(また時間が経つとモヤモヤに包まれるのだけれど。)
戦闘妖精雪風や敵は海賊でも同じような体験をした。