神林長平のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
物語は、著述支援AIを利用して執筆していたつもりが、気づかぬ間にAIによって書かれたものになり変わっていた、という語り手の宣言から始まる。
この、AIを利用しているつもりが、いつの間にかAIに取り込まれてしまっていた、みたいな神林長平の小説でしばしば見るこの設定を最初に開陳されて、どういう話になるのかいきなり身構えることになったのだが、話の内容としては、一言でいえばドタバタ劇っぽい感じだ。
王女を探す侍女シャルと、シャルに王女探しを依頼された大海賊・匋 (ヨウ) 冥、海賊を追うラテルとアプロの海賊課刑事コンビを中心に物語が展開されていく。
ユーモラスな展開に毒気を抜かれながらも、章立てがopen level ~ break in level と表現されていたり、登場人物が数値データとして定義されていたりと、AI仕立てになっていて、どのように話に絡んでいくのかドキドキさせられながらも、後半の展開でその期待を裏切らない。タイトルの『海賊版』ってそういうことかァ~~ってなった。
話も面白かったけれど、キャラクターも好きだな。特に黒猫”型”刑事のアプロ。読んでいる間、頭のなかで、アプロがそれはもう動く動く。ねこの造形がはっきりイメージしやすいからだろうか。首につけたインタセプターで敵を攻撃するときとか、ジャンプしつつ、前脚を首元に縮めながら、からだをくの字に曲げてレーザービームを発射しているアプロの姿がありありと思い浮かんだ。ていうか口の悪い喋る黒猫ってかわいいな。それだけで好きかも。
面白い小説でした。 -
Posted by ブクログ
元々SFは好きなジャンルの一つでしたが、小説でSFは読んだことがなかったので、これが初めて手に取ったSF小説でした。
普段小説は殆ど読まず、漫画ばかりでしたが(理由あって小説を読むのがずっと苦痛でした)最近手に取ったこの作品が小説を読むことの楽しさを教えてくれました。
ただでさえSF小説は難解な描写が多く人を選ぶのだと思いますが、この作品は特に人を選ぶものだと思います。
ただ、合う人にはとことん合うと思いました。
私は読んでいて終始鳥肌が立ちました。
今までも好きな漫画は繰り返し何度も読み返したりしたことはありましたが、小説で繰り返し読み返したい、続編も買って読みたいと思ったのは今のところこれが初めてです。
「面白かった」とか「よかった」などという言葉では言い表せられないような、鳥肌の立つ凄い作品でした。
とても素晴らしい作品に出会えてよかったです。 -
Posted by ブクログ
ネタバレシビレました。
バリバリにハードな設定の中、生きるとは、生命とは、信頼とは、友情とは、理想とは、、、といった古典的・普遍的なテーマを、真剣に語り合い思い悩む主人公達。
アートルーパーが誕生から5年と若いこと、そして命がけの状況がなければ、おそらく気恥ずかしさが勝るほどに真剣で、対する人間同士の駆け引きややりとりの姑息さが際立つ。
改めて「あなたの魂に安らぎあれ」と「帝王の殻」を読み返すと、感動というのか、形容し難い圧倒的な感情の波に襲われて、ちょっとどうしていいか判らない感じ。
こうして理想は実を結んだ。
彼らのことを覚えている人達が、彼らの心血を注いだ新しい世界の時間を進めていく。
いやほんと、素晴らしかった。
でもほんと、いつもながら名前読みにくいねー(笑)。
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Posted by ブクログ
ネタバレ物を創る分野に関わるうちに、自分と、ひいては人間の能力の限界を実感し、ある種悟りの境地に達したのだ––––と言えばおおげさかもしれないが、それは現実世界のなかで自分がどこに位置するのか、自分の立場というものを明確に得るということだ。創造してきた者の自信と言えるかもしれない。世界そのものは変えられないにしても、世界観は自分の意識でどのようにも変化する、そもそも世界とはそういうものなのだと、子安は信じているようだ。世界観は自分で創るものであり、創ることができる、という自信があればこそに違いない。
私は役所でずっと事務職に関わってきて、なんの創造もしてもなかった。だがそれがどうしたと子安なら言うに違いない。どんな境遇でも創造行為は可能だ、と。私はただやらなかっただけなのだ。
同じ仕事をしていてもそこに創造の喜びを得る者もいれば、そうでない人間もいるだろうから感受性の問題なのだろう。仕事上で難しいのなら趣味でやればいいのだ。私の父がそうだった。子安の父親のリンゴ作りもそうなのだ。ヒトはなにかを創らずにはいられなくて、それができないとき、人は病気になる。
「人間モ飛行機トイウモノヲ創ッタ。物ヲ運ビタイカラデハナイ、タダ飛ビタカッタノダ」
意識とは、かつて経験したことのない、まったく新しい事態に直面したときに、それに対処するための手順を自分で生成する能力だろう、とキリアはアンドロイドギアとの生活で、そう思うようになっていた。つまり意識というのは、用意されていないルーチン・プログラムを新たに自分で創り出す能力なのだ。ルールを創造する能力であり、想像力は意識から生まれる。人間が、物や道徳や社会を創り出してきたのは、意識というものが備わっていたからだ。いまのアンドロイドギアには、その能力がない。