紅玉いづきのレビュー一覧
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もう何もかもがいやだと、逃げ出したいと考える少女のチル。
「我が王よ」
突如降ってきた黄金から囁かれたその言葉にさらわれ、チルは異世界へと迷い込む。
自分には何もできないと諦めの境地に達している彼女は、本人の知らぬ間に勝手に託された運命のもと、選択しなければならない。彼女の生きる道を。
チルの周りに確かに在る手の温もり。国の象徴である織物の彩り、刺繍の手触り。肌で感じる異国の動乱。
すべてのものが鮮やかに浮かび上がってくる。
チルの進む道を物語の最後まで共に歩んできたように感じる。
そして共に進んできた彼女はこの物語を一度終え、再び新たな道を歩き出すのだ。その道に幸あらんことを。
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Posted by ブクログ
最初はミミズクの言葉の稚拙さに入り込めなかったが、話が進むにつれて面白く感じた。
特に記憶を取り戻してからのミミズクの哀しみには感情移入した。
外伝で、アン・デュークとオリエッタの聖騎士・剣の巫女になる前日譚と、ミミズクとフクロウが去った後の後日譚で、こういうハッピーエンドなのかと驚き。
他の部族や種族が登場しないからか、ややこの世界に広がりを感じづらかったのと、今まで夜の王に何かされてきた訳ではないのにレッドアーク国が敵視していたのかという所に疑問を感じたが、夜の王という新たなファンタジー作品を読ませてくれたことに感謝します。
読みやすいファンタジーです。 -
Posted by ブクログ
この前読んだ「ミミズクと夜の王」の続編。あれから5年後の物語。
占の国ヴィオンに呪いの言葉を吐いて生きる王女エルザがいた。生まれ落ちると同時に国を呪って城下へ捨てられた彼女は、政略によって城に呼び戻され、隣国に嫁ぐことを強いられる。
魔術によって唯一の武器である声を奪われ隣国に送られた彼女を迎えたのは、レッドアークの“異形の王子”クローディアスだった…というところから進む物語。
前作は省略された背景と主人公の刹那の感情の振れにやや戸惑いを持って読んだのだったが、今回は前作巻末の外伝でお馴染みになった人たちが中心のお話。
そうなれば、前作で戸惑った素早い場面転換と細かな機微が省略された感情の -
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視覚に訴える神秘的な情景、静謐な世界観あふれる背景、主人公の純真さに包まれる読書でした。本書は決してラノベ作品でなく、単なるファンタジーでもなく、大人も楽しめる質の高い児童文学、と言っても過言ではない印象です。
主人公は、手枷・足枷の鎖、額には「332」の焼きゴテがあり、自らを「ミミズク」と名乗る少女。ミミズクはある村の奴隷で、壮絶な過去をもっていました。冒頭から、悲壮感を全く感じさせず、少し足りないのかな?と思わせる天真爛漫さぶりです。
しかし、ミミズクのこれらの言動は、人間として扱われず、傷付き、壊された結果で、ミミズクの純真さは逆にとても切ないです。
物語は、ミミズクが美しい -
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舞台は大正
新聞記者の紺がとある家から渡された“箱”
その“箱”について“箱娘”うららに尋ねに行ったのがこの物語の始まり
様々な箱にまつわる事件をうららと紺が解決していく
一族のしがらみ、女性軽視の時代
何もかもが今と違い不自由に感じ、読みながら息が詰まる思いがする
私からしたら大正時代は遠い昔の時代に感じる
でも確かに存在し、実際に時代のしがらみに泣いた女性たちはたくさんいたんだろうなと思うとやるせない
不自由な中でも強かに生きる女性たちには頭が上がらない
うららの「開けなくてもいい箱はある」というセリフは全くその通り
知らなくて良い真実があるし、知りたくない真実もある
でもそれをうらら -
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過激で美しい少女たちの一瞬の灯火に心囚われるようだ
サーカスという少女たちの舞台
サーカスの曲芸を行う為に少女たちは曲芸学校へ進学をしてから花開く
この世界を読んだ時、宝塚の女の園を想像した
大変過酷と聞くその場所ときっとこの学校は似ていることだろう
入るのはひと握りの人材で、入ったとしても残れることすら危うく、そして時には相手を妬み嫉む
そんな学校を出てからも、名持ちの1人として演じることが出来るのは極わずかの狭き門
物語はそんな名持ちの子達の物語
双子の姉妹が演じたのはブランコ乗りのサン=テグジュペリ
本来は姉である涙海(るう)ちゃんが演じていたが、事故により妹の愛涙(える)ちゃんが姉の -
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ネタバレ寒さ厳しい山脈を居とする部族の双頭、蛮族と呼ばれる戦いを好むフェルビエと、呪術を操り死人狂いと呼ばれるミルデ。長きにわたりいがみ合い戦をしていた2部族の戦の終結のため、フェルビエの族長の娘、アルテシアは前族長同士の盟約によりミルデの族長に嫁ぐことが決まっている。
愛する男を噛み殺すほどの激情をもち「雪螳螂」との異名を持つフェルビエの女でありながら、子供の頃からの運命を冷静に覚悟を持って受け入れ、アルテシアは彼女の影武者であったルイと近衛隊のトーチカのみを連れて婚礼相手のもとに向かうが、ミルデの族長オウガはアルテシアに開戦をつげる。
婚姻を無効にしないために奔走する中で、ただの部族間の未来の