あらすじ
大地震から一年後、東京・湾岸エリアにはカジノと少女サーカスが誕生。その開発時、正徳会グループの建設現場で責任者が自殺した。それは女子学生・マリナの父で、彼女はその謎を探るうち、少女サーカスの団員募集を知る。真相を知るためこの街で生きると決意し、空中ブランコ乗りを志す中、権力者――生徳会代表・鷲塚と出会い……。裏で蠢くカネと欲望、喝采と熱烈なファンレターに、”嘘”で立ち向かう少女の熱狂青春ミステリ!
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Posted by ブクログ
光の幕を...の続きとなる今作はてっきり涙海が主役となって、ブランコ乗りを続けながら事件の犯人を追って行くと思いきや、彼女たちの大先輩である「初代」達が主役でサーカス誕生の物語だった。
カジノ建設の責任者だった父を不審な事故で亡くした少女マリナ。やがて初代ブランコ乗り——サン=テグジュペルになる少女が涙海、愛涙に代わり主役を務める。
彼女がサーカスに入ることを決めた理由は当然、父の死の真相を知るため、そして黒幕を糾弾するためだ。
「乞食の涙だと思った。」サーカスに入る決断をする前の自分の泣き顔を見たマリナの考えが、胸に刺さった。唯一の肉親を謎の事故で失った哀れな少女。
見れば哀れに感じるし、何か手助けもしたくなる。その手助けが自分の利益にできるなら積極的に介入するだろう。でも他に用事があれば無視するし、自分に不利益を感じれば縋られても払い除ける。まさに彼女の涙は、それをみる人間の心持ち一つでどうにでも扱われる乞食の涙だった。
だから彼女はサーカスに入団した。唯のサーカスではない。経済復興の旗印の元、建設されたカジノエリア。そのシンボルとなるサーカス団に。自分の涙を価値あるモノに変えるために。
ところでいきなり結論を言ってしまうと、謎は解決しない。命を燃やし、自分の全てをブランコ乗りに捧げ、サーカス団で伝説の存在になっても彼女が父の死の真相に辿り着くことはなかった。そもそも提示された謎が解かれない、というのはこれが初めてではなく、前作の「光の...」でも思わせぶりに提示された謎やサーカス団に纏わりつく陰謀を、特に解決しないまま終わってしまった。
だからこう思った人もいたかもしれない。
「え? 涙海の事故は結局事故で終わり? チャペックが匂わせた団員退団トトカルチョの黒幕は?カジノ建設中に、何かとんでもない事が起きてマリナのお父さんは口封じで殺されたんじゃないの?何もわからないまま終わるの?そんなのは嫌だ!そもそも帯に青春ミステリーって書いてるじゃないか!」
僕もそう思った。ちょっとは。でもすぐこう思い直した。
事件、陰謀、闇。
そんなのはあって当然なんだ。だって「ここ」は欲望に塗れたカジノエリアの中にあってさらに、人々の欲望を一身に集める少女サーカス団なんだから。
その欲望は利権やおっさんの野卑な視線だけに止まらず、サーカスの演技を見た純粋な感動、この感動を永遠にしたいという願い、そう言ったものも含んでいる。
そんな重圧にサーカスの少女達が耐えていられるのは、彼女たちこそが誰にも負けない欲望を持っていたからだと思う。
そんな彼女たちがサーカスの中で何と出会い、何を選び、何と別れたか。そしてその結果未来に進めたのか、少なくとも先に進めたと、読み終えた僕たちはそう思えたのか。それだけわかれば十分だったのだと思う。
宙に舞ったブランコ乗りの指先は、確かに何かを掴み、対岸に渡った。
サーカスの観客にわかるのはそれで十分、そういうことじゃないのだろうか。
Posted by ブクログ
うわー、不覚にも最後うるっとしてしまった!
今宵、嘘つきたちは光の幕をあげるよりも過去の物語
サーカスの曲芸師、初代の物語だ
物語の始まりは、まだまだサーカスが開催するかもあやふやな状態
企画だけされているが、本当にサーカスの公演はできるのだろうかと
不安がありながらも少女たちは日々の研鑽に励む
そして始まるゲリラ的なサーカス公演!
初代少女達が自ら名付けた『ブランコ乗りのサン=テグジュペリ』や『パントマイムのチャペック』など、自らを表す演目で登場
処女公演は拙いながらも、きっと誰しも魅了されることであろう!
黄金のマリナと呼ばれる今作の主人公的な立ち位置のブランコ乗りのサン=テグジュペリ
父が死んだその場所で多くの複雑な思いを抱えていた事だろう
最初はそんなに意欲的ではなかったのかもしれないけれど、研鑽をつむことで彼女の大切な場所になったことには違いない
身体がボロボロになっても舞台で喝采を浴びるぐらい!
きっと処女公演も拙いながらも素敵な素敵なものだったんだろうな
だからFと名乗る古参のファンは魅了されてしまったのだろうと想像できる!
サン=テグジュペリは出会いよりも別れが多く、友であった者たちは皆居なくなってしまう
変わりゆくサーカスのメンバーにどれだけ心細かっただろう
だからこそ、ずっと見守り続けたF存在に驚きを隠せない
あぁ、Fさん……この方だったんだって
そして陰ながら存在するサーカスの団長であるシェイクスピア
光の幕をあげるの方では冷酷な印象があったが、そっか、彼女の想いもずっとサーカスとともにあったんだなって
恋焦がれてこの立場にずっといたんだろうなって
あまり登場の少ない彼女ではあったが、光の幕、そして影の幕を読んでからめっちゃ好きになってしまった
歌姫アンデルセンの子は正直最初好きになれるかな?って感じではあったけれど、彼女の価値観や信念彼女を知る度に強いなって感じさせる子であった
まぁ私としては友人にはなりたくないかもですが苦笑
そしてパントマイムのチャペックや猛獣使いのカフカ
チャペックの葛藤は正直この物語で1番読んでいて辛いものがあった!
自分の価値の自問自答、そして大切な子
サーカスを離れた先で見つけたもの
急な退団とかは好ましくは思えないけれど、それでも彼女も幸せを見つけられて良かったなって思うんだ
こんな初代の時代があったからこそ、光の幕が上がったのかと思うと感慨深い
光の幕の代まで行くのに、どれだけの少女たちが戦い命を燃やしてきたのだろうかと、空白の期間も想像してしまう
でも1番良かったのは推しへの愛情が…(涙)
泣きました。
「光の幕」より過去の話でした。「光の幕」の登場人物達を好きになったので、最初は残念に思いましたが、すぐにのめり込んで読んでしまいました。
「光の幕」にも出てきた曲提供者の吾妻シオン、壮絶な死をとげた二代目カフカ、病院の院長先生より更に偉い先生の美人秘書などについても詳しく知ることができ、「光の幕」を読んでいるとよりいっそう楽しめます。
どの話もクライマックスで泣きましたが、特に最終話は号泣ものでした。おすすめです(^^)
Posted by ブクログ
カクヨムで連載していた当初から追っていたので、紙の本になってくれて凄く嬉しいです!紅玉いづき先生の作品の中で、この少女サーカスのお話が一番大好きです。少女×サーカスがお好きな方の心にグッと刺さる内容だと思います。是非、2冊合わせて多くの方に読んで欲しいです。
【追記】
あまりにも感動したので、2冊目を購入しました!表紙が綺麗だと、何冊あっても目の保養になっていいですね!
Posted by ブクログ
設定時期はにこちらの方が昔になる。しかし、話の流れを追って行くと、確かに「光」から読んだ方が良いことが分かる。どちらも少女たちの曲芸子(パフォーマー)としての美しさとそれにかける執念とまで言えるほどの想いが描かれている。「嘘」を付いているのは誰?謎は何処に?想いが強く伝わってくる作品だった。