そこは商店街の裏通り。現在では整骨院になっている土地は、かつて米屋という居酒屋があった場所だ。
今から30年前に女将が亡くなり店も人手に渡って久しくなるが、今でも夕方になり悩みを抱えた人が通りかかると、米屋は忽然と現れるという。そして、悩める人は誘われるように暖簾をくぐる。
さて今夜、女将の心づくしの酒とアテに邂逅する客の抱える屈託とは …… 。
東京葛飾の新小岩にある居酒屋が舞台のオカルトファンタジー。『ゆうれい居酒屋』シリーズ2作目。
◇
いつものようにうたたねから覚めた女将が軒先に暖簾を上げると、さっそく常連客の沓掛音二郎が、それから少し遅れて井筒巻が来店。 ( 実は2人とも冥界の住人。ただし本人たちにはその自覚はない。)
3人で世間話に花を咲かせていると、遠慮がちに1人の客が入ってきた。
その一見客は理知的な雰囲気を持つ初老の男で、かなりの長身だ。子供の頃、このあたり ( 新小岩 ) に住んでいたと言うのだが……。
( 第1話「昆虫少年のあこがれ」)全5話。
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今回もほっこりとした人情話、楽しめました。特に、自分の存在が知らず知らずのうちに人の人生に大きな影響(もちろん好影響です)を与えていたというエピソードを揃えていて、感動的でした。
それにしても、女将の秋穂さんは地味だけれど魅力的な女性です。
まず、抜群のカウンセリングマインド。女将が共感を示す応答を控えめに返すだけで、悩める客は問わず語りに胸のうちをさらけ出してしまう。理想的なカウンセラーだと思います。
また、必要とあらばアドバイスや激励も厭わないけれど、それが実に的確で説得力に満ちている。 ( さぞ立派な教師だったんでしょうね。)
最後に、「ざっかけない」アテの美味しそうなこと。簡単料理なのに、工夫と発想の妙で見事な一品ばかりです。
女将1人だけで店を切り盛りするところは『婚活食堂』と同じ。でも袋小路から抜け出せずにいる人を救うこのシリーズの方が『食堂のおばちゃん』に近く、個人的には好みです。
ところで、第2話「謎の漢方医」に有名な占い師の尾局與が(名前だけだけれど)登場したのは嬉しかった。聞けば、秋穂女将が幼い頃に尾局與の占いで生命を救われたことがあるとか。
この尾局與は『婚活食堂』の主人公、玉坂恵の師として登場するので、いつか恵女将が米屋を訪れることがあればいいなあと思います。
ともあれ、まだまだ続きがあるようなので楽しみです。