山口恵以子のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
はじめ食堂の一子、二三、万里は健在だったが、はじめ食堂にとっては危機が訪れる。変化があるのは刺激的た。近所にできたパン屋の姉弟とバー月紅のマスター真辺の関係は?
悪意のありそうなキャリアウーマン風の女性の本性は?と展開がある。ネットの怖さも描写されている。
いつの時代も腹いせに他人を悪く言う淺ましい人はいるものだ。みをつくし料理帖にも近い内容の場面があった。そういった点で目新しさは無いが、ホッとする。
食堂のおばちゃんシリーズも温かい気持ちにさせられる。料理の表現も絶妙だ。
ミステリーや少し重い小説を読んでいると気が滅入ることもあるが、このシリーズは心温まり、気軽に読めるので好きな作品だ。 -
Posted by ブクログ
東京都中央区佃。
江戸時代から庶民の町として栄え、現代でも旧佃島地域は昔ながらの人情と風情のある古い街並みで知られている。
そんな佃で2人のおばちゃんが営む食堂兼居酒屋を舞台にしたグルメ&ヒューマンドラマ。『食堂のおばちゃん』シリーズ14作目。
◇
「ササミの梅和え素麺、セットでね!」
「俺、鰯のカレー揚げ!」
はじめ食堂のランチタイム。常連さんで今日も盛況だ。9月も末だというのにまだまだ暑いせいか、素麺やカレー味という夏メニューの注文が多い。
帰り際のサラリーマン男性が「おばちゃんとこ、ラーメンはやらないの?」と尋ねてきた。言葉を濁した二三だが、仕込の大変さを考えると正直なところ腰が引ける。それにラーメン専門店も多く、需要があるとも思えない。
客が引けた頃にやってきた常連客の三原と梓にそんなことを零したところ、「やってみる価値はあるのでは」と言われて驚く二三。さらに皐まで乗り気になっている。
3人は、専門店のように気張ったものを作る必要はなく、むしろシンプルなラーメンの方を喜ぶ客が多いと言う。二三と一子も前向きに検討する気になって、ランチ営業は終了した。
ところがラーメン談義が呼び水になったのか、はじめ食堂の並びにラーメン屋が開業するという話を聞いたのは、一子たちが賄いを食べ終わったときだった。 ( 第1話「ラーメンで、こんにちは」) ※全5話。
* * * * *
シリーズ14作目となる本作は、相良千歳のラーメン店開業秘話が中心テーマです。
物語は、はじめ食堂のランチ風景といういつものオープニングのあと、「鳥千」を営む串田さんが店を畳むことにしましたと挨拶に訪れたところから始まります。
鳥千ははじめ食堂の並びにある焼鳥屋さんで、一子たちにとって串田さんは昔からの商売仲間です。
でも串田夫婦も寄る年波には勝てず、息子夫婦が西麻布でイタリアンレストランをやることになったため、廃業を決意したという話でした。
その鳥千の空き店舗を居抜きで借りることになったのが、相良千歳なのです。
人気の大手ラーメン店で調理場を任されていた千歳は、数々のレシピも考案した腕利きの料理人です。まだ30歳と若いですが、思い切って独立しようと手頃な物件を探していて鳥千を見つけたということでした。
数日後、はじめ食堂に挨拶に訪れた千歳の為人に接した一子たちは、すぐに千歳を気に入ります。
折り目正しい態度。はきはきした口調。明快でまっすぐな受け答え。芯の強さがよくわかります。さらにショートカットを通り越した超短髪にも、覚悟のほどが伺えます。
協力できることは何でもするからと一子たちに受け容れられ、順風満帆で開業を迎えたかに見えた千歳だったのですが……。
本巻を通して、千歳はヒロインとして登場します。彼女は確かに魅力的な女性で、人間としてもプロの料理人としても素敵です。
さらに「ラーメン界の綾波レイ」と言われたビジュアルを持ち、おまけに健啖家でお酒にも強い。
極めつけはナイトとなる男性が千歳の前に現れます ( わりと早い段階です ) 。 読者もよく知るその男性とのロマンスも本巻の見どころとなっていて、まさにヒロイン!
最終話は、おなじみ忘年会。
千歳と彼氏、康平と瑠美の確定カップルのほか、山下先生と桃田はなも何となくいい感じ。何か婚活食堂めいた雰囲気です。
そして、シリーズを左右する大本命カップルになるのではないかと私が密かに思っている2人、万里と要にはまだその兆候はないものの、浮かれた気分で読み終えることができました。満足度の高い作品です。 -
Posted by ブクログ
東京都中央区佃。
江戸時代から庶民の町として栄え、現代でも旧佃島地域は昔ながらの人情と風情のある古い街並みで知られている。
そんな佃で2人のおばちゃんが営む食堂兼居酒屋を舞台にしたグルメ&ヒューマンドラマ。『食堂のおばちゃん』シリーズ15作目。
◇
「ロールキャベツ!」
「私、鶏唐ね。ご飯半分で」
はじめ食堂のランチタイムは今日も慌ただしい。味がいいのはもちろん、日替わり1人前 700円という値段は魅力だ。しかもご飯と味噌汁はおかわり自由なのだ。
さらに調理場から覗く一子と二三の笑顔やフロアを担当する皐の客あしらいのうまさも店の雰囲気を良くしている。
こうしてランチタイムは盛況に過ぎていった。
そしてお待ちかね、居酒屋タイム。口開け客は康平と瑠美のカップルだ。
フラミンゴオレンジのソーダ割り片手におしゃべりする2人。話題は間近に迫った松原団と相良千歳の結婚。
団の家は野菜農家で、味がよく新鮮な野菜をはじめ食堂に卸してくれている関係で、康平たちとも顔見知りだ。挙式は1月28日で、一子たちも招待されている。
やがて2人の話題は酒へと移っていき……。
( 第1話「おむすび縁結び」) ※全5話。
* * * * *
やはり感動的なのは、表題作の「おむすび縁結び」です。誰の縁結びかと思って読んだら、新婦である千歳の両親が結ばれるきっかけとなった「おむすび」についてでした。
とてもいい話で表題作にふさわしいと思いますが、気になる人物が姿を見せます。
それは以前もトラブルメーカーとして登場した女性で、できればずっと退場願いたいと思っていましたが、捲土重来を期したのか、パン職人となって舞台に帰ってきたのです。おまけに団の弟の開と何やらいい雰囲気に。
波乱含みの第1話でした。
印象的だったのは、第2話と第3話で描かれた遺伝と運命についてのお話です。
遺伝子操作された食材のメリット・デメリットが語られるのは伏線で、体質的に癌になりやすい遺伝子が二三を不安の淵に落とします。
二三を挟んで二三の母から要へと受け継がれた体質。霊能力者の女性も登場してオカルトサスペンス風の第2・3話。ドキドキしました。
後半の第4・5話は、松原開と件の女性との縁が結ばれる展開でした。
個人的にその女性には、あまり好感を持てないので、開が不幸にならないよう願いながら読みました。
トラブルを起こして勤めていた会社をやめパン職人の修業をした数年で、彼女が少し成長していることを祈ります。
ただその話の中で、万里が一子たちの前で将来の独立をほのめかしたのは伏線に違いなく、しめしめと思ったことを付け加えておきます。