山口恵以子のレビュー一覧
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東京葛飾の新小岩にある居酒屋が舞台のオカルトファンタジー。5話からなる連作短編集。『ゆうれい居酒屋』シリーズ第1作。
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米屋(よねや) は下町の商店街にあるごく普通の居酒屋さん。店を1人で切り盛りするのはごく普通の女将さん。出てくるアテはモツ煮込みなどのごく普通の小料理。常連客は商店街のごく普通の人たち。
ただ1つ違っていたのは、女将も店も常連客もこの世のものならぬ存在だったのです。
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そんなラノベ風のコメディのような初期設定なのですが、そうならなかったのは、作者ならではの仕掛けの賜物でした。
女将の秋穂がうたたねから覚めて米屋が開店すると常連客がぼちぼち来店してきます。ここまでは冥界での話です。なぜなら現在では秋穂も常連客も故人となっているし米屋はすでに取り壊され整骨院に変わっているからです。
ただし人生の岐路で苦悩する人が商店街を訪れると米屋は忽然と姿を現し、苦悩の人は惹きつけられるように暖簾を潜る。
つまり冥界の扉を現世から開けられるのは一見客となった悩める人だけなのです。
だから、秋穂のカウンセリングによって心が晴れた人たちが再訪しようとしても、もう米屋は顕現しません。
その設定のうまさに感心しました。
あとは山口さんの真骨頂です。
人情話はしっかり読ませるのにくどくはなく、秋穂によって供される「ざっかけない」アテも実に美味しそうです。
お約束となった各話のラストシーンも読んでいて楽しいし、最終話の締めくくりなどは読んでいてうれし涙まで浮かんできました。
ひとつ気になるのは、現世で人助けをしている秋穂や常連客が、自分が死んでいるのを自覚していないところです。もしかして成仏していないのでしょうか。
いつか続編で、ぜひ「成仏」問題を解決して欲しいと思います。
『食堂のおばちゃん』シリーズの中で名前だけ登場させる程度で済ますには惜しい作品だと思いました。 -
Posted by ブクログ
英国大使として赴任していた伯爵家のお姫様だったトコこと六苑燈子と、六苑伯爵家に仕える家扶を父に持つミコこと寺井美桜子との二人の90年間の関係を綴った物語だ。
大使赴任地の英国から帰国した六苑伯爵家の一人娘のトコは、日本語もままならない世間知らずのお姫様そのものだった。
そんな理由から遊び相手として活発なミコにそのお役が任され、二人は交際しながらお互いに語学をも学び合うこととなる。
伯爵家の大規模な洋館は、ミコからすると広大なお城のようで、そこに住むトコに憧れと嫉妬心を抱きながら、それ以上に深い友情を育み、異次元のお姫様と明るく活発なトコとのお付き合いの様子が、少女から老齢になるまで描かれる。
戦後、華族制度の廃止に伴い、六苑伯爵家は没落して行くのだが、ミコは持ち前の積極的な性格を前面に出し、懸命に事業を成功させて六苑伯爵家のために可能な限り援助する。
トコはミコの支援とアドバイスを受けながら、上流階級で嗜んだ作法や所作を武器に、西洋のエチケットや作法などを日本の女性たちを啓蒙する有名人となり、暮らしでも子供達に恵まれて幸せな家庭を築き、経済的にも豊かな環境を確保していた。
一方ミコは、事業の拡大に奔走し、いろいろな変遷を経て結婚間近にまでなっていた初恋の暁とも婚約解消をして訣別し、その後は独身を貫いて生きて行く。
トコは常にミコに対して感謝の念と畏敬の念を抱き続けていたのだが、心から感謝の気持ちをミコに伝える術を知らなかった。
そんな二人の気持ちのすれ違いが⋯⋯。 -
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食堂のおばちゃんシリーズ、もう4作目。
今回は、登場人物たちにとっての変化は、二三の娘要が、勤務先の出版社で歴史小説の大御所先生の担当になったことくらいだろうか。
万里も料理人としての自信をつけてきて良い感じだし、一子と二三は相変わらず。
歳の離れた叔父に憧れを抱いている女性に対して、一子が言った言葉が、ちょっと泣けたなぁ。
歳をとるということは、十年前にできたことができなくなる、五年前にできたことができなくなる、そして昨日できたことができなくなるということだ、と。
最近、よく考える。60代半ばの私の母、十年後は同じようにいてくれるのだろうか?と。
歳をとるということ、出来ないことが増えていく。30代の私にとって十年はあっという間だ。60、70代でも、そんな体感時間なんだろうか。あっという間に、以前できていたことができなくなっていく恐怖、不安。それに向き合えるのだろうか。自分自身のことも、親のことも、お世話になった人たちのことも。
歳をとることについて、改めて考えた言葉だった。
ゼリー寄せは以前から「作れるなら作りたい!」と思っていたもののひとつ。
今回登場して、レシピも載っていた。
なんだか作れそう!
夏野菜が合うだろうなぁ。
オクラのさっと茹で、きゅうり、ミニトマトをコンソメスープで洋風に寄せたら、見た目も鮮やかで美味しそう。 -
Posted by ブクログ
姑の一子(いちこ)と嫁の二三(ふみ)が営む「はじめ食堂」の物語、第12弾。
長らく一緒に働いていた、赤目万里(あかめ ばんり)が料理屋に本格修行に出ることになって「はじめ食堂」を前作で卒業した。
ちょっと寂しいなと思っていたら、毎日、賄いを食べに来てから出勤ですって!
賑やかさが失われなくて良かった。
代わりに入った青木皐(あおき さつき)も、ほぼ勝手知ったるはじめ食堂で、接客はもちろんバッチリ、新しい料理のアイデアも出し始めて、おばちゃん二人の食堂に、また新しい風が吹く。
美味しい料理がいろいろ出てきて、この作品を読むと、なぜか「食べたい」より「作りたい」が先に立つ。
毎日晩ごはんを作るのはなかなかに面倒なのだけど、元気とモチベーションをくれるのだ。
今回は、酒屋の辰波康平と、料理研究家の菊川瑠美のカップルに試練が!!
人気料理研究家の瑠美にも降りかかる、姑の洗礼(!)
全然オシャレな感じじゃない。
しかし、この苦労も瑠美の肥やしになるような気がする。
第一話 初夏のサラダ祭り
第二話 鰻で乗り切れ
第三話 たまごのキノコ
第四話 うどんと名月
第五話 聖夜のおでん
桃田はな、
最初は、若いのに万里よりずっとしっかりしてる!と感心していたのだけど・・・
近頃は山下医師にベッタリくっついて、高価な料理や酒を遠慮なく奢ってもらい、周りの人たちに対するあの口のききかた・・・どうも、好感度が下がる。