金原瑞人のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ネタバレ〈それにしても、21世紀になって、これほど面白い小説は書かれていないのではないか〉
帯のアオリであり訳者あとがきの一説でもある。その言葉を信じて、いや、真偽を確かめるべくこの本を手に取った。なるほど、あながち嘘ではないようだ。まあ、他にも面白い小説はありそうだが。YAのような装丁だが、これは中高生には向かないのではないか。ていうか、大人向けでしょ、これ(きわどい描写もあるし)。
1935年アメリカ。大恐慌から6年が経っている。ウェストヴァージニアの小さな炭鉱町に住む若い夫婦が主人公だ。妻のエルシーはハイスクールを卒業後、しばらくフロリダのオーランドに住んでいたことがあって、炭鉱の砂埃だらけの町で一生を終えるのなんて真っ平ごめんと考えていた。というのも、オーランドでハンサムで脚の長いダンスの上手な男に恋をしてしまったからだ。でもその男は俳優を目指してニューヨークに行ってしまった。故郷に戻ったエルシーは高校の同窓生のホーマーから熱烈なプロポーズを受けていたけれど、炭鉱夫の妻になるのがいやさで断り続けていたが、ホーマーの上司が仲を取り持って二人はいっしょになる。その結婚祝いに、エルシーの元彼から結婚祝いのプレゼントに贈られたのが、一匹のワニ。物語はこのワニをフロリダに帰してやるための旅で起こった、奇想天外な出来事を綴ったものだ。
著者はこの夫婦の息子(次男)。父と母からの聞き書きをもとにこの物語を書き上げた。本当の話か作り話かはさておき、若い夫婦がお互いの心の中にあるものに気づくまでの数々の遣り取りや心の動きは、いちいち身に覚えがあってちくちくと突き刺さる。二人は千キロの道のりをビュイックで走っていく。後部座席にはたらいに乗せた120cmにも成長したワニのアルバート。そしてねどこからともなく飛び込んできた名前のない美しい雄鶏。アルバートはエルシーにとってわが子も同然。いや、ここではないどこかへ自分を連れ出してくれるはずだった、かつての恋人の忘れ形見みたいなものだ。エルシーにとってこの旅は「あったかもしれないもうひとつの人生」を探す旅だったが、ホーマーにとってはエルシーの心を取り戻す賭けだったのではないだろうか。いずれにせよ、これは〈宿命〉(キスメット)だった。
旅の果てで二人が手に入れたものはなんだったか。人生という名の冒険はに終わりはないのかもしれない。
最後に。これ、きっと映画化されると思いますよ(笑)。 -
Posted by ブクログ
若くして結婚した二人が旅で様々な出来事に遭遇し、自分のいるべきところを見つけ出すロードムービー物。
かなり面白く読めたが、遭遇するたくさんの奇想天外なエピソードに興醒めすることもあった。やり過ぎじゃないかなと。
それにめげさせずに最後までぐいぐい読ませたのは、ワニ、雄鶏、旦那さん、奥さんの描写が秀逸で、それぞれが物語に欠かせない役割を持っていることにあると思う。
子供だけどいざという時助けてくれたワニ、神のように俯瞰して世界を見ているかのような雄鶏、真面目で誠実でたくましい夫(作者の父)、何より奥さん(作者の母)の生き生きとした描写には、読んでいて何度も笑顔になることができたし、頭の中に色々な場面の情景が何度も浮かんできた。
しょうもないと思う部分は確かにあったが、そのあたりはとても素晴らしいと思う。 -
Posted by ブクログ
高校生の僕クエンティンは、幼なじみのマーゴに恋している。マーゴは学校の中心にいて、イケている奴らと付き合っている。一方クエンティンの親友はベンとレイダーの二人。イケてはいない。卒業間近にクエンティンはマーゴのミッションを手伝うことになる。内容はマーゴの取り巻きに対する決別を込めた復讐だった。
その翌日からマーゴは姿を消してしまう。クエンティンのマーゴ探しが始まる。
私はクエンティンのマーゴを見つけなくちゃという焦りを、滑稽に思ったり、マーゴの意志の強さに驚いたりしながら読んだ。
途中、搜索が進展しないので中だるみに感じたが、クエンティンとベンとレイダーとレイシー(マーゴの元親友でベンの彼女)の4人が車でマーゴのところに向かう最後のくだりは、疾走感が有りまさに高校生の青春が描かれていて引き込まれて面白かった。 -
Posted by ブクログ
映画を観て、素晴らしかったので、原作も。
訳者あとがきにカズオ・イシグロの「わたしを離さないで」をこの物語を読み終えたときに思い浮かべたと書かれていましたが、その通りだと思いました。死と隣り合わせによる生の捉え方は似たものを感じます。
これはかわいそうながん患者の子どもの話ではなく、ヘイゼル・グレイスとオーガスタス・ウォーターズの恋物語でした。決して非日常ではなく、日常の物語。そして可能性の物語。ヘイゼルは可愛くてちょっと理屈っぽく偏屈気味。オーガスタスはイケメンだけど象徴にこだわるキザな男の子。いちばんすてきだったのは、ふたりをめぐる友人たちの日常と、プラスして障がいをネタにジョークを平気でいうところ。良い看護師の条件には笑いました。あとオラニエーでの食事のシーン。映画でもすてきでした。
10代向けのレーベルから出されていますが、大人でも十分楽しめます。ティーンの頃に読むのと大人になってから読むのではもちろん感じ方は違うと思いますが、大人に、親になった人たちにも読んでほしいです。 -
Posted by ブクログ
切ない恋の物語。そんな簡単なタグでは括れない一冊。
がんに侵された哀しく切ない、二人のティーンの物語。
と聞くといかにも儚く美しい...なんてイメージを膨らませますが、
ただたまたまその境遇に置かれているだけで、他の10代と同じように、
ちょいと親に反抗してみたり、悪いことしてみたりetc
日常生活が、彼らにも同じように流れていく。
日々がたんたんと描かれていくので、
冗長に感じてしまう人も知るのかもしれないけれど、
自分は単なるお涙ちょうだいの、美しく装飾されたものでない、
ありのままが描かれている気がして、楽しく読み進んだ。
特に登場人物の使う言葉のセンスに惹かれ、
火をつけない煙草を象徴だといったりする言葉の感覚、
物語そのものでなく、そうした一人一人の人物が4味わい深い作品。
ちょいと非日常的な作品を読んでみたいあなたにお勧め。 -
Posted by ブクログ
ネタバレがんを患う若い二人、ヘイゼルとオーガスタスの恋物語。ていうか、二人の恋愛を通じて、生きること、死ぬこと、愛すること、なんかについて書かれた本。
感動の話を期待していると、どんでん返しがいくつかある。でも、いわゆる奇跡は起きない。
私は自分自身や身近にがんを患う人がいないので、がん患者のリアルがどういうものかよくわからないのだけれど、この本は結構、そのリアルにこだわっているように思う。たとえば、がん患者のトロフィーとか(いかにもアメリカらしい)、ウイッシュ(これは日本でもある)とかについて、文句なく素晴らしいものとしては描かれない。当事者はそれらについて、うさん臭く思っている話が出てくる。あるいは、葬儀でよくあるスピーチ「故人は最後まで希望を捨てずに気高く云々」なんてのもウソで、病みおとろえて自分で出来ることが減っていくのはみじめなことだし、子供のように泣いてキレることもある。いい話的なステレオタイプに逃げず(だって、実際に逃げることなんかできないし)、つらい現実のなかで生きていくときに何が起きるのか、そこにはつらいことしかないのか、そういうことが書かれている。
一つの主要なテーマとして、残された人の悲しみを生み出す自分の死をどう考えれば良いのか、ということが問われる。これについては、ヘイゼルに「君に傷つけられるのは僕の特権だ」というオーガスタスが最高にクールだと思った。人は生まれて死ぬ、その間に傷つけ合ったり愛し合ったり何もしないでいたりする、それがオーガスタスの考え。でも、それって要するに人の日常だし、リアルだよね。そこに価値を見出すということは、がん患者のトロフィーやウィッシュみたいな特別なことじゃなくて、病気をしててもしてなくても、いつもの日常の中にこそ価値があるということなのかもしれない。
いろいろなエピソードの中でいちばん私が好きなのは、ヘイゼルと母親がわだかまりを解くところ。ヘイゼルが死んだ後の希望について、ヘイゼルと両親が口に出して話すことが、ヘイゼルにわくわくするような喜びをもたらす。よかったなーと思った。 -
Posted by ブクログ
骨肉腫で片足を切断したオーガスタスと肺に腫瘍があり人工呼吸器が手放せないヘイゼルは癌患者の集まりで出会い惹かれあう。ヘイゼルが好きな小説は癌患者の女の子が主人公の「至高の痛み」。その一節を引用したり好きな詩を諳んじたりする文学少女のヘイゼル。オーガスタスもヘイゼルの好きな小説を気に入りその結末が知りたくて、著者のいるオランダへ二人で会いに行くが・・・。死と向き合う若者の話で重苦しいのかと思いきや、病気とともにあってもお互い思い合う気持ちの強さと輝きにあふれた小説だった。「傷つくかどうかは選べない。でも自分を傷つける人を選ぶことはできる。」相手を傷つけるというのは、やがておとずれるであろう死という刃で、ということ。それでもいいと思える相手と巡り合えた二人。久しぶりに素敵な青春小説に出会った。