金原瑞人のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ネタバレきっと、星のせいじゃない。
難病モノはある程度先が読めてしまう、という人こそ読んでほしい。そうじゃない。死を思うこと、愛すること、自分の生きる意味を考えることは、生まれてきた人すべてに共通することだから。
甲状腺がんが肺に転移して酸素ボンベが手放せないヘイゼル。骨肉腫で片脚を失ったオーガスタス。彼女と彼の家族、がんのサポートグループのメンバー、がんではない友人、元小説家など、それぞれの登場人物が精一杯、不器用に生きている。
ヘイゼルの愛読書『至高の痛み』の作者ピーター・ヴァン・ホーテンが印象的。あれほど自分に寄り添ってくれる物語の作者だから人格者だろう、作者は読者の期待に応えてくれるはずだという思い込みをぶち壊す。ヘイゼルはずっと知りたかった登場人物たちのその後を教えてもらえなかった。つい、ヘイゼルには時間がないのに、と思ってしまったが、それは別にヴァン・ホーテンには関係ないことなのだ。そして彼が『至高の痛み』に託した苦しみや悲しみが明らかになる。不安や絶望は比べられるものではなく、一人ひとりが自分の辛さを抱えていくのだ。
ヘイゼルの母が、オンラインで大学の講義を受け、ヘイゼルの死後にできることを考えていることがわかったところ、そしてそれを喜ぶヘイゼルのシーンは光が射したよう。ヘイゼルはずっと知りたかったアンナの母のその後を知れたのだ。娘を亡くした後、母がどうなるかを。そんなヘイゼルの愛に心が揺さぶられた。そんなヘイゼルを的確に描写した、オーガスタスの弔辞。
生きていくうえで何を大切にするか、誰を愛するか、何に苦しみ、何に喜びを感じるか。生きている証を残したい、と、誰も傷つけたくない。軽やかに生き、宇宙に気付き、愛したい。相反する、繊細で、途方もない願い。 -
Posted by ブクログ
9歳だった。
マーゴとQがいつもの公園で、死んでいる男を見たのは。
ピストルを自分の口に突っ込んで、自殺したロバート・ジョイナー。
それは、ひとつの出来事に過ぎなかったかもしれないし、9歳の子どもたちの記憶の中では全てのきっかけだったかもしれない。
卒業式の朝、家出したマーゴを探しに出ることに決めたQ。
ロードムービーのような青い青いおはなし。
エミリ・ディキンソンや、ホイットマンの詩。
バカな友だち。
マーゴの歯みがきとコップの下には、シルヴィア・サラスの『ベル・ジャー』と、カート・ヴォネガットの『スローターハウス5』 _いざそのときになったら、手首はとても白く頼りなく、どうしてもできなかった。自分が殺したいものは、皮膚の下にも、親指の下ではねる薄青い脈の中にもなく、どこか別の、奥深く、秘密めいた、とても手の届かないところにあるように思えた_
すごく、素敵なラストだったな。
3年ほど積読してた本をやっと。
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Posted by ブクログ
ネタバレ事典好きの私だけど、これほど読んで楽しい事典は初めて。
「あ」から始まるこの時点の最初の項目は”悪魔に魂を売り渡したくなった時”に読む本。
トーマス・マンの『ファウスト博士』というのはまあ納得としても、”悪魔に魂を売り渡したくなった時”ってどんな時よ?
そんな時、本を読んでいる場合?
本を読む心の余裕がある時点で、悪魔に魂を売り渡さなくても大丈夫なんじゃない?
なんて突っ込みながら読んだけど、ふと気がついた。
これ、日本語版だから五十音順だけど、原書はABC順のはず。
訳すだけでなく、このように並べ替えも必要なんだ。
また、未訳の本も多数あるので、原書では347冊の小説が紹介されているけれど、日本語版で紹介されているのは202冊のみ。
それでもこの充実ぶり。
インフルエンザにかかった時は→アクロイド殺害事件
死ぬのがこわい時は→百年の孤独
無職の時は→ねじまき鳥クロニクル
花粉症の時は→海底二万里
等々、症状別に、または年代ごとの紹介が、理由と共に紹介されている。
そのチョイスに膝を打ったり、突っ込みを入れたりするのが楽しい。
だってさ、”鍵を忘れて家に入れない時”のために、家の外の物置に本を何冊か用意しておくといいと言って、それ用の小説を何冊か紹介しているけど、そんなもの用意しておくくらいならそこに合鍵を隠しておけばすむ話じゃんって思わない?
ただ、なじみがなくてピンと来ない作品が多いのも事実。
誰か、日本人向けのこういう事典を作ってくれないかなあ。 -
Posted by ブクログ
体や心の様々な症状別に「効く」文学作品を処方し、その理由も書かれた風変りなブックリスト。
症状は多岐に渡り、「不安なとき」「心が折れてしまったとき」といった確かに本に縋りたくなるようなものから、「お茶がほしくてたまらないとき」「鍵がなくて家に入れないとき」といった本を手に取る前に他の解決法が即座に頭に浮かびそうなものもあれば、「悪魔に魂を売り渡したくなったとき」「結婚相手をまちがえたとき」といった割とショッキングな症状まで網羅されています。冒頭から読み進めていくというより、目次から気になる症状の頁を眺めていき、目に留まった文学作品はひと先ず片っ端にチェックしていく、という使い方が正しいように思います。
海外の著者ということもあり、扱われているのは主に海外作品が中心で知らなかった作品も多く掲載されていました。あまり症状に捕らわれることなく、気になる作品に手を伸ばしてみようと思います。