芹澤恵のレビュー一覧

  • フランケンシュタイン

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    無責任に産み出された命の苦しみを描く。いつまでも親を恨み、同時に親の愛を求め続ける怪物は、現実に存在するアダルトチルドレンや、愛に飢えた子どもたちを想起させる。命を産み出す以上は、どんな子であれ幸せにしようと尽くし、溢れんばかりの愛を注ぐ覚悟を持つべきだ。でなければ、出生への恨みと愛に飢えた、恐ろしくも悲しい怪物と化す。作者本人が、愛に飢えた幼少期を過ごし、命を産み出す能力を持つ女性だからこそ、描けたのだろう。不朽の名作、ここにあり。

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    2025年11月02日
  • フランケンシュタイン

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    芹澤恵さんの美しい訳に導かれるように、久しぶりに夢中になって読んだ。

    最後まで自分のことしか考えないヴィクター・フランケンシュタインと、ただ愛されることだけを望む「怪物」。
    怪物のような愛への渇望が、他者への興味が、ほんの少しでもヴィクターにあったなら、結末は変わっていたと思う。
    姿かたちで人の内面を判断する軽薄さが最後まで悲劇をもたらすところも秀逸。
    「人を見た目で判断してはいけません」なんていうつまらない教訓ではなく、そうした軽薄さがどれほど深く人の心に巣食っているかを描き切る冷徹さがかっこよかった。
    さまざまな作品の下敷きになるのも納得の、不朽の名作。
    前人未到の場所への好奇心、名誉欲

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    2025年10月04日
  • フロスト始末 上

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    う〜ん…。並行して起こる数々の事件を綺麗に纏め上げる展開は、相変わらず見事なのですが、ほんの少しだけデッサンが狂っているような印象を受けました

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    2025年06月17日
  • フロスト日和

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    ネタバレ

    出色のモジュラー型警察小説シリーズ第2弾。

    肌寒い秋の地方都市デントンでは、連続婦女暴行魔が悪行の限りを尽くし、公衆便所には浮浪者の死体が小便の海に浮かぶ。富豪の娘は失踪し、遊興地区の強盗傷害も起こっててんやわんや。ぼんくらと誹られながらも、名物警部フロストの不眠不休の奮戦は続く。

    フロストが数多の事件を抱えながら、相棒の若手刑事を連れ回して繰り広げるドタバタは鉄板の面白さ。行き当たりばったりな推理は外れまくり、思うようには進まないところがこのシリーズのミソ。悪態をつきながらも捜査は続けるフロストがいい。

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    2025年01月19日
  • フランケンシュタイン

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    ネタバレ

    フランケンシュタイン博士という科学者が、外見が醜く、身体能力が高く、感情と知性を持つ「怪物」をつくる。しかし、博士は、その外見を見て恐ろしくなり、逃げてしまう。怪物は、人間と関わろうとするが、その外見からひどい目に合う。そこで、自分と同じような醜い伴侶がいれば、自分の孤独も癒えるだろうと思い、博士につくってくれと頼むが、博士は二人が協力して人類に危害を加えるのではと考え断る。博士の周りの人間から始まり、最終的に怪物も含め全員死んでしまう。

    フランケンシュタイン=怪物のことだと思い込んでいたが、つくった博士の名前だったとは驚いた。

    博士は無責任だと思った。自分がつくったものを放り出し、噛みつ

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    2025年01月14日
  • クリスマスのフロスト

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    ネタバレ

    異色の警部フロストが奮闘する警察小説シリーズ、のっけから絶好調の第1弾。

    ロンドンから70マイルの田舎町デントン。もうクリスマスだというのに市には難問が続発。
    8歳の少女の失踪、深夜銀行の扉をこじ開けようとする男、殺人事件を仄めかす霊媒師…。相次ぐ難事件を前に、不屈の仕事中毒にして下品極まるフロスト警部が登場!

    不眠不休のフロストが新米刑事を引き連れ東奔西走。名探偵ではないので直感と勢いで突き進み、結構しくじる。ストーリー構成はしっかりしつつ、肩の力は抜けきっているところがいい。読みだしたら病みつき!

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    2025年01月09日
  • 1ドルの価値/賢者の贈り物 他21編

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    ネタバレ


    世相へのシニカルな視点を保ちつつ、温かみを決して失わない語り口が絶妙。どの作品も面白く、オチの付け方が天才的だった。
    南部に生まれ、中米での逃亡生活やニューヨークでの都会暮らし等、様々な経験をして「人生の滋味」を会得した作者の作品は見事。アメリカ文学の新境地を切り開いたといっても過言ではない。
    個人的には、「献立表の春」「甦った改心」「幻の混合酒」「靴」「警官と賛美歌」「賢者の贈り物」が好き。(「賢者の贈り物」がダントツだが、、)

    以下、それぞれの作品に対するメモ書き。

    ・多忙な株式仲買人のロマンス
    忙しすぎる金融街で働くサラリーマンを、コミカルに描く作品。ウルフ・オブ・ウォールストリー

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    2025年01月06日
  • 1ドルの価値/賢者の贈り物 他21編

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    あの有名な「最後の一葉」がO・ヘンリーの作品だったということを知ったというか思い出したというか。どの短編小説もとても良かった。

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    2024年11月11日
  • クリスマスのフロスト

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    再読しました。フロストに自分を重ねてしまいます。
    なんやかやと、直感に頼んで、行動してしまうところ、自分でも困ってしまうところです。でも、なんとかしたい、フロストは事件を解決したい気持ちが、強すぎるのでしょう。
    複数の事件が同時に進んでいき、最後にちゃんと解決されるところが、いいです。
    マレット、グレイヴなども良いです。人間関係も、中間管理職の大変さが描かれています。
    次作も再読しよう。

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    2024年11月02日
  • リリアンと燃える双子の終わらない夏

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    ネタバレ

    原題 (NOTHING TO SEE HERE) とは全然違う邦題、しかもタイトル自体がネタバレ。何かあると発火して燃え上がる病気があるのかと真剣に検索しそうになるくらい自然に本を読むことができた。
    燃える双子に愛情を持てない(できれば遠くに追いやりたい)父親ジャスパー、できるだけ事をうまく納めたい継母マディソン。双子の世話をするうちに双子を引き取りたくなっていくリリアン。物語に簡単に引き込まれていき、あっという間に読み終わった。リリアンとマディソンの関係が面白い。

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    2024年10月23日
  • リリアンと燃える双子の終わらない夏

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    おもしろかった。
    発火する特異体質の双子・ベッシーとローランドと、そのお世話をすることになったリリアンが繰り広げる物語。

    最初、敵意を剥き出しにして反発していた双子。リリアンとの関係性が変わり、次第に信頼感が生まれていく様子がいい。

    双子の父は身勝手で不快でしたが、だからこそリリアンのちょっとした毒舌が光ってました。
    子どもたちは反抗的な態度も含め、だんだん可愛く思えてきた。何度も同じ質問をするシーンはちょっと切なかったなぁ…。

    お世話係は仕事だけど、子どもたちと一緒に過ごす時間は心地いいものへ、そしてベッシーとローランドは守ってあげたい大切な存在へと変わっていくーー。

    終盤、一体どん

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    2024年09月13日
  • フロスト始末 下

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    とうとう、フロストシリーズの最終話を読んでしまった。存分に堪能した満足感と、もうこれでフロストやウェルズやモーガンはじめテントン署のお馴染みメンバーに会えなくなる寂しさで胸がいっぱいになる。
    本書でも、いつもの通り次から次へと事件が発生し、フロストは食事や睡眠をとる時間もなく、慌ただしく同時進行で複数の事件の捜査をする羽目になる。それでも、いつものくだらない冗談など飛ばしながらちょっぴり間抜けなモーガンとのコンビの活躍する姿に、夢中になってしまう。

    今回の悪役担当(?)は、転任して来たスキナー主任警部。スキナーと、署長のマレットは共謀してフロストをデントン署からの追い出し作戦を仕掛ける。フロ

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    2024年08月18日
  • フランケンシュタイン

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    小学生時代、学校の図書室にあった児童向け版を読んでから、20年以上ぶりに読み返したら、胸に迫る原作の緻密な描写に改めて圧倒されました。

    人間の立ち入ってはいけない「禁忌」の境界線、自分という存在は一体何のために生まれてきたのかという人間の命題、外見から起こる差別など、200年以上前に書かれた作品であることが信じられないくらい、現代にも通じるテーマが多く取り上げられた文句なしの名作です。

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    2024年07月27日
  • フランケンシュタイン

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    ネタバレ

    青ざめた四角い顔に目の上のコブ、醜い図体、というのがフランケンシュタインのイメージで漫画のキャラクターぐらいの印象しかなかった。 ところが英語の本の愛読書のランキングに必ず出てくる。 ??ということで本を読んでみることにした。

    結果、誤解していたことが一つ、フランケンシュタインは怪物の名前ではなく、怪物を創造した科学者の名前だった。 そして意図してつくった人工人間が意図せず怪物となったことによる、とんでもない悲劇が展開していくことになる。 悲劇と言ってしまえば一言で終わってしまうけれど、愛と憎しみ、欲と虚栄心、など深いテーマが隠されている。 そして、何よりもAIブームの入り口にいる現代人に、

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    2024年03月16日
  • フロスト始末 下

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    上巻から一気に読みました。
    登場人物一覧に、けっこうな重要人物の名前が抜けているんだが…?

    スキナー主任警部とマレット署長の差し金により、デントン署から異動することになってしまったフロスト。
    デントン署を去る日が近づく中、連日ほとんど寝ないで捜査にあたる。
    妻をめった刺しに殺したと自首してきた元食肉店主のルイスだが、家の中は潔癖すぎるほどに消毒されている。
    残虐に殺されたデビーとトマスの殺害現場を探し当てるも、なかなか捜査が進まない中、凄惨な殺害場面を映したビデオが送られてくる。
    ビーズリーからは早く脅迫犯人を捕まえろという矢の催促。
    行方不明となった少女は未だ見つからず。。。
    割ける人員は

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    2024年03月16日
  • フランケンシュタイン

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    原題も"Frankenstein"、初出は1818年。
    フロストシリーズで毎度テンポの良さとユーモアに富んだ訳で唸らせてくれる芹澤恵さんによる新訳。芹澤恵さん、こんな古典ものの翻訳もされているのねー、これからも色々と読みたい訳者さん。

    書かれたのが200年前というのがまず驚くし、作者は執筆当時、20歳の女性だったということにまた驚く。ちなみにメアリーは17歳のときに妻のいる男性と駆け落ちし、駆け落ちの旅行中で本書を執筆した。その妻が自殺して20日後に結婚したらしい。スキャンダラスすぎるし、今の時代からみても倫理的にどうなんだと思う。しかし本書の序文には、「筆者の主な関心は

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    2024年03月09日
  • 冬のフロスト 下

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    ネタバレ

    今回のバディは、スケベでドジなモーガン。
    いくらなんでも、こんな刑事はいないよなあ。
    でも、それを言えば、そもそも主人公のフロストみたいな警部自体がありえないのだけれど。

    今回も、いつものフロストや、同僚達、マレットなどのデントン署の面々に会えて、嬉しくてにんまりしてしまった。

    いままでの作品同様、何件もの事件が同時多発し、どう解決していくのか、期待しながら読んだ。
    リズが拉致されてしまった事件はちょっとショックだった。リズは本当に堕胎したのか?(と思うけど)退院早々に、こんな目に遭ってしまったが、もっとリズの活躍ぶりを見たかった!

    最後の終わり方は、エラリー・クイーンの小説のようでかっ

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    2023年12月03日
  • 1ドルの価値/賢者の贈り物 他21編

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    「最後の一葉」「賢者の贈り物」がパロディ化されるくらいあまりにも有名だが、もっと多彩な面のある作家。笑いもウェットドライ両方。詩情もある。サキ程毒はないけど、棘はあるかな。

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    2023年11月13日
  • フランケンシュタイン

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    ネタバレ

    見た目、才能、コミュ力、収入、学歴、親ガチャ、、

    本来なら他人を傷付けることなんてないはずの優しい人でも、社会からの孤立や孤独、貧しさ、わびしさ、絶望を感じ続けた結果、恐ろしい怪物になる。

    昨今の「無敵の人」を連想せずにはいられない。

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    2023年11月13日
  • 地球の中心までトンネルを掘る

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    ネタバレ

    なんとも奇妙な短編集を味わった!
    主人公が「代理祖母」だったり「スクラブルのQのパーツ集め」だったり「おもちゃの音入れ屋」だったり謎で奇妙でファンタジーな職業についていたりするのに、細部がリアルに書かれているので本当にそんな職業ありそうって思ってしまう。
    主人公はみんなどこか陰の雰囲気を纏った人々で、言ってしまえば変わり者。でもみんな愛を抱えながら複雑に生きてる人々なので、奇妙なのに温かい。
    「今は亡き姉ハンドブック」は淡々と「姉あるある」を単語ごと解説していっているのにえらく切ない。シスコンには全然萌えないけど、なんでだろう、この短編が一番頭から離れない。
    走り去っていく姉の背中という存在し

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    2023年10月09日