あらすじ
リリアン28歳、人間嫌い。自己肯定感はかなり低め、将来への希望もない。1995年、春の終わりに、そんなリリアンのもとに友人のマディソンから手紙が届く。おもしろい仕事があるので、彼女の暮らすお屋敷まで来てほしいという。それで、頼まれたのは10歳の双子のお世話係。なりゆきに任せて引き受けたけれど――子供たちは興奮すると〈発火〉する特異体質だった!? 全米ベストセラー作家ケヴィン・ウィルソンが涙と笑いで〈リアル〉に描く、ほろ苦い愛情と友情の物語。ニューヨーク・タイムズ紙、ワシントン・ポスト紙、USAトゥデイ紙、タイム誌、ピープル誌ほか、10の全米主要メディアが年間ベストブックに選出!
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Posted by ブクログ
原題 (NOTHING TO SEE HERE) とは全然違う邦題、しかもタイトル自体がネタバレ。何かあると発火して燃え上がる病気があるのかと真剣に検索しそうになるくらい自然に本を読むことができた。
燃える双子に愛情を持てない(できれば遠くに追いやりたい)父親ジャスパー、できるだけ事をうまく納めたい継母マディソン。双子の世話をするうちに双子を引き取りたくなっていくリリアン。物語に簡単に引き込まれていき、あっという間に読み終わった。リリアンとマディソンの関係が面白い。
Posted by ブクログ
おもしろかった。
発火する特異体質の双子・ベッシーとローランドと、そのお世話をすることになったリリアンが繰り広げる物語。
最初、敵意を剥き出しにして反発していた双子。リリアンとの関係性が変わり、次第に信頼感が生まれていく様子がいい。
双子の父は身勝手で不快でしたが、だからこそリリアンのちょっとした毒舌が光ってました。
子どもたちは反抗的な態度も含め、だんだん可愛く思えてきた。何度も同じ質問をするシーンはちょっと切なかったなぁ…。
お世話係は仕事だけど、子どもたちと一緒に過ごす時間は心地いいものへ、そしてベッシーとローランドは守ってあげたい大切な存在へと変わっていくーー。
終盤、一体どんなラストを迎えるのかと心配になりましたが、ラストページ、とても良かったです。
子どもたちだけでなく、不本意な人生を歩んでいたリリアンにとってもいい心の変化だったように思う。
ラストはウルッとしました。
『ふたりとも、世界を焼き払いたかったわけじゃない。ただこの世界で味わう孤独を、いくらかなりともやわらげたかっただけなのだ。』
Posted by ブクログ
登場人物がみな非常に魅力的。もちろん自然発火する子供達やスーパーリッチな世界の話もおもしろい。
とにかくみんな自分勝手で友達や家族にはいらないタイプなんだけど、どこか愛嬌があって、最後には全員好きになってしまう。人生はままならないクソみたいなもんだけど、それでも前向いて歩いていこっか、って気分になる。
Posted by ブクログ
正確な分類はよく知らないけど、私の中ではこれは青春小説。しかも極上のやつである。
ストーリーはシンプルだが、この小説の魅力はとにかく登場人物すべてが愛おしいというところに尽きる。主人公のリリアンはこれまで思うような人生を歩むことができずにぐずついていた、一方で親友のマディソンは大金持ちで上院議員夫人。そのマディソンからひと夏の家庭教師を頼まれた双子のベッシーとローランド、だがこの双子は興奮すると”燃える”というとんでもない子供たちだった。悪戦苦闘するリリアンだったが、そこには徐々に強い絆が生まれていった。
作者であるケヴィン・ウィルソンの技巧が随所に光る。脇を固める登場人物もみな魅力的、お目付け役のカールや家政婦のメアリーなど本当にいい味を出している。リリアンの粗雑だが純粋な語り口は誰もが感情移入でき、かつ表現力豊かな色彩を持っている。
双子との交流を通じてこれまでの自分を見つめ直し、新たな気持ちで人生に向き合うことになるリリアン、ラストは本当に清々しく、最高の読後感を提供してくれる。だからこれは青春小説と言っていいんじゃないかと思う。
最後にこの小説の魅力を存分に引き出してくれた芹澤恵さんの邦訳が素晴らしいことにも触れておきたい。リリアンの生き生きした言動はこの邦訳無しでは表現しえなかったと思う。この訳で読めて本当によかった。
Posted by ブクログ
面白かった。
リリアンの自虐的なところと観察眼が良かった。わざわざ口に出さなくても、心で思う気まずさが良い。
マディンソンとの関係も良かった。マディンソン大統領になって欲しいな。
ジャスパーはクズくて良かった。本人はクズだと自覚してないクズ。ジェイン・オースティンの小説に出てきそうなクズ。
双子達は聡明で良かった。愚かではない。
その気になれば、火をつけまわって、社会を混乱に陥れられる能力だし、良い能力でもあるけど、コントロールがな、難しいよな。
発火能力。障害であり、個性であり、問題であり、自然なものだなと感じた。
海外翻訳本は、読みにくいものにあたってて、億劫だったけど、これは批判的で面白かった。
Posted by ブクログ
翻訳特有の言い回しや、横文字の名前が苦手な私だけど、これは読みやすかったし、面白かった。
双子と会うまでは少しだらけたけど、そこからは一気にスピードアップ。リリアンと双子はもちろん、他のキャラクターもみんなクセつよで、読んでて印象に残る。ハッピーエンド(=波乱の幕開け)で良かった。ムームー着てみたい。
Posted by ブクログ
めっちゃ可愛いな!どいつもこいつも。
発火する双子ってだけですでに面白いのに、双子以外も実に魅力溢れる登場人物たちで楽しかった。
リリアンから見た人物評もユーモア溢れる表現で面白い。カールやジャスパーですら多面的に描かれると可愛い。なんかこう、とても素敵な物語を読んだなという感覚。
発火するけど、まぁなんとかなるんじゃない?と思わせるリリアンの語り口が頼もしくて、でも甘くみてて、そのユルさというか、総じて可愛いよみんな。色々ままならないけど、まぁなるようになるよね。
Posted by ブクログ
『人体自然発火現象の対処法を知りたい人へ…いないか』
なにこの面白さ!!!世界中の不幸をすべて背負い込んだようなリリアン。ひょんなことから燃える双子のお世話をすることに… とにかく、読んでいてリリアンが可哀想でしかないけど、文句をブツブツ言いながらも双子のために頑張る姿に、ついつい応援に力が入る!いや〜、面白かった!
Posted by ブクログ
とってもおもしろかった!!
今年の個人的ベスト5に入るし棺桶本としても追加したい一冊。
大好きな作家さんがおもしろいと仰っていたので息をするようにポチッとしたのだけど、本当に読めてよかったと思えるいとおしい物語。
人間嫌いのリリアンが10歳の双子と過ごす一夏の物語と言ってしまえば、どこにでもあるような物語に聞こえるけれど、これはどこにもない唯一の物語だし、発火体質という特異な要素がありながらも、ファンタジーではなく、あくまでリアリティのある物語。
子どもの描かれ方もとても好きで、余計な美しさもわざとらしい子どもらしさもなく、双子たちの描かれ方がナチュラル。アンナチュラルな発火という要素があるのにナチュラル。それがすごいよね。
『発火』と特別なのように思えるけれど、子どもって実際に燃えないだけでこの発火に匹敵する心の炎が燃えるときがある。だからとてもナチュラルに感じたのかもしれない。
わたしはリリアンとマディソンの関係性も好きで、女同士ってこういうとこあるんだよね、と時折頷きながら読みました。
またこうして死ぬまで大事にしたい一冊に会えて幸せだなぁ。
これから何度も読み直すとおもう。
三人がこの先も『悪くない』日々を過ごせることを祈ってしまうし、時々勝手にこの先を想像して楽しんでしまうだろうな。
年齢性別問わず楽しめる一冊だとおもう。
Posted by ブクログ
いかにも映画化されそうな、不遇を切り抜けそれぞれのハッピーエンドを手に入れる系の物語。
不遇とはいえ経済的には安定が確保されたどん底とまではいかない環境、これまでほったらかされていたから見出されていなかったけど実はこれこれ然々の才能あり、みたいな都合の良さが鼻につく部分もあるのだが、やっぱり前向きに道を切り開いていく物語は気持ち良い。
タイトルがキャッチーな割にどんな物語なのか想像がつかなかったが、蓋を開けてみれば実はそのまんま。
かつては今ここにいる場所から抜け出してやろうと全力で人生に立ち向かっていたが、一度のトラブルからレールを外れ(戻ったと言うべきか)、マリファナ片手にくすぶる日々を送るリリアン。
とある夏、燃える双子ベッシーとローランドの2人の家庭教師をする役目をかつての親友マディソンから持ちかけられる。
燃える?
そう、比喩とか表現としてではなく、その双子はストレスが掛かり気持ちが昂ると本当に燃えるという。
えー、まさかのSF的設定!?
と思ったけど、読み進めていくうちに、その不自然を自然に溶け込ませている感じ、かと言ってそれなくして物語が成り立たない感じが凄くうまーく用いられているなぁと感心。
双子はマディソンの夫で国務長官候補のジャスパーの前妻の子どもなのだが、前妻が亡くなったことにより引き取ることに。
その特質ゆえに奇異な目を向けられたり、異質なもののように扱われることが多い双子だが、リリアンの受け入れ力がとにかく気持ち良い。
普通ならキレたり、投げ出したりするところをぐっと堪えて最善を探る。
堪えるだけが最良だとも思わないが、この姿勢は一考の価値あり。
そして、そのガス抜き的役割がスポーツ(本書の場合はバスケ)というところもいい。
夏の間だけ面倒を見ることになっていたリリアン。
幾度となく繰り返される双子との会話が印象深い。
「夏が終わるまで、あとどれくらいある?」
「まだまだあるよ」
Posted by ブクログ
主人公の性格や口調が好きで人が燃えるというリアルじゃありえない描写があるところ、どの人物もキャラだっているところから是非早く映画化して欲しいストーリーでした。良かった。
無愛想だけど優しいところもあるカールが推しです。主人公とカールがくっついて欲しいと思いながら読んだが真逆というか、。「ああ、だよね〜」な主人公の好みに少し勝手にがっかりしてしまった。笑
Posted by ブクログ
タイトルが面白そうだったので、手に取ってみた。
リリアンと双子の子供たちの心の交流の話だが、リリアンとマディソンの友情?での話でもある。
原題が、Nothing to See Hereと知り、話の内容も納得できた。
リリアンと双子、リリアンとマディソン、の今後の関係もきになるなー。
燃えるのは大人になったらなくなってしまうのか?話の内容には関係ないが、気になってしまった。
Posted by ブクログ
自暴自棄な生活を送っていたリリアンのもとに、高校時代の友人マディソンから頼みたい仕事があると連絡を受ける。マディソンは将来を嘱望されている上院議員のジャスパーと結婚し、子どもが一人いる。そのジャスパーと前妻の双子のこどもたちの家庭教師兼世話係になってほしいという。10歳になる双子は、興奮すると発火するという特異体質だった。
子どもたちの体質の設定が突飛過ぎてコメディーかと思ってしまうが、なかなか深い話だった。一癖も二癖もある登場人物ばかりだが、読み進むうちそれは必然と思えてくる。何よりもリリアンと双子たちが愛おしい。
脇役のカールとメアリーがステキだ。
Posted by ブクログ
ジャスパーとかマディソンとかコイツ絶対嫌なヤツでしょと思いきや、ところどころで人間らしいところとか必死に頑張ってる部分を見せられるので、最終的に嫌いにならなかったところがすごい。カールは話が分かりすぎる男だった。
Posted by ブクログ
特殊な設定、環境にも関わらず、さくっと読める物語でした。
主人公の思い切っちゃう感じや双子の賢さがよかった!切ない面もあるけど…
なにより好きなのは家政婦のメアリー。彼女の作る料理を食べてみたい。
物語の後、リリアンと双子たちはどうなったのか。
Posted by ブクログ
荒唐無稽な設定にやっぱり日本人には伝わりにくい様々なやりとり。なのに読書中も読後感も清々しいのは、解説者さんの後書きにもあったよーに、作者の『誰にだってきっといいところはある』とゆー愛情にあるのかな。僕もそーありたいけど、なかなか。久しぶりに童話的な寓話の世界にどっぷり!
Posted by ブクログ
さえない生活をしているリリアンに友達のマディソンから双子の面倒を見て欲しいと頼まれる。底辺のリリアンと富みと権力を持ったマディソンの変わった友情と発火する双子へ芽生えた愛が生き生きと描かれている。雑で少しばかり下品なリリアンの真面目で愛情深い優しさに、彼女を好きにならずにはいられない。
Posted by ブクログ
このノベルは盛り上がるところとそうでないところが適度に仕組まれ、抑揚が利いた作品の印象がする。
著者が持つ人生訓や道理がリリアンやマディソンの口をとおして語られ、納得や同意、説得させられるところが散りばめられている。
独創的で個性的なこの作品を訳者も我々読者に素直に伝えている良作と思う。
Posted by ブクログ
なんとも説明的なタイトルで辟易するが、原題は“NOTHING TO SEE HERE”とそっけない。ただでさえハンディのある翻訳物なので、ぱっと見てわかるタイトルとカバーは致し方ないのかもしれない。
ぼくが本書を手に取って最初に思ったのは、キングの『ファイアスターター』ばりの活劇小説だったが、実際はまさかの家族小説だった。
テネシー州の上院議員の妻となった高校時代の親友からの頼みで、亡くなった先妻の遺児(双子)の世話をすることになったリリアン。だが、この双子は興奮すると発火するという特異体質だった……。
訳者あとがきにもあるが、リリアンと双子だけでなく登場人物すべてが一癖も二癖もあり、単純に善悪の判断はつかない。様々な思惑がからみ、物語は想像不能な展開を遂げる。おもしろかった。
Posted by ブクログ
この本が言いたい事をまとめれば、
多くの大人は子供たちと出来る限り関わらないようにしたり、自分の都合を押し付けてばかりいる。
しかし、子供たちの人格を尊重して付き合えば、子供たちも懐き信じてくれる。
くらいでしょう。それをストレートに物語にしたら、なんだか重苦しいばかりの話になりそうなところを、主人公の双子を発火する子供(文字通り燃え上がります。服も焼けるし火事にもなりますが、本人はダメージを受けません)にしたので、なんだか楽しい話になりました。そして登場人物を片っ端から「一見xxだけど実は・・・」とした事も成功の一つでしょうね。端役なのですがメイドのメアリーのキャラなど、なかなかです。
どこかにアメリカと日本の視点のズレみたいの物が有って、疑問符が浮かぶことも時々あるのですが、なかなか面白い小説でした。
原題:Nothing To See Here(見るべきものはない)。このタイトルだと手にしなかっただろうな。
Posted by ブクログ
良かった! 泣けるし、笑えるし、びっくりする。ストーリーに引き込まれ子どもが発火しないかヒヤヒヤするし、金持ちの政治家には腹が立つし読書の時間が待ち遠しかった。
Posted by ブクログ
レジ打ちの仕事を掛け持ちし、自宅の屋根裏部屋でその日暮らしの生活をしているリリアン(28歳)。そんな彼女のもとに、上院議員の妻である旧友から、夫の前妻の子供(双子10歳)の教育係の仕事を頼まれる。ただこの子たちは、興奮すると〈発火〉する体質であった。
登場人物がクセだらけの人たちで、リリアンのどこかダルそうな語りでありながらリズミカルに進む。彼女と双子の育ってきた境遇が重なる部分があり双子に自分の姿を投影し、そんなところも彼女らにとっては良かったのかも。最後は「してやった」と爽快な読後感。
Posted by ブクログ
現状から抜け出したくて
一生懸命勉強して入った学校で
大人の?お金持ちの?理不尽な理由で退学に
リリアンの人生への悲観を思うと
何ともいたたまれない始まり
親友だと思っていた同級生が
退学の理由なのに
ペンパルになってその後再開する2人
私だったらこの子と親友なんて無理だわ
って思ってしまったけれど
意思の強さとか自信とか
羨ましいなと思うところはあった
登場人物の感情を推しはかるのが
少し難しかったけれど
人の複雑な気持ちが垣間見れた気がする
もっとファイヤーでワーっで大騒ぎ
な感じかと思ったら
思いの外しっとり静かな困難でした
双子にとって燃えることの意味とは
これから始まる新しい暮らしとは
最後までいろいろと想像をめぐらせていました
子育てって燃えてなくても大変で
子どもはそんなにすぐに心を開いてくれるかなぁと
現実的な思考に持っていかれて
大満喫するにはいたらなかった
Posted by ブクログ
海外の本を初めて読みたいと思った作品。
ブラックジョークなどを交えて物語が淡々と進んでいくので最後まで面白かった。
タイトルから結末が想像できてしまうのが少し惜しいなと感じてしまったが、結末がわかっていても飽きずにたのしめた。
Posted by ブクログ
普通にいい本だった。「社会的に生きるということ」を一人一人に立場で考える道徳的な本だった。「模範的」からずれた時の寄り添い方。「模範的」とは「人間性を失う」ことなのか?シンプルな内容で普通ゆえに全然ごまかしがきかない世界を最後まで書ききった作者はすごいと思う。そして登場人物一人一人が一歩ずつ成長し前へ進めたのが良かったと思う。