夏川草介のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ネタバレ4作品目もとても面白かった。
一止の学生時代や研修医時代の話が描かれていて、根本の部分は昔から変わらないけれど、周囲の人たちとの関わりの中で少しずつ成長していく姿が印象的だった。
特に、大先生や事務長、榛名さんたちがずっと温かく、本当に良い人たちばかりで読んでいて良い関係性だなと思った。
一止の変わらない良さに関しては、たとえ相手に嫌なことをされたり、自分と考え方が合わなかったとしても、必要な言葉だけを相手に伝え、自分の価値観を押し付けないところだと思う。相手を否定せずに向き合う姿勢を見て、「自分を持っている」というのはこういうことなのだと感じた。
今回読んでいて、一止が影響を受けすぎている夏目漱石も読んでみたくなった。
特に印象に残ったのは、2場面。
一つ目は「本が良い理由」の場面だった。
「ヒトは、一生のうちで一個の人生しか生きられない。しかし本は、また別の人生があることを我々に教えてくれる。たくさんの小説を読めばたくさんの人生を体験できる。そうするとたくさんの人の気持ちもわかるようになる」
「困っている人の話、怒っている人の話、悲しんでいる人の話、喜んでいる人の話、そういう話をいっぱい読む。すると、少しずつだが、そういう人々の気持ちがわかるようになる」
「“わかる”と良いことがあるのですか?」
「優しい人間になれる」
このやり取りがすごく良かった。本を読む意味をこんなふうに表現できるのが素敵だと思ったし、自分が読書を好きな理由にも近い気がした。
また、山で自殺しそうになっていた人への言葉も印象的だった。
「たまには、足滑らせて尾根道から落ちることだってあるさ。だけど落ちたあとに息があったんなら、しっかり体を起こして、崖っぷちに踏みとどまる努力をすべきなんだ。手袋取って煙草吸って、泣き言を並べる以外に、できることはいくらでもある。生きる理由なんてものは、しっかり生きてから考えればいいんだよ」
少し投げやりな口調だけど、その分まっすぐで、綺麗事ではない切実さがあって心に残った。
その後のハルの、
「大好きな場所を悲しい場所にしないで」
「帰る場所は自分で作る」
という言葉もすごく良かった。優しいだけではなく、ちゃんと前を向かせてくれる言葉だと思った。 -
Posted by ブクログ
『旅の準備をしたまえ』。
東々大学大学院で民俗学を学ぶ藤崎千佳。指導教官の准教授・古谷神寺郎は、足が悪いながらも、ステッキを片手にフィールドワークにでかける、ちょっと偏屈な民俗学者である。
日本中を歩きながら、今の日本が失ったものは何か?これからの日本に必要なものは何か?を見つめている…
日本人と宗教。
キリスト教、イスラム教、ヒンズー教…の世界とは違う。
神の存在が違うんだろう…
天地が守ってくれる、だから大木が神のように祀られる、巨石が…
もっと身近な存在なんだろう。
誰かが救ってくれるのではなく、自然にあるすべての物が守ってくれるのだろう。
古き良き時代を忘れてはならない。
過去から学ぶべきことはある。
そんなことを考えさせられた。