あらすじ
月岡美琴は、松本市郊外にある梓川病院に勤めて3年目の看護師。風変わりな研修医・桂勝太郎と共に、膵癌を患い、妻子を遺して亡くなった長坂さんを看取り、誤嚥性肺炎で入院中だが「生大根の子糠漬けなら食べられる」という88歳の新村さんのために沢庵を切る(「秋海棠の咲く頃に」))。秋、循環器内科での研修が始まった桂は、肺炎の疑いで緊急搬送された92歳の女性に3時間延命する処置を下す。その判断は老人の延命治療に懐疑的な通称”死神”こと谷崎医師の教えに反していたが、それは連絡を受けた孫が駆けつけるまでの所要時間だった(「ダリア・ダイアリー」)。”口から物が食べられなくなったら、それが人間の寿命である。その常識を変えた夢の医療器具「胃瘻」”の登場、「できることは全部やってほしい」という患者の家族など、地域医療ならではの患者との関わり合いを通じて、月岡と桂は、老人医療とは何か、生きることと死んでいることの差はどこにあるのか、悩みながら進み続ける。
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Posted by ブクログ
文庫版で再読。
やはり好きな話だなあ。登場人物がいいのだけど、特に美琴と桂先生が好きなキャラなんだな。
高齢者医療は生かす、そしてどう看取るかも重要でそこに答えはないから難しい。死神と呼ばれた先生の考え方も分かるもんな…。
Posted by ブクログ
神様のカルテの大ファンであり、夏川草介さんの作品と知り、購入しました。
神様のカルテシリーズと同じ長野が舞台ですが、少しテイストは違う話で飽きずに読めました。特に、死と向き合う話が多く、自分自身も考えさせられたし、作者の夏川さん自身も今もなお葛藤を続けながら、仕事に励んでらっしゃるのだと思いました。
人は1人では生きていけない。誰もが誰かと繋がって生きている。生きるということはそれだけで誰かに背負われるということであり、同時に誰かを背負うことだ。
この言葉が印象に残りました。死神と呼ばれる先生もいる中で、研修医の桂先生と美琴が病気と戦っていく姿と病院を変えていく姿に心が温かく感じました。
余談ですが、途中で、本荘病院の板垣先生の下で学んでいた7年目の医者が文字だけ登場し、神様のカルテのファンとしては、同じ世界線なのかと嬉しく思いました。
Posted by ブクログ
すごく綺麗な文章で読みやすかったです!
郊外での高齢者医療。
現実的な判断や親族との関わり方等、よくある医療系小説とは少し違った部分も より色濃く描かれています。
リアルですが人間の脆さも強く印象に残りました。
実際の医療現場を見てきた人間にしか描けない物語だと感じます。
とある先生の特性上 患者さんを看取るシーンも多く、人間の最後ってこんなに呆気ないんだなと思う瞬間も。
主人公は看護師と研修医の2人。
看護師ちゃんはさっぱりした性格でいいですね!!
研修医さんは少し風変わりですが、優しくて強い。
2人とも強さと優しさ、そして物事に立ち向かう勇気を持っていて、読んでいる私まで元気づけられました。
物語が進むにつれて少しずつ、かと言ってダラダラしすぎない絶妙なスピード感で2人の距離が近づくのも、読んでいて気持ちが良かったです!
物語の各所に散りばめられたお花の名前。
その度に綺麗な花々が頭に浮かび、癒されます。
澄んだ空気を吸っている気分。
読んだあとはとても清々しい気持ちになりました!
ほぼ全員、読み終わって直ぐに花言葉調べることになると思います!!笑
Posted by ブクログ
日本は今まさに未曾有の高齢社会となっていると思う。
人生100年時代と簡単に言うが、誰もが健康に暮らせるわけではない。
本人の意思に関わらず、医療によって寿命を延ばすのが本当に幸せなのか。
親が高齢になり、自分も何年か先には直面するであろう問題だ。信州松本の自然の中で奮闘する若き研修医と彼を見守り支えるベテランの医師や看護師達、年老いた患者達のリアルを描いた本書に引き込まれた。
苦しい選択を迫られる場面もあるが、爽やかで温かい恋愛要素もあり、読んでよかったと思えた。
Posted by ブクログ
研修医の目から見た医療の景色、社会が蓋をしてしまっている生と死の問題などを優しく包みながら浮かび上がらせてくれる小説。
現場の悩みを柔らかに伝えてくれている印象で、正解を求めるよりも、悩むことの大切さを教えてくれる話でした。
Posted by ブクログ
神様のカルテとはまた違う、でも医療に正面から向き合う医師の姿とその裏にある生活が描き出されている作品だった。より地域に密着した医療を夏川さんの言葉で魅せていただいた作品な感じがした。
Posted by ブクログ
根が切れてしまっているの一文にハッとさせられた。
作者が医師ということもあり、経験談からきた本音の部分なんだろうと思う。
神様のカルテでも感じたが、文章がとても穏やかで読みやすかった。
Posted by ブクログ
これは良かったね、猫を最初に読んだのだけれど、優しすぎるファンタジーだけの思ったのと違うと手に取るの躊躇った。高齢者医療が非常に気になり やっぱり読もうと、花屋の息子で勿忘草にダリアにとうんちくもあるし、花がきっかけで恋人同士になれた、季節の移り変わりもいいし、すんなり恋人同士になれたのもいいし あくまで病棟の物語が頼もしい。桂先生の患者の根が切れてる、もう見取りませんか、かたややゑさんの根は切れてないですと、見る所が凄い 判断材料が正しいと思う、こんな先生なら命を任せられる。一本15000円のコロナワクチンを打たせて進めて副反応あるのに黙って、危険なワクチンは医師自身打たない、こんな病院ばかりの世の中で、勿忘草は胸を打つ、エゾムラサキが目に浮かぶ。 ラストの谷崎先生の行動もグッとくる。次神様のカルテだね
Posted by ブクログ
看護師の美琴と新人研修医の桂は地方の病院で日本の医療の現実と向き合う。
夏川さんといえば地域医療、という印象があるくらいですが、こちらも「神様のカルテ」と同じく疲弊する地域医療の現場と現実を描いたお話です。テーマはより深刻になりつつある高齢者医療について。増えゆく高齢者の患者をどう支えるのか、どこで線引きするのか、難しい問題を直球で突きつけてくるのは夏川さんの特徴でもあると思います。けっこう暗澹とするこれらの問題を論うだけではなく、その場で力なき個人として何ができるのか、エピソードの最後の一滴に救いを残すところがストーリーテーラーとしての夏川さんの真骨頂なのかな、と感じます。そして花を巧みに絡めてくる構成もステキでした。
ワスレナグサは家の近くにもたくさん咲きますが、たいていは移入種の花とされています。幼少の頃、登山に連れて行かれて母から教えてもらったワスレナグサは僕にとっても特別な花で大好き。しかしこれって種名じゃなくてムラサキ科の花の総称なんでしょうか。しっかり調べてみないと。
Posted by ブクログ
ダリアの花言葉には「感謝」や「裏切り」など、良い意味と悪い意味という、両面性があります。
ダリア・ダイアリーを読んだとき、軽く衝撃を受けました。谷崎先生も桂先生もどっちも正しい。
前向きに見切るのか、後ろ向きに足掻くのか、医師が直面する、足がすくんでしまいそうな現実。
対比がとても悲しいです。そしてとても美しくもある。変な感じ方かもしれないけど、それでも。
Posted by ブクログ
地方の高齢者医療について、雄大で美しい自然と、かわいく心癒す花と、若い二人の爽やかな恋を添えて書かれたお話。
個性的な医者それぞれが自分なりの哲学を持って、病と人の死について考えてる姿は、自分も考えさせられます。
今読めてよかった。
Posted by ブクログ
副題の、安曇野診療記…からも分るように、信州の安曇野の中規模病院を舞台に、研修医 桂正太郎の成長物語。
直面する老人医療の問題点に、真摯に向き合って行く姿は、胸を熱くします。
個性的な指導医もまた、それぞれの葛藤を抱えながら患者と向き合っていて、こんな病院、先生だったら、安心して任せられると思ったり…
桂先生と結ばれる、看護師の美琴も、素敵です。
基本的に癒やされる物語。
Posted by ブクログ
安曇野の病院を舞台に繰り広げられる色々な人間模様、たくさんの素敵な花が出てきた中でも、カタクリの花を私も見に行ったことを思い出しました。同じ場所ではありませんが…
さて、高齢者医療はまさしく、現在、そして、これからの日本が考えなくてはいけない大きな課題であると本を読んでさらに感じました
命をどう繋いで看取るか、難しい問題ですね
夏川先生らしい言葉が散りばめられてる
心がぽっと温かくなる作品です
Posted by ブクログ
夏川先生の医療小説。神様のカルテにも近しいですが、本作は看護師の女の人と研修医の男の人がバトンリレーするみたいに語り手を変えながら話が進みます。これからの超高齢化社会に一石を投じる話だと思います。わたしも選択を迫られ悩んだ当時のことを思い出します。おそらく絶対的な正解はないのだと思います。ちゃんと考えられる選択肢を理解して考えて悩んで…そのステップがあるかないかが大切なのではないかと思います。
自分が高齢者になった時、さらにどんな社会が待っているかと思うと怖くなりますが考えることを放棄してはいけないのだと思いました。
Posted by ブクログ
この頃よく手に取る 夏川草介さんの本
入院しているのは高齢者がほとんどの安曇野の病院が舞台。
高齢者の医療…母が今そういう状態になっているのもあり気になって手に取った。
1年目の研修医と3年目の看護師を中心に物語は進む
それぞれ物語の中に エッセンスとして「花」の存在がある。
秋海棠・山茶花・ダリア・カタクリ… どの花もなくてはならない意味を持っているのだと思う
『死』が身近にある高齢者医療の現場
延命治療 どう看取るか… など 考えざるを得ない場面は多い
読んでいて
「どう生きるか...」ということを考えるのと「どう最期を迎えるか…」を考えることは同じなのではないかと… 言葉にすると感じ方はかなり違うけど… とふと思った
大切に持っていたい1冊
Posted by ブクログ
「花の命は短くて・・・」
というが、人の命は長すぎる?
安曇野の自然の中にある『梓川病院』が舞台。
地元生まれ地元育ちの、月岡美琴(つきおか みこと)は、看護師三年目。無我夢中の新人時代を抜けて、何か分かってきたつもりになりがちな時期?
信濃大学医学部を出た研修医、桂正太郎(かつら しょうたろう)の実家は、東京の花屋。彼の、花に関する知識が物語の彩りになっている。
夏川草介氏は、「白い医療物」担当だと思う。
しかし、生きているのか死んでいるのか分からない老人ばかりが病院を占拠している状況には強い危機感があるのだろう。
現役のお医者さんが書く小説は常に、医療の現実が抱える問題を大きく取り上げている。
意思表示のできない患者に代わって医者に物申してくる「家族」という存在も厄介だ。病院に入れればまるで全自動洗濯機のようにきれいになって出てくるとでも思っているのか。そして、相手の話を聞かない。
小説の中では、医師たちが自分の考える正義や哲学によって、個性的な治療方針を打ち出したりしている。
八十超えた患者はみんな看取りに持っていくことで「死神」と呼ばれる谷崎だが・・・私は結構好きなキャラクター。
どこまでが「寿命」なのか。
「健康寿命」という言葉は、今では多くの人が知っている。それが終わってしまった段階からの、本当の寿命とは?
とにかく悩み抜け。できるだけ色々な考え方に触れて、自分の哲学を鍛えよ、と桂に説く内科部長の三島は、これからも若い医師や看護師たちの道を照らしてくれるだろう。
Posted by ブクログ
主題は異なるけど
基本的に同じ内容で同じ流れ
ほぼ同じキャラクターで出来上がっている
既視感の連続のようなんだけど
それでも読みやすくてよくできた物語りである
Posted by ブクログ
夏川草介さん、3冊目。
今回は恋愛色強し。テーマは高齢者医療。
病院は治すところから、どう終わりを迎えるかを考えるところにもなったのか。地域によって異なるのだろうけど、心臓が動いていれば生きてるのかどうか問題。何が正しいのかは誰にも分からないし、誤解を生む可能性もある中で、この話を書いた勇気を感じた。
「死に無関心な人々が突然、身近な人の死に直面すれば当然のごとく混乱する。驚き、慌て、ときには医療者に対して理不尽な怒りをぶつけてくる。そうかと思えば、思考を停止し、すべてを医師に押し付けて見て見ぬふりをする。どちらにしても困った事態だが・・・ただ死というものに対して無知であるだけなのだから。そういう無知な人々に対してどのように医師は接するべきか、これは難しい問題なのだ。」
今の医者って大変。ネットで調べられる時代になったことで、中途半端に知識がついてしまった。医者に限らないけど、先生と呼ばれる職の人は、昔は尊敬される立場だったのに、責任ばかり重くて、これじゃなり手が減るばかり。。
人はひとりで生きているわけではない。誰もが誰かとつながって生きている。生きるということはそれだけで誰かに背負われるということであり、同時に誰かを背負うということだ。
夏川草介さんの有名な「神様のカルテ」は読んでいないで、他の作品を先に読んでいる人も少ないかもしれないな。
Posted by ブクログ
病院の話なので、”神様のカルテ”のスピンオフ的な感じがしてしまいました。
高齢者医療というか、人の寿命や命の終わり方について、考えさせられる話でした。
すぐ側まで来ている自分の身につまされる思いです。
安曇野の美しい自然が見えるようで、行きたくなりますね。
Posted by ブクログ
結構デリケートな、それでいてこの現代、巷に溢れているだろう、誰もがいつか、どういう立場でか直面するだろうな出来事。
生きているってどういう状態を言うのがいいのだろう、と読み進めながら考えていた。
その少し重めなテーマでも、あたたかくさらっとした心持ちで読めるのは間違いなくメイン二人のお陰だろう。この二人の関係性にも大注目だった。個人的にはプロローグとエピローグの対比でグッと来てしまった。
面白かったです。
Posted by ブクログ
日本の医療の現実を医師と看護師さんからの視点で描かれています。
読みやすく、けして暗くなりすぎずに物語は進みます。
老人医療とは何か。
自分はその時どうしたいのか。
色々と考えさせられました。
誰しもがおそらく考える事を小説を通して知れるので読めて良かったです。
Posted by ブクログ
地方病院の医療現場のお話の中で
老人医療についてとても考えさせられるお話でした。
研修医一年目の桂先生やしっかりものの看護師
美琴が、日々の老人医療に携わる中で
生きるとは何か
治療とは何かと日々格闘しながら患者さんやその家族と関わっていきます。
桂先生の指導医である三島先生の言葉が心に
残っています。
大量の高齢者たちをいかに生かすのではなく、いかに死なせるのかというのが現代医療の問題点だ。
いかに看取るか…本当に難しい問題だと思います。
医学の進歩により、治る見込みのない患者さんを胃瘻や酸素吸入などで
ただ生かしておくことも可能な世の中で
長生きとは、
と現場の先生方や看護師さんたちの葛藤を
感じました。
合間の桂先生と美琴の爽やかなラブも
とても可愛かったです。
Posted by ブクログ
「神様のカルテ」と同じ松本が舞台で、看護師の眼から描く。限られた医療資源を高齢者にそそぐ是非が問われている。どんな時も患者に寄り添う目線は暖かい夏川ワールドである。
Posted by ブクログ
信州大医学部を卒業し、今も長野県で地域医療に携わる著者。医療現場における人間関係を描いたヒューマニズム溢れる作品群で知られる。
今回も、松本市郊外にある梓川病院に勤務する若い研修医と看護師を主人公に据え、信州の美しい景色も散りばめながら、医療関係者と患者との係わりを温かく描いている。
ヒューマンな小説ではあるが、医療に関する社会的問題も取り上げられている。 この作品で主眼においているのは、高齢者医療のあり方である。病気を治すのではなく、どう死なせるか、ただ延命するなら、相当程度長らえるが、それをいつまで続けるかがひとつの大きな命題だ。
小説には「死神」と呼ばれる循環器内科医が登場し、主人公の若い優秀な研修医を戸惑わせる。
彼は、重症の心不全の高齢患者については、あくまでも、最低限の点滴と酸素で看取りを基本とする姿勢を貫く。その行動の裏には、高齢者の肺炎に抗生剤が多用されることで生じる多剤耐性菌の脅威、大量の寝たきり患者を抱え、過労する若手医師など、高齢者の重みからの医療倒壊への危機感や医療資源の適正配分についての深刻な憂いがあった。
よく問題になる胃瘻を作ることの是非についても、傍目には非人間的に思われる措置でありながら、作らなければ患者を死なせることになるといった延命治療に関する厳しい議論も盛り込まれている。
重いテーマを提示しつつも、花屋の息子である1年目の研修医と37年目の看護師とのすれちがいながらも進んでいく恋愛の様子が微笑ましく、読者の緊張感を解きほぐす役割を果たしている。
Posted by ブクログ
安曇野は北アルプスのふもとで大変きれいな風景のイメージがあります。現実は小説のように高齢化が進んでいるのでしょう。そこには本に登場するような医師と看護師さんたちがいてくれるといいです。