夏川草介のレビュー一覧
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昨今、本という存在がいかに苦境に立たされているかが分かる。閉じ込める者、切り刻む者、売り捌く者との対峙を通して、本とは何か、読書とはどういうことか、林太郎はその意味について考えさせられる。
特に、最後の迷宮は一筋縄では行かない。2000年近い時の壁を越え、2000以上の言語の壁を超えてきた本自身でさえ、本が持つ力について疑問を持ってしまっている。そんな相手に対し、これまで夏木書店で数々の本を読み、祖父から本と人生について多くのことを学び、トラネコとの本を巡る冒険を経た林太郎が、考えに考え抜いて出した答えは「人を思う心」だった。
著者が林太郎とトラネコの物語を通して伝えたかったことこそ、時 -
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二作目は,以前の同級生が,同じ病院にやってくる。
商品紹介を転載。
新年度、内科病棟に一止の旧友・進藤辰也が東京の病院から新任の医師としてやってくる。かつて進藤は“医学部の良心”と呼ばれていた。しかし、彼の医師としての行動は周囲を困惑させるものだった。そして、さらに大きな試練が一止たちを待ち受けていた――。
進藤辰也の豹変ぶりはどこから来たのか。その旧友が,この病院でどのように変わるのか。まだ,主人公の一止が旧友の言葉から何を学び,医者としての成長に繋げていくのか。
れいによって,理解のあるステキな妻・ハルさんに勇気づけられながら,物語は進んでいくのである。 -
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NHKの「朝いち」という番組で,作者の夏川草介さんという方をはじめて見た。彼のペンネーム・夏川草介が,彼が愛する明治の文豪の名前から取り入れたと言うこともはじめて知った。夏目漱石,川端康成,芥川龍之介,そして「草」は夏目漱石の『草枕』という作品からだそうだ。夏川さんは,番組の中で『草枕』の一節をスラスラと暗唱していた。「覚えようと思って覚えたのではなく,何度も読んでいる間に頭に入ってきてしまったんだ」とおっしゃっていた。なんということだ。
そして,本作品『神様のカルテ』の話になる。ご自身が医者であり,妻の勧めて何気なく書いた作品を妻がどこやらに応募して,それが賞を取ったらしい。なんという面白 -
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テレビで著者のインタビューをみて,興味を持ったのが読むきっかけとなった。
著者が医師として多忙を極めていたときに書いたもので,どちらかというと自分のためで,上梓を目指していたわけではなかったという。医療に関する部分は多分に著者の経験に基づいているというから,地方の中核的な病院の実態−やや古いかもしれないが大変な状況−が描かれている。しかし終末を迎える患者を看る目は暖かい。
著者は漱石をこよなく敬愛する人らしく、文体を見ると,漱石に成りきって楽しみながら書きあげたのではなかろうか。友人関係は随分古めかしい感じがするのも,坊ちゃんあたりの影響か。松本市内の地理もほぼ正確に描かれているようで、本の中 -
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夏川草介氏の『神様のカルテ2』を読んだ。前作に続き、信州・松本の本庄病院を舞台に、内科医・栗原一止を中心とした医師たちの姿が描かれている。今作では、医学生時代に一止の初恋の相手を射止めた親友・進藤辰也が、東京から本庄病院へ赴任してくる。久しぶりの再会を喜ぶ一止だったが、辰也の様子はどこかよそよそしく、周囲とも距離を置いていた。一止はその理由を知ろうとし、少しずつ辰也の心を開いていく。
辰也が抱えていたのは、妻の育児放棄や家庭の問題だった。患者を救うことに全力を尽くす医師であっても、家族がいれば悩み、病気にもなる一人の人間である。医師だからといって、常に強く、正しく、他人を支え続けられるわけで -
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『スピノザの診察室』と『エピクロスの処方箋』を読み、夏川草介氏の作品をもっと深く読んでみたくなり、本屋で手に取ったのが『神様のカルテ』シリーズだ。
本作は、主人公・栗原一止を中心に、同僚や仲間、そして患者たちとの人間ドラマを描いた作品である。舞台となるのは、信州にある24時間365日、救急患者を受け入れる地方病院。決して恵まれた環境とはいえない中で、一止が目の前の患者と向き合い続ける姿が印象的だった。
栗原医師は、夏目漱石をこよなく愛し、漱石の作品を読みすぎたあまり、話し方までどこか漱石調になっているという、かなり古風で個性的な医師だ。一見すると近寄りがたい雰囲気もあるが、患者に対しては誠 -
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「神様のカルテ」のファンでしたので、久しぶりに夏川草介さんのこちらの本を読みました。
舞台は京都ですが、「カルテ」同様にゆったりと描写される街並みと季節が心地良かったです。ご本人もおしゃられているように悪人はでておらず、個性溢れる人々が生きることと死を迎える事をテーマに物語は進んでいきます。
後半の盛り上がりもワクワクしましたが、やはり全般に綴られる文章と表現力、さらには重いテーマを言葉にしてくれる事が私にとって、とっても心地よいと感じます。
映画化も決まっているようです。キャストも楽しみです。また、続編も読みたいと思いました。
大好きな一冊になりました。、 -
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猫と冒険する心温まるファンタジーかと思いきや、なぜ本を読むのか?という読書への姿勢、観念を問われているような本だった。
「ただただ高く本を積み上げれば、遠くが見えると思っている」
読み終えた本の数だけ、自分の空虚な部分を埋めて成長したような気になっていた自分にとっては、この言葉には刺さるどころか抉ってくるような痛みを覚えた。
けれど、本の力は人を思う力だというひとつの答えが出たように、自分にとっての「本の力」を模索するきっかけも得られた。
三章までは正直、浅くて青臭いなと少しがっかりしていたところもあったが、四章がまさに集大成。
このカタルシスを得るためのあえての軽さだったのか?と思わされた。 -
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ネタバレ経済と物語と哲学の話。
大人になると感性を、想像力を、共感を忘れてしまいがちだと思います。
それらを忘れないで生きていたいと思っていても、現代社会では難しくて、つまらない大人になってしまうんだと。
前作は大切なものを思い出させてくれる話だとすると、今作はなぜ忘れてしまうのか?という問いの話だったと思いました。
富とは相対的なもの。
だけど、持つものの方が自由に生きられる?勝者は幸せなのか?私もじっくり考えたいと思わされる本でした。
灰色の無表情の世界に色をつけるのは本だと感じます。
読書することで世界が鮮やかになる……こともあります。
信じることが大切なんだとも思いました。
猫が彼女を守ったの -
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間違いが許されない。それが、医師という職業の何よりも過酷なところ。
患者は一人として同じ人はいない。それぞれ体質も症状も違う中で、過去の症例や経験をもとに最善と思われる答えを導き出していく。それでも、ほんの少し判断を誤れば「医療ミス」と厳しく責められることもある。
一方で、もし自分や家族がその立場だったら、簡単には割り切れないのも事実。風邪だと思っていたものが、実は命に関わる病気だったり。年齢を重ねるにつれ、そんな話を身近で耳にする機会も増えてきた。
だからこそ、この作品を読んで改めて感じたのは、医師という仕事の凄さと、その責任の重さ。
この作品から、『スピノザ』『エピクロス』へと繋がっていっ -
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ネタバレ一人の医師が、長野の地方病院という過酷な環境の中で、医者のあるべき姿や、友人や家族との向き合い方、そして生と死について、等身大に悩み続ける姿を描いた物語。
作中で、
「『良い医者』にはなりたい。だが何をもって『良い医者』とするのか。これは我が脳中にする至上の難題である。」
という言葉が登場する。
この一節には、本作の姿勢がよく表れているように思う。
「あるべき姿」はあるのか。あるとして、それは何なのか。そもそも正解など存在するのか。
病気や死をはじめ、人生には理不尽な出来事が数多く降りかかる。
本作は、そんな「ままならないもの」を解決しようとする物語ではない。答えのないものに対し