夏川草介のレビュー一覧

  • 命の砦

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    コロナ禍の医療従事者が描かれているが、実際の状況はまさにこのような闘いの中にあったのだと思います。あの時、色々な人が頑張って日本を支えていたと思うと、その教訓を活かすのは私たち個々人にあるのだと痛感しました。

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    2026年07月30日
  • 神様のカルテ

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    ネタバレ

    一人の医師が、長野の地方病院という過酷な環境の中で、医者のあるべき姿や、友人や家族との向き合い方、そして生と死について、等身大に悩み続ける姿を描いた物語。

    作中で、

    「『良い医者』にはなりたい。だが何をもって『良い医者』とするのか。これは我が脳中にする至上の難題である。」

    という言葉が登場する。

    この一節には、本作の姿勢がよく表れているように思う。

    「あるべき姿」はあるのか。あるとして、それは何なのか。そもそも正解など存在するのか。

    病気や死をはじめ、人生には理不尽な出来事が数多く降りかかる。

    本作は、そんな「ままならないもの」を解決しようとする物語ではない。答えのないものに対して、それでも誠実に向き合い続けることの尊さを、等身大の視点で教えてくれる作品だった。

    また、長野という土地の描写も本作の大きな魅力である。

    雄大な自然の中で、病と向き合う人々の日常が静かに息づいている。その魅力が詰まった一節を引用したい。

    (以下引用)
    『安曇野の向こうに連なる北アルプスが、乗鞍、常念、爺ヶ岳、鹿島槍、と、名高い名峰ことごとくくっきりと稜線をあらわにし、驚くほど近く見える。絶景と言っていい。(中略)安曇さんは、最初の感嘆の声をあげたあとは、言葉もなく目を細め、まぶしげに北アルプスの山々を見つめている。その心に去来するものは、故郷の記憶か夫との思い出か、我々が知る由もない。ただできることは、黙ってそばについていることだけである。幸い今のところポケットの中の院内PHSは静かに沈黙を守っている。(中略)「最後の最後にこんな幸せな時間が待っていたなんて、本当に人生というものはわからないものです」』

    この場面に象徴されるように、本作は病気を治すことだけが人を救うことではない、と教えてくれる。

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    2026年07月29日
  • 始まりの木

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    この著者の作品はいくつか読んでいますが、やっぱり医療については現実的です。ただ、それだけではなくて、理論では説明できない不可思議な出来事も描かれていて、丁度いい感じでファンタジーです。文庫版の解説はつまらなかったです。

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    2026年07月24日
  • 始まりの木

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    ほんわか心に響く物語。民俗学って何だろうと考えながら読む。初めて読む作家さんだが、素敵。始まりの木を見に長野伊那谷ぬ行きたくなる。

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    2026年07月18日
  • 命の砦

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    ネタバレ

    コロナ初期の医療現場が抱えた恐怖と使命感のアンビバレンツを、重い筆致で描いた作品だった。医療者は「家族にうつすかもしれない」という切実な恐怖を抱えながら、それでも「患者を見捨てられない」という倫理に突き動かされていた。その二つが同時に胸の中で軋み、揺れ、支え合う姿こそが“医師の使命”の正体なのだと思う。社会は時間とともにあの緊張を忘れていく。しかし、忘却の中でこそ、こうした記録は意味を持つ。人が忘れてしまう痛みや葛藤を、物語として残すことで、あの時を生きた人々の心の震えが静かに伝わってくる作品だった。④

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    2026年07月18日
  • 本を守ろうとする猫の話

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    一つ一つの問題解決は浅めの話だけど、終盤の猫とのやりとりが良き。
    古典を読みたくなって、モンテクリスト伯を全巻購入してしまった。
    猫好き的には好き。

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    2026年07月17日
  • 神様のカルテ3

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    神様のカルテは、毎回、登場人物達の台詞や人間臭さが溢れていて、読む者の感情を揺さぶってくる小説です。
    理由は分かりませんが、自分の年齢、状況に関わらず、その時の自分の心情に刺さる言葉、場面が見つかるような気がします。

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    2026年07月11日
  • 本を守ろうとする猫の話

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    オススメで見かけて気になって買った本。
    初め、何となく世界観が古賀史健さんの『さみしい夜のページをめくれ』っぽいなぁと読みながら思いました。どちらも本の素晴らしさを教えてくれるお話です。

    「難しい本に出会ったらそれはチャンスだよ」
    「難しいってことは新しいことが書いてあるって証拠だよ」
    この言葉に私は嬉しくなりました。
    『百年の孤独』は2回読んでもわけが分からなかった。
    カミュの『シーシュポスの神話』もコリンウィルソンの『アウトサイダー』も挫折して積読に。

    私は読めた時の景色を見たいから、諦めずにトライしようと改めて決意しました。

    ちなみに…『星の王子様』は学生の頃読んでちんぷんかんぷんだったけど、大人になって読んだらすごくいいお話でした。

    これからも本からたくさんの力をもらおうと思います。

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    2026年07月11日
  • 臨床の砦

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    再読した。

    病院での精密検査の待ち時間で読んだ。

    新型コロナの2021年1月

    医療関係者は本当に大変だ。
    映画「フロントライン」を思い出した。最前線の現場はいつも色々な矛盾や収まりきらない現実の厳しさや不合理の中で闘っている。

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    2026年07月04日
  • 臨床の砦

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    コロナのリアルを描いた本。
    あとがきがとても印象的で、夏川さんの人柄が伝わってくる。
    読めて良かった。

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    2026年06月27日
  • 君を守ろうとする猫の話

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    対話で伝えられるのは論理的な言葉の意味ではなく、伝えようとする意志である。
    冷え切った論理は一杯の温かな紅茶にも及ばない


    深い。。。

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    2026年06月25日
  • 本を守ろうとする猫の話

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    本、特に世界の名作と言われる重厚な作品への愛があふれる一冊。
    第二の迷宮「切りきざむ者」をなんか見たことあるな…と調べたら、8年ほど前に某女子中の入試問題で使われてた。
    ジュニア向けにやさしい言葉で書かれてるけど、文学史に残る名作を読む人が増えてほしいと著者自身が「解説に代えて−−猫が教えてくれたこと−−」で記している。

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    2026年06月22日
  • 神様のカルテ

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    『スピノザの診察室』『エピクロスの処方箋』を読み終わり、夏川草介作品を遡ってみた。今回もオーディブル。

    「孤独を取り除く」というフレーズが印象的だった。

    ナレーターさんの節回しの影響もあるかもしれなけど、なんとなく森見登美彦の「四畳半神話大系」な空気もチラリ感じた。それはそれで楽しい。

    ”電子カルテを入力……”というフレーズに「おっ」と小さく反応てしまう(『スピノザの診察室』『エピクロスの処方箋』のときも同じだった)そして。「あぁ、普及したんだなぁ」と妙な感慨を覚えた。ITベンダー社員時代「電子カルテ」の普及(まずは利用が認められる必要があった)はビジネス的に重要テーマだったのだ(特に公共・医療系システム関係者にとって)。

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    2026年06月21日
  • 勿忘草の咲く町で 安曇野診療記

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    現代の医療における問題点を的確に表現しながらも、安曇野の雄大な自然や花、桂と美琴の爽やかな恋愛要素が彩りを添えることで、読みやすい一冊になっていました。

    終末期の医療は、未だに発展途上の感があり、医療者の中でも悩みが尽きない分野です。御本人の意思が示されていれば、まだ救われるのですが、ない場合には御家族の決断が二転三転することは、よくあることです。死について話すことをタブー視するのではなく、家族や大切なひとと意思を共有できていたらいいのにと常々考えてしまいます。

    この小説の中で最も共感した人物が、半崎です。半崎ほどの大事にはなっていませんが、私も看護師1年目にインシデントを起こしたことはあります。自分のせいで患者が、先輩だったらこうはならなかった。そんな思いが渦巻いて、病棟に行くのも、患者へのケアのひとつひとつが怖くて仕方なかったです。

    今思えば、その時の自分にできる精一杯はやっていたし、新人だったらそんなものと、そう思います。個人の問題だけではないことを、今では痛感しているからかもしれません。どんなに予測して対策を重ねても、一日中1人の患者に張り付いていない限り、すべての事故を防ぐことは不可能と言っていいでしょう。この小説はその部分を、病院の実態を知らないひとにも伝えてくれるのではと思います。

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    2026年06月15日
  • 神様のカルテ0

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    神様のカルテのスピンオフ作品。
    一つひとつの作品は繋がってはいないが、シリーズを読んできた者にとってはたまらないプレゼントになる。
    最後の「冬山記」がいい。それぞれの人がそれぞれの悲しみを抱えながら、悲しみに耐えて生きている。だから、人間は素晴らしい。

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    2026年06月11日
  • 本を守ろうとする猫の話

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    ちょっと星の王子さまっぽい所はあるかな。
    童話チックだが、最後の作者のあとがきが全てを表していて、心に残る文章だった。

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    2026年06月08日
  • 本を守ろうとする猫の話

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    ファンタジーなんだけど、ちゃんと本のことを考える切っ掛けを与えてくれる哲学書でもあったような気がします。
    作品に他の小説のオマージュやパロディが散りばめられているらしいのですが、私には気づくほどの知識がありませんでした。ネットで調べてやっと分かったのが、主人公 夏木林太郎 は夏目漱石+森鴎外(森林太郎) だと推理できるでした。ふむふむなるほど〜でした。

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    2026年06月08日
  • 臨床の砦

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    コロナ禍の日々を振り返ると、社会全体が見えない脅威に翻弄されていたことを思い出す。その最前線で奮闘した医療従事者たちの現実が生々しく描かれていて考えさせられた。

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    2026年06月08日
  • 神様のカルテ

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    「スピノザの診察室」と「エピクロスの処方箋」を先に読んだので、当作も京都の雄町雄介シリーズだと思っていたら全然違った。文調もいささかギャグ路線で上記2作とのギャップに読み始めのうちは戸惑った。
    しかし読み進めるうちに、雄町雄介シリーズと同じく味わいを感じるようになった。舞台は信州松本。さりげなく地酒が紹介されたり、豊かだが厳しい自然の空気感が伝わったりと、その風土の想像を楽しめた。当作も大学医局と地域の草の根医療の対峙という社会テーマをベースにしている。そのジレンマの中で描かれる人間と人間の関わりには深く感銘を受けた。読後の余韻も良かった。傑作に出会えて満足である。

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    2026年06月07日
  • 勿忘草の咲く町で 安曇野診療記

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    本作は、現代日本が直面する終末期医療の「延命治療」や「看取り」という重いテーマを扱っているにもかかわらず、物語が暗く重くなりすぎず、不思議と安曇野の爽やかな風が吹き抜けるような読後感。

    主人公の二人も魅力的だけど、彼らを取り巻く「死神の谷崎」「小さな巨人」「事なかれの遠藤」といった、ひと癖も二癖もあるキャラクターたちが物語をいっそう引き立ててくれて面白かった。
    特に「死神」と呼ばれる谷崎の語る「看取り」のスタンスには「一理あるな」と妙に納得させられた。

    「高齢者医療」は自分にはまだ先のことだと思っていたが、本作を通じて深く考えさせられた。もし自分がその立場になったら、過度な延命治療は絶対に望まないだろう。

    安曇野の四季折々の花々の描写や、美琴と正太郎の爽やかな恋愛要素も微笑ましくて良かった。
    続刊はでないのかなー!

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    2026年05月30日