夏川草介のレビュー一覧
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大きな世界の流れは最初から決まっていて、人間の意志では何も変えられない。全てが決まっているなら努力なんて意味がないはずなのに、だからこそ努力が必要。
この言葉を読んで心の中の絡まっている糸が少し解けた気がしました。
スピノザの考え方の一部しか理解していないし、この本を読んだだけではわからないけれど、私は私の置かれた世界で、この範囲の中で、最大限に幸せになる方法を見つければいい。そう言われた気がしたんです。
今の社会は、科学の力と自分の努力で、なんでも叶えられると教えられることも多いです。努力すればなんでも叶うなんて、昔はわたしも思っていたことがありました。
でも、自分の体力や精神力、その -
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ネタバレ雄町哲郎は京都の町中の地域病院で働く内科医である。三十代の後半に差し掛かった時、最愛の妹が若くしてこの世を去り、 一人残された甥の龍之介と暮らすためにその職を得たが、かつては大学病院で数々の難手術を成功させ、将来を嘱望された凄腕医師だった。 哲郎の医師としての力量に惚れ込んでいた大学准教授の花垣は、愛弟子の南茉莉を研修と称して哲郎のもとに送り込むが……。(あらすじより)
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医療小説ではなく、哲学書のような読後感。
哲学にストーリーをつけたような、
難しさではなく、感情に染みこんでくるような、大好きなテイスト。
もともと神様のカルテシリーズも大好きだったけど、
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名作が手軽に読めるとうたうあらすじ集や、ファッション感覚な読書観に対する、作者なりのアンチテーゼが散りばめられていて、ともすれば、自分も楽な入門書やあらすじ的なものに逃げがちであることに思いが至ります。
たくさん本を読みたい、難解な一冊をじっくりと読みたい、お気に入りの本を何度も読み込んでみたい…本に対しては様々な思いがあります。
ただ、自分の姿勢を振り返ると、最近は本との向き合い方が雑になっていたなぁと感じてしまいます。
もともとは本の力を信じていたはず。でも、つらつとした思いはいつの間にか激しい時流に流されていました。
自分は本とどのように向き合っていきたいのか。
本書はそれを思い出 -
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現役医師である夏川草介氏による医療小説。
将来を嘱望された元大学病院の内科医雄町哲郎は妹の甥の引き受けを機に地域病院に転じる。先端医療に身を置く総合病院の元同僚らや地域医療に身を委ねる患者らとの交流を描く。
題名に借用されているオランダ近代哲学者スピノザは「神即自然」の汎神論を唱え、すべての出来事は必然であり故に努力が必要であることを説いた。治すことが叶わない場合、死が宿命である場合、医者は患者とどう向き合うのか。医者が治すものとは何か。それらの深淵なるテーマを主人公の自然体な人柄と京都の優美な雰囲気を交えて穏やかな世界観のなかで読者に問う良作。
生前中スピノザは正当な評価を得られずレンズ磨き -
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夏川草介さんという作家が気になり出して、最初に手に入れた本がこちらでした。
日本という国を愛する気持ちがひしひしと伝わってくるストーリー。その想いを民俗学という学問に乗せて語るというアイデアに心が揺さぶられます。
柳田國男は、日本の、日本人の、先行きを心配して、民俗学を立ち上げました。その民俗学はまだまだ日本人に必要かもしれない。そう思わせるに十分な美しい物語です。
そして、「自らが学ぶ学問を誇りに思いなさい」という一貫したメッセージ。
自分が心から学びたいと思った学問は、おそらく皆、社会を、日本人を、良い方向に導くものであると信じて学んでいるものであると思います。
それを忘れてはい