夏川草介のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
楽しみにしていた続編は、色づく秋の京都をマチ先生の自転車が訪問診療先に向かう場面から始まりました。
マチ先生の患者との向き合い方は変わらず優しく、消化器内科医としての技術もさすがでした。小説は、患者自身の思いや患者家族の思いもえがかれ、病気がもたらすものの大きさを感じることもできました。
また、マチ先生の言葉は人の心に染み込むものが多く、今回も多くの言葉が読者の私にも染み込んで来ました。哲学者エピクロスが追求した幸福についてもマチ先生なりの解釈が加わって、なるほどと思いました。
そしてマチ先生と暮らす龍之介くんと、後期研修医の南先生には、大きな成長を感じました。中将先生の考え方もよかった -
Posted by ブクログ
夏川草介『本を守ろうとする猫の話』を読んで、まず感じたのは物語の“直球さ”だった。
まっすぐで、時に少し照れくさくなるほど率直なメッセージが込められていて、「本とは何か」「読むとはどういうことか」といった、大切だけれどつい流してしまいがちな問いを真正面から突きつけてくる。
でも、その直球さこそが心地よく、読み終える頃には胸の奥に確かに残るものがあった。
押しつけがましくない形で、本を愛する気持ちや物語への敬意が詰まっていて、読んでよかったと思える一冊だった。
きっと、いつかまた読み返したくなる本だと思う。
そのときには、今回気づけなかったオマージュや引用の意味がもっと拾えるようになっていたらい -
Posted by ブクログ
大好きなスピノザ診察室の続編。
好きと言いながら前作が少しづつ薄れゆく中でも、やっぱりマチ先生好き!と何回も思った。
今回は医療に関してもだけど、マチ先生のプライベートな話も詳しく書いてある。
マチ先生は素晴らしいお医者さんだけど、原田病院にいる今のマチ先生は妹さん、甥っ子くんの影響がかなりあり生だけでなく死についても考えるようになったんだと思う。
医療小説だから重たい部分もあるけど、重くなりきらないのはやっぱりマチ先生の雰囲気と患者さんと向き合う姿勢からだと思う。
とにかくマチ先生の言葉が素敵で覚えておきたいけど、忘れてしまう…でも
治せない病気が山のようにある。けれども癒せない哀しみはない -
Posted by ブクログ
今回はマチ先生の診療と現代の医療機関が抱えている問題が書かれていました。
今回心に残った文章は、
「人間はとても無力なんだよ」との言葉に続き
「我々には未来を変える力はない。変えられないということは、虚しいことのように思えるけれど、実はそうじゃない。目の前の哀しい出来事は、誰のせいでもないということだ。」
「誰かの努力によって変えられるほど、世界は脆弱ではないんだ。だけどその理不尽で強固な世界の中でも、我々にできることはたくさんある。降り続く雨を止めることはできないが、傘をさすことはできる。暗くて危険な夜道に、灯をともすこともできる。」
です。
近しい人の死を経験したことのある方、ま -
Posted by ブクログ
まち先生は哲学者のよう。
私達にできることは、暗闇で凍える隣人に
外套を掛けてあげること
以下、気になった言葉
患者の顔が見えるという事は共感するということ。心にとっては重荷。特に悲しみや苦しみに共感することは注意が必要。度が過ぎると心に器にヒビが。ヒビだけなら涙がこぼれるが、われるとかんたわにもどらない。精神科では発病という
彼女自身、辛くないはずなかったけど、残された時間をしくしでも楽しい思い出にしたかったのかもしれない。記憶を手繰ると思い出は笑顔ばかりなんだ。
絶望の淵に立ちながら幸せの時間を作り出していた
できるなら、私もそんな人間でありたい