夏川草介のレビュー一覧
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ネタバレ「スピノザの診察室」の続編。前作と同じく京都の空気感が心地良い。また、前作で語られたマチ先生の哲学が次第に深まっていく本作。前作では、医療の無力さを悟りながら自分に何ができるのかを模索していたが、本作では「生」に向き合う医療と「死」に向き合う医療の二分法に疑問を呈し、「第三の道」が提示される。それは「人を救うのは医療ではなく人」であり、大切なのは「目の前にいる人が今を笑顔で過ごせる」ことという道だった。
その哲学が、様々な患者とその家族との出会い、医師仲間や甥の龍之介との対話、妹の死の記憶を経て積み上げられていることが丁寧に描かれていくので、綺麗事ではない重みを感じ胸を打つ。
でもマチ先生はまだ答えには辿り着いていない。ぜひ次回作で、さらに迷って悩んで深まっていく「第三の道」の姿を見てみたい。
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Posted by ブクログ
前作『スピノザの診察室』を読んでから少し時間が経ち、登場人物や作品の雰囲気を忘れかけていたが、読み始めると京都の街の匂いや賑わい、原田病院の中将先生やマチ先生の姿が鮮やかによみがえり、京都の阿闍梨餅とか、あっという間に物語に没頭してしまった。
医療小説は専門用語が出てきたり、生と死について深く考えさせられたりと、少し難しく感じることもある。しかし、本作は医療や生き死びという重いテーマを、優しく穏やかな筆致で描いており、自然とその世界に引き込まれる。
読み終えたばかりなのに、すでに続編が読みたくなってしまう。南先生との関係はこれからどう進展するのか、甥っ子はどのように成長していくのか。そんな期待を抱かせてくれる、余韻の残る一冊だった。 -
Posted by ブクログ
栗原先生が、本庄病院ではなく、最初から大学病院に勤めていたら、違っただろうか?大学の複雑なルールやガイドラインも、仕方ないかと受け入れていただろうか?いや、たぶん無理じゃないか。余計に、本庄病院のような、患者のことだけ考えられる環境を切望したかもしれない。
こんなまっすぐにただ患者と向き合ってくれるお医者さんに、もし死んでしまう病気になったら、出会いたい。二木さんの叫びが痛いほど突き刺さってくる。そんな患者さんにも、同じ熱量で、精一杯を尽くしてくれようとする、そしてそれを見せてくれる。なんて頼もしい。
この神様のカルテ5作品を通じて、お医者さんへの敬意を覚え、患者としての心得を少しだけ学べたように思う。夏川さんの作品をくまなくチェックしようと思う。 -
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本を読むことが好きなあなたに、おすすめしたい一冊です。
なぜなら、この物語は「なぜ本を読むのか」という問いについて、考えさせてくれる作品だからです。
働いて、働いて、時間に追い越されそうになりながら働く現代社会。生産性が重視され、他人より優位に立つために、いつしか心が歪んでいく。
勝ち組が賞賛される一方で、負け組と呼ばれる人たちがいる。そんな社会を、生きづらいと感じることがあります。私自身も、知らず知らずのうちに、勝ち負けという物差しで自分や他人を見てしまうことがあるのではないかと思います。
一方、本の世界には、生産性や勝ち負けだけでは測れない価値があります。
物語の登場人物たちは、ときに自分の利益を顧みず、誰かのために行動します。勝つことだけが正解ではなく、損得を超えた生き方にも輝きがある。そんな世界を、本はたくさん見せてくれます。
この物語を読んで、私は本を読むことについて、改めて考えさせられました。
そして、本を読むことは、私たちの歪んだ心を元に戻してくれるのではないか、という思いに至りました。
これまでいろいろな本を読んできましたが、こんなふうに考えたのは初めてです。
これからも、本を読み続けたい。
なぜなら、本は、殺伐とした資本主義社会の中で、いつの間にかささくれてしまった私の心を、軌道修正してくれるものだからです。
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日々どれだけ働いても目の前の患者さんの列が途切れることはない。そんな中で、どうやって新しい知識を取り入れたり、論文を書いたりできるのだろうか。もっと人間らしい生活をさせてあげたいと思いつつ、かと言って、自分や家族が苦しんでいたら診てほしいと思うし、誤診や医療ミスによって命を落としたら、仕方ないと割り切れるものでもない。ギリギリすぎやしないか。超人でないと医師は務まらないのか。
医療に関わらない私ができることは、せめてこうした現実を知っておくこと。無闇に医療の世界の人々の足を引っ張ることをしないこと。応援すること。夏川さんの本を読むこと。できることからしていこうと思う。 -
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ネタバレえー!!面白かったー!!笑
終末期患者の看取り話だけかなと思ってたけどERCPとかバリバリ出てくるし後半の哲郎大学病院に忍び込んで天吹に助言する医療ドラマっぷりな展開に「うおおお!!いけええええ!!」って心の中で思いながら読んでしまった。看護師だからめっちゃ話わかるし「こんな患者いるわぁ」とかめっちゃ思ったり想像しやすかった!ドラマ展開で起承転結かなと思ったけど最後に、肝硬変の辻さんが吐血で死亡して、「おおきに、先生」のメッセージを残したっていう終わり方も「助からない」っていう医療の現実ものぞかせてるし。その後に花垣のERCPの相談に乗りつつ物語が終了するのもまたドラマっぽいな〜思いながら読みきった!続編の「エピクロスの処方箋」も絶対読む!と思って早速予約!夏川草介さんの他作品で外国語翻訳されてる「本を守ろうとする猫の話」やデビュー作の「神様のカルテ」も読まなきゃなー!! -
Posted by ブクログ
解説を読み終える頃には、涙があふれていた。そして、唾をゴクリと飲み込んだ。唾を飲むことさえ忘れるくらい、心に深く響いた。
私が本を読み始めたきっかけは、人の気持ちがわかる人になりたいと思ったからだ。以前の私は、他人への関心が薄く、人のことを決めつけてしまう傾向があった。
でも、この本を読んで気づいた。本を読んだからといって、人の気持ちがわかるわけではない。他人の気持ちを完全に理解することなど、できないのかもしれない。
それでも、本を読むことで、さまざまな登場人物の人生を知ることができる。自分とは違う境遇や考え方に触れることで、現実の世界でも、自分以外の人に興味を持てるようになるのではないか。そして、相手の気持ちを理解しようとする人に、少しずつ変わっていけるのではないだろうか。
「本には力がある」。
そのことを、何度も教えてくれる一冊だった。
解説には、読書の三千メートル峰に挑んでほしいとある。
ぜひ、挑戦したい。まずは『神様のカルテ』から、一歩一歩進んでいこう。いつか『百年の孤独』を読み終えることができたら、最高だな。