夏川草介のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
○『命の砦』
※「レッドゾーン」(文庫本)を改題したもの
○著者名 夏川草介(なつかわそうすけ)
○カバーデザイン 山田満明
○カバーイラスト 石居麻耶
○小学館
○医療小説
○Audible にて。
◯どんな本?
著者の実体験をもとに、コロナ禍の中で懸命に闘う医療従事者たちの勇気と苦悩がリアルに描かれた物語。
私たちの命を守るために尽力する医療従事者の姿から、命の重みを改めて考えさせられる、心に響く一冊!
―――――――――――――
(あらすじ)
長野県の信濃山病院が舞台で、消化器内科医の敷島寛治は、コロナウイルスの感染拡大が始まる中、病院での闘いに身を投じる。
令和二年二月、南郷院長の指導のもと、この小さな病院は横浜港に停泊するクルーズ船からコロナ患者を受け入れることを決定する。
しかし、その決断には多くの試練が待ち受けていて…
―――――――――――――
(主な登場人物の魅力と特徴)
・敷島寛治(しきしまかんじ)
消化器内科医。
コロナ診療チームの一人。
コロナウイルスの感染拡大と立ち向かう。
熱い性格を持ち、心に深い使命感を抱いている。
・日進義信(にっしんよしのぶ)
肝臓内科医。コロナ診療チームの一人。
肥満体型で、毒舌。皮肉屋日進とあだ名がついているとか。
・三笠(みかさ)
内科部長・突き進む性格を持ち、コロナ診療チームを引っ張る存在。
・千歳(ちとせ)
外科医・長身で良識を兼ね備えた人物。
状況をみて、あとからコロナ診療チームに自ら加わる。
――――――――――――――
(舞台や世界観)
『命の砦』の舞台は、長野県の信濃山病院という小さな地域病院だ。
この病院はコロナウイルスが流行し始めた時期に、横浜港に停泊するクルーズ船からコロナ患者を受け入れる決断をする。
医療リソースが限られた環境で、消化器内科医の敷島寛治をはじめとする医師たちは、未知のウイルスに立ち向かうために奮闘する。彼らは人手不足や緊急事態宣言という現実と向き合いながら、患者の命を守るために懸命に働く。
物語を通じて、医療現場の厳しさや、それに立ち向かう人々の勇気が描かれている。
コロナ禍の中での医療従事者の姿をリアルに体験できる、心に響く物語だ。
――――――――――――――
(ページをめくりたくなる展開)
現役の医師が新型コロナウイルスが流行し始めた頃の医療現場を実体験をもとに描かれたストーリーはとてもリアルだった。
医療従事者の視点からの苦悩や恐怖が生々しく描かれていて、死を恐れる人々の本性についても考えさせられる。
感染者が増え続ける中、医療現場は次第に逼迫していき、この作品の病院では、どのような対応が求められるのだろうか?
人員不足が明らかになっているけれど、協力してくれる人はいるのだろうか?
コロナ禍の医療現場の厳しい状況を感じながらも、物語の先が気になり、ページをめくる手が止まらなくなること間違いない!
―――――――――――――
(ひとこと)
コロナの緊急事態宣言やワクチン接種についての出来事が、まるで昨日のことのように感じますが、もうかなりの時間が経ちましたね。
根本的には解決していないはずですが、
今では、もしコロナにかかってもなんとかなるという少し楽観的な気持ちに変わりつつあります。
しかし、あの頃は未知のウィルスへの不安や制限からの閉塞感、未来への恐怖でいっぱいでした。
医療従事者の方々は手探りの中、懸命に尽力してくれていました。
どの病院でも治療を行っていると思っていたのですが、実際には限られた場所だったことには今さらですが驚きました。
防護服を着てマスクで顔を覆い、治療法がまだわからない中で、多くの人が命を失っていく様子を見ながら、まさに「明日は我が身」と感じていたことでしょう。
それでも命を守るために現場で戦ってくれた医療従事者の方々には感謝の気持ちが尽きません。
この作品を通じて、あの頃の思いが蘇り、さまざまなことを考えさせられました。
幸運にも今回は乗り越えられましたが、次に起こった場合はどうなるかは分かりません…
生きること自体が本当に奇跡だと感じ、人類の知恵や行動力に勇気づけられた気がします。
-
Posted by ブクログ
日本の文化は多神教によって支えられてきた。神も仏もそこらにいる考えであるから、目に見えないこと理屈の通らないことを感じ、人間がいかに小さく、無力であると自覚する。これが、昔の日本人の謙虚で我慢強く美しい心を作っていたのではないか、と書いていた。
神様がいると信じることは、世の中に目に見えないものがあると感じることで、この感覚によって人間は少しでも他人への理解を深め、歩み寄ろうという気になるだそう。これらの夏川草介による一説は、巻末の膨大な参考文献により、真実味を帯びていた。
合理性という刃により神木が伐採されている今、日本人はいかにして古き良き日本人らしさを保っていけるのだろうか。日本の未来について少し考えたくなる、そんな本だった。 -
Posted by ブクログ
1・2・3巻まで読み終えた。まだまだこの先が気になる。
現役医師が描く、病院の世界観が本当にリアルで、身につまされる。
実際にこの3巻に登場する、誤診の話は、偶然ながらにも我が母と似ている状況で
その時の気持ちがにわかに湧き上がる衝動を覚えた。
そして、今の今まで医師を恨む気持ちを多少持ち続けてきたのだが、この本を読んで
医師側の気持ちも少なからずわかる自分になれた。今までのわだかまりが少し溶けてきた気分になれたこと、この本を読んだ価値があったとういうものだ。
次巻は0巻(なぜか0なのだw)詳しくは書けないけど、新たな旅立ちということで栗原先生が、どういう気持で医師として生活していくのか、とても気になるとこである。心境の変化があって旅立つことになったのだが、果たしてその答えは。。
っていうか、なんか文体が少し「夏目漱石風」ではないか?
これもこの小説の影響かも・・・?ww -
Posted by ブクログ
長野県の信濃山病院(しなのやまびょういん)は200床に満たないが、「感染症指定病院」となり、発熱外来が設置された。
コロナ禍という災害を最前線で食い止めるための砦となったのだった。
ドキュメンタリーのような小説。
実際、ほぼドキュメンタリーであるが、実際はもっと過酷、関係者に迷惑をかけないように小説の形をとったようだ。
人は、喉元過ぎれば忘れてしまう。
けれど、忘れてはいけない日々が永久保存されているような小説である。
周辺の病院は、発熱しているというだけで治療を拒否し、信濃山病院の入り口には車の中での診療を待つ長蛇の列ができた。
高齢者施設ではクラスターが発生し、介護が必要な患者が大勢押し寄せる。
外来の診療も普段通り続け、一般の患者が入院する病棟も維持しながらである。
本来は6床を予定していた感染症病棟だが、20床となり、36床まで拡張された。
院内感染も発生した。人手が足らなすぎ、十分な感染対策をとっていてもどこかに穴が生じたのかもしれない。
孤軍奮闘、という有様だった。
行政の無知と、周辺の無関心に強い憤りを感じる。
将来また同じようなパンデミックが起きた時には、同じ失策を繰り返さないで欲しいと願うばかりだ。 -
Posted by ブクログ
夏川さんの本を最初に読んだのは、スピノザから。その本の何とも言えない優しさと強さに感動し、夏川さんの本を読みたいと手にする3冊目が「始まりの木」
第一話で、古屋先生がどうして片足が不自由になったかが分かることに、驚いた。下手したら後半に分かる流れでもおかしくないのに。でも読み進めていって、登場人物たちのことを書きたかったわけではないからなんだと。主役は民俗学。自然に宿る神様たち。
日本は豊かになったのか。お金にならない、仕事に役立たない、学問は何の意味があるのかと、純粋に知りたい学びたいという気持ちだけでは生きていけない、心の余裕がない気がする。
心を削ってしまったから、風通しも悪くなって息が詰まる。理屈じゃなく、大事なことをしっかり感じ取れるかどうか。素敵な言葉たちがたくさん詰まっていた。
もちろん登場人物も魅力的。古屋先生の偏屈な物言いは自分には心地良く、大事なことは言葉にしてくれる。偏屈に負けず学びに素直な千佳も素敵だし、仁先輩の飄々とした様も格好良い。1つのことを突き詰めて学ぶことは、何だか楽しそうに思う。
「旅の準備をしたまえ」
言われたい!旅したい!!