夏川草介のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
コロナ第3波にみまわれた2021年1月の地方の病院のコロナ診療の現状が描かれている。著者は実際にコロナ診療に携わり、肉体的にも精神的にも極限状態にあり、寸暇を使って書くことで正常を保てたようだ。リアルタイムで、切迫する現場の状況が書かれたことになる。医療崩壊の現場がどんなものであったか、初めて知った。いろいろな立場の医師が,コロナ診療の状況にどう考えたのかも知ることができた。コロナ罹患患者の病院への受入れの難しさも,触れられている。地域での感染症患者への対応体制が整っていないことが,医療崩壊をおし進めた要因の一つだったが,このときの教訓は生かされているのだろうか。
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Posted by ブクログ
ほんの少し前にスピノザとエピクロスを一気読みしてその後別作者達の本を読んでいたけど、どうにも読み応えが物足りず、夏川さんの文章に浸りたい、、!となりまた夏川作品に戻ってしまった1冊。笑
やはり情景描写の表現がとにかく深く、初めて聞く言葉がいくつか出てきても、「難しい表現が多くて読みにくい」ではなく、「どんな意味なんだろう」と思わず調べたくなって、一つ一つの文章を丁寧に読みたくなるしその読み応えがとても心地よいし、病みつきになる。
今回は高齢者医療(看取り)が中心だった。医療作品なので基本的には他の作品と似通っている雰囲気もあるけど、だからこそ夏川作品を読み重ねるうちに医療の現場の過酷さがひしひしと伝わってくる気がする。
そして本作でも、医療者としての「哲学」について主人公が悩み考える姿が描かれており、医者である夏川さん本人が本当に大切にしているものなんだろうなと言う点が印象的だった。
高齢患者の看取りを「寿命」と割り切って淡々と進めていく谷崎先生の理論は冷酷なのに論理的で読後強く頭に残っているのが我ながら意外だった。
ただ、いざ自分が当事者となる場合には、きっとそんな風に割り切れないんだろう、と考えさせられた。
スピノザ・エピクロスの後に本作を読むのが個人的にはおすすめ。 -
Posted by ブクログ
夏川草介氏の『神様のカルテ0』を読んだ。
「神様がそれぞれの人間に書いたカルテってもんがある。医者は、その神様のカルテをなぞっているだけだ」――大狸先生のこの言葉が、本書のタイトル『神様のカルテ』の意味を象徴しているように感じた。これまでシリーズを読んできたが、本書を読んでようやく、そのタイトルに込められた意味が少しわかった気がする。
特に心に残ったのが、元国語教師である患者・國枝さんの言葉だ。
「人は、一生のうちで一個の人生しか生きられないが、本は別の人生があることを教えてくれる。そうすると、たくさんの人の気持ちがわかるようになる。そういう人々の気持ちがわかるようになると、優しい人間になれる」
本を読むことの意味を、これほど端的に、そして深く表現した言葉はないと思う。本を通して自分とは違う人生を知り、さまざまな人の気持ちを想像する。それが人を少し優しくするのだという國枝さんの言葉は、読書が好きな自分にとっても、あらためて考えさせられるものだった。
本作では、研修医時代の栗原一止をはじめ、金山事務長の過去、進藤と如月のエピソード、そして榛名さんの山岳写真家としての一面など、これまでのシリーズでは描かれなかった登場人物たちの物語が描かれている。
おなじみの登場人物たちにも、それぞれに過去があり、迷いや苦悩を抱えながら今を生きている。その姿を知ることで、これまで読んできた『神様のカルテ』の世界がさらに立体的になった。
医師が向き合うのは、病気だけではない。その人が歩んできた人生そのものなのだと思う。そして医師は、患者という一人の人間の「カルテ」を読み解きながら、その人生に寄り添っていく。
シリーズの登場人物たちの原点や知られざる一面を知ることができた『神様のカルテ0』。これまでの物語を振り返りながら読むことで、より深く心に響く一冊だった。 -
Posted by ブクログ
シリーズ第3作にして主人公が直面する大きな壁。医療トラブルは表面的な契機に過ぎず、本質は地域医療で奮闘して5年、手応えを感じ始めていた彼が突きつけられる「このままで良いのか」という葛藤こそが本作の真の壁だろう。
30歳という節目(誕生日のエピソードもニクい伏線だ)を迎え、働く人間なら誰もがぶつかるキャリアの普遍的なテーマを描いている。信州松本や安曇野の情景に、本作では「冬」や「年末」という変化と思索の季節をうまく取り入れているのも秀逸だ。
前二作で彼の奮闘に寄り添ってきた私たち読者だからこそ、ともに心が打ち砕かれる体験はシリーズの特性を最大限に活かした見事な構成。これだけ苦しい展開でも、人との関係に確かな優しさを感じさせ、希望を与えてくれるのは夏川作品ならではの素晴らしさでもある。
もっとこの世界に浸っていたい。残り2作となった寂しさを噛み締めつつ、大切に読みたい。