【感想・ネタバレ】臨床の砦のレビュー

あらすじ

小さな病院は命がけでコロナに立ち向った。

『神様のカルテ』著者、最新作!
感染症指定医療機関でコロナ禍の最前線に立ち続ける
現役医師が自らの経験を克明に綴った記録小説!

「対応が困難だから、患者を断りますか? 病棟が満床だから拒絶すべきですか? 残念ながら、現時点では当院以外に、コロナ患者を受け入れる準備が整っている病院はありません。筑摩野中央を除けば、この一帯にあるすべての病院が、コロナ患者と聞いただけで当院に送り込んでいるのが現実です。ここは、いくらでも代わりの病院がある大都市とは違うのです。当院が拒否すれば、患者に行き場はありません。それでも我々は拒否すべきだと思うのですか?」――本文より

※この作品は単行本版として配信されていた『臨床の砦』の文庫本版です。

(底本 2022年6月発行作品)

...続きを読む
\ レビュー投稿でポイントプレゼント / ※購入済みの作品が対象となります
レビューを書く

感情タグBEST3

Posted by ブクログ

『臨床の砦』の初版発行は2021年4月
まさにコロナ感染が拡大しているとき。
読みたい本リストに入れながら…
でも、2025年の今だから
冷静に読めたような気がしている。

2020年1月16日
国内で初めてコロナ感染者が確認された。
その後、未知の感染症による感染は拡大を続け…

テレビや新聞などから
毎日、感染者数、死者数
感染しても入院できない
自宅待機中に様態悪化、等々の
正常な思考が働かなくなるような報道ばかりを受け止めていた。

ワクチンが接種できるようになれば感染は収束に向かうのかと思ったが
ワクチン接種が始まっても
ワクチン不足で打つことができず
さらなる不安が募った。

治療薬が使えるようになったと聞いても
治療が手探り状態のように感じてしまった。

自分たちでできることといえば
マスク
アルコール消毒
なのに…
それらの品は手に入れることすらできなくなった。

オリンピックは延期され
緊急事態宣言のもとで外出を控え
日常生活を極小化して。

何が何やらさっぱりわからないまま
ただただ恐怖感だけが増幅していった。

日本中が不安と恐怖感でぱんぱんに満たされた極限状態の中で
私たちは自分や家族を優先するだけでなく
ウイルスという得体のしれない物に対する怒りを
誹謗中傷という形で「人」に向けるという過ちまで犯してしまった。

それなのに私は
未知の感染症に戦々恐々の日々を送っていたことすら
忘れかけていた…

あのコロナ禍で私たちは何かを学べただろうか?

感染しても診てくれる病院がない
入院できない
ホテル療養すらできず自宅待機…
さらに
一般診療の停止で持病の診察さえ受けられない状況…

同じ轍は踏まない、と言い切れるのだろうか…
ふと頭をよぎるのは
喉元過ぎれば熱さを忘れる…

コロナ最前線で闘っていた著者・夏川草介氏のことば
『この感染症と闘い続けるために必要なことは、
突き詰めればふたつだけである。
人間が互いに支えあうこと、
そして希望を持つこと。
本書を通じて、
そんな私の思いがわずかでも伝わってほしいと願うばかりである』

今、読んで良かったと思った一冊だった。

0
2025年11月08日

Posted by ブクログ

「実際のコロナ診療の最前線で、何が起こっているのかを世に伝えたい」
「どんな悲しみでも、それを物語に変えるか、それについて物語れば耐えられる」

読んでおくべき1冊だと思う

0
2025年08月20日

Posted by ブクログ

「生きていくうえで大切なものは何か」を至高の名言とともに気づかせてくれる一冊。あとがきまで心に染みる。

0
2025年06月29日

Posted by ブクログ

いまこの物語を読んで、コロナに翻弄されていたことを思い出し少し暗い気持ちになったりしたけど、最前線で死闘を続けられていた方たちの姿を目の当たりにして胸がいっぱいになった。

特にあとがきでは涙が止まらなくなった

また同じようなことが起きるときのために、誰もが読んでいていい本だと思う

0
2025年06月06日

Posted by ブクログ

長野県の信濃山病院(しなのやまびょういん)は200床に満たないが、「感染症指定病院」となり、発熱外来が設置された。
コロナ禍という災害を最前線で食い止めるための砦となったのだった。

ドキュメンタリーのような小説。
実際、ほぼドキュメンタリーであるが、実際はもっと過酷、関係者に迷惑をかけないように小説の形をとったようだ。
人は、喉元過ぎれば忘れてしまう。
けれど、忘れてはいけない日々が永久保存されているような小説である。

周辺の病院は、発熱しているというだけで治療を拒否し、信濃山病院の入り口には車の中での診療を待つ長蛇の列ができた。
高齢者施設ではクラスターが発生し、介護が必要な患者が大勢押し寄せる。
外来の診療も普段通り続け、一般の患者が入院する病棟も維持しながらである。
本来は6床を予定していた感染症病棟だが、20床となり、36床まで拡張された。
院内感染も発生した。人手が足らなすぎ、十分な感染対策をとっていてもどこかに穴が生じたのかもしれない。
孤軍奮闘、という有様だった。
行政の無知と、周辺の無関心に強い憤りを感じる。
将来また同じようなパンデミックが起きた時には、同じ失策を繰り返さないで欲しいと願うばかりだ。

0
2025年05月24日

Posted by ブクログ

新型コロナウイルス感染症に立ち向かう、医療従事者の話し。

著者の作品にしては珍しく、作品全体を通して憤りが感じられた。それだけあの世界的パンデミックは異常だった。

0
2025年04月23日

Posted by ブクログ

コロナの話、2021年1月のコロナ3波の1日に100人を超える死者が出てた頃の話。
物語仕立てだけど、
実際に長野の病院のお医者さんでコロナに関わってたそうなので実体験がもとになってるんだろうねー
過ぎてしまうと覚えてない、そうだったなあと思いながら読んだ。
大変だったあの頃・・・

0
2025年03月27日

Posted by ブクログ

あんなに大変な思いをしたのに、もう忘れてしまっているのか…と、最近感じることがあります。
マスク、咳エチケット、除菌…
皆さんにも思い出して欲しいと思います。
医療現場で頑張ってくださった方々がいたことを。

0
2025年02月05日

匿名

ネタバレ 購入済み

医療従事者の皆様に感謝

コロナ禍、医療従事者の方々の苦労は計り知れない。
先行きの見えない中、見えない恐怖と戦いながら、最前線で患者を受け入れ続けた医療現場の臨場感が伝わってきました。

#切ない #感動する #深い

0
2025年02月02日

Posted by ブクログ

今となってはコロナはだいぶ落ち着き、そして対処も出来るようになったが、あの頃は途轍もない脅威に侵されまた誰もが疑心暗鬼になっていた。何を信じれば良いのか、どうしたら元の生活に戻るのか、果たして戻れるのだろうか…と。
その中、最前線で命を救おうと懸命に戦った人たちがいる。そのことを私たちは覚えておかなければいけない。知らなければいけない。
その本だと思う。

0
2025年01月15日

Posted by ブクログ

これは小説であって、小説ではない。
コロナ最前線で命懸けで診療を続けた現場の医師の偽らざる記録であり、決して忘れてはならないドキュメントである。

0
2024年12月12日

Posted by ブクログ

ネタバレ

敷島先生の中庸なものの見方と、決めきれないからこそのじっくり考える姿勢は、本を読んでいても、落ち着きと安心感を覚える。夏川先生の本は、いつも主人公に「落ち着き」があるので、ホッとさせられるし、短い言葉で端的に綴られる想いや状況はスッと頭に入ってきて、とても読みやすく、刺さる。
当時、重症化リスクの少ない私は普通に活動したほうが経済面で良いと思っていた。ただ、基本引きこもりなので、双子をベビーカーで土手に連れて行く以外はほぼ外出せず。そんな私の行動も医療従事者にとっては恐怖を感じさせていたのかと気づかされた。都内で過ごす人と、医療現場の人とで、見え方が全く違うのだなぁ(ついでに言えばトップの人も)。医療現場の方が大変な状況で、大変な思いをされながら、自身の命を削りながら、患者さん達命の仕事に向き合ってくださっていたことに感謝。
本当に、砦だったのですね。
最後の病院長の言葉も素敵だった。こんなトップがいてほしい。敷島先生が看護師さん達のことを心配するのもありがたいし、陣頭指揮をとる先生の優秀さも素晴らしく、この人の下で働きたいと感じる。このメンバーだからこそ第三波を乗り越えられたんだなぁ。
夏川先生の著作らしく、どのメンバーも個性的で頼りになる。実際、現場はこんなに人材に恵まれているのだろうか。それともこれは物語だからなのかしら、とふと疑問。

ありがとうございます。次作も楽しみです。

0
2024年12月04日

Posted by ブクログ

きっとこれが最前線で受け入れてくれていた病院のリアル。 
あとがき含めて1冊。

大切なことは
負の感情に飲まれないこと。
怒りに怒りで応じないこと。
不安に不安で応えないこと。

0
2024年12月04日

Posted by ブクログ

作品の時期は長野県で過ごして、他県だけどコロナ病棟でも働いたこともあるからこそ、非常に身近な作品。院内も院外の様子もリアリティあふれる描写で描かれた作品。

0
2024年12月01日

Posted by ブクログ

最初に『命の砦』から読みましたが、どちらから読んでも良作と言える内容でした。
今回のものは一人の医師に視点が置かれています。その中でコロナとどう向き合っていくかが描かれていて、この時の自分のことを思い出しました。

0
2024年11月23日

Posted by ブクログ

「自分だけが辛いと思えば、人を攻撃するようになる。自分だけが辛いのではないと思えば、踏みとどまる力が生まれる。」
今、辛いのは私だけではない。私なんかより、夫のほうが何杯も辛い。私が辛いと言ったら、夫はその何倍も、何十倍も辛くなる。
私は、辛いなどと思ってはならない。

0
2024年11月15日

Posted by ブクログ

命の砦に続いて読んだ。
こういう砦に助けられたんだろうな。
いろきろな考え方、いろいろな立場があるが、こういう状況になると、それが浮き彫りになるんだなーと。
正解じゃないかもしれないけど最善の道を選択したという言葉も印象的。
考え抜いた上での選択は後悔しないよ。

0
2025年11月15日

Posted by ブクログ

面白かったけど、読みやすかったけど、物語というより、コロナ禍での対応病院のノンフィクション的な記録のような感じでしたね。逼迫感はあったのですがちょっと気持ちが期待していたものと外れてましたね。

0
2025年11月04日

Posted by ブクログ

内科医の敷島は全てが不足した地方医療機関の現場でコロナ第三波を迎え撃つ。医療崩壊の瀬戸際に立たされた臨床の現実を描く。
-------------------------
夏川さんの医療小説ですが、いつものようにクセつよのキャラクターや飯テロや軽妙なやりとりが出てこず、コロナに追い詰められる医療現場が描かれるために余裕がなく、また、国や地域行政、他の医療機関への怒りを含んでいるであろう指摘などが続くので、読んでいてしんどく、途中でやめようかとも思ったほどでした。それもそのはずで、後書きを読むと、夏川さんご自身がコロナ対応の最前線に立ちながら並行して書かれた小説だとのことで、これはもはや半分ノンフィクションなのでした。
しかし現場のぶっちゃけ話で終わるのかと思いきや、そこは夏川さん、しっかりと読み手のカタルシスを担保していて、読んでいて辛いドキュメントというだけではなく、小説としての体裁を保つのがさすがです。突然のようにこうした人間としての感情を揺さぶる展開が出てきて思わずうるっと来てしまいました。
ただ、本当に読み応えがあったのがあとがきだったというのはまあ致し方ないところではあるのでしょうか。夏川さんの地方医療・国の医療制度への問いかけや人の道としての医道への視線はどの作品でもすばらしいな、と思います。続編のレッドゾーンもさっそく読んでみたいと思いました。

0
2025年11月02日

Posted by ブクログ

コロナ感染者でも軽症の人達を診ている医療機関は、比較的楽なのではないかと考えられていた時期は確かにあったし、現実はそうではないことを、この本を通して皆さんに知ってもらえることは、本当に大切だと思った
後書きも、凄く感度した

0
2025年08月31日

Posted by ブクログ

現場のリアルな声がこの本から
たくさん伝わってきた
未知なるウィルスとの闘い
医療現場はここまで過酷だったのかと
頭を抱えた
無知のままの私ではなく、
この本を通して
"今"知ることができてよかったと思う

今もまだ消えることのないコロナウィルス
そしてこれからきっと生まれるであろう
未知なるウィルスたち

当たり前に感じてしまいがちな日常に
改めて感謝をし、
自分にできることを精一杯
日々取り組んでいけたらと思う

0
2025年07月07日

Posted by ブクログ

コロナとの闘いのリアルな記録的小説。
やはり中でコロナに向き合っている医療従事者と他者から情報を得ている人との温度差があるな、と感じさせられた。
また、向き合っている人たちは恐怖すら感じる余裕がないくらい休みなく働いていて我々一般人は感謝しないといけないよね、と痛感させられた。

0
2025年06月28日

Posted by ブクログ

医師を主人公とした夏川さんの作品はいくつか読んでいて、いずれにもどうにもならない生命へのやり切れなさ、その中に見出される優しさを想うものが多かった。
しかしこの作品にはあとがきにもあるように並ならぬ激しさと恐怖を感じた。きっと忘れてしまうから、せめてこの作品を覚えておきたい。

0
2025年06月28日

Posted by ブクログ

コロナ蔓延期における、医師である著者の葛藤が見事に『小説』になった一冊。これがエッセイだったらきっと読み切れなかっただろうなと思います。
三笠が格好良い。そして作者あとがきがとても良い。

0
2025年05月21日

Posted by ブクログ

ついに2年以上に及んでいるコロナ禍という異常事態。いのちの最前線に立つ者の葛藤や試される平常心という描写から、いつ何時訪れるか分からない災害といえる事態への危機感を呼び起こされる。

0
2025年03月03日

Posted by ブクログ

2021年1月。新型コロナウイルス感染症第3波が…

長野県の地域医療の中核を担う信濃山病院。他の大学病院などが患者の受け入れを拒む中、まさに『砦』として、初期から患者を受け入れてきた。

孤軍奮闘する、敷島を中心とする信濃山病院の医師、看護師たち。
そして、院内感染が…

もう3年も経つのか…
や5類となった新型コロナ。
当時の大変さはもはや忘れられつつある…

医療従事者の方々が、こんなに過酷な状況で新型コロナと闘ってこられたのだと思うと、身につまされる…
医療関係者の方々の頑張りには感謝しかない。

医師たちの名前はバルチック艦隊を破った連合艦隊からなのか。
三笠、千歳、敷島、日進、龍田、富士、朝日…


0
2025年01月02日

Posted by ブクログ

地方の中小規模病院でのコロナ対応話

コロナの時期に病院で何が起きていたのか
忘れてしまっていた

緊張場面を読み進めながら
そうだった、そうだったと
深い感慨が湧き上がった

0
2025年10月03日

Posted by ブクログ

夏川さんの作品はご本人の温かなお人柄が出ていて大好きです。読みやすく、冷静沈着な筆致で進むものの、地に足のついた厳しいコロナの現場が描かれていて惹き込まれました。続編も読んでいます。

0
2025年08月09日

Posted by ブクログ

地域第一病院として率先してコロナと戦った医師達を描いた。文章は上手いしリアルな内容ではあったが、他の作品同様なんとなく軽く読めてしまう。主人公が良い人なので最後まで安心して読める。

0
2025年03月26日

Posted by ブクログ

 コロナの割と初期の、長野県の医療期間の奮闘の話。内科医 敷島寛治が勤務する信濃山病院は小さい病院だがクルーズ船の患者からコロナ患者を受け入れている まさに「砦」。
 架空の固有名詞だが ほぼドキュメンタリー?
 「正解かどうかはわからないけど 最善だったと思う。」----いいセリフ

0
2025年02月18日

Posted by ブクログ

コロナ時の様子がかなりリアル、こんなに大変だったんだというのが辛かった。主人公の医師が飄々としているのは夏川作品らしいが、恐らくあまりの多忙さゆえ他作品と比べてあまり患者には寄り添えなかったのが少し残念というか物語と言うより記録だなと感じた。

0
2024年11月20日

シリーズ作品レビュー

「小説」ランキング