夏川草介のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
中学生以上でも読める【夏川ファンタジー】2作目。喘息を患っているナナミという中学二年生が主人公だ。
前作は林太郎が「いかに本を愛しているか」という力で立ち向かっていった。今作は、「本は世の中に必要なのか?」である。本を読むことは想像力を育み、他者を尊重し、自分の経験できないことを本の中で経験できる…私にとっては魔法のような産物なのだが、「自由に、自分らしく」を全面に押し出す経済先行の現代では、古典作品を始め全てが否定される(その存在として【灰色の男たちーまるでモモの世界ではないか!ー】が描かれる)。
人を欺き、自分だけが豊かになりたいという思想ばかり。武器を持って争い傷つけ、殺しあう。歪んだものに触れていては歪んでいくばかりだ。本を忘れた人々が、蔓延していく。現代社会に警鐘を鳴らす本である。
ナナミがいかに強大な【自分本位】の力に立ち向かっていくのか是非読んで欲しい。
古典作品好きなら後半の「熱い展開」にワクワクすると思う(もっと古典作品を読んでおけば良かったと悔やんだ)。
続編があるのか非常にうやむや、といった終わり方である。続きを楽しみにしている。 -
Posted by ブクログ
昔、本を読んで感じたことを忘れてしまっていた
それが何を感じてどう思っていたのか
本の面白さや凄さってどんなことなんだろうとか
これまで時代を超えて読み継がれてきた本の凄さ
人はこれまでに数々の起こしてはいけない間違いや過ちをたくさん侵してきた
その根本にあるのは人間の無限の欲
先人たちが人間が間違いを冒さないように本に書き記して、そうならないように注意喚起してきた
が、、、
欲に目が眩む
まさに何も見えない人がどんどん増えて、本すら読まない
今の時代、コスパやタイパという言葉ばかりが先行し、失っているものの大きさに気がつかない人が増えている
そうならないために、大切なものを思い出すべき一冊
-
Posted by ブクログ
【物語に感じた印象】
黎明の森
澄み切った冷気と凛とした樹々たちが、新しい一日のはじまりを教えてくれる。
そんな夜明けの森の中に立っているかのように、自然と背筋が伸びて、心が洗われる作品であった。
【感想】
初読みの作家さん。
土俵である医療小説ではなく、民俗学をテーマにした本作が、記念すべき初読みの一冊目となった。
本書を読む前、ノンフィクションを読んでいた私は、その作品が抱える重苦しい雰囲気にガッツリと呑まれてしまっていた。そういった理由もあって、生命力に溢れた木の表紙に惹かれて手に取ったわけだが、それが大正解であった。
なんて美しい国なのだろう・・・
なんて美しい言葉なのだろう・・・
丁寧に描写された言葉を辿っていけば、日本ならではの美しい四季、その土地の空気感、色鮮やかな風景が頭の中に映し出されていく。
そして、改めて日本の美しさに気づくとともに、失われつつある日本人の感覚が、私の中にも残っていたことに安堵した。
立派な御神木に胸を打たれて頭を下げたり、美しい夕日や朝日を見てありがたいと感謝したり、勝負時には手を合わせて願ったり・・・
これらの無意識の行動は、誰かに教えられたわけではない。太古より日本人の心に根付いている、目に見えない存在を感じての行動であったと初めて自覚した。
また本書では、同様の言葉を何度も目にした。毎回ニュアンスを変えて、登場人物の口から語られているのだが、作者の夏川さんからの強いメッセージ、警鐘のようにも感じられた。
「目に見えること、理屈の通ることだけが真実ではない。そのことだけは忘れないことだ」
現代は何事にも「エビデンスは?」、「根拠を示せ!」、「数字は?」と言われる世の中だ。
そして、その中でも最もエビデンスが重要視される医療現場に身を置いて、エビデンスのない判断はリスクをはらむと十分理解している作者が綴った言葉であったからこそ、重みを感じ、説得力があった。
エビデンスがない、目にも見えない、数字でも語れない、それでも確かに存在しているものはある。その中に、日本人の本来の心が生きている。
すっと心に沁みて、自分の在り方すら変えてしまう物語だった。そして、日本人として、読むことができて本当に良かったと思う一冊だった。
できれば続編も読みたい。
【心に残った言葉】
「巨木を敬い、巨岩を祀り、巨山を拝して、自らを世界の一部に過ぎないと考えてきた日本人の感覚は、完全に消え去ったわけではない。今もそこかしこに確かに息づいて、人の心を支えている。だからこそ・・・・・・」「だからこそ、この国は美しいと思うのだよ」(p.75)
「今君が目にしているもののひとつひとつが、この国が積み上げてきた歴史そのものだ。それも、もう二度と目にすることはできないかもしれない貴重な風景だ」(p.216)
「目に見えないものがある、理屈の通らない出来事がある、どうしようもなく不思議な偶然がある、そういう感じ方が、自分の生きている世界に対する畏敬や畏怖や感謝の念につながるんです。もし、目に映ることだけが全てだと考えるようになれば、世界はとてもシンプルで、即物的です。そういう世界だと、自分より力の弱い者を倒すことは、倫理に反するどころか、とても理にかなった生き方になるかもしれません。つまり勝てばいいんですから」(p.229)
「昔のこの国の人たちは、美しいとはどういうことか、正しいとは何を意味するのか、そういうことをしっかり知っていた。しかしどんどん木を切って、どんどん心を削ってきた結果、そういうことがわからなくなってきちまったんだ。わからなくなっただけならまだいいが、途方に暮れて、困り果てたあげく、西洋にならって、なんでもかんでも金銭ずくで計算して、すっかりモノの価値をひっくりかえしてしまった」(p.311)
-
Posted by ブクログ
”人間”の話でした
医療の最前線で自らの身体そして心、つまり命を削りながら現場に立つ医師たち
そんな彼らに我々患者は何ができるのか?何を返すことができるのか?
そんなことを考えました
彼らはきっと言うでしょう
感謝されるだけで十分だと
だけどそこに甘えてしまって本当にいいんでしょうか?
「ありがとう」と引き換えに彼らを聖人君子という名の牢獄に閉じ込めてしまってはいないでしょうか
患者としてできることはないか?そんな考えがそもそも間違っているのかもしれません
我々もまた患者である前に人間なのです
彼らが医師である前に人間であるように
答えは見えないけれど、スタートは見えた気がします
我々は皆等しく”人間”なのです
そこから始めましょう