夏川草介のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
作者が医者なこともあり専門的な医療用語は多い。けれどもするすると読めるのは、それぞれの登場人物の特徴が丁寧に描かれているからだと思う。アフロやメガネや、話し方の特徴など、名前で書かれていなくても、あの人だ想像しやすく読みやすい。マチ先生のお菓子への愛が溢れていて好き。食べるお菓子が気になって調べてしまうくらい…長五郎餅、阿闍梨餅などなど…マチ先生は本当に美味しそうに食べるなぁ。
一方で、常に死が近くにある人達の描写に何度も考えさせられた。自分も医療関係者だからこそ、自分だったらどうするの視点が常に出てきてしまった。マチ先生の葛藤しながらも、目の前の死に近い患者と向き合う姿勢に苦しさを感じた。 -
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Posted by ブクログ
京都の地域病院で、自転車を漕いで訪問診療に回る雄町哲郎。
大学病院という「白い巨塔」を去り、好物の甘味を楽しみ、エピクロスの哲学を傍らに置く彼は、一見すると死に対して驚くほど淡々とした、悟りきった男に見える。
けれど、彼にはもう一つの顔がある。かつての宿敵とも言える教授が、自らの父親の手術を託さざるを得なかったほどの、圧倒的な内視鏡の技術。
この「達観した精神」と「研ぎ澄まされた技術」の対比が、物語に痺れるような深みを与えている。
彼は技術をひけらかすことも、過去の因縁に固執することもしない。ただエピクロスが説く「心の平穏」を体現するように、淡々と、完璧に仕事をこなす。その姿は、効率や名 -
Posted by ブクログ
ネタバレずっと気になっていた一冊。2026年の本屋大賞に夏川先生の本がノミネートされたことをきっかけに手に取りました。
劣悪な勤務状況の病院に勤める主人公・栗原一止。夏目漱石のような独特の話し方で変わり者として周囲に見られているが、実は優しく誠実。患者に親身になって対応している姿勢が胸を打つ。最後の安曇さんからの手紙にはグッときた。
迷った時には立ち止まろう、という筆者からのメッセージは、日々何かを目指さなければいけないような雰囲気の私達をホッとさせてくれる。
一止と看護師・東西とのやり取りが面白い。一止が私には妻がいるから‥のくだりで、東西が呆れる場面があるが、本当は東西は一止が気になっているのでは -
Posted by ブクログ
京都原田病院を舞台にした消化器内科医雄町哲郎シリーズ第2作。
自らキャリア20年の内科医である作者の死生観、医療者としての哲学が深く反映されている。
おかれた立場でその発露の仕方は違っても、真摯に患者の人生や医療に向き合う医療者たち。
短い描写にもそれぞれの人柄が滲む
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最高度のカテーテル技術を持ちながら、市井の病院で不治の病を抱える老人たちへの往診や治療に当たる主人公。
生と死の端境にいるからこその諦観や生への希望、死に対する尊敬や謙虚さがそこにはある。
哲郎と袂を分かった、小太閤と呼ばれる洛都大学病院教授の老父の難手術に挑む哲郎と元上司の准教授花垣辰雄。
哲郎に反目する西島とのや