夏川草介のレビュー一覧
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マチ先生のような倫理観のある医師に出会えたら患者は幸せに触れられる時間が増えると思う
哲学者と研究者の両面を極めようとしているマチ先生
〝暗闇で凍える隣人に、外套をかけてあげることなんだよ〟なんて粋な台詞なのだろう…
〝妙な言い方になりますが、がんばらなくても、良いのです。ただあまり急いでもいけません。〟
風情のある言葉、と、患者の長男が言っていたが、本当にその通り
粋で風情のある言葉を、会話の中に織り込めるような人になりたいなあ
この本は日頃本を読む人ではないと、なかなか楽しめないような言葉選び、文体が多様されている印象であった
でも、わたしはこういうお洒落さがとても好き!だった -
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先に刊行された文庫版『臨床の砦』の姉妹作品となる。
令和4年のゴールデンウィークを迎え、コロナ診療もすっかり板についた感のある、本来は消化器内科医である・敷島寛治(しきしま かんじ)が、正体不明のウィルスの恐怖に震えた第一波の過酷さは群を抜いていたと振り返る。
信濃山病院(しなのやまびょういん)は200床に満たないが、「感染症指定病院」となった。
「公立病院としての当院の役割だと考えてもらいたい」と南郷院長。
横浜にクルーズ船が入港したのが令和二年の二月。第一波の頃はすべて手探り。ワクチンはもとより治療薬もない。コロナ患者を受け入れる病院もわずか。発熱があるというだけで診察を拒否された多くの -
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良いに決まっている。
その上で更によかったのは、スピノザに次いでエピクロスという哲学者を微かに知れたこと…
「エピクロスは、平穏で物静かな精神状態を快楽と定義し、これを乱すものは、不愉快なものだけでなく、愉快なものでも遠ざけるべきだと言っている。愉快も度が過ぎれば心の安定を壊すと考えていたらしい。もちろん彼は一般的な意味での楽しさや、身体的な快楽を否定しているわけじゃない。ただ、楽しいことよりも、苦痛がないことの方がはるかに大切で、心が落ち着いていることこそが最高の快楽だと説明しているんだ。つまり最初から『快楽』の定義が違うんだよ。
「そうさ、だから自分は快楽主義者だと言う奴に出会ったら十分 -
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スピノザ〜の時も良い話だったけれど、続編のこちらも文句なしで素敵でした。
技術だけではなく、患者とその命に真摯に向き合う姿は変わらず、こんな医師が地域にいてくれたら、本当に心強いと感じました。
結局のところ、人は治りたい、良くなりたいと思って医療に頼っても、限界があり、それを悟った時に、限られた命の期限をどう生きるか、というところが大事なのだなと感じました。
医療の現実を交えて人生や道徳、哲学を語るところが良かったです。
哲学は自分にとっては難しいものだったけれど、こうやって何か具体例を引き合いに出してくれると、なるほどな、もっともだなと思います。
雄町哲郎と一緒に暮らす龍之介は父の生き様を間 -
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医療がどうあるべきか、コロナもあり、作者には思うところがあるのだろうな
「医師になろうとする人間には、自分の人生を、少なからず犠牲にするだけの覚悟が必要や」
という飛良泉教授のことばは作者の代弁なのかなと映った
作者は40代前半、まだ若手と言ってもいい歳だが、どんな経験をしてきたのか気になってしまった
タイトルにあるエピクロスの快楽主義を引用した、現代の個人主義への批判が上記の部分以外にも全体を通して流れていて、難しい問いを扱っているなと思った
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「人が、自分の権利ばかり口にするのは、自分ひとりで生きていけると思っているからです。でも人生はそんなに甘いものじゃない。生きてい -
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スピノザの続編。親しみの持てるさらりとした人間味のある登場人物達に変わりはなく、前作を思い出しながら読むことができました。
やはり、夏川さんの「死」への向き合い方が、しんみりと心を揺さぶります。最先端の医療を突き詰めた人間が奢りを持つことなく、その無力さと人の死に対して向き合うことの難しさを語っている。
ストーリーの背景となる京都の風景の描き方が、前作と異なり外国人観光客が多いことに触れています。やはり京都の現状、というか日本の「今」にも踏み込んでいる。
日本の少子高齢化の波は否応なしに医療の分野にも押し寄せている。そして医療そのもの、人の生死に対する考え方そのものにも疑問を投げかける。 -
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「スピノザの診察室」の雄町先生のシリーズ。
前作同様、京都を舞台に大病院ではない医療の日々が風情豊かに描かれている。
今回のメインの問題に行くまで、訪問医療での対応など人の命とは、人生とは何かを考えさせられるような展開が続く。
そして、雄町先生は「医療では、人は救えないんだよ」と言う。
雄町先生と同じ医者を目指し始めた甥っ子の龍之介君のこれから、花垣さんが目指すところ、飛良泉教授のたくらみ、寅重さんはどこにかつ丼を食べに行くのか、南先生の4月から2年間原田病院でどう成長していくのか・・・次のシリーズがただただ楽しみだ。
スピノザを読んでない方にはまずそちらから読むことをお勧めしたい。な