夏川草介のレビュー一覧
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現代人に向けた寓話(≓おとぎ話)のような作品だった。
若干ファンタジー寄りだけど、現代の問題を突き付けてくる鋭い切れ味だった。
「他人を蹴落としてでも、自分の成功を求める人たち」
これは一つの手段として、決して悪ではない。そういう存在が登場する。
ただそのやり方が是か非かは、人によって考えが違うと思う。
この作品は幅広い年代に問題を投げかける非常によい作品。
おそらく読む世代や考え方によっても受け取り方が変わってくると思う。
そして前作よりも古典作品のクロスオーバーが強化されている。
作中に登場した作品を読んでいれば、展開をもっと楽しめると思う。
あっ、このセリフは...!とか、この人 -
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※ネタバレあり
前作からさらにスケールアップした物語が用意されており、主人公以外サブキャラたちにもフォーカスがあてられたお話だった。
個人的には、前作よりも好き。
というか、前作をふまえてより面白いものを読ませていただいた、という気持ち。
南先生の覚醒や西島先生の葛藤など心震わされるシーンばかりだったけれど、1つ選ぶとするならば、花垣、哲郎が教授と病院の廊下で鉢合わせるシーンを選ぶ。
大きな力に対して自身の理念を貫き通した花垣はかっこいいし、最終的に患者(親父)に「カツ丼(好物)を食べさせてやりたい」で一致団結するお医者さんたちに心温まる。
とっても好きな小説でした。 -
Posted by ブクログ
大学の医局を出て町の小さな病院に勤務する凄腕の内視鏡医師、哲郎に舞い込んだ依頼とは。命と医療のあり方について考える「スピノザの診察室」続編。
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楽しみにしていた夏川さんの小説です。「スピノザ」に続いて大変面白かったです。とにかく夏川さんのお話は優しさが根幹にあるので、安心して読めるのが良い。
「医療には哲学が必要だ」と問いかけるこのシリーズ、相変わらず日本の医療崩壊に対して厳しい目を向けながらも関わる人に対する愛を失わないのが素敵です。とくに、「人がいずれ死ぬならばなぜ医療は必要なのか」は、ブラックジャックで何度も問いかけられる「医者はなぜ必要なのか」から続く人 -
Posted by ブクログ
"本は人を思うことを教えてくれる"
作中に登場するこの言葉は、今を生きる金言だと私は思う。
作品自体は2時間~3時間でサクッと読めてしまう。
本をあまり読まない人にも、長編の箸休めとしても薦めたい作品。
特に名作と呼ばれる古典文学に苦手意識を持つ人は、読むきっかけになるかも。
作者あとがきでも触れられていたが、確かに今は人を思う余裕がないように感じる。
本を読む...つまり人の考えをなぞる余裕がなくなってきているように思う。
かく言う私も、昔は人の心がよくわからず、人間関係にすごく苦しんだ。
そして本を読むことで、人が思うことを理解できるようになってきている。
確か -
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読み始めてすぐにデジャヴ。もしかして読んだことあった?と思ったら「スピノザの診察室」の億編でした。
甥を引き取ったことから大学病院を辞職し、地域の病院で働くマチ先生。ある日、大学病院の先輩から難しい内視鏡手術の話が持ち込まれるが、その患者は大学病院の教授の父親だった。。。
最近、ストレスフルな生活を送っていたせいか、志の高い先生たちの言動が、いちいち琴線に触れ、だいぶ救われた気持ちになりました。こんなにカタルシス求めてた?と思うくらいです。
エピクロス主義を通じて問うている死生観、幸福とは何かを強く考えさせられます。
著者の哲学と未来への憂いが強く感じられた作品でした。 -
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『スピノザの診察室』を読んで、派手な展開や強く泣かせるような場面があるわけではないのに、読み進めるうちにじんわりと心が動かされ、気づけば目が潤んでいるような、静かな感動を覚えた。
この作品で印象に残ったのは、主人公が必要以上に前に出ないことだと思う。物語を引っ張っていくというよりも、周囲の人や出来事に寄り添いながら、その場にいる一人として存在しているように感じられた。そのため、読んでいる自分も主人公と同じ位置に立って、病院や街の風景を見ているような感覚になった。地域医療の現場の空気感や、人と人との距離の近さが、途切れることなく頭の中に流れ続けていたのがとても印象的だった。
また、主人公 -
Posted by ブクログ
ネタバレ※感動した箇所が多く記録に残したいため、レビューがかなり長めなので注意⚠️
◾️ページ数 P357
◾️抱いた感情
感動、爽快、嬉しい、かっこいい
◾️妙に納得したところ
中将先生のセリフ
「人にはいろんな役割がある。社会に出て必死で働く役割もあればその人の帰ってくる場所を作ったり、子どもを見守ったりする役割もある。両方同じくらい大事なのに一方が活躍することで、一方が活躍できないことっていう考え方そのものが古い男社会の価値観だって話。女が男のように振る舞えば、男女平等になるわけじゃない。大事なことは、それぞれの役割に敬意を払うってこと」
「やり甲斐のある仕事を見つけたなら打ち込めばいい -
Posted by ブクログ
場面が頭の中でイメージできて、非常に読みやすかった。
特にマチ先生が西島先生に新しいステントを頼む場面は圧巻。
亡くなる人も出てくる医療小説なのに暗さをあまり感じない。
登場人物の会話のやり取りもテンポが良くて、味わい深い。
印象に残った文章
⒈治せない病気が山のようにある。けれども癒せない哀しみはない。
⒉勝ち負けなんて、短い人生に何の意味がありますか
⒊医師は医師であるというただそれだけの事実によって、もはや自由な社会人ではあり得ない
⒋目の前の哀しい出来事は、誰のせいでもない
⒌我々の目的は、肝臓を守ることじゃない。患者を守ることだ
⒍人を救うのは、医療ではない。人なんだ。