夏川草介のレビュー一覧
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スピノザ〜の時も良い話だったけれど、続編のこちらも文句なしで素敵でした。
技術だけではなく、患者とその命に真摯に向き合う姿は変わらず、こんな医師が地域にいてくれたら、本当に心強いと感じました。
結局のところ、人は治りたい、良くなりたいと思って医療に頼っても、限界があり、それを悟った時に、限られた命の期限をどう生きるか、というところが大事なのだなと感じました。
医療の現実を交えて人生や道徳、哲学を語るところが良かったです。
哲学は自分にとっては難しいものだったけれど、こうやって何か具体例を引き合いに出してくれると、なるほどな、もっともだなと思います。
雄町哲郎と一緒に暮らす龍之介は父の生き様を間 -
Posted by ブクログ
医療がどうあるべきか、コロナもあり、作者には思うところがあるのだろうな
「医師になろうとする人間には、自分の人生を、少なからず犠牲にするだけの覚悟が必要や」
という飛良泉教授のことばは作者の代弁なのかなと映った
作者は40代前半、まだ若手と言ってもいい歳だが、どんな経験をしてきたのか気になってしまった
タイトルにあるエピクロスの快楽主義を引用した、現代の個人主義への批判が上記の部分以外にも全体を通して流れていて、難しい問いを扱っているなと思った
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「人が、自分の権利ばかり口にするのは、自分ひとりで生きていけると思っているからです。でも人生はそんなに甘いものじゃない。生きてい -
Posted by ブクログ
スピノザの続編。親しみの持てるさらりとした人間味のある登場人物達に変わりはなく、前作を思い出しながら読むことができました。
やはり、夏川さんの「死」への向き合い方が、しんみりと心を揺さぶります。最先端の医療を突き詰めた人間が奢りを持つことなく、その無力さと人の死に対して向き合うことの難しさを語っている。
ストーリーの背景となる京都の風景の描き方が、前作と異なり外国人観光客が多いことに触れています。やはり京都の現状、というか日本の「今」にも踏み込んでいる。
日本の少子高齢化の波は否応なしに医療の分野にも押し寄せている。そして医療そのもの、人の生死に対する考え方そのものにも疑問を投げかける。 -
Posted by ブクログ
「スピノザの診察室」の雄町先生のシリーズ。
前作同様、京都を舞台に大病院ではない医療の日々が風情豊かに描かれている。
今回のメインの問題に行くまで、訪問医療での対応など人の命とは、人生とは何かを考えさせられるような展開が続く。
そして、雄町先生は「医療では、人は救えないんだよ」と言う。
雄町先生と同じ医者を目指し始めた甥っ子の龍之介君のこれから、花垣さんが目指すところ、飛良泉教授のたくらみ、寅重さんはどこにかつ丼を食べに行くのか、南先生の4月から2年間原田病院でどう成長していくのか・・・次のシリーズがただただ楽しみだ。
スピノザを読んでない方にはまずそちらから読むことをお勧めしたい。な -
Posted by ブクログ
全体を流れる空気感が素敵すぎる。
本書の中で、秋鹿医師が主人公のマチ先生に対して、「あなたは私のトランキライザー(精神安定剤)」というシーンがあるが、まさに本書は私のトランキライザーだ。
このトランキライザーの優れている点は、症状を選ばないところと、摂り過ぎによる副作用もないところだろう。
自分が何かにのめり込みすぎてオーバーヒート気味の時も、逆に何にもやる気が出ずに気持ちが落ちてしまっている時も、本書を手に取り、どこでも良いので数ページを再読してみれば、にわかに気持ちは爽やかに晴れ渡り、自身の体の中に、心地よい風が染み入ってくるように感じる。ニュートラルな自分のあるべき場所にきちんと戻