夏川草介のレビュー一覧
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その医師は、最期に希望の灯りをともす──。
2024年本屋大賞第4位。第12回京都本大賞受賞。そして、映画化も決定している本作。
最近は続編の『エピクロスの処方箋』が2026年本屋大賞第4位で話題となってますね。
すっかり積読したままだったので、エピクロスを買う前に読まなきゃと思い読んでみました。
読後、なんでこんな素晴らしい作品を積んだままだったんだと、心底後悔しました。
夏川草介氏の作品は、医師として描く医療ドラマの中に、人間の内面にある柔らかいものや不確かなものを描き出すのが、ホントに上手な作家さんだなーと、改めて感じました。
医療ドラマの皮を被った人間ドラマというか、『医 -
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良くならない病と向き合うなかで、介護者に積み重なっていく、悲しみやもどかしさ。
どうしようもなく溜まってしまう感情の澱は、想像するだけでもきつい現実だと感じた。
大事な人の存在が希薄に感じられることの寂しさや孤独感は、介護の肉体的なしんどさとはまた別の辛さなのだと初めて想像した。
そこを想像できない、私のような人間は数多くいて、そんな者たちの何気ない一言や態度によって、少しずつ心が削られていく方は実際に多くいるんだろう。
ただ生きてるだけでは“生”は感じられない、ということに気付かされ、強く胸に残った。
そんな中で描かれるマチ先生の接し方に改めて真摯さを感じた。
できれば避けたい、だが -
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ネタバレ前回の『スピノザの診察室 』も面白かったけど本屋大賞ほどではなかったよって感想書いたけど、今回は街中の病院で内視鏡の手腕もさることながら終末期医療として在宅医療の話にウエイトが掛かり、自分の母も末期がんを在宅医療で看取ったのでなんとなく感情移入しながら読んでしまった。大学病院への復帰を望む甥や上司、そして教授の医療のかける思いも現代の医師の働き方改革にも一矢を投げかけており、前作を上回る重厚な内容となった続編。相変わらず甘いもの大好きで飲み薬の替わりの金平糖も健在だ。主人公の医療と哲学の考え方も哲学本を少しでも齧っていると言わんとするところが分かるような気がする。実際スピノザのエチカは今度挑戦
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人が人を大切に思う優しさに、命の儚さと生きる強さに、じわーっと涙がでた。
「世の中には治せない病気が山のようにある。けれども癒せない哀しみはない」秋鹿先生ーー!!
努力によって変えられるほど脆弱ではない世界、理不尽で強固な世界のなかで、なにができるかと考え続ける。ちょっとした言葉かけ、大変な時に気にかけること、暗闇に灯りをともすことで心が救われると感じる。
料亭「蛍屋」女将の鋭い機転と言葉の爆弾は京都ならではなのか。いろんなタイプの人がいて、お互いに関わりあっていて、この世の中はなんやかんやで苦しい中に楽しさがある。足下の花に目を向けること、大事。 -
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死者を無理に引き留めることもできないが、
生者も生を止めることはできない。
そのどうしようもない現実に真摯に向き合うこと、
その過程にしか生み出せない最期があるのだと胸を打たれた。
医学用語をはじめ普段あまり使用しない言葉も多いけれど、調べるのが全然苦にならなかった。
むしろ言葉そのものの風情を感じ、新しく知る喜びを味わえた。
母を亡くした甥との暮らしという背景もありながら、過去の悲しみに過度に踏み込まず、
物語の軸がぶれないのも心地いい。
終末医療のやわらかさと最新医療の鋭さ、その対比が作品に美しい緩急を生んでいる。
最後に局面、たった数ページ、いや数行に一気に心をさらわれた。
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読み始めてすぐに穏やかな気持ちに包まれる。そうだった。この世界に戻ってこれた安心感。
マチ先生の言葉は難しいけれど、自分を否定されている感じは全くしない。
エピクロスの『快楽』は不快や不安を遠ざけた、快く安心できる状態でいわゆる『愉悦』ではないことだそう。
つい生活が充実していなければ、とかイベントを作って交友関係を楽しまなければ、自分は足りないのではないか⋯とか焦ってしまうこともあるけれど、それよりも『安定』に心を向けると、自分の状態も違って見えてくる。
それがマチ先生からもらえた処方箋なのかも。
登場人物がみんな魅力的で、京都の街並みも出てくる人たちも美しい。特に御鎌餅のエピソードが良か -
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読み進めるうちに、驚くほど心が洗われていくのを感じた。
人は生きている限り、いつどこで予期せぬ不幸に見舞われるか分からない。そんな理不尽を前にした時、人間がいかに脆い存在であるかを痛感させられる。しかし、その弱さを抱えたまま絶望しなくていいのだと、この本は優しく語りかけてくれる。
本作の魅力は、安易な解決策を示すのではなく、迷いの中にいる読者を包み込んでくれるような、温かさがある点だ。辛いことがあっても、再び前を向いて歩き出すための「心の持ちよう」を、物語がそっと支えてくれる。
登場人物たちも非常に魅力的で、それぞれの意志を持って生きる姿に深く没入できた。これから先の人生で困難に -
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息子へ)
最近、このブログで、君には、本屋大賞の過去受賞作品をたびたび薦めている。本書は、こんなにいい本なのに、大賞ではなく、第2位の作品。
ちなみに、本屋大賞関連の本は、ことごとく映画化・ドラマ化されていて、本作品も映画化。映画のほうも見たが、やっぱり原作がおもしろい。原作がおもしろかったから映画化する訳だが、さすがに、時間や映像化に制約がでるので、原作を超えることは難しいようだ。
地方の救急病院医の物語。
主人公の医者が特別すごい訳でもなく、患者の病気が特別難病であったり、シチュエーションが特殊なわけではない。
命の数だけ、死があるわけで、そのいくつかを取り上げた医者と患者の物語。ひ