夏川草介のレビュー一覧
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ネタバレ続編である「エピクロスの処方箋」が本屋大賞ノミネートされた為、未読の本作を手に取ってみた。
大学病院に勤めていた優秀な医師が、家族の事情で小さな地域密着型の病院に勤めることになり、様々な患者を診ていく話。
作中に出てきた「たとえ病が治らなくても、仮に残された時間が短くても、人は幸せに過ごすことができる。」というフレーズに深く共感した。
私自身、専門職ではないが難病患者がたくさんいる職場に勤めている。傍から見れば「ただの延命治療で本人のためではない」と言われることも多い職場だ。
ただ、もう治すことの難しいがん患者たちが余生をいかに長く、幸せに生きられるように助力している仕事でもある。自らの仕事 -
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医療ものです。こんな先生に診てもらいたいと思わせる素敵な先生が主人公。
大学病院で出世できる確かな腕がありながら、大学病院を辞めて地域の小さな病院に勤務している内科医のマチ先生。
そこでの医療は大学病院にはなかった人に寄り添うもので、マチ先生の人柄も相まって、血の通った医療ってこういうことなんだろうなと思わせる。
医者の仕事は病気を治すこと。でもマチ先生は、治らない病気や余命が限られている人が不幸なままなのか、幸せに過ごすことはできないのか、ということを日々考えていて。
人の力、医療の力で変えられることは限界がある。
思想家スピノザの言葉「人間は無力な生き物で、大きなこの世界の流れは最初から決 -
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地域に住んでいる高齢者を淡々と冷静に診察しながら、かつ心は患者や家族の思いに寄り添っている姿勢に、こんなお医者さんに最期を看取られたいなと思った。哲郎の人生を達観しきった素振りは神を連想させるが、無類の甘いもの好きなところが一気に人間味を呼び戻させる。技術もあって、人間的にも魅力的で、ユーモアもあって、理知的な人、現実世界ではお目にかかれないんじゃないだろうか。まつりさんとの関係性にも乞うご期待である。
運命は変えられないけど、だからこそ努力が必要なんだというエピソードには、生きていくことの核のようなものを感じてハッとする。自分ができることをできる範囲で頑張る、その結果として、点と点が繋がっ -
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ネタバレアンドルーが自身の信念とは異なる方向へ猛進し、クリスティンとの心の距離がどんどん離れていく過程は、読んでいてとても悲しかった。ヴィドラーの死によってようやく目が醒めた先にあったのが、愛するクリスティンの死だったとは。アンドルーが信頼できる仲間と理想の医療を成し遂げていく姿を一番見たかったのはクリスティンだったはず…良くないことが起こることは予想していたが、まさかここまでとは。
打ちのめされたアンドルー、神経が衰弱し、悪夢にうなされるなど辛い時間が続くが、デニーに連れ出されたことをきっかけに徐々に回復していく。
『人間の心というものが、今回ほど致命的な一撃を受けても立ち直ってくることができるとい -
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Posted by ブクログ
高齢化社会について、わかっているつもりで、実は何もわかっていなかったのだと気づかされた。
「高齢者が増えている」という程度にしか捉えておらず、そういうものだし仕方のないことと軽く考えていた。けれど実際はもっと深刻で、さまざまな問題を内包しているのだと考えさせられた。
この作品の刊行は2019年11月。きっと当時のリアルな医療現場が描かれているのだと思う。6年以上経った今、現場は変化があるのだろうか。
いつ病院に行っても、だいたい混んでいて、先生方は患者さんを診ることで精一杯なんじゃないかと思えるけど、この作品に登場する先生方のように、医療の未来を真剣に考えている方たちがいるのだと思うと -