夏川草介のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
皆さんの評価が高い夏川草介さん、お初です。
ある紹介文では夏川さんを「読者が共感しやすい医療ドラマや感動的な物語で人気を博し」と評していますが、さすがに良い話でした。
主人公の「マチ先生」は大学病院で将来を嘱望されながら、妹の死によって一人残された甥の為に地域病院の内科医に転進した医者です。そんな主人公が地域病院の同僚や、大学病院から研修に来た女性ドクターとともに終末医療と向き合って行く姿が描かれます。
病気を治すことは「目的」では無く、患者を幸せにするための手段に過ぎない。一方で「手段」である治療法の開発は進めて行く必要がある。そういう考えが繰り返し語られます。ややありきたりな展開という気も -
Posted by ブクログ
本書を読んでまず感じたのは古屋の毒舌が最高に面白い。それをさらりと毒舌で受け流す主人公の藤崎との遣り取りはコントのようで思わず笑いが込み上げてくる。
この遣り取りは普通だったらムッとするか今のご時世ならハラスメントレベルなんだけど正論で皮肉さを感じさせないところが面白い。
物語は二人が各地の古い伝承や口承をフィールドワークで調べる民俗学のお話。民俗学って何?柳田国男の遠野物語のような話がテーマなんだけど正直、学問的なところは「ふむふむ何だか良く分からん!」ってなることが多かった。
だけどそんなかでも興味深かったのが、5話の『灯火』。
樹齢600年の垂れ桜が道路拡張で伐採される話。
私は良く -
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ネタバレスピノザの診察室の続編。
前作から、この小説の雰囲気がとても好きなんだよね。
大学病院に勤めていた雄町哲郎は、妹が亡くなりその忘れ形見の龍之介を引き取ることに決めた。大学病院をやめて、町の地域病院である、原田病院に転職。
・・・ってのは、前作にありまして。
その龍之介はもう中学1年生。
元いた大学病院では、辞職願を出したとき、ものすごく引き留めた飛良泉教授としては哲郎を目の敵にしている部分がある。
同僚の花垣などはもう龍之介が中学生だし、戻ってきてほしいと画策する。
だが、哲郎は原田病院で一人一人としっかり向き合うこの状態に満足している。
ギリギリまで病院に来なくて、半ば手遅れだったり -
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雄町先生、待っていました。
エピクロスという言葉が見事に合っている小説でした。
「快楽主義」のエピクロス。
「快楽主義」というと誤解をされやすいけれど、質素に生き、恐れと不安を減らして平穏を保つというのが本来の思想。
様々な人生の終末期。
患っている本人を置いていかない医療が大切だと改めて気づかされる。
病と快楽は両立することがあるのかもしれない。
けれど、幼い子供を兄の雄町先生に託して亡くなってしまった奈々さんのことを考えると「快楽主義」は難しい思想だなとも思う。
龍之介くんの健やかな成長と雄町先生の今後も知りたいので、続編を楽しみにしている。 -
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ネタバレ栗原一止(いちと)は信州にある「24時間、365日対応」の病院で働く、29歳の内科医である。ここでは常に医師が不足している。専門ではない分野の診療をするのも日常茶飯事なら、睡眠を3日取れないことも日常茶飯事だ。妻・ハルに献身的に支えられ、経験豊富な看護師と、変わり者だが優秀な外科医の友人と助け合いながら、日々の診療をなんとかこなしている。
そんな栗原に、母校の医局から誘いの声がかかる。大学に戻れば、休みも増え愛する妻と過ごす時間が増える。最先端の医療を学ぶこともできる。だが、大学病院や大病院に「手遅れ」と見放された患者たちと、精一杯向き合う医者がいてもいいのではないか。悩む一止の背中を押してく -
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「2025年読みたい本3冊」として、年始にこの本を選んでおいて、読めないまま12月になってしまった。危うく丸々1年過ごしそうだったなんて…時が過ぎるのが早くて困る_(┐「ε:)_
「神様のカルテ」も「本を守ろうとする猫の話」も、だいぶ前に読んだ記憶があり、そこから久々の夏川草介先生の作品でした。
『「世の中には死ぬまでに絶対食べておくべきうまいものが三つあるんだ。知ってるかい…矢来餅と阿闍梨餅と長五郎餅だ」「全部餅じゃないですか」甥の抗議の声に、哲郎の方はむしろ満足げだ。「辛い時や頑張っている時には甘いものを食べるに限るんだよ」-第二話 五山-』
最先端の医療・並々ならぬ技術で難症例を鮮や -
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マチ先生続編
医師でありながら医療では人を救えないと言い切るマチ先生。その上で医療に何ができるのか。何をすべきなのか。その問いに正解はないが、真摯に向き合うマチ先生の根幹には哲学がある。今回のマチ先生にはこれまでよりも迷いがないように感じる。
トップレベルの技術を維持することと、地域医療に向き合うことが、実際に両立できることなのかどうかは知らない。可能ならそんなやり方もあっていいのかなとは思う。
京都の町の雰囲気(住んだことはないのでイメージでしかないが)が、マチ先生の佇まいにぴったりでとても良い。京料理も京の御菓子も前作以上に魅力的。
いずれ龍之介が医師となるまで見届けたい。