夏川草介のレビュー一覧
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夏川さんの本を久しぶりに読みました。
日本の綺麗な風景を想像しながら読む時間は古屋先生と共に歩いているような、旅の時間でした。
つい先日、鞍馬を訪れた自分としては叡山鉄道の紅葉のトンネルがありありと想像できて嬉しかったです。
この国に生まれて育った自分には、作中にある自然から神を感じる信仰というものがどういうものか、言葉にはできないけれどまさしく「感じる」ことができます。
それは当たり前ではなく、尊いものだと歳をとってから思うようになりました。
民俗学は日本人を知る学問だなと、この本を読んでそんな風に感じました。元々興味のある分野ですがこれから先いろんな土地でその風土を感じられるものを探してみたいと思います。 -
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先に刊行された文庫版『臨床の砦』の姉妹作品となる。
令和4年のゴールデンウィークを迎え、コロナ診療もすっかり板についた感のある、本来は消化器内科医である・敷島寛治(しきしま かんじ)が、正体不明のウィルスの恐怖に震えた第一波の過酷さは群を抜いていたと振り返る。
信濃山病院(しなのやまびょういん)は200床に満たないが、「感染症指定病院」となった。
「公立病院としての当院の役割だと考えてもらいたい」と南郷院長。
横浜にクルーズ船が入港したのが令和二年の二月。第一波の頃はすべて手探り。ワクチンはもとより治療薬もない。コロナ患者を受け入れる病院もわずか。発熱があるというだけで診察を拒否された多くの患者が信濃山病院に送られてきた。
多くの医師が反発し、家族からも、コロナ患者を診ないで、近所に知られたらここに住めなくなると懇願された。死にたくないと泣き出す若い看護師たち。
「役割分担」を理由に見て見ぬふりを続けている他の総合病院。逃げ続けているうちに収まればいいと考えている。
感染症という悪魔に、人間性が試されているようだ。
コロナ診療の過酷な現場の状況が外に伝わらないのは、患者のプライバシーを守るためと、病院を風評被害から守るためでもある。そこに「沈黙の壁」が存在すると三笠。
危機感のある者ない者。
平気で海外旅行に行ってウイルスをもらってきては後から泣きついてくる患者たち。医療者であっても現場の過酷さを知らない者は、3人だったら大丈夫でしょう?などと居酒屋に誘う。そこには「コロナ診療に関わっている医師の入店を遠慮してもらいたい。他のお客様の安全のため」という張り紙があった。コロナ診療に関わっている身にとってショックだが、居酒屋の店主の方がよほど危機管理ができていると感じる敷島だった。
やがて、信濃山病院のスタッフたちは一人、また一人と戦列に加わっていった。
医師として、ではなく、人間として。
人間というものを信じられなくなる場面もたくさん見てきたが、そういう負の面よりも、人間の善意を描きたかったというのが作者の言葉である。
現在では、誰もが普通に「コロナに罹った」と言い、どの診療所でも診てもらえるようになった。
だが、喉元過ぎて忘れてはいないだろうか?自分を犠牲に頑張ってくれる医療者だけに都合よく押し付けて、どうにか乗り切ればそれでOKと大病院や行政が思っているなら大きな間違い。同じことはまた起きる。
忘れてはいけない。 -
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この本は小説であり、物語という立て付けだが、
一般の人は、普段は患者としてしか医者に関わらないので、知ることのない、医者目線からみた医療の現場で起きている課題がよくわかった。
物語については、
とにかく登場人物の個性が話し方や過去なども含め、際立っているところが素晴らしく、みんなそれぞれの主人公との距離感ではあるが、やさしく信念を持って生きていると思った。
読み進めるごとに明かされる各々の登場人物の過去から、自身が主要な登場人物をみんな好きになっていくのを感じた。
とてもリアルなのに、ドラマがあり、人のあたたかさや、いのちについて思いを馳せることができた。
文体は、主人公(筆者自身を投影?)が夏目漱石が好きな文学オタクなので、昭和のような硬い文体なのに、内容や伝わる感情が濃密で唯一無二の作品。
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読み終わった後、とても優しい気持ちになり、生きる勇気をもらえました。「私が仕事で志していることは、間違いではないんだ。」と、背中を後押ししてくる内容でした。
私は施設ケアマネージャーの仕事をしていますが、普段から利用者様や職員を見ていると、「それは利用者様の幸せにつながっているのだろうか?」と思うことがたくさんあります。
一止の優しさ(延命よりも本人が望む幸せを尊重すること)が嬉しかったです。また、それを共に分かち合う仲間や家族がいることが嬉しく思いました。
自分の仕事において、自分の考えていることが間違っていないんだと信じさせてくれました。
誰かの大切な判断をする時は、その人が幸せになるかどうか、その人が望むことなのか、それが判断の基準になるのだと、私は理解して進もうと思いました。。 -
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『臨床の砦』の初版発行は2021年4月
まさにコロナ感染が拡大しているとき。
読みたい本リストに入れながら…
でも、2025年の今だから
冷静に読めたような気がしている。
2020年1月16日
国内で初めてコロナ感染者が確認された。
その後、未知の感染症による感染は拡大を続け…
テレビや新聞などから
毎日、感染者数、死者数
感染しても入院できない
自宅待機中に様態悪化、等々の
正常な思考が働かなくなるような報道ばかりを受け止めていた。
ワクチンが接種できるようになれば感染は収束に向かうのかと思ったが
ワクチン接種が始まっても
ワクチン不足で打つことができず
さらなる不安が募った。
治療薬が使えるようになったと聞いても
治療が手探り状態のように感じてしまった。
自分たちでできることといえば
マスク
アルコール消毒
なのに…
それらの品は手に入れることすらできなくなった。
オリンピックは延期され
緊急事態宣言のもとで外出を控え
日常生活を極小化して。
何が何やらさっぱりわからないまま
ただただ恐怖感だけが増幅していった。
日本中が不安と恐怖感でぱんぱんに満たされた極限状態の中で
私たちは自分や家族を優先するだけでなく
ウイルスという得体のしれない物に対する怒りを
誹謗中傷という形で「人」に向けるという過ちまで犯してしまった。
それなのに私は
未知の感染症に戦々恐々の日々を送っていたことすら
忘れかけていた…
あのコロナ禍で私たちは何かを学べただろうか?
感染しても診てくれる病院がない
入院できない
ホテル療養すらできず自宅待機…
さらに
一般診療の停止で持病の診察さえ受けられない状況…
同じ轍は踏まない、と言い切れるのだろうか…
ふと頭をよぎるのは
喉元過ぎれば熱さを忘れる…
コロナ最前線で闘っていた著者・夏川草介氏のことば
『この感染症と闘い続けるために必要なことは、
突き詰めればふたつだけである。
人間が互いに支えあうこと、
そして希望を持つこと。
本書を通じて、
そんな私の思いがわずかでも伝わってほしいと願うばかりである』
今、読んで良かったと思った一冊だった。 -
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ネタバレ『臨床の砦』の続編で『レッドゾーン』の改題作品。
夏川草介作品11作品目。
コロナ第一波の医療現場の作品で、『臨床の砦』を読んだ後だと 補足的な位置になる作品かな。
引き続き 敷島先生が主の話もあれば コロナ診療チームの先生[日進先生·千歳先生]視点の話もあり。
[地域で6箇所ある総合病院のうち 5箇所が一般診療に注力。コロナ患者の入院はもとより 発熱外来も開設する予定なし。]
[感染が拡がれば 『信濃山病院』が1病棟を まるごとコロナ専用に切り替える36床案まで提出。]
同じ医師·病院の立場でも コロナ診療の内外でも 随分 違うものなのだと よく分かりました。
医師·看護師にも家族がいるから 「コロナに関わりたくない」のも当たり前な考えだとも思う。
そんな中でも やっぱり敷島先生達のような人達がいてくれたおかげで コロナを乗り越えられて 今があるんだと思いました。
一患者では分からなかった医師·看護師側の当時の事を知る事が出来て 今作品を読んで良かったです。
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ピアノとSwitchと新しいiPad Airと安楽椅子が届いて、私のQOLは爆上がりした。
今年は清水の舞台から飛び降りるシーンが何度となくあった。今年はそんな年なんだろうなと実感。(買い物だけでなく)まぁ、人生の中で1年くらいそんな年があってもよかろう。と変に達観して自分を眺めている。
占いを見てみると
全体運:「準備の年」であり、2026年に向けて心と環境を整える時期です。柔軟性を持って新しいことに挑戦し、自分のペースで進むことが成長とチャンスにつながります
とのこと、来年は乱気の年となるようなので、なるほどその前に環境を整えよと言うことか!
↑無理やり自分を納得させてる
‥‥‥あらすじ
以前の地方病院勤務から信濃大学医学部に入局した消化器内科医・栗原一止が、大学病院の矛盾と向き合いながら、29歳の末期膵がん患者の治療を巡って実権を握る准教授と激しく対立する物語です。主人公は、一人の患者の命を救うために、巨大な組織の理不尽なシステムに立ち向かい、葛藤しながらも最善を尽くそうと奮闘します。
感想
栗原先生にお久しぶりで会えました。
やっぱりこの小説は良い、最後に向けて感涙しました。
“選べないこと”“患者が希望しても制度的に難しいこと”“家族が抱える葛藤”が描かれていて、ハッピーエンドではないけれど、それでも少しの希望は感じられて終わりを迎えました。
苦しい話が多い中、長野の自然と周囲の人々の温かさ、そして何といっても地酒!
地酒リスト
1 豊賀 長野県小布施町 高沢酒造
2 七水 栃木県宇都宮市 虎屋本店
3 田光(たびか) 三重県菰野町 早川酒造
4 信濃鶴 長野県駒ケ根市 長生社
5 泉川 福島県会津坂下町 廣木酒造
6 酔鯨の雄町 高知市 酔鯨酒造
7 善哉(よいかな) 長野県松本市 善哉酒造
8 信濃鶴 純米大吟醸 駒ケ根市 長生社
9 而今 雄町 三重県名張市 木屋正酒造
1番と9番は、買ったことありです。
いい酒ですよね。
気になったのは8番 信濃鶴
この小説に出てくる九兵衛←居酒屋 は、モデルがあるようで、なかなかの尖った店とのこと。
行ってみたい!厨十兵衛という店です。
「騒がしいので3人以上はお断り」「日本酒3合以上飲めない人お断り」だそうな。笑 -
Posted by ブクログ
つい最近、昔からお世話になってる内科の先生とひさびさにお話する機会があった時に「わたしは、壊れたものを直すことしかできないから」と言っていたことを今でも覚えている。気の利いた返しができず、もごもごしていた苦い記憶もおまけで付いているのが少々厄介な点。
その時先生は、新しいものを生み出すような職業を素晴らしいことだとも言っていた。その意見にはまさしく同意するが、それと同時に医療のような、当たり前を創る医者という職業も、同時に尊い存在だと私は思う。
当たり前が続くことの幸せに、取り返しのつかない局面になってやっと気付くような私たちを支えてくださる、そんな尊い職業に就く方々の心の内を知れる貴重な本だと思う。本という、誰でも物語の一人称になれるような媒体だからこそ、読んでほしい作品だ。 -
購入済み
レビュー1番手?
発刊同時に一気読み
家内用に書籍も購入。
今回も清々しく何度見てもホロりとする場面が多数
やはり先書のスピノザから読まれてからをオススメ
また京の街の銘菓巡りへ出掛ける用事が出来ました
前書拝読後、銘菓巡りのバス停待ちで後ろ走る自転車が
同じお店の名前の話しをしながら通り過ぎていったのは
いい想い出 -
Posted by ブクログ
コロナ禍の過酷な医療従事者の状況を、忖度無い視点で描いた作品。
これまでも、コロナ禍の状況を描いた作品はいくつもありますが、これは、より本音に踏み込んだ描き方で描写されていて、“リアルな本音だな”と思わずにはいられませんでした。
確かに当時、感染者や感染地域のみならず、治療に当たっている医療従事者に対するいわれのない『差別』はありました。目に見えないモノへの恐怖という事はあるにせよ、ちょっとね。冷静に考えればよいのですが、冷静にはなれなかったという事ですね。
それと、一部医療機関自体が、コロナの診療を拒否するという事態もありました。それには、高度医療機関も含まれてたからな。彼らなりの理屈はあるんだろうけどね、リソースや経験・知識という観点で、未知にウイルスに対峙するには高度医療機関に対する期待は大きいのだけど、釈然としないですね。この作品でも、そのあたりの事は描かれています。
医療従事者への“感謝を示すため”という事で、ブルーインパルスが都内を飛行したのも記憶にあるところですが、あれで、どこまで感謝を示せたんでしょうね?
この話は、いまも忘れてはいけないし、これから未来につなげていかなければならないと思います。