向田邦子のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
●短篇四篇『鮒』台所で物音がし、見にゆくと鮒の入ったバケツが置かれている。息子が飼うと言って、水槽に移して飼うことになるが、その心当たりのある父親は浮かない。過去に関係を持ち、通った女のアパートで飼われていたものだったから。
『ビリケン』毎朝通る果物屋の主人を、こっそりビリケンと呼び、内心でバカにしていた男。ビリケンは死、男の息子が果物やで万引きを働いたことによって、男の記憶が刺激され、古本屋で万引きをした大学時代のことが思い起こされる。ビリケンはその古本屋の息子だった。
『三角波』結婚相手である夫の部下に、好かれていると思い込んでいる新婦。部下が愛しているのは、夫だった。
『嘘つき卵』子供の出来ない夫婦。検査でシロとわかった妻が、嫉妬心から夫の元カノと推測する女がやっているバーへゆき、写真家の男と出会い、浮気の未遂をしたところで、妊娠がわかる。
「言葉に出してしまうと、あとはセーターの毛糸をほどくようにするすると楽に話せた。」という比喩はいいなあと思ったけど、現代では通じないものになっているのかもしれない。『嘘つき卵』の、決定的なことはしてないのだけど、一生秘密を抱えて生きていくだろう妻のことを思う。どの夫婦にも、そういうことが、大なり小なりあるのではないか。
タイトルの「男どき」は、幸運に恵まれ、勢いがある時、で、「女どき」は、すべてがうまくいかず、不運な時、であるらしい。女=不運なんてな。なんだと! と思うが、まあそれはそれ。後半のエッセイを読むと、女でありながら立派な仕事を持ち、しかしそれに奢ることなく生きる向田さんの姿勢は、男女平等をかさに、得をしようとしているように見える現代の女にはない、清さ、カッコよさがある。何事にも興味を持ち、いくつになっても「へえ、なるほどなあ」と感心して面白がること、それを肝に銘じて、生きていきたいものです。 -
Posted by ブクログ
最初4篇、ザ・向田邦子!
「V」は印象深い随筆ばかりだった。「甘くはない友情・愛情」は頷ける。女の友情は、男のようなものとは確かに違う。「黄色い服」は少し教訓じみたような内容。「無口な手紙」は中2教科書でも馴染みのある作品。他には「反芻旅行」も共感できる部分が多く好きだった。
「独りを慎しむ」は道徳の教科書にあった。現代では古臭いと言われそうだが、古臭い中にも気付かされることがある。古い感性の中でも、守るべき不変的な良さがある。
向田さんは「古臭い」と言われると喜ぶだろう。女が男と対等になろうと努力している時代だから(まだまだだが)。文章を読むと生きている。随筆はより血が通った文章だと思う。不慮の事故で亡くなっても、作品は読み継がれ、本の中では生きているんだなと感じた一冊だった。今では向田さんの年代だと当然亡くなっている人が多いだろうが、やはり事故となると一層死に思いを馳せる。 -
Posted by ブクログ
向田邦子文学忌 1929.11.28〜1981.8.22
木槿忌 (むくげ) 山口瞳の向田邦子の死を受けての小説「木槿の花」より
小説新潮で昭和56年7月から連載された短編4編とエッセイ
最後の小説「嘘つき卵」
不妊に悩む妻と、過去に別の女性を妊娠させたので自分に問題ないという夫。という話だけれど、この作品が最期の原稿となり、脱稿後、台湾旅行の飛行機事故で亡くなる。
冒頭に
時の間にも男時女時とてあるべし「風姿花伝」
とあり、タイトルが世阿弥の能の理論書よりとられていることを知る。
男時女時の言葉の成り立ちについては知らなかった。意味はざっくりと、男時が運が良い時。女時が悪い時ですが、世阿弥が陰陽説から考えた造語のようです。世の中のことは、全て陰陽に分けることができ、男女であれば、男が陽で女が陰となります。本来は、陰陽に優劣はないのですが、世阿弥は、能に良い時悪い時があり、因果が巡っているというような意味合いで使うようです。
向田さんの短編は、シュッツとしてギュときてバチんって感じで好きです。このタイトルは連載時から使われていたようです。脚本家としてエッセイストとして小説家として(前回の新潮連載の思い出トランプで直木賞を受賞している)男時を過ごしてこられた方のあまりに不運な事故であったと思います。
印象的な作品は「三角波」
結婚を控えたカップル。夫は何かにつけて部下の男を呼びつけ世話をさせる。部下の様子に妻は、自分に好意があると思う。部下は結婚式を病気として欠席する。新居で夫婦で迎えた朝、庭に部下の姿を見つける。部下が愛していたのは、夫だった。で、ここからの1ページが良くて、たぶんこの状況をやり過ごしていく新婚夫婦。壊さなければ壊れない。これが一番好きでした。 -
Posted by ブクログ
「向田邦子」の脚本で1970年台後半にテレビドラマ化された、、、
『家族熱』の文庫本を読みました。
愛憎とエゴをむき出しにした心理描写はお見事。
「向田邦子」って人は、人の心を見透かしていたんじゃないか… と感じさせるような描写です。(読みながらココロに痛みを感じちゃいます)
読んでいると、少しずつ感情移入してしまい、リアルな心理描写に不快感を感じるのですが、、、
先を読みたい欲求を抑えられない… って、感じの作品でしたね。
男女間、家族間の人間模様の描写は、背筋が冷たくなるような… ホントに文書に迫力を感じましたね。
エンディングは、好みの分かれるところですけど。
ちなみに、、、
ドロドロした人間模様の描写が好みでない方は、不快感を感じるだけなので、オススメしません。