あらすじ
宴会帰りの父に叩き起こされて夢うつつに土産を食べる福助頭の弟、母に威張り散らす父の声、転校した初日に教室に向かう気持ち、来客の多かった我が家の忙しい正月、温かいおひつの上で泣き泣きやった学校の宿題、おやつに食べた懐かしい“ボールとウエハス”、銀座に出かける日のおめかし、途中までは大成功だった初アルバイト、黒い服ばかり着るので黒ちゃんといわれた若い日々……昭和の「懐かしい家庭」を卓越した記憶で鮮烈にユーモラスに描く、向田邦子の第一エッセイ集。
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松浦弥太郎さんの『エッセイストのように生きる』の中で紹介されていたので手に取ってみた。
エッセイとは何か?をまさに体感できる一冊だった。家族のこと、何気ない日常のこと、仕事のこと、一見何の繋がりもないようだが、向田邦子さんの"気づき"や"記憶"を介して、全てが一つにつながるのが、読んでいて気持ちよかった。
あと単純に文章がすごく上手なんだなあと。
言葉選びとか描写力が卓越している。
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何度読んだかわからないくらい大好きなエッセイ。
生まれた時代は全然違うけれど、わたしも「曽祖母が仏壇に備えていたお米を食べていたな」と思い出したり。
鹿児島旅行に行くことが決まり再読した。
向田邦子さんが見た桜島を見ることができてうれしかった。
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死が通奏低音となっているのは、筆者が病気を経験したからというだけでなく、私は彼女が墜落事故で亡くなる運命ことを先回りして知っているからと思う。『女の薬指』に収められた一つ目のエッセイ(「チャンバラ」)の書き出しにも驚いたけど、このエッセイでも飛行機の墜落に何度か言及しているから、その度に薄暗さを感じ取ってしまう。文章の組み立て自体が記憶というものがその人のところに訪れる唐突さを再現的に表していると思った。
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読み終えるまでに何ヶ月もかかった。それだけこの世界観に浸っていたい、終わってほしくないと願ってしまったのだ(実際は長い放置期間を挟んだ)。彼女の目や心を通して観る昭和初期の風景、家族の営みが、決して派手ではないけれどささやかなユーモアに満ち満ちている。断片的なのにしっかりテーマとリンクした思い出の数々は、時々ゾッとするものもありつつ、けれどそれらを見つめる眼差しはあたたかい。彼女のような文章を書けるようになりたいと素直に思う。そして彼女にとって大切な、身も心も移り変わる時期を過ごした鹿児島が、わたしにとっても「転」の地であることを誇りに感じた。
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すごい。読み進むうち、目の前に、昭和の生活が生き生きと再現され、路地裏の音が、生活の匂いが、さては、戦時中の光景までが、浮かんでくるようです。まさに生活の昭和史と言っていいのでしょう。
昔のことなんですが、読んでいて、全然違和感なく、引き込まれていくのは、いかに向田邦子氏が、すごい作家であったことの証なんでしょう。
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幾つかの違う記憶がタイトルに収束され、最後の数行で一つの作品として立ちあがる様が、ホントに素晴らしい。記憶にどっぷりと浸かりたくなる。自分自身の忘れているささやかな記憶を、なんとか思い出して愛でたくなる。
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「エッセイ」という言葉よりも「随筆」という言葉の方がよく似合う名作。一篇一篇が珠玉と言える名品集だ。
最近のエッセイ(まがい)で、このような文章が読めないのが淋しい。
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昭和っぽいけど、でも他人事じゃない感じ、、、
家族それぞれの人間味。あったかい。小さいころあんなことあったなぁ、大人に囲まれて育ったあの頃、あの人は何かんがえてたんだろう、
怒られたり、一緒にいたり。あの会話の時には?あの帰り道では?
あの人は何を考えて、一緒にいてくれたんだろう?私に接してくれてたんだろう?
家族への思いが増す。今思い返すと、子供のころに見えなかったいろんなことが、子供のころの自分の目の記憶を通して見えるような、そんな本です。
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はじめての向田邦子です。
この歳になってようやく向き合い、じっくり読ませていただきました。
とにかくとっても文章が「綺麗」です。
それから構成が絶妙。
この本に出会ってはじめて、これからというときに
逝ってしまったことも知りました。
沢木耕太郎さんの解説ならびに、引用していた「ねずみ花火」が、私にも印象的です。
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初、向田邦子さん。
エッセイってパラッとサラッと読むものだと思ってたけど熟読しました。
黒柳徹子さんの留守電の話には電車の中なのに声をあげて笑ってしまい、東京大空襲のあとの食事の話には涙しました。
たわいない話もこの人にかかれば風景や匂いが想像でき、ずいぶん昔の話なのに身近に感じました。
ずっと手元に置いといて歳をとったらまた読みたいなと思いました。
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エッセイ。知らない誰かの思い出話が詰まった本なので読んでも読まなくてもどっちでもいい。でも退屈せずに読めた。
放送作家の著者が初めて文章を書いたのがこの本らしい。
お父さんが威張り散らしている。会社員だけど同僚が家に来るから接待する。長女より長男を優先する。このあたりが昭和だなと思った。
一つのテーマでいろんな話が出てくる。経験の引き出しの多い人だなと思う。
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【347冊目】脚本家向田邦子さんのエッセイ集。妙齢の女性視点×昭和の家庭生活×戦争中の記憶×一流の表現者=最強のエッセイ爆誕!という感じ。
ひとつの作品に複数のエピソードが詰め込まれており、それぞれの連関は必ずしも明らかでないのですが、なぜかスッキリ読めてしまう。それは文章力の問題だけではなく、生活者・労働者としての視点が現代を生きる私たちとそう離れていないからなのでしょう。海外旅行やら深夜残業やら、多くは現代と地続きの生活風景です。
他方で、東京大空襲の日のエピソードがあったり、トイレに行くことを「ご不浄に行く」と表現したり、昭和の前半の香りがそこかしこに散りばめられているところも読み応えのひとつ。
この現代っぽさとレトロ感の絶妙なミックスが、作品のとても良い味になっており、唯一無二の作品に仕立てあげています。
そして、ここに「家族の物語」という芯がぶっ刺さっていることで、なぜだかぐっと我々読者の心に詰め寄ってくる感じが生まれるんですよね。「父の詫び状」なんてタイトル、どうやったら思いつくんでしょう。これだけで、「あぁ、昭和の頑固な父親が何か失敗したんだな。でも、素直に謝れないから手紙にしたんだろうな。どんな失敗したんだろ?本当に素直に謝れたのかな?どれどれ、最初の一編だけでも読んでみるか…」と、思ってしまいます。
一度開いたらもうおしまい。最後まで時にくすっと、時に深くうなずき、時に胸にツンッと、と色んな感情を味わいながら向田邦子ワールドに引き込まれていきます。
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面白かったり泣けたり。
昭和の家庭では、当然のように父親が一番強くて、特別だった。
怖くて、時に理不尽な存在だった。
先生に叩かれることだって、あった。
それでも、そこにはしっかりと愛情が通っていた。
そんな風景が広がる本。
しかし、よくこんなにいろんなエピソードを持っているなあ、と感心する。
物事をしっかりと感じて捉えて生きてきた人なんだなあ、と、そのさっぱりとした文体から垣間見える人柄に魅かれる。
2006.11.25
私は本を読むのが遅いので、なかなか読み進まなかった。が、それはこの本が面白くなかったということではない。エッセイを読むと、その人の人生に同化するような気がする。経験を共有する、というか。ものを違った角度で見ることができる、というか。向田さんの人柄がにじみ出ているのであろう。とても愉快で、温かい本だった。いばる父と、その父をあたたかく支える母とおばあちゃん。その生活が見えた気がした。
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秀逸なエッセイ。思わず笑みも溢れる。でも、すっと寂しさもよぎる読後感。
個人的には黒柳さんのエピソードが盛り込まれていた「お辞儀」が面白かった。そのなかでも、母を香港旅行に送り出した飛行機の下りの描写が、その後の向田邦子さんの最期につながるようで、なんとも言えない気持ちに見舞われた。
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さすが、お見事、と思ったら、コレエッセイとしては初モノ?ドラマの脚本ではなくての書き物として。
すごく気分良く読めて嬉しい。
解説の人の言うこともよくわかる。
飛行機のことが出てくるとドキッとしてしまうけれそ、書いているときはまさか自分がそんなことになるとは、もちろん想像もしていなかっただろうし、生きていてくれていたら、あれからどんなにまたたくさんの面白い作品を私たちにくれていたんだろうと思うと、返す返すも悔しい。
また向田邦子は読みたい。
日本語学校バザー ¢10
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再読 好きなエッセイの中のひとつ。
昔読んだ時より 父の詫び状が 様々な面から読めた気がするが また年を重ねて読むと 違うんだろうな
鹿児島時代の話が とても好き。時代は、違うが 同じ小学校に通っていたことが 私にとっては、嬉しい。
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時々読みたくなる一冊。
向田邦子さんの文章はとてもきれい。美しい。日本人として触れておきたい文章だと、つくづく思います。
そして何回読んでも、同じところでクスッと笑ったり、ほろっときたり。何気ない会話や文章でつづられる日常に、こうも引き込まれるとは。
実はこの本、義母の蔵書。いい感じにやけた本を手に取ると、それだけで昭和に戻ります。
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著者の切り取ってくる場面に泣かされました。
あとがきの沢木氏の解説にもあるように、
最後に様々な場面が数珠繋ぎの様に結びつき
爽快感と余韻を残します。
Posted by ブクログ
今なお高い人気を誇る放送作家・向田邦子のエッセイ。
身の回りの出来事をきっかけにしてそこから子供時代の思い出に飛躍的に導いて、戦前の情景と共に思い出を静かに、どこかユーモラスに書き綴っている。
様々な思い出やら思うところのものがタイトルテーマに沿ってテンポよく描き出される。
癇性の父親を軸に繰り広げられる暖かみのある家庭の情景を鮮やかに描写して、微笑ましい読後感へと誘ってくれる。
のんびりと本を読んで過ごしたいときにおすすめの一冊。
Posted by ブクログ
時に厳しく時に優しい父、母や妹弟、祖母らの思い出を綴ったエッセイ集。沢木耕太郎氏曰く、「真打ち」と絶賛されたエッセイの最高傑作。著者が幼かった戦中から戦後にかけての、仙台、鹿児島などの生活の一コマがまるで昨日のことのように鮮やかに描写されている。一見無関係に思える出来事が視覚的なシーンとして淡々と現れては消え、関係ないようで最終的には一つのテーマに帰結する。
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向田邦子さんのエッセイ。
幼少のころ、特に家族のことを中心に書かれた
昭和を感じる暖かな作品です。
ここ数年オフロバに文庫を常備して
半身浴のお供に繰り返し読んでます。
Posted by ブクログ
自分も昭和生まれなのに同じ昭和でも戦争前後を経験すると随分違うなとおもしろかった。お父さんのむちゃくちゃぶり、今じゃ絶対受け入れられない気がするけど、当時は典型だったようだ。各地方のおいしいもの。子どものときはおいしいものは本当においしかったな。
Posted by ブクログ
庶民の日常史の一つというところでしょうか?正直に言って現実感が持てないのですが、時代は大きく変わっているということの証かと。それこそこんなの今だったらニュースになりそうな話もあるけれども(まぁニュースになること自体おかしいというレベルの話もありますけれども)。
それにしてもどのエッセイにも死の影が漂うのは意図したものなのか、はたまたこの作家の個性なのか、判断しかねるところですが、凄みは間違いなくあります。簡単に読める読み物ではなく、ゆっくり味わい、余韻に浸るエッセイかと思われ。
Posted by ブクログ
なんとなく、有名っぽいので読んでみた
向田邦子さんって人は何した人かも知らず
解説よんでびっくりした
けっこう面白くて、それなりに共感したり、なんか向田さんという人のことをちょっとわかってる感覚で読んでたから、(けっこう前だけど><)突然死んじゃったって知ってびっくりした・・
戦時中のこととか、不条理なお父さんのこととか
おもしろかった。