五十嵐貴久のレビュー一覧
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女性消防士・神谷夏美シリーズは、前2作が70年代のパニック映画へのオマージュなのに対し、この第3弾は新宿の喫茶店で打ち合わせの際、担当編集者の一言から生まれた作品とか。
「『大きな嘘』をつくためには『細部をリアル』にしなければならない」との著者のこだわりが遺憾なく発揮され、新宿地下街がリアルに描かれている。
現代ものではネット関連が必須であり、本書でも犯行のきっかけはグループLINE。
複数犯による犯行で、地下街のあちこちで出火し、地元消防署のみでは手が足りず、夏美が所属するギンイチも出動に。
地下街ゆえの凄まじい火災状況に、前作まで活躍していた消防士たちが次々と犠牲になる事態に。
シリーズも -
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キャリアとして警察庁に入庁し、警視庁特殊班第一係に配属された女性捜査官を描いた警察サスペンス。シリーズ第1作。
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キャリア採用の麻衣子は生活安全局に配属予定だったが、男女雇用機会均等法の煽りで刑事部特殊班第一係に配属変更されてしまった。
当初は形だけの要素が強かった麻衣子の評価は交渉人研修で一変した。受講者中ダントツで優秀な成績を修めたのが麻衣子だったからだ。
自然な流れとして麻衣子の特殊班第一係配属が正式に決定。麻衣子はネゴシエーターとして本格的に訓練を受けることになった。
訓練を担当するのが、麻衣子の上司で交渉のエキスパートでもある石田修平警視。石田の知 -
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五十嵐貴久『バイター』光文社文庫。
ゾンビ・パニック冒険小説。『タワーリング・インフェルノ』『ポセイドン・アドベンチャー』の次は『ゾンビ』への挑戦か。
映画などでは何の説明もなく突如としてゾンビが現れて人間を襲うのだが、本作では冒頭に人間がゾンビに変貌した理由やゾンビの弱点などの設定がしっかりと描かれている。
『ブラッド・セブン』というネーミングには少々笑ってしまったが、息苦しいくらいのスリリングな展開に手に汗握る。夢中になって読んでいると、背後から『バイター』に襲われるのではないかとびくびくしてしまう。
結末に救いの無いのが、残念なのだが、多くの『ゾンビ』映画も救いの無い結末であるこ -
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3部作で終わったはずだった神谷夏美シリーズの新作が出て、びっくり!
ずっと続いて欲しいシリーズだったけど、いろんな思いがあり、3部で終わると最終作のあとがきにあったが、今作は最終作の続編ではなく、夏美がギンイチに選ばれるまでの前日譚。
各消防署から選ばれた先鋭達が、厳しい研修を受けて、ギンイチの一員になるまでを描く。
小柄で体力のない夏美に、他の各隊員たちの目線は冷たい。
しかし、現場で発揮される諦めない夏美の姿に段々と隊員たちの気持ちが変化していく。
「命の砦」で誰よりも命をかけていた夏美の弱々しい時代の頃のエピソードが読めて、とても嬉しかった。 -
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日進月歩どころか分進秒歩ともいわれる現在、身のまわの物を扱った現代ものの小説などは、数年で陳腐なものになってしまう。
携帯電話の、ガラケーからスマホへの変化など、その極みだろう。特にミステリーなどで、通信手段として重要な場面で使われると、違和感が際立つ。
そんな思いから、著者は2002年発表の思い入れのある作品『交渉人』を大幅に改稿し、『交渉人・遠野麻衣子』と改題し、河出文庫で刊行。
『交渉人』を読んだのは、16年も前であり、その幻冬舎文庫版を拾い読みしながら、本書を<再読>。
本文が445頁だった幻冬舎文庫版に比し、この河出文庫版は345頁と、冗長だった箇所が割愛され、スピーディ感が増してい