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Posted by ブクログ
病院で発生した立てこもり事件。交渉人・遠野麻衣子は、人質救出のため犯人との対話に臨む。しかし事件は、単純な立てこもりでは終わらず、思いもよらぬ方向へ転がっていく。
ネゴシエートもの、立てこもりものの面白さは、動機の見えない犯人と交渉人が言葉を交わしながら、少しずつ相手の本音や事件の輪郭が見えてくるところにあると思う。
序盤は、犯人との探り合いよりも、石田の組み立てた流れに物語が乗っていく印象があった。だからこそ中盤以降、その流れが揺らぎ始めてからの展開が一気に面白くなる。
物語は交渉劇から、「何が起きているのか」を追うミステリーへと顔つきを変えていく。理解不能だった出来事に意味が生まれ、散りばめられていた伏線が次々と繋がっていく快感。そして、それまで見えていた構図が反転していく面白さ。気づけばページをめくる手が止まらなくなっていた。
読み終えて強く感じたのは、これは麻衣子だけの再スタートの物語ではないということ。それぞれが一度どこかで立場や役割を失いながらも、再び前を向こうとする物語でもあったように思う。
また、犯人の動機も単純な善悪では割り切れない。その背景にある苦悩や葛藤には考えさせられるものがあった。
伏線が繋がる快感や形勢逆転の面白さを備えたエンターテインメントでありながら、最後には「人は何によって追い詰められ、何によって立ち直るのか」を考えさせられる。そんな読後感の残る一冊だった。
とても面白かった。遠野麻衣子のこれからを追いかけたい。
Posted by ブクログ
五十嵐貴久『交渉人・遠野麻衣子』河出文庫。
既読であるが、大幅改稿、改題の上、復刊ということで、再読。親本は2006年に幻冬舎文庫から刊行されている。
再読しても、なお面白い。二転三転するストーリーと意外な結末。
終盤まで主人公であるはずの遠野麻衣子は余り活躍しない。何故なら麻衣子の教育係だった石田が犯人との交渉の矢面に立つからだ。まるで麻衣子はオマケのような扱いだ。しかし、ここに事件の全貌に関わる鍵があるのだ。そして、終盤の麻衣子の推理と行動に驚かされる。
シリーズは4ヶ月連続刊行されるようだ。楽しみは続く。
警視庁で交渉人の教育を受けていた遠野麻衣子は教育係の石田修平警視との不倫の噂を流され、不条理にも所轄の高輪署の経理課に左遷される。
それから2年。経理課での激務を終え、自宅で寛いでいた麻衣子に臨場要請が入る。
コンビニで強盗を働いた3人組の男が車で逃走、小出総合病院に逃げ込み、50人もの人質を取り、立て籠ったのだ。この事件に対応するため、麻衣子の臨場を要請したのはかつて教育係を担当していた石田だった。
本体価格840円
★★★★★
Posted by ブクログ
2023年発行だが。2002年初出?の作品を現在の状況に合うように、大幅改稿したものだそうです。
遠野麻衣子は、かって警視庁で石田修平警視に、交渉人としての教育を受けていたが、石田警視との不倫の噂を流され、左遷されてしまった。
所轄の経理という畑違いの多忙で退屈な職務。
ところが、ある日。臨場要請を受ける。
コンビニ強盗を働いた3人組が病院に立てこもり、患者やスタッフ50人を人質に取ったのだった。
麻衣子の職場から近いために白羽の矢が立ったのだが。推薦したのは、石田警視。
彼らが到着するまでの時間を託された。
現場には、交渉人の知識が全くない警官が、絶対してはいけないことをやらかすという…ありがちな危機も乗り越えて、事態をいい方向へ収められるか?
緊迫した状況で話は進み、石田警視も登場。
そして、麻衣子の推理は…?
さくさくと読めて、面白かったです☆
Posted by ブクログ
面白かった。
凄腕のネゴシエーターの石田。その石田に教わりメキメキと力をつけていた遠野。 遠野は石田に淡い恋心を抱いていた。
その石田との不倫疑惑で所轄の会計課に飛ばされていた遠野。
そんな中コンビニ強盗事件が発生し、犯人三人は病院に立てこもる。
ネゴシエーター石田が到着する前のつなぎとして犯人との交渉の矢面に立たされた遠野。
石田登場まで必死につなぐ。そこに石田登場。犯人との距離をどんどん詰めて色々な情報を引き出す。
石田すげーとなる中、最終局面で人質が2人殺され、え!? 石田失敗?失脚?みたいな流れになるが、そこからの真相に驚かされる。
身内の医療過誤、ミスに対する復讐が真相。 自分も義理の祖母の件を思い出して、悔しい思いが蘇ってきた。
Posted by ブクログ
キャリアとして警察庁に入庁し、警視庁特殊班第一係に配属された女性捜査官を描いた警察サスペンス。シリーズ第1作。
◇
キャリア採用の麻衣子は生活安全局に配属予定だったが、男女雇用機会均等法の煽りで刑事部特殊班第一係に配属変更されてしまった。
当初は形だけの要素が強かった麻衣子の評価は交渉人研修で一変した。受講者中ダントツで優秀な成績を修めたのが麻衣子だったからだ。
自然な流れとして麻衣子の特殊班第一係配属が正式に決定。麻衣子はネゴシエーターとして本格的に訓練を受けることになった。
訓練を担当するのが、麻衣子の上司で交渉のエキスパートでもある石田修平警視。石田の知見と麻衣子の能力から考えて、訓練はスムーズに進むと見られていた。
ところが、麻衣子の抜擢を妬んだ同僚から「石田と麻衣子が男女の関係にある」という噂が流され、上層部もそれがただの中傷誹謗であることを承知しながら、麻衣子の更迭を決定した。
こうして麻衣子は所轄の高輪署に異動させられ、経理課で精算伝票処理という閑職に置かれることになった。
やがて年月は過ぎ、経理課勤務のまま麻衣子が27 歳になったとき、その事件は起きた。(「プロローグ」) ※本編4章とプロローグからなる。
* * * * *
キャリア入庁でありながら左遷の憂き目に遭い、5年間も所轄署の経理課員に留め置かれている麻衣子がいかにして本庁の特殊班に復帰するのか。そして試金石となる今回の事件に臨む麻衣子のスキルは錆びついていないのか。そんなことを気にしながら読み進めました。
全体的によく考えられたストーリーで楽しめました。
事件が高輪署管内で起き、本庁の特殊班がすぐに動ける状況にないことから、つなぎで捜査の指揮を執るよう指令を受けたというのは無理のない設定です。現場経験がないとはいえ警部の麻衣子は指揮権を有しているからです。
また、麻衣子が女性であるというだけで反発する男性警察官たちに麻衣子が苦労する場面もリアリティがありました。 ( 男社会の警察組織に色濃く残る女性蔑視の風潮に嫌気がさした知人の女性が、40代で警察を退職して別の道に進んだことを思い出しました。)
麻衣子の交渉相手は粗暴なだけの立てこもり犯だと思っていたので、後半に見せた警察を出し抜く動きには驚いたし、五十嵐さんの仕掛けにしてやられた感がしてうれしくなりました。
そして、麻衣子が謎解きをするクライマックス。なるほど、そう来たかと唸ってしまう展開は満足度を高めてくれました。
ネゴシエーターを扱った作品ということなのでダイナミックさに欠けるかもと思いましたが、どうしてどうして。手に汗握る極上のサスペンスミステリーでした。なかなかおもしろかったです!
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