五十嵐貴久のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
叔母と私の2つの時間軸が交互につづられるかたちで物語が進む。
特に叔母が過ごした1980年代については、高校生活の出来事、会話の間合いなんかが本当にリアルで引き込まれる。江ノ島まで男女10人で遠出したり、進路をこっそり話し合う雰囲気、卒業式後の同級生の挙動など。ああこんな感じだったなと自分の忘れていた高校生活が再びなぞられ、思い返せば楽しいこともいろいろあったなと幸せな気持ちになる。それもイヤな奴が出てこないおかげか、優しい気持ちに浸れて心地いい。
友人関係など自分の近辺で感じることは現代と同じようなものだけど、日韓の関係性というもう少し広い世界に目を向けるとその時代の空気が今とは異なることも興味深い。在日朝鮮人、帰化、世代による価値観の違い、今より生きにくい時代だったろうなと。
物語終盤は、叔母と私それぞれの物語がまさかつながるとは、、!って感じ。ちょっと強引な気もするかな。
ミステリーというよりかは、学生時代の懐かしさにほっこりしたいときに読みたい。 -
Posted by ブクログ
五十嵐貴久『命の砦』祥伝社文庫。
女性消防士・神谷夏美シリーズ第3弾。
余りにも救いの無い結末には愕然とした。なかなか消火活動や救命のシーンが描かれず、消防署組織のゴタゴタばかりが続き、読んでいて気持ちが焦れる。挙げ句、マグネシウム火災の怖さばかりがクローズアップされるのだ。
しかし、こういう無差別テロは何時起きてもおかしくない時代だということも心に留めておきたい。
クリスマスイブの夕方、多くの人びとで賑わう新宿駅地下街が何者かによる同時多発的に放火される。迷路のような地下街はたちまち火の海となり、数万人が閉じ込められる。
銀座第一消防署の消防士・神谷夏美は、同僚や知人との楽しい夜を過ごそうとしていた中、非常招集で呼び戻される。新宿駅地下街に突入する夏美ら銀座第一消防署の消防士たちに新たな問題が立ちはだかる。
地下街には販売用に大量のマグネシウム筺体のパソコンやゲーム機が置かれており、高温に曝されたマグネシウムと水との化学反応で大爆発が起きる可能性があったのだ。
万策尽きた夏美の決断は……
本体価格920円
★★★★ -
Posted by ブクログ
ネタバレ感想
話の展開のテンポが良く、読みやすい。探偵社には七人の探偵がいるが、色々な個性を持つ人がいることや社長である金城も謎めいていて今後のシリーズも期待できそう。
あらすじ
最大手のトヨカワ自動車に勤めていた雅彦は、社内での営業成績が振るわず悶々とした毎日を送っていた。そんなある日、金城という私立探偵から突然、探偵をやってみないかと誘われる。
お試しで探偵を始めた雅彦であったが、探偵社が抱えていた案件に参加することになる。刑事から、有名私立中学で、女子生徒が複数の男性と関係を持っているという告発を調べることになった。
さらにその生徒が同じ学校の教師とも関係を持っていることを調査するが、その教師が殺されてしまう。教師は複数の生徒にイタズラした形跡があり、関係する生徒を守りつつ、事件の謎を追う。 -
Posted by ブクログ
何作か集中的にボクシング関係の小説を読んでますが、女性ボクサーの物語は初めてです。映画だと『ミリオンダラー・ベイビー』はよかったなぁ。(すぐ話が逸れる!)
展開はベタで解りやすく、とても読みやすい物語でした。DVにより身の危険を感じるまでになった夫から逃れ、苗字・住所・仕事を変えて娘と共に再出発した33歳の愛。職場の同僚の付き合いで、やむなく始めたボクササイズでしたが、次第に熱中していきます。本格的なボクシング、ライセンス取得、デビュー、タイトル戦へと変容し、主人公の身近で飾らない姿が描かれます。
なぜそこまでするのか? 何事にも自信をもてない愛にとって、自分にもできることがあると胸を張りたい、何かができることを証明したい、という一心なのでした。全ては自分の中の誇りのため‥。
そんな熱意は周囲をも動かしていきます。拒み続けたトレーナーもコーチを引き受け、周りに応援され、助けられ、期待されながら、感謝の気持ちが湧き上がってきます。こんな展開に読み手も勇気をもらい、手に汗握って全力で応援したくなります。
立派な理由じゃなくても、何かを変えようと動き出し、さらに逆境や困難があっても自分に負けたくないという姿勢は、共感度マックスでした。 -
Posted by ブクログ
水野忠邦による天保の改革の尻馬に乗り、苛烈な取り締まりを行った、妖怪の異名を取る鳥居耀蔵。
南町奉行に収まった彼は、富くじの裏で陰富を行い、百万両を貯め込み、ひたすら金に執着している。
彼の仕打ちにより、肉親をあるいは職場を失った者たちが、鳥居が溜め込んだ金を残らず奪おうと計画を企てる。
父を切腹に追いやられた矢部鶴松。
江戸から追放された七代目市川團十郎。
高座を潰された立川談志。
発禁処分を受け、酒に溺れて亡くなった読み本作家の娘お葉。
この4人が繰り広げる命を賭けた騙し合いに、痛快感爆発。
腕もたつし、機転が利くが、どこか抜けているところがある鶴松のキャラがいい。
「黙って耐えてた方が得なのは百も承知よ。何でもお上の言うとおりに致しますって頭を下げてりゃ、とりあえず命だけは何とかなるだろう。だがな、おれたちはそんなことに飽き飽きしてるんだ。鳥居に生かされるんじゃなく、死ぬも生きるも、てめえで決めてえんだよ」と、啖呵を切る團十郎の何と粋なことか。
巻末の参考文献が明かすように、あの時代を空気をしっかりと読み込んだ痛快エンターテイメント。