鈴木恵のレビュー一覧
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「顧客がブルターニュからリヒテンシュタインに行きたがっているんだが。それを望まない連中がいる。ドンパチもありうる。連れていってやってくれないか?」SOEの元工作員ルイス・ケイン(キャントン)が、パリの弁護士アンリ・メルランから依頼を受けるところから物語は始まる。アル中(dips)のボディガードのハーヴィー・ラヴェルとのコンビで富豪の顧客マガンハルトを守りリヒテンシュタインへのドライブ中、行く手を阻もうとする敵が幾重にも待ち構える。二人はそれぞれに過去の心の傷を抱えているが、プロフェッショナルとして命懸けで使命感を果たそうとする。ドライユーモアを含むテンポのいい会話や、名車、銃などのスペックも楽しめ、映画を見ているような一冊でした。
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ネタバレ「チェーン」は終わらない。
レビュー
プロットが素晴らしいの一言に尽きる。
誘拐犯の子どもは別の誘拐犯に攫われていて、その誘拐犯のもまた別の誘拐犯に攫われ、という、無数に繋がるチェーンという設定自体が秀逸だ。そして、そのシステムの性質上、自分の誘拐だけでなく、繋いだ先の誘拐の成否すら責任を負わなければならない。(会社で人事部のあなたが誰かを採用して、その採用した誰かが採用した人が問題を起こしたら、あなたまでその責任を追及されるということだ。)
この鎖は単なる誘拐連鎖ではなく、システムに組み込まれた時点で、その当事者の身体、そして精神を縛る鎖だ。我が子への愛を担保に繋がっていく。
レイチェルの決断力、カイリーの勇敢な脱出未遂、ピートの協力、誘拐した子どものアレルギー反応など、どれもが予想外であり興奮する要素になっていて、ページをめくる手が止まらなかった。
そして、カイリーとの邂逅も束の間、次のミッションも難儀を極めそうで、非常に楽しみだ。
余談
チェーンといえば、作中にも出てくる「暗号通貨」の技術である「ブロックチェーン」。これは分散システムであり、中央集権的なシステムでないからこそ、改竄を防ぎ、確実な追跡を可能にするものだ。この物語はきっと、この技術の特性を理解して、そこから着想を広げたのではないだろうか。 -
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そこで銃が撃たれたのは天地創造以来初めてだったのだろう
描写つまり心情描写、風景描写などとても繊細かつ鮮明で、読者である私たちがその場にいるような疑似体験をさせられるリアル感がある
デフォーはこのような冒険に出たことあるのかと思うくらい生き生きと表現するので、300年近く金字塔であるのは疑うまでもない
理性的な精神を持つことに意識をしたり
置かれた環境に感情的ときには感傷的になりつつも
一人で気持ちを持ち直している
ーわたしはこの点の配剤を受け容れた。いっさいは最善となるように定められていると考えを認め、信じるようになっていたからである。とにかくそう考えて心を沈め、あそこへ行けたらという無益な思いで自分を悩ますのはやめた
ー足跡を発見する
驚愕のあまりわたしは雷にでも打たれたか、はたまた幽霊でも見たかのように、その場に立ちすくんだ。 -
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★5 ギャングからの逃避行、愛する娘を守るため、命を懸ける父親の熱い想いと行動… #拳銃使いの娘
■きっと読みたくなるレビュー
熱く、素敵な話やった… ★5
少女ポリーが可愛すぎて尊い。
金星生まれの設定やぬいぐるみに自分に投影したりするなどして、いつも微妙な精神バランスをはかって、自らの境遇を受けいれている。それでも彼女には、生き物として生死の覚悟をしなければならない場面が次々と迫ってくる。
決して多くを語らず、ぐっと歯を食いしばんで強い意思をもって勇気のある決断していく。読めば読むほど胸が苦しくなっていくよ…
読んでいる最中は、なぜこんな父親と一緒にいるのか、どうしても理解できなかった。しかし読み進めていくうちに、その理由と正体がだんだんわかってくる。
それは父親ネイトの娘を想う気持ち。
娘のためにすべてを投げ売り、自分がもつすべて技術や能力を分け与え、どんな犠牲を払ってでも娘の命だけは守る。彼は最初から最後まで、一切ぶれない。これは子どもをもつ親としては熱すぎる。
本書はとにかくこの二人の絆、会話、行動、成長に尽きる。
何度も襲い掛かる絶体絶命の危機。いつも父親が娘をひっぱり、時には体をはって守る。娘は父の安否を気遣い、やったことのないことに挑んでいく。それがたとえ汚れた仕事や暴力であっても、二人とも覚悟をもって突き進む。
決して強くはない、むしろ何も持っていない二人であるが、彼らの命を懸けた行動のひとつひとつが、読者の魂を揺さぶってくるのです。
なお本作はプロットが上手で、文章も読みやすく、それでいて文芸的で綺麗。エンタメとしても優れ、そのまま映画になっちゃう。
しかもページ数もそれほど多くなく、バランスも抜群。海外ミステリーに読みなれてない人でも手軽に楽しめる優秀な作品でした。
■ぜっさん推しポイント
良い作品には記憶に刻まれる名シーンがある。
終盤にポリーが躍動する場面があるんですが、これが超痺れるんですよ…
緊張感とリアルさ、そしてポリーが自信の弱さを乗り越えていく心の叫び。
これは歴史に残る名シーンです。これを堪能するだけでも、読む価値がありますので、ぜひぜひ体験してみてください。 -
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ネタバレ海外ドラマ「メンタリスト」の脚本家であるジョーダンハーパーの初作品。「メンタリスト」好きだったなぁ。。。
で、本作はミステリというより冒険小説。主人公は父親ネイトと、娘のポリーと熊(ぬいぐるみ)。
ネイトが牢獄内でギャングのボスの弟を殺してしまったため、自分だけでなく元妻と娘ポリーまで処刑対象に。出所後すでに元妻が殺されていたため、誘拐のようにポリーと逃げることに。逃避行の道すがら、成長していくポリーと父親との関係。
短い小説ながら、とんでもなく良かった。
あと、熊のぬいぐるみ、キャラが濃すぎる笑
他の作品も読みたいけど、書いてなさそう?
ポケミスって一品物の良作が多いから一度集め始めると止まらないんだよなぁ。。。 -
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ネタバレこれは面白い試み。唯一無二。
”作中作が7つ"という触れ込みばかりが耳に残っており、どんな話なのだろうと思っていたら、まさかのミステリ談義もの。
形式的には、地中海の小島にひっそりと住むグラント・マカリスターが過去一作のみ私家版として出版した『ホワイトの殺人事件集』を、正式に出版したいと一人の編集者ジュリア・ハートがグラントのもとを訪れ、そこに編纂された7つの短編を読み返しながら、1作ごとにその作品の意義を対話していくというもの。
その対話で繰り広げられるミステリ論が、グラントの言うところの”殺人ミステリ”の構成条件とでも言うべきもので大変に興味深い。
登場人物を被害者、容疑者、探偵、犯人のグループに定義し、集合論を用いて数学的に分解する。
作中作として提示されるのは、その構成が極端な例を主としており、登場人物=容疑者が2人で犯人が1人の場合(どちらかが犯人。お互いはどちらが犯人かわかっている。知らぬは読者ばかり。)、容疑者グループと犯人が完全に重なる場合(そう、あの急行列車パターン!)、容疑者グループと被害者が完全に重なる場合(こちらはあの島の事件パターン)、などなど。
そして、ミステリ構成談義が縦糸ならば横糸としてあるのが、グラントとジュリアの現実世界で起きたとされる”ホワイト殺人事件”。
タイトルまでも似通っている『ホワイトの殺人事件集』に編纂されている7作にはこの事件を想起させる、偶然とは思えない記述が散りばめられている。
グラントは”ホワイト殺人事件”と関わりがあるのか!?
この作品は2022年度、このミス海外部門10位。
1位は『ヨルガオ殺人事件』、8位に『木曜殺人クラブ』のクラシックミステリオマージュ作品が。
また、2位に『自由研究には向かない殺人』、7位には『彼と彼女の衝撃の衝撃の瞬間』と豊作の年の年度ゆえ、このポジションに甘んじているが、ポテンシャルはもっと上。
クリスティーオマージュを含みながらも、リバイバルのベクトルとは一線を画す試みにただただ脱帽の一冊。 -
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ギャングに命を狙われた少女と父親の逃避行。
ノワールですが、面白いです。
11歳の少女ポリーは、母親とその再婚相手と暮らしていました。
父親は何年も収監中。
ところがある日突然父親が現れ、命を狙われているから一緒に来いと告げます。
刑務所にいた父のネイトは、ギャング組織の親玉に睨まれ、家族ともども抹殺指令が出たため、脱獄してきたのだ。
妻がとっくに再婚した相手と暮らしている娘のことなど、あまり気にかけてはいなかったのだが。
父と同じ淡い青色の眼をしたポリー。
「拳銃使いの眼よ」と母親には言われていました。
互いに馴染のなかった父と娘が危機に瀕してやむなく行動を共にし、次第に気が合う相棒となっていくロードノヴェル。
常識を超えた状況ではあるが、その関係性に心温まります。
暗殺指令を覆すために、どういう手段をとるか?
熊のぬいぐるみを離さない女の子は次第に度胸を身につけ、変貌していきます。
そして…?
アメリカ探偵作家クラブ賞(エドガー賞)新人賞受賞作。
スピーディな展開で、読ませます。 -
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ミステリ短篇集「ホワイトの殺人事件集」を著した後隠棲した作家を追って、彼のもとへ訪れた編集者。その本を復刊するために、短篇のひとつひとつを読み返し考察していく二人。しかしそれぞれの作品に潜む不自然な矛盾点と謎。いったい物語はどこへ向かうのか。ミステリの楽しさがこれでもかというほどに詰め込まれた一冊です。
作中作のミステリの数々が楽しいです。どれもが王道のように見えて変則的でひねくれた作品が多いです。仕込まれた矛盾点も気になるし(自力ではなかなか気づけませんでした)、なんとなく据わりの悪い気がする結末もそれはそれで魅力的。なのだけれどまさか……ああ、これ以上は語れない! 言うべきことは、この本が一度で二度も三度も美味しいミステリだってことです。
作中作では「青真珠島事件」がお気に入り。なんといってもあれがモチーフですし。罠の数々も邪悪で素敵です。 -
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何度読んでも魂が震える。菊池光の訳も良かったが今回の新訳も良い。話が良いんだから当然だ。15年前の戦争で特殊部隊で名を上げたキャントンことドライバーのケインは、弁護士メルランの依頼で、シンプルな仕事を引き受けた。マガンハルトという実業家を大西洋岸からフランス、スイスを横断してリヒテンシュタインへ約束の日時までに車で送り届けるというものだった。しかし、マガンハルトはフランス警察に追われ命を狙う者たちもいるからと、アル中のガンマン、ハーヴィーが雇われた。そしてマガンハルトの連れて来た美人秘書の4人で車に乗り込んだ。派手なアクション、駆け引き、一か八かの賭け。アルコールに逃げ出したくなる極度の緊張と逃げ、セクシャルで魅力的な女、庶民とは違う価値観に生きる実業家、ケインの過去に関わってきたレジスタンスの仲間たち。ケインは命を狙う側ではなく狙われる男の側にいることに義を感じる。時に弱さを見せながらもプロとしての覚悟が上廻る。葉隠の武士道のような死の覚悟を照れで隠しながら、常に甘えず頼らず自分の足で立ち、やり遂げる。そしてラストのどんでん返し。マガンハルトの命を狙っていた男の謎が明かされケリをつける。無駄のない文章、科白と動き。共に戦った信頼が生んだ男たちの友情。最後まで痺れっぱなし。