鈴木恵のレビュー一覧
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翻訳ミステリの多国籍化がすっかり歓迎ムードになっている昨今。英米の小説よりももしかしたら売れ行きがいいのではないか、とさえ思わせる北欧ミステリの世界的な台頭はやはり目立つ。
その中でも異色の作家ジョー・ネスボ。主人公の個性を大切にする傾向が強い北欧作家の中でも、強烈なオリジナリティを持たせるジョー・ネスボ。本作はネスボらしからぬ薄い一冊で、中編と呼んでも過言ではないほどの<ポケミス>ぶりだ。
そして数多くのパルプノワールが傑作を生み出してきたように、作品の長さではなく、詩のように語られ、詩のように生き、詩のように死んでゆく薄手の作品は、今日も、いつの世でも、どこの地でも好まれる傾向に -
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ネタバレ[監督,脚本,主演,大統領]先日のアメリカ大統領選で革命的とも言える勝利を収めたドナルド・トランプ次期大統領。その生い立ちから,共和党全国大会における大統領選候補の指名受諾までを追ったワシントン・ポスト取材班による力作です。計20人以上の記者を投入し,謎とブランドによるヴェールに包まれた次期米国大統領の生涯と世界観を明らかにしていきます。訳者は,野中香方子,池村千秋ら5名の翻訳家。原題は,『Trump Revealed: An American Journey of Ambition, Ego, Money and Power』。
2016年を飾る人物を評した2016年を飾る1冊。「不動産王 -
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「特捜部Q」シリーズが人気のデンマークの作家、オールスン。
じつはこれがデビュー作とは。
重厚でスリルあふれる作品です。
第二次大戦中。
英国軍パイロットのブライアンとジェイムズは、ドイツに不時着。
必死で逃げ延びて列車に飛び乗り、重症のナチス将校になりすますことに。
搬送先は「アルファベット・ハウス」と呼ばれる精神病院で、戦争神経症の患者が集まっていた。
そこに実は悪徳将校の4人組も病気のふりをして紛れ込んでいて、互いに見張り疑う息詰まるような生活が始まる。
やがてブライアンだけが命がけで脱走しましたが‥
ブライアンはジェイムズを捜しますが、行方は知れないまま。
医師として成功し、オリン -
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冒頭の1ページからラスト1行まで痺れる小説など滅多にあるものではない。冒険小説の名作として散々語り継がれてきた「深夜プラス1」だが、読者が年齢を重ねる程に味わい方も深くなる大人のためのエンターテイメント小説であり、陶酔感でいえば当代随一であろう。優れた作家のみが成し得る唯一無二の世界へとどっぷりと嵌り、惜しくも最終ページへと辿り着いたあとは、軽い恍惚感と心地良い余韻にしばし浸る。他の作品では今ひとつ精彩が無いギャビン・ライアルが遺した奇跡のような「深夜プラス1」。発表は1965年。新訳を機に再読する。
第二次大戦終結から二十年後。元レジスタンスの闘士ルイス・ケインは、無実の罪で警察に追われ -
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ネタバレ戦争に赴く若き兵士たちと、戦地での悪夢のような体験。戦争を挟んで、30年後出会った幼な馴染みは、地獄のような体験により狂気という犠牲を払って待っていた。
ひどく簡単に本書の概要を記すとこうなるが、こうしてみると1970年代に劇場で観た強烈なベトナム映画『ディア・ハンター』を思い出す。主役のロバート・デ・ニーロとその周りを固める同郷の戦友たちの物語であって、ベトナムという地獄がもたらした人間性破壊の悲劇でもあった故に、若かった魂を心底揺すぶられた作品である。
本書は、あのディア・ハンターが持つ細密で長大な描写に近いディテール力を持つ。映画『ディア・ハンター』は、徴兵前夜の若者たちの一日 -
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「ニューヨークのとある分署の刑事班」の「ある夜の出来事」を淡々と描く様子から起こる物語…夏の終わり頃から雪が降り頻るまでの数ヶ月に及ぶ物語である…「ある夜の出来事」が不思議な繋がりを帯び始め、ニックの心境の変化、ニックとエスポとの関係の変化、ニックの周辺の人々が描かれる…
誰しも、「ある夜の出来事」で自殺らしい遺体と射殺された遺体とに一度に出くわす程に激しい状況で暮らしている訳でも無いであろうが、それでも物語を通じて描かれる「ニックの憂鬱」のようなものには、「仄かな心当たり」が在るような気がする…「手が込んでいる」という印象は薄い他方で「如何にも何処かに在りそう」という按配のリアルで渋い物語 -
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クリス・ウィタカー『われら闇より天を見る 下』ハヤカワ文庫。
最後には全てが明かされる。上巻を読み、ダッチェスと弟のロビンの父親は誰なのかということが心に引っ掛かっていたのだが、やはりこれが物語の核心につながる訳かと納得。
上下巻を読み終えて、国内ミステリーのランキングを総ナメするだけの作品ではないように思った。警察ミステリーにしても、法定ミステリーにしても中途半端で、散りばめられた伏線の答えも明確には描かれず、消化不良という感じなのだ。
モンタナ州に住む母方の祖父のハルに引き取られたダッチェスとロビンは少しずつ新しい環境にも慣れていく。特に最初はハルに激しく反抗していたダッチェスもハ -
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クリス・ウィタカー『われら闇より天を見る 上』ハヤカワ文庫。
2023年本屋大賞翻訳小説部門第1位を始め、各ミステリーランキングで1位を獲得した作品の文庫化。
読んでみたが、そこまで評価が高いかなと首をひねるばかり。
ストーリーは至って単純なのだが、なかなか全貌は描かれず、小出し小出しで少しずつ過去の事件や人間模様が描かれる。
恐らく30年前の事件で、主要人物の1人であるダッチェスの母親の妹のシシーを殺害したのは、もう1人の主要人物であるウォークの幼なじみであるヴィンセントであった推測されるのだが、判然としない。
また、ダッチェスと弟のロビンの父親は誰なのか、これも謎のままにゆっくり -
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ネタバレ2025年の43、44冊目は、クリス・ウィタカーの「われら闇より天を見る」です。2021年のゴールドダガー賞受賞作です。読む予定は有りませでしたが、文庫化されたのを期に読む事にしました。
あたかも大河ドラマのような小説だと思います。
無法者を自称する主人公のダッチェスの苛烈な人生が、これでもかと描かれて行きます。ダッチェスは、幼い弟ロビンや母親スターを守る為、世間に立ち向い続けますが、余りにも残酷な運命が幾重にも待ち受けています。
ミステリーに重きを置いていないと言われればそれまでですが、気になる所がいくつか有りました。その点が有ったとしても充分、満足出来るとは思いますが。
全ては、ダッチェス -
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“貧乏で暴力的な”アメリカの片田舎アラバマ州「グレイス」の上空に、厚い雲とともに嵐の足音が忍び寄る。
そこで暮らすノアとパーヴ、辛い境遇の二人にとって、“ここで生きる”は他の人より困難なこと。
もう一人、双子の妹レインはノアとパーヴととともに、優等生の姉サマーの失踪の謎を探る。
これは、この三人の物語
貧困、暴力、過激な信仰心、妊娠中絶、アルコール中毒など、アメリカ社会の問題を背景にしているのは、前作「我らは闇より天を見る」同様で、主人公のひとりレインは前作のダッチェスと被る。
少し読むのに人物整理が大変だが、ノアとパーヴがとてもいい。
「おれたちゃ勇猛」
「おれたちゃ果敢」
がんばれっ -
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子どもの頃に児童文学全集に入っていた一冊として読んで以来の再読。こんなに波瀾万丈でメンタル激強な主人公だったとは。鳥がいたなぁとか曖昧で断片的な記憶しかなく、その記憶との答え合わせができたのはほんの一部。大人になってしっかり読むととにかくロビンソンすごい。
愚痴る泣く落ち込む、でも結構すぐ立ち直る。生き抜く気力と工夫。どんな目にあっても何度でも立ち上がれるのがすごいよ、ロビンソン。
1719年の出版ということもあって、差別的な考え方など引っかかるところは当然出てくるけれど、特に前半の島での生活を築いていく部分は冒険物語としてとても面白く読みました。
トム・ハンクス主演の漂流映画「キャスト・アウ