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ポケミス一九〇〇番記念作品。第二次大戦中、戦地で相棒と生き別れになった英国軍パイロットは、友の行方を探してドイツを再び訪れる。だがナチ残党の魔手が! 著作が全世界で一千万部突破! 「特捜部Q」作者による傑作小説。
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Posted by ブクログ
「特捜部Q」シリーズが人気のデンマークの作家、オールスン。 じつはこれがデビュー作とは。 重厚でスリルあふれる作品です。 第二次大戦中。 英国軍パイロットのブライアンとジェイムズは、ドイツに不時着。 必死で逃げ延びて列車に飛び乗り、重症のナチス将校になりすますことに。 搬送先は「アルファベット・ハ...続きを読むウス」と呼ばれる精神病院で、戦争神経症の患者が集まっていた。 そこに実は悪徳将校の4人組も病気のふりをして紛れ込んでいて、互いに見張り疑う息詰まるような生活が始まる。 やがてブライアンだけが命がけで脱走しましたが‥ ブライアンはジェイムズを捜しますが、行方は知れないまま。 医師として成功し、オリンピックでドイツに行くことになったブライアンは、かっての悪徳将校が町の名士になっていることを知って驚く。 病院の看護婦で献身的なペトラや、ブライアンの妻も、すれ違いつつ果敢に役割を果たします。 戦争物というよりは冒険物、それよりも特殊な状況下での友情物というべきか。 切ない幕切れ。 これほど長い間‥ と思うと胸が詰まるものがありますが、苦いようでも、先に希望はないでもない終わり方。 デンマークの作家だけど~ドイツでも大人気とか。 ルメートルの「天国でまた会おう」はやはりフランス的だったかな‥と。 戦後へと続く友情物という共通項がありつつ、何となくですが~お国振りの違いを思いました。
人気シリーズ「特捜部Q」で知られる北欧ミステリの雄、ユッシ・エーズラ・オールスンの初期の作品。嗜虐的な人物による陰湿で執拗ないじめと長い時間をおいて反撃可能になった被害者の苛烈な復讐という人気シリーズに繰り返し現れる主題は、作家活動初期段階から顕著であった。 二部構成。第一部は第二次世界大戦末期の...続きを読む1944年。第二部は1972年。場所はドイツ、フライブルク近辺。主人公は、イギリス空軍パイロット、ブライアン・ヤング。ブライアンとその親友のジェイムズ・ティ-ズデイルは、アメリカ軍から協力要請を受け、ドイツにあるV1飛行爆弾基地を撮影する任務を受けた。クリスマス休暇中でもあり、ブライアンは渋ったが、ジェイムズは否やを言わなかった。 複座のP51Dムスタングに搭乗した二人は、予想通りドイツ軍の反撃に遭い、パラシュートで降下。追撃する兵と犬から逃げようと運良く来かかった列車に辛くも乗り込んだ。それは傷病兵を帰郷させる列車だった。二人は、高級将校に成り代わることに。だが、連れていかれた先は何と精神病院だった。ジェイムズはドイツ語が分かるが、ブライアンは分からない。連合軍の進撃が迫る中、終戦まで偽患者に成り果せることができるのか。 Rhマイナスのジェイムズが、同じA型でもプラスの血液を輸血されてアレルギー・ショックを起こしかけたり、電撃治療や服薬で意識が朦朧となったりするのも危険だったが、それより怖ろしいのは、患者の中に敗色濃厚なのを知り、隠匿した美術品を山分けすることを目論む四人の偽患者が紛れ込んでいたことだ。彼らは、ジェイムズを疑い、食事に糞便を混ぜるなどをして、正気かどうかを試す。彼がためらいを見せると、密告を恐れて夜ごと暴行を加え、瀕死状態に追い込む。 逃亡を企てるブライアンは、ジェイムズの様子を窺うが、とても同行できる状態ではなく、一人で逃げる。それを知って追いかけて殺すために偽患者たちも逃亡。厳寒の北ドイツ、闇の中、水中での格闘劇。口に突っ込まれた木切れが頬を突き破ったり、眼球に突き刺さったり、とハードなアクションを描かせるとこの作家は巧い。痛みの感覚を刺戟する筆致に、作家自身に嗜虐性があるのではないかと疑いたくなるほどだ。 第二部。平和になったドイツではミュンヘン・オリンピックが開催中。アメリカ軍によって救出されたブライアンは、その後医師の資格を取り結婚。今ではいくつもの特許を持つ製薬会社の社長だ。帰国後手を尽くして探したもののジェイムズは消息不明のまま現在に至っている。戦後ドイツを訪れることを避けてきたブライアンだったが、思わぬことが相次いで起きたのをきっかけに、かっての地を訪れることになる。 第一部では、戦争当時の精神病院における人体実験の様子や、ナチスが戦利品として収奪した美術品その他の物資の隠匿、といったエピソードで興味をそそりながら、様々な悪を体現する偽患者たちが消灯後の病室でひそひそ話す、殺人や拷問の自慢話が披露される。隣のベッドで耳を澄ませて聞き入るジェイムズがあまりの残酷さに反応を悟られてはならないと必死で息を殺す様が凄絶だ。 戦後、偽患者たちは隠匿物資を元手に財を成し、過去の身分を隠して一般人として暮らしている。そこへ、ジェイムズの安否を尋ね、過去からブライアンが現れる。悪人たちは、ブライアンの目的を知らないが、危険を察知し始末しようと行動を起こす。魔の悪いことに、夫の行動に不信を感じたブライアンの妻ポーリーンがドイツに飛んでくる。第二部は、ジェイムズの消息を探るブライアンの探索行と悪人たちの知恵比べ、というミステリ仕立てになっている。 少年時代、ジェイムズとブライアンは熱気球でドーヴァー海峡を飛ぶという冒険を試みる。空気が漏れだした気球から飛び降りたブライアンは崖の上に着地できたが、最後まで降りなかったジェイムズは、突風にあおられて崖に激突。気球は木の枝に引っかかって、崖の途中で宙吊りになりながら、ジェイムズは、ブライアンをなじり罵倒する。危機の最中に親友を見捨てて逃げるという本作の主題の、これが伏線になっている。 小さい頃からの遊び友だちで、そのまま戦友となった二人だが、性格はちがう。すべてにおいて、決定権を握るのはジェイムズの方だ。ブライアンは、いつもジェイムズの「だいじょうぶだよ。うまくいくさ」という言葉を信じて一緒に行動してきた。熱気球が膨らみきっていないのに飛ぼうとした時も、偶然通りかかった列車に乗りむ時も、ジェイムズが仕切ったのだ。ブライアンが自分で離脱を決めた時、ジェイムズはそれをなじる。 三十年近く、ブライアンはそれを恥じてきた。どうすればよかったのか。著者あとがきのなかで、作者は「これは戦争小説ではない。『アルファベット・ハウス』は人間関係の亀裂についての物語である」と述べている。絶え間ない暴力に見舞われる精神病院からの脱走、葬ったはずの過去からの反撃、とスリルとサスペンス溢れるストーリー展開に魅せられながらも、やはりこれは作者の言う通り、亀裂した人間関係の回復とその難しさを描いた物語なのだ、と思う。余韻の残るラスト・シーンに胸打たれた。
書き出しから緊迫感に満ちた筆致で、テンポよく作中にどんどん惹き込まれていく。 我々が知り得ない、戦争という異常な状況の中で、とにかく自らの命を守るという本能に突き従って決死の努力を続ける2人の主人公に同調、没頭する序盤。 物語はそこからさらに展開を見せ、30年近い時を経た第二部で繰り広げられるドラマ...続きを読むに至るまで、飽きずに読者を掴み続ける。 とても2時間では描き切れないだろうが、アクション性にも富んだこの壮大な流れはいかにも映像化向きのようでもあり、つまり視覚的なヴィジョンも明確に頭に浮かんでくる類の小説だ。 個人的には、終盤の活劇がほんの少しだけ好みでない部分があるかな、という感じもしたが、文句なく面白く、極めて完成度の高い作品であることは間違いない。
ヨーロッパの作家にとってナチスドイツものは一度は取り組まなければいけないテーマなのかも知れない。どれだけのナチス党員が戦後前身を隠して安穏と暮らしていたのだろうか。
設定にちょっと無理を感じるけど 読むに堪えないほどの理不尽さ もちろん戦争中とはいえ これでもかと言う虐待 タイトルにも違和感 やっぱりQが・・・
ユッシ・エーズラ・オールスンのデビュー作。 ナチスの精神病棟を描く前半は、結構しんどかったかな。 第2部は1970年代になっての話だけど、 すこーし粗いように思う。 全体的に、も少し緻密に仕上げればよかったかな~と思う。
11月-7。3.0点。 第二次大戦、イギリス人兵士が、ドイツで撃墜され逃亡。 ドイツ兵になりすまし、精神病院へ。 ふたりは親友だが、ひとりは脱出、ひとりは置き去りに。 第一部は戦争から精神病院。非常に重苦しい。 第二部は戦後、脱走後。第二部から進みがはやく、一気読み。 重かったな。
人気シリーズを抱える著者のデビュー作と云う事と、 面白そうなあらすじにまんまと乗せられてしまいました… そう、フィクションのエンタメ小説と云うのを 楽しめば良かったんですよね… ちょっと期待しすぎてしまいました。 自分の好みから云うと星2.5位なんですが…すみません。 読み進めつつ「それちょっとど...続きを読むうなの」とか 冷めてしまう点多々ありまして。 後半も、女性の愛情&友情と云えば綺麗なのでしょうが… うーん(苦笑) 病院に偽患者として潜り込む辺りまでは すんなり楽しめました。 終わり方も印象的で良かったです。
2016.09 拷問、監禁と相変わらず?のオールスンさん。途中は面白かったが最初と最後のパートはちと長かったかな。
苦手な翻訳ものなので、覚悟しながら読み始めたのですが、割と読みやすかったです。 あらすじを読んで想像していた感じと、だいぶ違いましたが……。 ブライアンとジェイムズがアルファベット・ハウスに行くまではドキドキでしたが、その後はちょっと盛上がりに欠けたかな~。 単調なような気がしました。 なんかも...続きを読むっと、ブライアンが八面六臂の大活躍!みたいな感じかと思ってましたけど、意外とそうでもなかったような。 第二部のジェイムズの状況には、「え、うそ~ん」ってなっちゃいました。 最後の方の、悪者と対決する場面は、少々長すぎたような気がします。 おもしろかったような気がするけど、あちこち長くて、ちょっと飽きちゃいました。
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