【感想・ネタバレ】その雪と血をのレビュー

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感情タグBEST3

Posted by ブクログ 2021年12月09日

ハードボイルドの哀しい結末

愛することも愛されることもよく分からないと感じる、
絶望しているわけではなく、不器用に手探りで愛を感じようとする……
自身の物語を見つけようとする、主人公の悲しさ。

200項に満たない“中編”に、冬の情景をふんだんに盛り込んだ抒情詩のような一片の小説

主人公一人称で...続きを読む描かれるのは主人公の「想像(思い)」でもあり、
見え隠れする「現実」でもある。
最後の章で一人称が外れたとき、夢から覚めたような感覚でいる自分に驚く。

クリスマスの夜、町を覆う雪
「悲しみもやがて温かいベールに包まれる」という幻想
……残酷です。

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2021年10月04日

難読障がいを抱えた始末屋、オーラヴ・ヨハンセン。
信条と言うほど偉ぶったものではないが、相応の罪人でないと自らの招く結果にうまく心の整理がつけられない不器用で孤独な気質の男。
かつて、同じ組織のポン引きの上役が聾唖の少女の仕事ぶりを怒鳴りつけている場面に心が騒ぎ、衝動的に助け、資金面で援助し、微かな...続きを読む恋心を抱きつつその後の生活を見守る。そんな男。

あるとき雇い主から不貞をしている妻を殺すよう命ぜられるのだが、なんと彼女の姿に一目惚れ。
不倫自体も彼女が弱みを握られている節があり、相手の男も暴力的。
本能的とも言える行動で相手の男を始末することを選んだが、実はその男は雇い主の息子だった。
さてえらいことに。

『真夜中の太陽』のパラレルストーリーともあって同様の乾いた世界感の中で繰り広げられるパルプノワール。

主人公の決してインテリではなく、どちらかというと難しいことが考えられない、軟派ではないが芯の通ったハードボイルドというほどストイックではない、直感的でフラットな感じがなんとも言えないかっこよさを備えていて、思考の流れをトレースするのが心地よい。

『ヘッドハンターズ』は何だったのだろうと思うほど、作品によって良否の差が大きい作家かなと感じた。

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Posted by ブクログ 2019年03月13日

殺し屋の男が自分のボスの女であり
暗殺の標的である女に惚れてしまうとこから始まるパルプ・ノワール

あらすじだけで、どんな結末になるか
なんとなくわかってしまうんだけど
寒さが伝わってくるくらいの綺麗な描写が良い。
暴力すらやや和らげてるような印象(ヤワなわけではない) ただただ切ない。

余談:パ...続きを読むルプ・ノワールってなんなの?とか今なぜ70年代でノワールなの?とか疑問に思ってたことを全て解説してくれてて感動した。

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Posted by ブクログ 2018年06月06日

ボスに依頼された人物を始末する殺し屋、オーラヴ。次の依頼は、ボスの妻を殺すこと。任務を遂行するためボスの家に赴いたオーラヴは、妻に一目惚れしてしまう…。

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Posted by ブクログ 2017年03月10日

俺にはできないことが3つあると言って消去法的に殺し屋となった男が、殺さないという道を選んだことで得られた悲しい結末、あるいはハッピーエンドの物語。人にはそれぞれテーマがあってそのテーマに沿って人生は物語として再構成される。同じ事象を目の前にしても、個々人によっては見えているものも違えばその解釈も大き...続きを読むく異なる。そういう意味で一人称で語られる物語は読むたびに解釈が変わるほど入念な小説だった。エピローグでは語り手が変わるがそれが意味することは何だろうと考えあぐねる。カートヴォネガットの『タイタンの妖女』で死にゆく男が見た夢の光景の話があるが、この物語では何がどこまで夢だったのだろうと考え始めるとキリがないけれど、そのキリのなさゆえに小説というものは深化し、読み手によって命を与えられるのだろう。雪という肉体と血を身に纏って。

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Posted by ブクログ 2017年01月07日

 翻訳ミステリの多国籍化がすっかり歓迎ムードになっている昨今。英米の小説よりももしかしたら売れ行きがいいのではないか、とさえ思わせる北欧ミステリの世界的な台頭はやはり目立つ。

 その中でも異色の作家ジョー・ネスボ。主人公の個性を大切にする傾向が強い北欧作家の中でも、強烈なオリジナリティを持たせるジ...続きを読むョー・ネスボ。本作はネスボらしからぬ薄い一冊で、中編と呼んでも過言ではないほどの<ポケミス>ぶりだ。

 そして数多くのパルプノワールが傑作を生み出してきたように、作品の長さではなく、詩のように語られ、詩のように生き、詩のように死んでゆく薄手の作品は、今日も、いつの世でも、どこの地でも好まれる傾向にあると思う。

 抒情溢れるクリスマス・ストーリー。救いようのない人生の中で、主人公の殺し屋家業の青年が夢見、恋をした。一瞬の出会いとさえ呼べない出会いが、人生を決定づける。

 悲しくも美しいラブストーリー。行き場のないメルヘン。苦しく不器用の連続であった人生に手向けられた花束のような一篇。素敵で胸の衝かれるこの作品に、是非とも酔い痴れて頂きたい。

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Posted by ブクログ 2017年10月19日

好みな作品。愛と血と暴力が蠢き、始末屋の主人公の運命を翻弄する。
ページ数が少ない為、駆け足で物語が進むのだが、これは極上なノワールだ。狂おしいほどに美しく叙情的。冷たい雪と深い闇が織りなす暗黒。

裏切りと幻想。この2つ。突如訪れる展開で、ミステリーとしての美しさを兼ね合わせた、傑作だと気付くこと...続きを読むになる。

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Posted by ブクログ 2016年12月24日

ひゃー、これはこれは。。。見事!   
あっぱれなパルプフィクション。あっぱれなクリスマスストーリー。
この薄さで完璧。

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Posted by ブクログ 2016年11月27日

 タイトルと最初の3行で、もうどうしようもないくらいダメでバカでロマンチストな男の物語だと言うことが分かる。実にしょうがない悪党が、クリスマスにこんなに美しい物語を紡ぐなんて反則だ。ときめくじゃないか。
 クリスマスまでに読んで欲しい。

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2016年10月26日

凍てつく夜の底、純白の雪に落ちた血は、王にのみ許される白貂のケープに散る斑のように黒い。短くて残酷な童話めいた北欧ノワール。解説の、本作が生まれた経緯が面白かった。薔薇はどのような名で呼んでも芳しいというが、これが違う名義で発表されていたら、どんなふうに読まれたのだろうか。イヴの朝、クリスマスツリー...続きを読むから落ちて砕けてしまった繊細な銀の珠を見るような切なさが残った。

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Posted by ブクログ 2023年04月29日

表紙が印象的な一冊。海外ミステリーは苦手でしたが本書は一気読みでした。

ザ・ハードボイルド。短い文章でさらっとした言い回しがたくさんあり、まるで詩のようです。
例えば
〈いい話というやつは、ありえないほどいい話だと、悪い話になることもある。〉
キザな感じが好き嫌い分かれるかもしれませんが…。個人的...続きを読むには好きなほうです。

人は誰しも自分の〈物語〉を生きている。起こった事実は同じでもそこにどんな意味を持たせるかで物語は全く変わってくる。
そんなことを思い出させてくれる良書でした。

* *
物語とは直接関係ありませんが、主人公の『レ・ミゼラブル』への考察は何かはっとさせられるものがあります。
曰く、《ジャンバルジャンは本当にパンを盗んだだけだったのか?ー》 
確かに…。今度読み返してみようかな。

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2023年04月01日

ハリー・ホーレ刑事シリーズと同じ作者だったので。

主人公は殺し屋だが、おとぎ話のような、夢の中の物語のような。

殺し屋というか、自己申告の通り「始末屋」といった方が適格だ。
綿密な計画も知ら調べもなく、とりあえず殺す。
冒頭の始末屋以外ができない理由を説明する箇所が印象的だった。

目立たないよ...続きを読むうに車を運転できないので逃走車の運転ができない、
銃口を向けた相手が精神に問題を抱えてしまうので強盗はできない、
意志薄弱だからヤク売人になれない、
女に惚れっぽいのでポン引きにもなれない。
ボーイフレンドの借金のかたになりかけた女性にも惚れた。

ボスに自分の妻を殺せと命じられたが、
見張っているうちに惚れてしまい、浮気相手の男を殺してしまう。
だが、その男はボスの息子だったため、
当然ボスに命を狙われて妻と一緒に隠れることに。

ボスの敵と交渉し、
棺に隠れて地下聖堂でボスを返り討ちにしようとしたのはさすが。

彼が最後に見た幻は美しかった。
暴力と犯罪と破滅の小説をパルプ・ノワールというらしい。

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2018年12月07日

これはね、超切ない作品よ。
殺し屋だけれども、女に乱暴を働く男が
許せない男なの。
それは自分の最初の殺しと関係するけど…

それがゆえに本来の任務を逸脱し、
ボスの息子を殺害してしまいます。
結局根回しをして彼は
対立組織を頼りますが…

彼は結局、それがゆえに
命を落とすことになるのです。
残念...続きを読むだけれども。

彼の存在は危険なのもあるけど、
要するに別の女を愛したのが
ボスの元妻は許せなかったんじゃないかな。
彼は不思議な魅力を持つ危険な男だったからね。

それを雪のシーンで描くんだぜ。
罪深いこった。

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Posted by ブクログ 2017年05月01日

ノルェー作家 もう、最初暗くて暗くて何度投げそうになったか でも177pと薄いので、意地でも読み終えてやると思ったら、あらら…最後の最後にあぁこうきたか ん〜上手いな 
とてつもなく悲しく、美しいラスト 胸に沁み入りました この作家は日本人好みだと思う 

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Posted by ブクログ 2017年04月23日

この主人公をレオ様がやるのか…なんかイメージが違うなぁ。
ほんと、健さんだったわ「自分不器用ですから」って感じが。

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Posted by ブクログ 2017年03月29日

いろんな方がレビューで文章の美しさを指摘しててどんなだろうとワクワクしていた。冒頭から、おぉって思わせる私好みの文体!この人の書く文章はどれもこんな感じなのか?!
だとしたら読まねば!
★五個にしようか迷ったが、最後の方のくだりがどこまで現実なのか難解で…そこがまたいいのかもしれないですが。
ノワー...続きを読むルってイイなあと思わせる。
哀しい…けどだからこそ美しさが際立つ。
レオ様で映画化されるんですか?

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2017年01月21日

結晶で降る雪を見たことがある。知床ウトロにある小学校の校庭にテントを張っていた時、青いフライシートに降りる雪は結晶の形そのままだった。本書の冒頭の風景に降る雪も結晶だ。しかし、白く美しい雪に血の色が混じる。ドライな文体で、とてつもなくハードボイルドな文章だが、詩的で美しい描写だ。主人公の始末屋(殺し...続きを読む屋)の胸の内に流れる熱いものがそうさせるに違いない。
一人称で語られる主人公オーラヴの経歴は謙遜気味だが、物語が進むにつれ、思慮、行動とも一流のそれだと理解できる。ノワール小説の形式はとっているが、描かれているのは主人公の恋心なので、文章全体が純粋かつ、美しい。小説の終えんに合わせて、読者である自分の心も穏やかに閉じていく、独特な読後感を持つ一冊だ。

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2017年01月16日

パルプ・ノワールにクリスマスと恋愛を盛り込むという、食べ合わせが悪いような組み合わせなのに、見事に融合していて、ちょっと切ない恋愛小説という趣になっていました。主人公のオーラヴにはできないことが四つあり、惚れっぽく、ついにはボスから殺すように命令された女性にまで一目惚れしてしまう。そして一度好きにな...続きを読むったら命がけで守ろうとする、そんなところが殺し屋なのに親近感を抱いてしまう。ポケミスにしては分量が少なく展開も早くさらっと読めて面白かった。

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Posted by ブクログ 2018年10月12日

殺し屋のかっこつけた話なのだが、舞台が1970年代のノルウェーってのが珍しい。ワケありの女とマフィアと不幸な生い立ちをクドクドと説明せずさらっと、でも印象に残る書き方で読みやすい。
いいエンディングだったと思う。

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2018年05月30日

北欧ノアールでオモロ作品とどこかで紹介されていたので手に取ってみた。
想像してたのと全然ちゃう。まずそのボリューム、中編1作くらいしかないんじゃないかな?それくらい薄い本である。しかもポケミスなのに2段組みじゃなく1段組み。

解説まで読んで納得。なるほど70年代のパルプノアールを意識して描いたなら...続きを読むこの分量でも雰囲気出るわな。活字量は少なくても、非常に徹しきれない三流殺し屋のぎこちない生き様が見事に描かれている。これは小説の体を装った詩やな。エルロイや馳星周やウィンズロウが描こうとした世界と同じ冷たくて痛くて美しい世界。

ミステリー要素もドンデン返しもあるんだが、この作品はそこを云々しても野暮だろう。主人公の不器用でやるせない生き方を読む。冷たさ痛さは汚濁を隠して清廉である。

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Posted by ブクログ 2016年10月20日

あらすじを読むと殺し屋の禁断の恋のようにイメージしてしまうが、れっきとしたノワールです。そして拍子抜けするほど短い。

主人公の一人称でストーリーは進む。この主人公、殺しの腕はいいが欠点も多々あるという人物。そのひとつである惚れっぽさから始まって途中でボタンを掛け違えたことから、一気に転げ落ちていく...続きを読む。緊迫の中の緩さだったり、壮絶な過去を背負った不器用さだったり、暴力一色なのだがどことなく抜け感があるという不思議な世界観。

ラストは印象的。詩的で美しい。その時間、彼が脳裏に浮かべていた光景を思うと何も言えなくなる。短い頁数なのでその余白を活かして読後の余韻に浸るのがお勧め。終盤駆け足で読んだせいで呆気なくラストを迎えてしまったのが残念。もっとじっくり読んでおけばよかった。ジョー・ネスボ、侮れねーな。

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