鈴木恵のレビュー一覧
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マッキンティと言えば北アイルランドを舞台にした、闘う警察官ショーン・ダフィ・シリーズでの好印象しかないのだが、驚いたことに、いくつかの賞を獲ったにも関わらず執筆の対価に合わないとしてペンを折ってしまいネット配車タクシーのドライバーに転職していたのだそうだ。そんな、と思ってしまうのはぼくだけではない。
本作の彼の初稿(短編小説)を読んだドン・ウィンズロウは、もとより彼の才能を買っており、自身の米国エージェントを通して長編化と作家への復帰を説得したらしく、彼は本作で改めてアメリカでの出版での勝負に出たとのことである。作者自身のあとがきと杉江松恋の文庫解説にも詳しい。
さてその力の入った実にアメリカ向けの作品が本書であり、正直、ショーン・ダフィ・シリーズのマッキンティの躍動する、あの寒々しい北アイルランドの風土と闘いの歴史の上に繰り広げられる重たい捜査模様を期待する読者は、呆気に取られると思う。
むしろピエール・ルメートルなどに見られるスリリングな状況作り、逆転また逆転の仕掛けといった高いエンターテインメント性など、これがあのマッキンティなのかと驚くほど、それはアメリカンなエンターテインメント作品に仕上がっているのである。
誘拐された親は次の誘拐を完了させないと我が子を取り戻せないというチェーンに巻き込まれた家族。そのシステムを構築した者の正体は? そして結末は? とまず物語構造だけで緊張関係を作り出してしまっている。
さらにスマホ、タブレット、パソコン、アプリなど、現代ならではの道具による仕掛けが頻出と多彩な銃器によるアクション。世界中の若者に受けそうな、それこそ今にも映画化されそうな面白小説に仕上がっている。
個人的にはショーン・ダフィの鼻っ柱の強さが好みだっただけに、マッキンティにはこの手の才能で稼いで生活基盤を手に入れて頂いたら、生まれた地である北アイルランドを素材にしたショーンの物語も末永く紡いで行って欲しいものである。 -
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マッキンティと言えば北アイルランドを舞台にした、闘う警察官ショーン・ダフィ・シリーズでの好印象しかないのだが、驚いたことに、いくつかの賞を獲ったにも関わらず執筆の対価に合わないとしてペンを折ってしまいネット配車タクシーのドライバーに転職していたのだそうだ。そんな、と思ってしまうのはぼくだけではない。
本作の彼の初稿(短編小説)を読んだドン・ウィンズロウは、もとより彼の才能を買っており、自身の米国エージェントを通して長編化と作家への復帰を説得したらしく、彼は本作で改めてアメリカでの出版での勝負に出たとのことである。作者自身のあとがきと杉江松恋の文庫解説にも詳しい。
さてその力の入った実にアメリカ向けの作品が本書であり、正直、ショーン・ダフィ・シリーズのマッキンティの躍動する、あの寒々しい北アイルランドの風土と闘いの歴史の上に繰り広げられる重たい捜査模様を期待する読者は、呆気に取られると思う。
むしろピエール・ルメートルなどに見られるスリリングな状況作り、逆転また逆転の仕掛けといった高いエンターテインメント性など、これがあのマッキンティなのかと驚くほど、それはアメリカンなエンターテインメント作品に仕上がっているのである。
誘拐された親は次の誘拐を完了させないと我が子を取り戻せないというチェーンに巻き込まれた家族。そのシステムを構築した者の正体は? そして結末は? とまず物語構造だけで緊張関係を作り出してしまっている。
さらにスマホ、タブレット、パソコン、アプリなど、現代ならではの道具による仕掛けが頻出と多彩な銃器によるアクション。世界中の若者に受けそうな、それこそ今にも映画化されそうな面白小説に仕上がっている。
個人的にはショーン・ダフィの鼻っ柱の強さが好みだっただけに、マッキンティにはこの手の才能で稼いで生活基盤を手に入れて頂いたら、生まれた地である北アイルランドを素材にしたショーンの物語も末永く紡いで行って欲しいものである。 -
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ネタバレショーン・ダフィシリーズの雨の北アイルランドから一変、アメリカ東海岸が舞台。全く違う作風で驚き。
スピード感に一気読みさせられた。その中にも誘拐という卑劣な犯罪への怒りが細かく述べられ、確かに杉江さんの解説にも「書きすぎる」とあったが、わたしもそれは感じた。
だが、いいぞ、マッキンティ!ウーバーの運転手やってる場合じゃない。どんどん書いてください。
大好きなショーン・ダフィシリーズの次作も近いうちに読めるそうで楽しみだー。
今回もレッド・ツェッペリンが登場でファンとしてはうれしい限り。さあ誰が、どんな状況下で、どの曲を聴いたのか…もう、ツンデレなんだから!(そこじゃないって?) -
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子供の頃、ロビンソン漂流記を読んだことがあった。難破したロビンソンが孤島で孤独な生活を送るという粗筋くらいしか覚えていなかったが、文庫本の新訳が出ていたので、改めて読んでみた。
井上靖の「おろしや国粋夢譚」を読んで以来、漂流ものには興味があって、いろいろな漂流記や探検記を読んだけれど、原点はやはりロビンソンクルーソーだと思う。実話を基にした小説で、作者の空想がかなり入っているが物語としてはとても面白い。特にロビンソンの孤独感の心理描写、事件が起きた時の気持ちの変化など、おそらく自分自身が同じ状況になったら、こんな事を考えるだろうと思うことが、そのまま書かれていて、物語に没頭することができた。また当時の空気も反映されていて、300年以上前の人々の考え方や社会の仕組み、未知の世界や動物への恐怖なども感じることができる。
読んでみると、漂流記というよりも孤島生活記という感じ。子供の頃の記憶では大西洋の絶海の孤島の設定だったと思ったが、実際はカリブ海の島だった。ロビンソンにとって救いだったのは、難破船から容易に「道具」が手に入ったことだ。道具があれば、ある程度文化的な生活ができる。島で必要なのは何よりも「道具」なのだ。そこは実際の漂流者の体験とは異なっていて、道具が無い漂流者は食物の採取にも不自由するくらい何も出来ず悲惨な生活になる。それから「宗教」。孤島の生活には精神的な支えが必要で「神」を称える記述が何度も出て来る。
前半は孤島生活、後半は色々な事件が起きて、島を脱出し故郷に帰るまでを描いている。リアリティを出すためか、最後はお金の話が出てくる。島ではカネは何の価値も無いと言っていたロビンソンが、帰国するとカネの話ばかり。文明社会に復帰すると、大事な物の認識が変わってしまうのだろう。また社会復帰まで約30年も経過しているのに、ロビンソンは記憶力が抜群で過去の出来事、カネの話を詳細に覚えている。歳を取っても、隔絶された島にいてもボケとは無縁だ。現代の視点では突っ込みどころ満載の小説だが、時代を超えて当時の気分に浸るには凄く良い小説だと思う。
今回の新訳版は、大変読みやすく、且つ昔の言葉使いも上手く混ぜて時代感も感じさせるとても良い翻訳だった。もし船旅をするなら(漂流したくはないけれど)、この本を持っていきたいと思う。 -
Posted by ブクログ
第二次大戦で大活躍した元レジスタンスの英雄”キャントン”ことイギリス人のルイス・ケインとヨーロッパではトップ3に入るガンマンで元シークレットサービスのアメリカ人・ハーヴィー・ラヴェルのコンビが、殺し屋と警察双方に追われる実業家マガンハルトとその美人秘書をフランスからスイスを経由し、リヒテンシュタインまで送り届けるという護送する依頼を受ける。タイムリミットは3日後の零時ジャスト。その間、殺し屋たちから命の危機にさらされ、警察からも執拗な追跡を受けながらも自分の生き方を曲げないルイスとハーヴィーの姿を描いたハードボイルド冒険小説の古典的名作。
本書の存在はかなり前から知っていたが、今まで未読だった。2016年に新訳が出ているので新訳の方を読んでみた。
1965年に発表された本書であるが、本書を読んでいるとハンフリー・ボガード主演の『カサブランカ』や『三つ数えろ』のような名作白黒映画を思い出した。セリフや主人公達の行動がいちいち格好いいのだ。
ハードボイルド冒険小説としては銃撃戦あり、騙し合いあり、裏切りあり、と極めてオーソドックスなストーリー。かといって今の冒険小説にありがちなジェットコースターアクションでは決してない。
順序よく定期的に敵や警察の襲撃に遇い、それを撃退しながら目的地へ車や列車を使って進んでいくという、どちらかというとロードムービー的な要素が強い。そして各種イベントの間に主人公達の小気味よい会話が繰り広げられ、読者はそこで一息つく。
『深夜プラス1』の魅力はなんと言ってもそのキャラクターとセリフ。
元英国特殊工作員“キャントン”ことルイス・ケイン、そして腕は凄腕なのだがアル中のハーヴィー・ラヴェル、この二人の男の美学を読者は本書を読みながら感じまくることができる。
例えば、ルイスとハーヴィーは任務中に警官は殺さないと決めている。ハーヴィーがそれをマガンハルトに説明するセリフがまた痺れる。
『おれたちみたいに逃げる連中なんか、お巡りは気にしない。それもあたりまえだと思っている――むしろ歓迎する。
逃げるのは敬意を示すことなんだから。だけど、お巡りを殺すやつは?そいつは逃げなかった。敬意を示さなかった。つまりそいつは法を犯してるだけじゃなくて、法を破壊しようとしてるんだ。
お巡りが自分たちの象徴していると考えるものに、ことごとく挑戦しているわけだよ。法、秩序、文明――そしてすべての警官に。
それはもう他人事じゃない。そいつだけはつかまえなきゃならない』
自分たちにとって現在は敵である警察官にも敬意を払う。もう『男の美学』という言葉しか見つからない。
そしてルイスとハーヴィーの掛け合いを読んでいると、どうしても『ルパン三世』のルパンとその相棒のガンマン・次元大介を思い出してしまう。伝説の英雄“キャントン”がルパンというのはちょっと軽すぎるかもしれないが、敵の声色使って相手を騙すところや、敵になりすまして相手をやり込めるなんてところは変装が得意なルパンと共通する。
そして、ハーヴィーはそのまま次元大介だ。公式的には何の発表もないが、たぶん次元大介のモデルはこのハーヴィー(ちなみに漫画『ルパン三世』で次元大介が初登場したのが1967年10月号『週刊漫画アクション』第10話『ルパン殺し』。『深夜プラス1』の発表が本国では1965年、日本語訳初出が1967年なのでその可能性は高い)。
ガンマンとして随一の腕を誇りながらもアル中で酒を飲まないと手が震えてくるハーヴェイと帽子を被らないと正確に銃が撃てないという弱点を持つ次元大介、弱点を持つガンマン、そしてクールな男の渋みが持ち味というところが二人の共通点だ。
その脇を固めるのが時折不可解な行動をとるマガンハルトの美人秘書ミス・ジャーマン(『ルパン三世』的な立場で言えば峰不二子かな(笑))とルイスの元恋人のジネット。彼女達とルイス、ハーヴィーとのやりとりもおしゃれで素敵だ。
『深夜プラス1』は冒険小説の古典であり、数々の作品の元ネタとなってきた。
先ほどの『ルパン三世』やタイムリミットがあるなか二人組の相棒同士が困難な任務に挑む話など、それこそ星の数ほど作られているが、本書が元ネタだと思われるものがなんと多いことか。それだけ、今の時代二番煎じ、三番煎じのモノが溢れているということなのだろう。
本書は今から50年以上前に書かれた小説であるが、全く古さは感じない。むしろ、ハードボイルド冒険小説とは本来こういうものかと新鮮さを感じたほどだ。
冒険小説ファンを名乗る読者人なら一度は読んでおかねばならない一冊だろう。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ内気で世界と上手く折りあえずにいる少女ポリーの人生は、刑務所帰りの父ネイトの登場によりすっかり変わってしまった。2人を追うギャングからの逃避行は果たして成功するのか?
勇敢なる相棒、熊に敬礼!
なんとー、びっくりしました。こんな殺伐としたストーリーなのに、読後の余韻と、そこはかとない切なさときたら。
最初は、なんかむちゃくちゃやん!と思っていたのに、気がついたらネイトの不器用ながらも娘を愛する気持ちや、ポリーが成長して行く姿にすっかりハマってしまいました。そして熊が!最後までいい味出しすぎ。
ネイトが結局どうなったのか、示唆はしつつも、解釈の可能性を残しているのも良かった。ネイトがポリーを守るためにそうしたんだね、と。
邦題は良いと思うし、銃を捨てるところは良いシーンだったけど、そんな拳銃使い感あったかなって疑問は残りました。。
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Posted by ブクログ
面白くて一気読み。著者は脚本家で初の小説だそうだが、なるほど読み手をダレさせないスピーディな展開で、長さもほどほど、リーダビリティ抜群だ。あ、とは言ってもギャングものを好まない人や、物理的に「痛い」描写が苦手な人は別だが。
ギャングから暗殺指令の対象とされた男が娘を守ろうとする、その設定自体に目新しさはないが、これを娘視点で書き、しかも「無垢で守られるだけの娘」にしなかった。そこが実に良い。これ、娘のポリーを主人公にしてシリーズ化できそう。当然のごとく映画化が決まっているようだが、父のネイトは誰がやるのかな。ちょっと楽しみ。
詳細な心理描写があるわけではないのに、登場人物それぞれの個性がくっきり立ち上がってくるところがすばらしいと思う。脇役である警官もチンピラも大物も、みなに存在感がある。邦題がちょっと昔風なのもクールだ。