鈴木恵のレビュー一覧
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ネタバレ上下巻で600ページを超える海外小説を読んだのは初めてだった。
少女誘拐事件の真相を追うミステリであり、パッチの生涯を描く伝記であり、パッチとセイントの友情物語であり、冒険譚であり、家族愛の物語でもある。まさに「全部盛り」。
個性的で危うく、それでも不思議と人を惹きつけるパッチも魅力的だが、私はセイントの一途さと知性、頼もしさに惹かれた。しかし上巻では、報われないセイントの気持ちを思って何度もやりきれなくなった。
しかし、結末はあたたかかった。パッチとセイントにとって大切だった言葉やキーワードが一つひとつ綺麗に回収されていく。最後にパッチ、セイント、シャーロットの三人が再会するシーンは胸が熱くなる。そして何より、セイントのこれまでが報われるラストシーン!思わず涙がこぼれた。
振り返ってみると、パッチが犯した殺人は、いずれもセイントを守るためだったことも心に残る。やはりパッチにとっても、セイントはかけがえのない存在だったのだ。
ミステリとして真相を追いかけていたはずが、いつの間にかパッチとセイントの人生そのものを追いかけていた。忘れがたい一冊。 -
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愛する映画と〝おれの人生〟についてクエンティン・タランティーノが語り倒す怒濤の37万字。
自伝であり、映画批評であり、ハリウッド・ゴシップ集であり、70sカルチャーへの賛歌であり──そして映画愛をぶちまけるマシンガンでもある大著。
1963年生まれのタランティーノは、いかにして恐るべき映画マニアとなったのか?
母親とともに大人向けの映画を見まくり、『明日に向かって撃て!』のラストのストップモーションにとまどい、母のボーイフレンドに連れられて映画館にただひとりの白人の子供として黒人映画を初体験し、映画館通いがはじまる。
『ゲッタウェイ』『ブリット』『ダーティハリー』『タクシードライバー』などの名作から、『組織』『ローリング・サンダー』『ファンハウス 惨劇の館』などの偏愛作まで。
──1972年、その映画館にいる白人は9歳のおれだけだった。
──あのころ耐えられなかった映画はあるか? ある。《バンビ》だ。
──ハーヴェイ・カイテルのいない『タクシードライバー』を想像できるか?
──《ローリング・サンダー》は人物研究とアクション映画のこれまでで最高の組み合わせだ。
──ボグダノヴィッチほど食い気味のコミカルな会話がうまい監督は同時代にいなかった。
──スタローンの最高傑作は『ロッキー2』だ。
あふれる映画愛と、演出家/脚本家としての稀代の才能とセンス、ハリウッド・ゴシップにフィルムメイカーたちの肉声も総動員、ハイテンションで語り倒す!
饒舌な注釈つき!
クエンティン・タランティーノの原風景の大人向け映画を興行している映画館で、どのような映画を観て影響を受けたか。
「ゲッタウェイ」の映画化作品が、なぜ「エルレイ」の後半部分をカットしているのか、ジム・トンプソンの原作小説と映画の違い。
デ・ニーロが演じた主人公トラヴィスの人種差別者の側面を看破するなどなど異色な「タクシードライバー」レビュー。
タランティーノが、考えた「もしもブライアン・デ・パルマが、タクシードライバーを監督したら、こうなった」。
タランティーノのスタローン愛が、爆発している「パラダイス・アレイ」レビュー。
タランティーノが偏愛するパルプノワールシリーズ「悪党パーカー」レビューでは、「ヒート」でデ・ニーロが演じた主人公ニール・マッコーリーに与えた影響を交えて語り倒している。
タランティーノに大きな影響を与えた親友フロイドとの思い出話もあり、クエンティン・タランティーノの核にあるものが知れる映画本。 -
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腕利きドライバーのケインが受けた仕事は、ごくシンプルに思えた。相棒となるボディガードとともに、大西洋岸のブルターニュからフランスとスイスを車で縦断し、一人の男を期限までにリヒテンシュタインへ送り届けるだけだ。だがその行く手には、男を追うフランス警察、そして謎の敵が放った名うてのガンマンたちが立ちはだかっていた! 次々と迫る困難を切り抜けて、タイムリミットの零時1分過ぎまでに、目的地へ到達できるのか? 車と銃のプロフェッショナルたちが、意地と矜持を見せつける。
30数年ぶりに再読。前回は菊池光訳、黄色い背表紙のミステリ文庫だった。新訳版が出てからもう10年になるのか。 -
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同棲中の彼に浮気され失業もしてしまいどん底のジュールズは、高級アパートの求人広告に飛びついた。〈バーソロミュー〉という憧れの高級アパートの空き部屋に短期間住むだけで高額の報酬がもらえるバイト。ただし来客禁止、外泊禁止、居住者の邪魔をしないこと。バーソロミューには気味の悪い噂もある。親友のクロエはやめた方が良いと言う。しかしジュールズは住む家も金もなく追い詰められていたし、バイトに魅力を感じていた。期待を持って始めるや、居住者たちと親しくなり、気になる人もできた。しかし深夜に悲鳴を耳にする。アパートで何が起きているのか。そこからジュールズの不安は大きくなっていく。
文庫本のあらすじを読んでゴシックホラーと勘違いする人も多いようですが、超常現象や幽霊のホラーではありません。あらすじにホラーサスペンスとありますが、いわゆる人が怖いというやつです。
バーソロミューのスタッフ、門番、ジュールズの怪我を治療してくれた住人の外科医、その他住人の作家、元女優、元国会議員、ジュールズと同じバイトをするイングリッドやデュラン…。誰が味方で、誰が敵?
話はテンポよく翻訳も読みやすい。歴史あるバーソロミューで過去に起きた事件の数々、住人たちの暗い影。このアパートで何が起きているのか?
過度な期待をしすぎたのかもしれない。以前読んだ「夜を生き延びろ」ほどのドキドキはない。ジェットコースターを期待したが、そこまでスピード感はない。シンプルな話なので十分楽しめる。2冊とも読むなら先にこちらを読んでから「夜を生き延びろ」を読むことをお勧めする。「夜を…」に比べると少し物足りないから。 -
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この本を手に取った理由は、子供の頃にうっすらと見たような見なかったような記憶のあるアニメの1つであります「ふしぎな島のフローネ」を、ようやく全話見終えたからで御座いました。
このアニメの原作が、こちらの「ロビンソン・クルーソー」なのであります。こちらも長く続く名作ながらも、読んだ事はなく…アニメと原作がどう違うのか興味が湧き、手に取りました。
ロビンソン=クルーソーは、ヨーク市の良家に生まれた。
父は商売で財を成し、母は大変な名家の出だった。
兄が2人おり、3男坊だったロビンソンは幼い頃から特に手に職を付けさせられるでもなく、自由に育った。
父はそれなりに学問を学ばせて法律家にさせるつもりだったが、ロビンソンは船乗りになって旅する事ばかりを考えていた。
周りに止められれば止められるほど、ロビンソンの船乗りへの憧れはどんどん加速して行く。
厳格で思慮深い父は、息子のこれから先の未来を予見していたのかもしれない。
ロビンソンに対し、此処で法律家となって働けば社会にも認められ、地道に仕事を続ける事で財を成す事も出来、将来は安楽に暮らせる幸せな道が待っている。
この家と故郷を捨て、危険を冒して旅に出る事に何の意味があるのか?
見も知らぬ土地で助けてくれる家族も友人も無く、どうやって生活して行くのだ?
愛情を込めた眼差しで、頼むから若気の過ちは犯さないでくれと頼んだ。
此処でロビンソンが素直に頷いていたら、その後…数十年に及ぶ辛く苦しい孤独な無人島生活を送らずに済んだであろうに。
この時の父の言葉を何度も思い返しながら、彼はとてつもなく長い長い終わりの見えない壮絶な大冒険に身を投じる事となる。
はぁ…何て言うか、もう…絶対、こんな冒険は嫌だ!!!!!(笑)
まあ、親に反抗したい若者の良くある行動ではありますが…まさか!こんな事になるなんて!誰が想像しました!?
彼は人生の半分を、孤独に無人島で暮らす事となる訳ですが…。
実はこの物語は、こちらの本棚でも御紹介済みの「十五少年漂流記」に出て来る少年の1人の愛読書でもあります。
それほど、デフォー氏の「ロビンソン・クルーソー」は世界中から愛された冒険文学の金字塔とも言える訳なのです!
無人島での生活は、キャンプやサバイバル好きの皆様には堪らない自給自足の生活が描かれており、生活用品の全てを島にある素材で手作りしながら揃えて行く様は確かにワクワクするものが御座います。
ですがやはり孤独に耐えながら畑が出来るまで数年、カヌーが出来るまで数年、外敵から身を守る為の柵を作るのに数年…等と言う全てが数年単位の生活は全く想像が付かず、ただただ途方に暮れるばかり。
ロビンソンの根気強さと何としてでも生きたいと言う人間としての本能が彼を奮い立たせたとは思いますが、やはり若さ故の冒険心だったとしても父への罪悪感と会って謝りたいと言う気持ちも、多少は生きて帰る理由の1つであったように思います。
自分が若い頃、苦労したから子供に同じ思いはさせたくない…と言う親御様の気持ちも、良く分かります。
しかし、何でもかんでも押さえつけて過保護に育ててしまっては、子供の可能性を潰してしまう事にもなりかねません。
程度にもよりますが、多少の失敗は人間を大きく成長させます。失敗から学ぶ事は意外と多くあり、それは後の自分の人生において大変重要な地位を案外占めていたりする物なので御座います。
皆様の中にも、身に覚えのある方がいらっしゃるのではないでしょうか?あの時は、あんな事になってしまって本当に苦しかった。でも…今から思えば、あの苦しい経験があったからこそ、今の自分があるのだ。あの失敗があって良かった、あの状況に思い切って飛び込んで良かった、あんな人でも結果居てくれて良かった…。
恐らくロビンソンもこの経験をしたからこそ!父の言葉の有り難味が身に染みて分かったのではないでしょうか?きっと若かりし頃の船乗りに憧れていたロビンソンのままだったら、何を言っても心には響かなかったでしょうから…。
私はこの地球において「偶然な出来事」と言うものは一切存在しないと、常日頃から考えております。つまり「全てが必然」のこの世界で、我々地球を旅する冒険者は日々大切な時間を生きている訳なのであります。
何が起こるか分からないけれども起こった事は皆、自らが経験すべく起こしている出来事で御座います故、どうか皆様心から楽しんでその状況を受け入れ、丸ごと糧にしてしまってみては如何でしょうか?
どんなに嫌な出来事が起こったとしても「なるほど…今起こっているこの嫌な状況は、果たして今の私に何を学んで欲しくて起こっているのだろうか?」常に、そのように考えてみる事をお勧め致します。
「あ~嫌な事が起こった!も~嫌だ!逃げたい!此処から1秒でも早く!消えろ!この出来事!目の前から消えろ!それがダメなら自分が消えたい!この世から今すぐ!」
一説では本人が其処からの学びを手に入れない限り、また同じような出来事が巡って来ると言いますよね?
毎回、似たような苦手な人が職場にいる。毎回、似たような最悪な場面に遭遇する。毎回、似たような気の合わない友人とつるんでしまう。毎回、似たような駄目な人を好きになってしまう…等。
思い当たる方は1度でいいので「つまり…私は、この最悪な状況から一体何を学ぼうとしているのだろう?」と言う視点で、その状況を見てみるといいかもしれません。其処に気付いた時、自分が変わると周りの人間も状況も不思議なくらい変わって参ります。
ですのでこの地球での冒険者人生!どんなに高い壁や挫折案件が来ても、どうか怯まず楽しんでみて下さい!そう…まさに、ロビンソン・クルーソーのように!
ロビンソンも自ら危険に飛び込んで孤独な人生を引き寄せてしまったが、其処から必死に生きようともがいた!そんな彼がどうなったかは、皆様御自身の目でお確かめ下さいませ。 -
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ある素朴な田舎の海辺の町に、「ベンボウ提督亭」と言う1軒のさびれた船宿があった。
この宿屋は本編の語り手であるジム=ホーキンズ少年と、その両親が一家で経営している。
物語は、頬に刀傷のある日焼けした老船乗りが、大きな私物箱を抱えてこのベンボウ提督亭にやって来る所から始まる。
「船長と呼べ!」みすぼらしい身なりにぞんざいな口の利き方、普段は無口だが酒が入ると周りの客に絡み出し、自分が部屋に戻るまでは誰1人席を立つ事を許さないと言う横暴ぶり。
長い間この宿屋に逗留し続け、最初に貰った宿代もとっくに無くなっていたのだが、父はすっかり怯えてしまって追加を貰えずにいた。
心労で体が日に日に弱って行く父の代わりに、宿屋の仕事は母とジムの2人がするように。
そんな強気な船長だが、実は「一本脚の船乗り」と言う男を常に警戒しており、ジムに小遣いを払ってでも見張りを頼む程の怯えぶりだった。
ある日「黒犬」と言う男が船長を訪ねて来た事から、事態は一変する…何と彼らに居場所を知られてしまった船長は、ショック死してしまうのだ!
ジムと母は満足に宿代を取り立てられず先日亡くなってしまった父の代わりに、例の私物箱から代金を頂戴しようと中を調べた時、偶然見つけたのが宝島の地図だったのだ!
ジムは父の主治医で信頼を置いていたリヴジー先生に相談し、地元の郷士であるトレローニ氏と共に船員を集め、母に見送られながら一路宝島を目指して旅立つのであった!
現地で命の危険が待ち受けているとも知らず、ジム達は地図を頼りに無人島へと向かう。
果たしてジムは、宝を見つけて無事に母の許へ帰りつく事は出来るのか!
さて、突然あらすじの内容から始まりましたが。
あのですね…もう、とにかく…この物語は前置きが長い!(笑)全然、地図出て来ないし!全然、宝島出て来ないし!全然、海に出ないし!
暫くは、ベンボウ提督亭で巻き起こる船長とジム達家族の対立、黒犬達との手に汗握る死闘、船長の突然死、そして地図を見つけてから旅に出るまでの経緯等々…が、事細かに記されております。
ですが!海に出るまでのそのストーリーも存分に楽しめる展開となっており、読者を飽きさせません!
実は黒犬達もその地図の存在を知っていたようで、ベンボウ提督亭はその地図を巡ってとんでもない争いの場と化してしまいます!
船長の私物箱は何処の誰が狙っているかも分からず、ジム母子がまさに開けようとする瞬間も何処かの階で物音がする等、ハラハラドキドキの展開が読者を待ち受けております!
本編の見所は、当然宝島に着いてから…と言う事にはなるのですが、もう其処に至るまでが盛り沢山過ぎて、ようやく町を出発する頃には既にお腹いっぱいと言う(笑)。
勿論、宝島でも二転も三転もする展開が待ち受けており、ジムがどんな冒険を繰り広げるのかを皆様も共にお楽しみ頂ければと思います。
途中ジムは行方不明になり、何と語り手がリヴジー先生に変わってしまうと言う事態も!
さあ、ジムの運命や如何に!!!!! -
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ネタバレ帯にあった「世界一めげない男ロビンソン」との言葉に魅かれて読んだ。無人島に28年。実話に基づいているというだけに、28年もの孤独との闘いがどのようなものかを読んでみたかった。
ロビンソン・クルーソーは、普通の勤勉な両親の三男として生まれた。両親は安定の人生を彼に望み、将来は弁護士にさせたいと願っていた。ところが彼の体内には冒険の血が眠っていたようだ。
友人の誘いにのって初めての乗船で嵐に遭難し、ここで諦めるのかと思いきや、またしてもそれ以上の沈没寸前の遭難を体験する。さらには、海賊の囚われの身となり、奴隷にされてしまう。こんな過酷な体験を繰り返しながらも、船にのることを捨てない彼は、根っからの冒険人間なんだろう。奴隷買い付けを目的としたギニア行きの偽装船に乗り込み、またしてもすさまじいトルネードに巻き込まれ、命からがら無人島にたった一人たどり着く。そして、これからが孤独の無人島生活だ。
生活拠点を作り、遭難船から使える物資を島へ運び込み、生きる準備をしながらも、生きていることへと、物資が得られたことに自然と感謝の気持ちが湧いてきた。日記をつけたことは、自分を見失わないよい思い付きだった。病気がきっかけで、祈りの心が芽生えてきた。そして、上陸した島を知りたいという好奇心が芽生えてきた。
感謝の心、自分を見失わないこと、祈りの心、好奇心、こうした人間の本質的な機能が、彼自身の中にどんどんと蘇ってきたように思えた。孤独だった彼も、オウムや亀や羊と触れ合うことや、麦や米を育て、畑を耕す生活の中に、生命というものを感じることができただろう。
生活が一転するのは、あるとき海岸で、人間の足跡を見つけてからだ。誰もいないはずの無人島に人間の足型があるとはどういうことか?その恐怖心を裏付ける、頭蓋骨や手足の骨が散らばっているのを発見した。それからというもの、彼の生活は恐怖にさいなまれる日々と化した。(この時代は、人食いの文化がリアルに存在していた。抗争に負けた者は食われる宿命にある!)
この島は、人食い蛮族が、獲物をつれて、人食いを行う場所だった。そのリアルな場面を目撃することになる。そして、その餌食となろうとしていた蛮族を救い出し、彼にフライデーと名付け、それから彼はたった一人の孤独ではなく、フライデーという友と一緒の暮らしへと変わる。ここで、彼の人生は、また大きく一転した。
それからも助けた蛮族の一人が、フライデーの父親だったとか、思ってもみなかったできごとも重なり、島の住民は徐々に増えて、共同生活するようになり、さらには島らかの脱出を計画するようになっていった。脱出計画といっても簡単なものではなかったが、あるときイングランド船が漂着しているのを見つけた。
イングランド船の船長が悪党に乗っ取られたようで、ロビンたちはその船長を救い出し、それを機にイングランド船で無事生まれ故郷に帰ることに成功する。その後のロビンソンは裕福な生活に恵まれるが、この物語は、むしろこのサバイバルな中を生き延びるその冒険的な生き方の中に面白さがあったと思われる。
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何もかもが与えられている現代社会において、すべてを失ったときに、人はどのように生きて行けるのか。何かに依存することが当たり前の生活の中で、自分の力で無から何かを生み出していく、そういうたくましさや、知恵を絞りだしていく姿勢、決して諦めない不屈の精神、そういう人間の本能的なものを目覚めさせてくれる小説であったと思う。
無人島生活では、遭難船から見つかった金貨が何の役にも立たなかったのが印象的だった。 -
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ネタバレ未解決の連続少女誘拐事件に翻弄されたアメリカアラバマ州の田舎町グレイスで、また一人の少女が行方不明となる。おりしもグレイスには未曽有の嵐の気配が予想され…
誘拐された少女と双子の妹、彼女らの家族、友人、警察署長、牧師夫婦らの視点で描かれる物語から見えてくれる真実とは?
ミステリー要素は少なく、登場人物たちの哀しみと強さをじっくり味わうテイストの小説だった。登場人物たちそれぞれが持っている過去や現状の問題と自分の弱さ、それでもあがく強さ。抗いきれない現実に打ちのめされても、魂をすんなり売り渡すのではなくあがいて傷を負ったからこその光明、やりきれない展開にも拘らず勇気をもらえた気がした。
それにしても、1995年のアメリカにおいてもこういう風なんだから、俺たちの盲信していた「自信にあふれて自由で賢く強い」アメリカなんて前世紀からなかったわけだし、そらトランプは再選するよなぁってこと。
日本も30年以上凋落と諦念を抱えてきた、彼らの哀しみは他国の遠い物語ではないよなぁとも。 -
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『われら闇より天を見る』(上)
『われら闇より天を見る』(下)
何の気なしに読み出して、冒頭の肝心なところがはっきりしないまま引き込まれる。登場人物もこんがらがって訳もわからないまま読み出す。進むうちにストーリーに刺激されて、どんどん嵌っていく自分を感じる。これは久し振りの感覚だ。
それでも登場人物や経緯は複雑であやふやなままだ。
上・下巻の長編が短く感じる。
最後に書評家川出正樹の解説で何処となく感じていた作者の人間性や個性、この作品のテイストの所以がわかってくる。また、物語の経緯もそうだったのかと後追いながら理解できる。そのくらい事実関係を傍においたまま切迫した臨場感が読者を引っ張り回す。
カルフォルニア州の絶景を望むのどかな海辺の町で起きた事件である。30年前、スターは友達のヴィンセントに妹シシーを誤って殺されるという不幸な事故にあう。彼らと仲のよい幼なじみのウオーカーは地元警察の署長になり日々の仕事をしながら長引いた彼の出獄を待つ。ヴィンセントは30年ぶりに出所して町に帰り昔の友人とは接触せず静かな生活を送る。
その町では事業家の巨漢ダークと一味が別荘開発の地上げを進めている。彼はスターに好意を寄せていたが複雑な事情を抱えてタイトな資金繰りに追い回されている。
スターはかつての事故以来立ち直れず、アルコールと薬物の過剰摂取で子供達(ダッチェスとロビン)の面倒をほとんど見ることができない。そうしたなかスターが誰かに殺される。現場に血だらけでいたヴィンセントが犯人として逮捕され黙秘のまま裁判へ進む。
13歳の娘ダッチェスが6歳になる弟ロビンの面倒を見ながら、叔父のハンクに保護され、ウオーカーとともにスター殺害の真相解明を進める。
主人公ダッチェスは女だてらに無法者を自称する跳ねっ返りである。強い弟思いで世間への不信と恨みが彼女の真骨頂である。彼女の直情的で軽はずみな行動が事件を起こす。ロビンが姉の妄動を責める場面には同感できるし、さすがに叔父ハンクへの態度にはやり過ぎを感じる。兄弟愛や祖父愛、ウオーカーの友情と献身など感情が入り乱れて錯綜する。
彼らの心の芯を貫く暖かいものが格別だ。
筋書きの複雑さやわからなさも作者の構想のうちで
ダッチェスの破滅的行動への違和感もそれなのだ。
典型的なミステリー小説で傑作だと思う。
クリス・ウイタカー、他の作品も是非読んでみたい。
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ノルウェーが舞台のノワールミステリ。
辺鄙な場所に住むロイ。弟カールがリゾート計画と共に妻連れで帰ってくる。両親の事故のこと、カールの性的暴行のこと、リゾート計画のこと、読者にちょっとミスリードさせ真実を明らかにしていくさまがうまい。
しかし、金を持ってなくセンスがいいわけでもなく親の死と弟への変な噂もあるロイになぜ女が寄っていくのか謎ではある。男性作家が書く女性はほぼ実像とズレてるのでその典型的パターンでもある。
しかしこの作品が極めて珍しいのは一番変なのが主人公ロイという部分。読めばわかると思う。
続編があるようなので邦訳を少し期待します。 -
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ネタバレ『真夜中の太陽』、『その雪と血を』の世界観に惚れたジョー・ネスボ。
ハリー・ホーレシリーズはそれはそれで面白いけど、期待した雰囲気とはちょっと違うなという感じだったが、これはと感じる導入部。
無口で人付き合いが得意ではないが、一本芯を通した生き様で、雇われ店長として町のガソリンスタンドを堅実に運営する主人公ロイ・オプガル。
ザ、無骨。
こういう芯のある主人公にとっても惹かれる。
物語はロイの弟カールが帰郷するところから始まる。
カールは故郷を去った後、アメリカで金融、経営学を学びカナダで事業を営んでいたが唐突なまでの帰郷の知らせを伝えてくる。
何かと思えば兄弟が今は亡き父親から引き継いだ″王国″オプガル農場の地にリゾートホテルを建設する計画だと言う。
そんな資金がどこにあるという問いには、町の人を巻き込んだ分担責任会社を設立し融資を受けるという。
ハードボイルドやノワールといったジャンルの通低音がありながら、そういったジャンルの型とも言える悲惨な犯罪めいた話や悲哀を含んだ話との絡みではなく、どこか薄っぺらく浮ついた話がリードを担うところが特徴的。
原題『THE KINGDOM』。
序盤から「王国」のメタファーはそこここに出てくるのでイメージが膨らむし、何が「失墜の」なのかという匂わせも気になりつつ惹き込まれていく。
無骨さとノワール、浅はかな弟と兄弟の因縁ぐらいのところまでは良かったが、ロイの決定的な歪みを混ぜ込んだあたりでやりすぎたかなという印象。
そこまで拗れてしまえば悲劇は必然。
嫌いではなかったのだが、せっかくのロイのキャラが勿体ない。
この展開、結末で続きがあるというのだが、うーんどうなのだろう、方向性を予想すると珍しくあまり読みたいとは思わないパターン。 -
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ネタバレ2025年の43、44冊目は、クリス・ウィタカーの「われら闇より天を見る」です。2021年のゴールドダガー賞受賞作です。文庫化されたのを期に、読んでいなかったので読む事にしました。
あたかも大河ドラマのような小説だと思います。
無法者を自称する主人公のダッチェスの苛烈な人生が、これでもかと描かれて行きます。ダッチェスは、幼い弟ロビンや母親スターを守る為、世間に立ち向い続けますが、余りにも残酷な運命が幾重にも待ち受けています。
ミステリーに重きを置いていないと言われればそれまでですが、気になる所がいくつか有りました。その点が有ったとしても充分、満足出来るとは思いますが。
全ては、ダッチェスとロビンの父親が誰なのかに有ります。登場した全ての人物のこれからの人生に、少なからず幸が有るように願って止みません。人生について考えてしまう1冊だと思います。
☆4.6