あらすじ
主人公ロイの住む山間の村。彼の弟カールは、新妻シャノンとともに村をリゾート地へする計画を携えて帰ってきた。リゾート化計画は、村を豊かにするためだとカールは言う。だがロイは、弟の本心は村を支配することにあると察していた。そこに殺人事件が起こり……。
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Posted by ブクログ
ジョーネスボ、噂に聞く北欧ミステリーの有名作家、今回読んだのは2作品目だが、いやいや噂にたがわぬ面白さ、四六版単行本上下2段組500P超えのボリュームは読み応えあって、中だるみも少なく、全編ずっと緊張感とノアールと諦念が漂い続ける作風で、思ってた以上にのめり込んでしまった。
主人公兄弟、兄ロイの寡黙さ冷徹さ、弟カールの冷酷な詐欺師っぷり。育った環境が悪かったとも言えるのだが、それよりを周りを囲む人物たち、とりわけ女性陣が絶妙に小ずるくてチクチクとした悪さを仕込んでは、兄弟を追い詰めていく様が怖い。
そしてその描写に余分な熱量がない、他のノアール作品例えばコスビーとかウィタカーとか、月村了衛とか馳星周とかの作品は根底に何かたぎるものの矛盾した冷たい熱さを感じるんだけど、この作品の熱は冷たい冷たさ、ラブシーンやアクションシーンですら冷えていて、これが北欧なのかと、これはこれでスゲーなと感じ入る。そういえば、前に読んだ「その雪と血を」も読感に冷たさを感じたとレビューしていたなぁ。
出世作ハリーホーレシリーズや本作の続編も是非追いかけてみたい。いやぁ、スゲーの読んだわ
Posted by ブクログ
この作者の作品は本当にハズレなし。
翻訳も素晴らしいのだろう。読みやすいし、感情移入しやすい。
主人公、幸せになってほしいな。続きがあるみたいなので、はやく読みたい。
Posted by ブクログ
単行本の二段組にして500ページを超える長編だが、飽きる事ないドラマ(事件)があった。
ノルウェーの深い谷に阻まれた村、オスの農場で暮らすロイとカールの兄弟は、両親を事故で亡くすのだが崖から落ちた事故に不審を抱いた保安官を…。
その後逃げるように村を離れた弟が、15年後に妻と共に農場の土地にリゾートホテルを建てる計画を持って戻ってくる。
この計画を持ち込んでから新たに巻き起こる事件に不穏さと兄弟の思惑に翻弄される。
いくつかのこれまでの死は、兄弟だけが関わっているのだが、事件にすらならない気味の悪さ。
最後は兄弟の騙し合いで終わるのかと思われたが、意外な結末に。
すべては弟ありきのことなのか…。
Posted by ブクログ
待ちに待ったネスボの新刊
「結びつかざるを得ない関係としての兄弟」の絆が描かれる重厚なノワール・ミステリー。
ネスボに騙されて読み進み、途中でその引っ掛けに気づいてからは、さらに読み応えが増す。
各人の生き様に各人の本性を見る、ずしりと心に重い作品だった。
Posted by ブクログ
ノルウェーにある谷に阻まれた村オス。そこに住むロイとカールの兄弟。ある時カールを助けるためにロイが罪を犯してカールは海外へと逃げてしまう。15年後に帰ってきたカールとの再会。帯にある暗黒小説の空気がじわじわと感じられるようになってくる、その構成も見事だし罪から抜け出せなくなっていく二人の、お互いがいるという思いとそこに芽生える不信感とか家族や兄弟のつながりと脆さが見えてさらに面白くなっていく。二段組で530ページほどあるけれど長さを感じさせないくらい圧倒される犯罪小説。こういう作品をもっと読みたい。
Posted by ブクログ
主人公ロイの住む山間の村。彼の弟カールは、新妻シャノンとともに村をリゾート地へする計画を携えて帰ってきた。リゾート化計画は、村を豊かにするためだとカールは言う。だがロイは、弟の本心は村を支配することにあると察していた。そこに殺人事件が起こり……。
著者の作品を読むのは、「コマドリの賭け」以来、2作目。厚さも値段も物語も圧倒的。
Posted by ブクログ
非常に遅くなったが、2025年一作目。
ノルウェーの作家、ジョー・ネスボのノワール大作。
弟カールが故郷である山間の村に帰ってきた。
外国人の妻と、故郷の村をリゾート地へと発展させるホテル計画とともに。
兄のロイは不安ながらも弟の計画に乗るが、奇しくも兄弟が過去に関わった事件の再捜査が始まり。。。
上下段の500ページ越えと、非常に重厚な作品。サクサク読めるのだが、読み終えるのに流石に日数がかかってしまった。
兄弟、特に兄をメインに据えたノワール。少しずつ歯車が狂い、堕ちていく様が見事。家族小説、サスペンス、恋愛小説など、様々なジャンルを内包しており、飽きさせない。
弟カールが本当にお調子者というか、口だけというか、いつも見積もりが甘いダメ男だけど、周りがなんとかしてくれるので上手く行っているという。兄のロイが気の毒すぎて。。。
全編に漂う暗さが北欧小説らしい。
そしてなんと、まさかの続編があるという。。。えぇ、あの最後からどう繋げるのよ、と思わなくもないが、邦訳を楽しみに待ちたい。
Posted by ブクログ
★5 ノルウェーの深い谷に囲まれた田舎町… 人間の愛情と業が深々と描かれるノワール #失墜の王国
■あらすじ
ノルウェーの深い谷に囲まれた田舎町オス、その村の農場でロイは暮らしていた。彼はガソリンスタンドの店長として生計を立てていた。
ある日、アメリカで暮らしていたはずの弟カールが、妻シャノンと一緒にオスに戻ってくる。カールは農場にリゾートホテルを建設する詐欺まがいの計画を持ち掛けてくる。さらにこの兄弟は重大な秘密があり…
■きっと読みたくなるレビュー
★5 北欧の重厚なノワールミステリー、重いっ
最初から最後まで、寒々しく、じとっーとした雰囲気に包まれます。さらに舞台は田舎町のスモールタウン、登場人物もほとんどが知った仲で人間関係も粘り気が強いの。描かれる物語も、おもいっきり犯罪小説です。じっくりと腰をすえて読みましょう。
こんなにも人間の愛情と業を深々と描いている物語を私は知りません。金、性欲、暴力、虐待、脅迫、詐欺、殺人… これら関連する犯罪が堅実に行われていく。決して派手ではなく、さも当然そこにあったかのように淡々と人間の醜さが描かれるんです。
どんな犯罪小説であっても、悪事の背景には少なからず同情の余地があったりするんですが、本作はそんなものはありません。何故そうなってしまったのかのではなく、何故そんな選択をしてしまったのかと腹が立って仕方がない。自分の愛情だの欲望だのに正直なだけで、身勝手な愛がそこにあるだけなんです。
しかしながら、このまっすぐな愛、歪みまくった欲望を、緻密に厳粛に描かれるんですよ。人間が最も求める本能と、人間が最もやってはいけない行動の対比が強烈すぎる。
物語は後半になると展開がスピードアップし、自分勝手な欲望に拍車がかかってくる。マジでそんなことになんの?って、ひっくり返りそうになりました。さすがにそれはありえないよ~
そして終盤に描かれる兄ロイの犯罪行動はあまりにも残忍… そして弟カールの犯罪行動はあまりにも幼稚… 彼らの生きてきた環境がどれだけしんどかったのかは同情するけど、その結果がこれですかって感じで憐れすぎて泣ける。
こういうのを見てると、同じ暮らし、同じ環境、同じ人間関係でいることは、大きな失敗に繋がりますね。脱皮しない蛇は滅びるといいますが、自分の殻に閉じこもっていては、成長なんてできないんです。
ちなみに続編もあるようで、こんなひどい話の続きなんて読みたくないんだけど、めっちゃ読みたい。ぜひ翻訳お願いします。
■ぜっさん推しポイント
この兄弟は様々な犯罪に手を染めるんですが、何も悪いのはこの二人だけではありません。むしろ背景にいる多くの女性たちの行動によって、犯罪が推し進められていくんです。
弟カールの妻シャノン、理容師グレーテ、リタたちのやってることをみてると、関わっている男はこうやって追い込まれていくというのがよくわかります。
またガソリンスタンドの従業員ユーリエ17歳の行動や価値観を見ていると、根はいい子だと思うんだけど、やっぱり育つ環境って大事なんだなーと思っちゃうなぁ。高校生の子どもをもつ親としては、なんか胸が苦しくなりました。
Posted by ブクログ
とかく陰鬱でスローペースな傾向のある北欧ミステリーの中では、ハリー・ホーレ刑事のシリーズはスタイリッシュなキャラクターの魅力を持っている。その著者の単発ノワール作品である本書は、北欧の田舎町の濃密な人間関係を背景に、歪んだ兄弟愛と許される恋をジェットコースター的な展開で駆け抜ける大作。
久しぶりに時間のかかる魅力的長編を読み終えた満足感。韓国映画のような濃ゆいエキスでお腹もいっぱいです。
Posted by ブクログ
タイトル、装丁ともカッコよく手に取ってみると、2段組みだ。しかも500ページを超えている。これは気合を入れないと、と思ったが、不要な心配だった。
ノルウエーの田舎町に父母と2人の息子が住んでいる。開拓時代のアメリカを思い出させるマチズモな父親の支配下に置かれた一家で、弟は性的虐待を受けている。小説の前半では、兄から虐待を受けているのかと思わされるが、実は父からだった。同様の伏線は随所にあり、回収される伏線に読者の興味を途切れさせない。また、彼らを巡るエピソードは面白く、彼らの個性がより際立ってくる。後半はますます『読む気』が加速していく。
マチズモな父親の血がそうさせるのか、強気な兄は暴力的資質をより発揮させ、冷静で暴力脳の優れたニューヒーローの予感さえする。弱気に見えた弟も、後半随所に暴力性を見せ個性を発揮する。巻末の解説によれば、本国では続編が刊行済とのこと。楽しみなシリーズがまた一つ、だ。
Posted by ブクログ
CL 2025.4.17-2025.4.21
兄ロイと弟カール、カールの妻シャノン。
ロイとカールは10代の頃からお互いのために罪を犯し、シャノンが加わった後も、家族のために罪を重ねる。でも、結局はお互いを裏切り最後の悲劇へと突っ走っていく。
兄弟。何よりも誰よりも分かちがたい兄弟の絆。全く心温まる絆ではないけど。ある意味不健全なくらいに強い絆なんだと思う。
なかなかに硬質なキッパリしたノワールだった。
次作はさらに悲惨な出来事が起こるらしい。怖いような楽しみなような。